OECD加盟国の学生に対してなされる学習到達度調査(Program fo International Student Assesment)というものがあります。頭文字をとってPISAと呼ばれるものですが、これは経済協力開発機構による、国際的な、生徒の学習到達度調査のことです。 義務教育の最終段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数的思考力、科学知識、問題解決能力が調査されます。2000年を皮切りに、3年ごとに行われ、現在、2012年までのデータが公開されています。 2012年度調査の読解力を見てみますと、日本は上から4番目に位置しておりまして(上位3つは上海、香港、シンガポールです)、素晴らしい結果だと思います。調査項目全てにおいてOECD平均を上回る結果です。 ところが問題は無答率にあります。つまり、問題に対して回答を書いていない率です。読解力問題における日本の平均無答率は、OECD平均とほぼ同じです。ただ、日本の平均無答率 がOECD平均より5ポイント以上、上回っている4題は、いずれも自由記述でした。すなわち、自由記述4題においては、OECD平均より無回答であった人が多いということです。日本人は選択問題には強いが自由記述となると何を書いて良いのか分からなくなる、と言えそうです。 数的思考力に関しても触れてみます。全体としては素晴らしい得点です。各項目を見てみると、相対的に得点が高いのは「定式化」、低いのは「解釈」ということです。2012年PISAで重点的に調査された「数的リテラシー」では、数学的概念を利用したり、数学的結果を応用したりする力の弱さが指摘されました。 読解力と数的思考力の問題点を比べてみますと、関係があると言えそうです。自由に思考したり、自由度の高い解釈を求められたり、判明したことを応用したりといった能力が低そうだな、という印象を受けます。
話は変わりますが、PIAACという調査があります。こちらは成人(16歳〜65歳)への調査で、2011年〜2012年にかけてOECD加盟国を中心に男女約15万7000人を対象に実施されました。この調査からは、読解力と数的思考力の相関性をはっきりと指摘することができます。OECD加盟国では全て、両者の相関係数は0.8を上回っているのです。つまり、かなり高い相関関係にある、ということができます。 両者が相関関係にあることから、一方の能力の訓練が他方にも活かされるし、また一方の能力の低さが他方の伸び代を打ち消してしまう、と推測できます。 中学校に進学すると数学は高度なものになり、単純に計算が得意なだけでは、テストで高得点を取れません。生徒は、まず問題を解釈し、自分がこれまで解いてきたどの問題と一致するのか判別し、またどの点においてひねりが加えられているのか推測する能力が求めらるようになります。。ここに、数的思考力と読解力との相関関係があるのです。
講師は長年の経験から、学力の向上が早い子は、会話や文章の理解力が高いことを知っています。これは多くの方に同意してもらえるでしょう。この点を養成することが、国語の力に止まらず、英語、ひいては数学の力にまで影響を与えることに確信があります。ベーシックの国語の授業に作文が取り入れられているのはそのためです。 話は戻りますが、PISAの言うところの読解力とは、単に文章を読む力を指していません。文章と図表、グラフ、地図を関連付けて解釈したり、書かれた情報から推論して意味を理解することまで含まれます。これが思考力の基本であるとの考えから、そう定義されております。ベーシックの国語の授業では、空欄のある文章を論理的なものとして完成させたり、図表などを用いて論理的な説明文を作文します。また、テーマを生徒に自由に選ばせ、各個人が興味の持てる問題を深く掘り下げる指導をいたします。結果、各々が学ぶことの楽しみを見つける助けになれば、と考えています。
昭和48年生まれ。 九州大学大学院人間環境学研究府後期博士課程単位取得 専門学校、大学、学習塾非常勤講師を経て2016年7月学習塾ベーシックを開校 。 15年以上の学習塾勤務の間に100名を越す生徒を有名私立中高校に進学させてきました。