薬理学

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免疫系の基本概念

免疫系とは、体内に侵入する病原体を認識し、それらを排除する防御機構です。免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類があります。

基本的な免疫の仕組み

自然免疫は、皮膚や粘膜バリア、食細胞(マクロファージや好中球)による異物除去が主な役割です。一方、獲得免疫はリンパ球(T細胞・B細胞)が関与し、特定の病原体に対して記憶を持つ特徴があります。

免疫の仕組み

線維化の基本概念

線維化(fibrosis)は、慢性炎症や組織損傷により異常な結合組織(主にコラーゲンなどの細胞外マトリックス)が過剰に蓄積する病態です。これにより、臓器が硬化し、機能が低下します。

基本的な線維化の仕組み

健康な肺では、肺胞に傷がつくと、傷を修復する細胞*が集まってきて、コラーゲンなどを作り出し、その傷を修復します。しかし、肺胞に長期にわたってくりかえし傷がつくと、過剰な修復反応によりコラーゲンなどが蓄積し、肺胞の壁(間質)が厚く、硬くなり、肺の線維化がおこります。 こうした肺の線維化のプロセスには、「増殖因子」や「受容体」とよばれるさまざまなタンパク質が関与しています。 線維化に関連する増殖因子が、傷を修復する細胞の受容体にくっつくと、「傷口に集まれ」、「コラーゲンを作れ」などといった、さまざまなシグナル(指令)のスイッチが入り、線維化が引きおこされると考えられています。

線維化と免疫の関係

血管拡張の基本概念

血管拡張は、血管平滑筋の弛緩によって血管径が拡大し、血流が増加する現象です。薬理学的に血管拡張を引き起こす薬剤(血管拡張薬)は、作用機序に応じて以下のように分類できます。

1. 一酸化窒素(NO)経路を介する薬剤

(1)有機硝酸塩類(NO供与体)

  • 代表薬:ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジル
  • 作用機序:薬剤が代謝されることで一酸化窒素(NO)を放出し、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を活性化 → cGMP濃度上昇 → 血管平滑筋の弛緩(特に静脈優位)

(2)ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬

  • 代表薬:シルデナフィル(バイアグラ)、タダラフィル(シアリス)
  • 作用機序:cGMPの分解を阻害 → cGMP濃度上昇 → 血管平滑筋の弛緩(特に肺血管・陰茎海綿体血管)
シグマートの模式図

2. カルシウムチャネル遮断薬(CCB)

  • 代表薬:ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベラパミル
  • 作用機序:電位依存性L型Ca²⁺チャネルを遮断 → 細胞内Ca²⁺流入を抑制 → 血管平滑筋の弛緩
  • 特徴:
    • ジヒドロピリジン系(DHP)(ニフェジピン、アムロジピン): 血管選択性が高い
    • ベンゾチアゼピン系(ジルチアゼム)・フェニルアルキルアミン系(ベラパミル): 心筋にも作用し、心拍数や心収縮力を抑制
カルシウム拮抗薬の模式図

3.カルシウムチャネル開口薬

  • 代表薬:ミノキシギル、ニコランジル
  • 作用機序:ATP感受性K⁺(k_ATPチャネル)を開口 → 細胞膜の過分極 → Ca2⁺チャンネル抑制→血管平滑筋の弛緩
  • 特徴:
    • ミノキシギル:高血圧症治療のほか、外用薬として発毛にも使用
    • ニコランジル: k+チャンネル開口作用+NO供代与作用を併せ持つ
交感神経の模式図
 

4.交感神経活動を抑制する薬剤

1.α1遮断薬

  • 代表薬:ブラゾシン、ドキザトシン、タムスロシン
  • 作用機序:血管平滑筋のα1受容体を遮断→ノルアドレナリンによる血管収縮を抑制→ 血管拡張

2.中枢性交感神経抑制薬(α2作動薬)

  • 代表薬:クロニジン、メチルドパ
  • 作用機序:延髄のα2受容体を刺激→交感神経活動を抑制→末梢血管抵抗の低下
koukanの模式図

5.レニン・アンギオテンシン系(RAAS)阻害薬

1.ACE阻害薬

  • 代表薬:エナラプリル、リシノプリル
  • 作用機序:→アンギオテンシンⅡの生産を抑制→ 血管収縮抑制&ブラジギニン増加(血管拡張作用)

2.アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)

  • 代表薬:ロサルタン、テルミサルタン
  • 作用機序:アンギオテンシンⅡのAT1受容体を遮断→交感神経活動を血管収縮抑制
reninnの模式図

6.エンドセリン受容体拮抗薬(肺高血圧症)

  • 代表薬:ボセンタン、アンプリセンタン
  • 作用機序:エンドセリン(強力な血管収縮物質)の受容体を遮断→ 血管収縮肺血管拡張
エンドセリンの模式図

7.プロスタサイクリン(PGI2)アナログ

  • 代表薬:ベラプロスト
  • 作用機序:プロスタサイクリン受容体(IP受容体)を活性化→ 血管平滑筋の弛緩&血小板凝集抑制
  • 適応:肺動脈性高血圧症(PAH)、全身性強皮症の血管病変
プロスタサイクリンの模式図

抗血小板薬の基本概念

抗血小板薬の作用機序

抗血小板薬は、血小板の活性化や凝集に関わる異なる経路をブロックすることで作用します。主な種類と機序は以下の通りです

1.cox阻害薬

  • 作用標的:cox(シクロオキシゲナーゼ)
  • 作用機序:トロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑え、血小板凝集を抑制
  • 代表薬剤:アスピリン(バイアスピリン)

2.ADP受容体阻害薬

  • 作用標的:P2Y12受容体
  • 作用機序:ADPによる血小板の活性化を阻害
  • 代表薬剤:クロピドグレル(プラビックス)、プラスグレル(エフィエント)

3.PDEⅢ阻害薬

  • 作用標的:ホスホジエステーラゼⅢ
  • 作用機序:cAMPの分解を抑えて血小板の活性化を抑制+血管拡張作用
  • 代表薬剤:シロスタゾール(プレタール)

補足:抗血小板薬と抗凝固薬の違い

                        
比較項目抗血小板薬抗凝固薬
主な作用部位血小板血液中の凝固因子
対象となる血栓白色血栓(動脈)赤色血栓(静脈・心房内)
代表薬アスピリン・クロピトグレルなどワルファリン
線維化と免疫の関係

消化管治療の基本概念

消化管(胃・腸・食道など)の疾患に対する治療は、原因に応じて以下のように分類されます。

1.酸関連疾患の治療

胃酸分泌抑制(例:逆流性食道炎、胃潰瘍)

  • 1.プロトンポンプ阻害薬(PPI): 例)ボノプラザン(タケキャブ)
  • 2.1.1.H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー): 例)ファモチジン

食道の蠕動運動が低下し、下部食道括約筋(LES)の機能不全により胃酸逆流が生じやすくなるのを防ぐ

粘膜保護(例:胃炎)

  • 防御因子増強薬(例:レバミピド、スクラルファート)

2.消化管運動の改善

消化管運動機能促進薬(例:機能性ディスペプシア、胃もたれ)

食道の蠕動運動が低下し、下部食道括約筋(LES)の機能不全により胃酸逆流が生じやすくなります。

  • 1.コリン作動薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬):アコチアミド(アコファイト);消化管運動を促進し、胃排出を改善
  • 2.5-HT4受容体作動:モサプリド(ガスモチン);胃・腸の運動を促進
  • 3.ドーパミンD2受容体拮抗薬:メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン);胃の運動を促進し、逆流を抑制。ただし、錐体外路症状の副作用に注意。
線維化と免疫の関係

ステロイドの基本概念

ステロイド(Steroids)は、副腎皮質ホルモンの一種で、体内で炎症や免疫反応を調節する働きを持つ化合物です。

1. 細胞内受容体を介した遺伝子発現調節

  • ステロイドは細胞膜を通過し、細胞内の「ステロイド受容体(グルココルチコイド受容体:GR)」と結合。
  • 受容体と結合したステロイドは「転写因子」として働き、炎症を抑える遺伝子を活性化、炎症を促進する遺伝子を抑制。

2.抗炎症作用

  • サイトカインの産生抑制(IL-1、IL-6、TNF-αなど)
  • COX-2の抑制によるプロスタグランジンの産生低下 → 炎症・発熱・痛みを抑える
  • リンパ球、好中球の抑制 → 免疫抑制作用

3.免疫抑制作用

  • T細胞・B細胞の活性を抑制 → T細胞の活性化抑制B細胞の抗体産生低下→自己免疫疾患の治療に有効
  • 好酸球・肥満細胞を抑制 → アレルギー反応の抑制

4.代謝への影響

  • 糖新生促進(血糖値上昇、インスリン抵抗性増加)
  • タンパク質の分解促進 → 長期使用で筋萎縮
  • 脂肪分布の変化(中心性肥満・ムーンフェイス)
  • 骨形成抑制(破壊細胞活性化)→骨粗鬆症のリスク増加

5.ステロイドの副作用

  • 短期使用 → 胃潰瘍、高血糖、不眠、精神症状(イライラ、興奮)
  • 長期使用 → 副腎抑制、骨粗鬆症、感染症リスク増加、ムーンフェイス、中心性肥満

6.まとめ

  • 細胞内の受容体(GR)を介して遺伝子発現を調整し、炎症・免疫をコントロールする
  • プロスタグランジン、サイトカイン(IL-6, TNF-α)を抑制し、抗炎症・免疫抑制作用を発揮する
  • 糖代謝・脂肪代謝・骨代謝にも影響し、副作用(高血糖・骨粗鬆症・筋萎縮など)がある
  • ステロイドは強力な抗炎症・免疫抑制作用を持つが、副作用もあるため適切に使用する必要がある。
  • 使用を急に中止すると「副腎不全」を起こす可能性があるため、減量は慎重に行う。
ステロイドの炎症模式図 ステロイドの免疫模式図