ノジギクの東限といわれる兵庫県ですが 生育場所はほとんどが県西部の播州(姫路)地区とされています。
ノジギク自生の実際の日本での最も東にあたる六甲山を中心とした地域には 十分に調査もされないまま ほとんど生育がない という意見が多数のようです。
果たしてどうなのでしょうか?
2010年以降 開花期に調査を始めました。
なおノジギクのことをあまり知らない方は下記サイトをご参照ください。
→ ≪ 野路菊とは? ≫
市街地や住宅地として開発しつくされた神戸ですが 驚くほど多くの地域にノジギクが生き残っていることが分かってきました。
ただし 誰からも保護の手は差し伸べられておらず 雑草扱いで伐採に追われて 厳しい状況の中でかろじて生き残っている という状態です。
<特記 ー 最近の発見 2017年11月>
驚き!! こんなところにノジギクが! 生田川の最先端河口部。
(中央区脇浜海岸通4)
この辺りは神戸港の中にあり あらゆる場所がびっしりとコンクリートで造成されています。
その中で生田川の最先端の河口部東側に まるで奇蹟のように200平米ほどの土壌部分が残っています。
そこにノジギクが生き残っていることが分かりました。
3−10株ほどの集まりが10か所ほどあり合計するとかなりの数になります。
葉の形状は 5烈で切れ込み部がなだらかに丸みを帯び典型的な神戸六甲タイプのノジギクです。
明治以降 神戸港が造成される以前から自生していたものの生き残りと考えられます。 明治以前には
この海岸付近はノジギクの大群落が形成されていたのではないかと想像がふくらみます。
姫路市の大塩地区あたりには海辺にノジギクが多く自生していますが 神戸では海水直近に自生するノジギクが見つけられたのはここだけで とても
貴重です。 なんとしても
奇蹟のように生き残った健気なノジギク達に いつまでも咲きつずけてほしいものです。
しかし・・・
まわりは悪魔のような外来植物のセイタカアワダチソウが濃密に跋扈し 健気なノジギク達を取り囲んで圧迫しています。 このままでは圧倒されて
遠からず消滅する恐れがあります。
≪東灘区≫
岡本付近 (住吉川約1キロ東方)
付近の住民の方の協力により 2010年12月に 岡本御影地区の或る数箇所を調査し 野路菊の存在を確認しました。
岡本地区以東で探索しましたがノジギクは全く見つかりませんでした。 従って 「岡本八幡神社」 「八幡谷」 あたりが
南六甲で現時点で確認できる自生ノジギクの東限となります。
( 北区の有馬温泉地区でも自生が確認されこのあたりより東寄りらしいので ”日本での東限は有馬地区” ではないか
と考えられます。)
このあたりも住宅地として開発されほとんどがコンクリート張りです。 道路の隅や法面などにまばらに生き残っている という状態です。
(註) 西宮市苦楽園 甲山森林公園 などもっと東でノジギクが発見されています。 しかし岡本地区とは芦屋市をはさんでかなり離れていて
分布のつながりが無い上に分布が孤立した状況からも おそらく古い時代(明治大正期)に人為的に移植されたもの
と判断するのが妥当と思われます。
(註2) 有馬温泉地区(北区)でも自生ノジギクが発見されました。 地理的に有馬地区が住吉岡本地区より東に位置するなら
有馬地区が東限と考えることもできます。 ついでながら有馬地区は自生の北限の可能性もあります。
住吉川上流
住吉川ぞいに上流を調査しましたが 落合橋から川べりなどにごく僅かに存在していました。 当ルートの最北点は
五助堰堤あたりです。 高度は400メートル位でしょうか?
これより上は気温が低いため 全く生育はありません。 つまり400M以上の高所では育たないことになります。
山上など高所ではノジギクの近縁種で寒さに強い リュウノウギク の自生が少しあります。 あまりにもよく似ているので ノジギクと間違える人も多くいるようです。
なお住吉川上流の秋は ノジギクより イナカギク(又はシロヨメナ)の目立った自生地区としたほうが良いようです。 山上までかなり多く見られ 小ぶりながらなかなか可愛い野草です。
渦森台地区 − 圧巻のノジギクの群落
東灘区の 渦森台地区 はおそらく六甲山系のノジギクとしては最大の集積地です。
「渦森台3丁目バス停」を中心として道路脇の緑地(のり面) 及び住宅地周囲の緑地に生育します。
数百数千ないいしそれ以上の数でまさに圧巻といえる情景です。
これほどの天然のノジギクの群落地がほとんど知れれていないのが不思議です。
広い地域に不規則に散在している状況からみて 植えられたものではなく 古い植生が残り 自生ノジギクが生き延びてきたものとみられます。
適宜に保護を行い うまく整備管理すると 姫路の日笠山 に匹敵するノジギクの名所になるのではないでしょうか。
≪灘区≫
「六甲ケーブル下}駅周辺
まず 明治40年に牧野博士(または山鳥吉五郎氏) が兵庫県で初めて 野路菊を発見された故事をふまえて
探索してみました。
「六甲ケーブル下」駅から北東300メートルの地点の道路脇で発見できました。 (六甲翠光園奥。油コブシ台登山道の入り口のような所
)
キバナノジギク数株を含む数十株ほど典型的な形態のノジギクでした。 右欄の写真を添えました。
今は生き残っているものの のじぎくを雑草と見なす方々も多く 伐採駆除されてしまうのが心配です。 なんとか守ってゆく手だてはないものでしょうか?
また ここより少し南の或るマンションの 古い植生を残した 前面の緑地及び隣接する土地にも 数十株のノジギクが美しく咲く情景を目にしました。
これは植えられたものではありえず 全く逆に今年は人手不足による伐採漏れのようです。 当マンションには保護する意図はないようで来年は見られるかどうか分かりません。 (マンション名は伏せます)
以上の例でも分かるのですが 「六甲ケーブル下駅」 の東部は今は開発され昔の植生は完全に壊滅していますが 昔は野路菊のかなりの自生地だった可能性があります。
発見されたものは 人工化された環境の中でかろじて生き残っているもののようです。 この地域ではもっと見つかる可能性があります。
長峰台あたり (都賀川上流)
同じ灘区内では 少し西の丸山公園東の川べり(都賀川上流)や その細い道沿いに点在するのを確認しました。
保護されているわけではないので 他の草や笹の間に間歇的に自生しています。 それでも合計するとかなりの数になります。
余談ですがこの付近の川べりで原種と見まがうようなサザンカを数本見かけたのに少し驚きました。
薄桃色の花びら同志の間に隙間があり
六甲山系の固有種サザンカ という貴重なものかもしれません。 折が
あれば調査してみます。
城の下通り3−4 (青谷川上流)
青谷橋から妙光院にいたる川べり。
コンクリートや石垣でびっしり覆われ 生育条件はとても厳しいのですが その隙間に懸命に生きるノジギク達を見つけることができました。
数株ずつ散在するのですが合計するとかなりな数になります。
鶴甲1 一王町
(神戸大学 国際文化学部)前あたり
「神戸大学国際文化学部」前の川は川床 川ぶちなど 総てコンクリート張りですが その隙間などからかなりの数が生育しています。 開発される前はかなりの群生地だったのでしょう。 (鶴甲1 − 一王町)
写真にあるように典型的な形態のノジギクです。
厳しい状況ながら合計すると100株以上が生き延びています。 特に学部の門の前の川に多く見られます。
≪中央区≫
神戸市バス「山本通4丁目」停留所あたり
停留所やや西の細い坂道を上がると 路傍にノジギクの小群落が2−3箇所見つかりました。
金星台やや東になります。
舌状花は長く数は12−3枚のやや形態が変わったものでした。
なお
金星台 ビーナスブリッジ 諏訪神社にはノジギクは見当たりません。
かって存在した可能性の片鱗があり 雑草と見なされて全面的に伐採されたのではないかと考えられます。
諏訪山町4あたり
川沿いの道で 山手学園中高校舎南の坂道の崖および空き地で 小群落があちこちに見られました。
山手学園中学高校の門の真前 再度谷川
再度谷川の川べり 川の淵の石垣の隙間などにかなり多くのノジギクが見られ ちょっとした情景を作っていました。
山手大学校舎 と 山手中学高校校舎の間の川沿いの道の崖ののり面に美しく咲くノジギクの小群落が散見されました。
総じて山手学園周辺は神戸市での ノジギク自生(自生の生き残りというべきか) の代表的な場所の一つといえるかも知れません。
≪兵庫区≫
平野谷川近隣 五宮町 あたり
かってはかなり存在したようですが現在はびっしり家が立ち並び ほんの僅かだけ生き残っています。
写真省略。
山王町 大山咋神社 あたり
大山咋神社やや東に小群落が2−3箇所あります。
石井町 夢野町あたり
島原ダム方面行きの道路 石井町入り口近く。
「千鳥地区急傾斜崩壊防止区域」 の標識の近く。
左側の細い坂道。
氷室町1丁目7−2あたり 「夢野八幡神社」あたり
あまり知られていないようですが かなりなノジギク集積地です。
ことに夢野神社の道路を隔てた南側 (「烏原神社という神社の跡地?) 300-400平米の空き地に
数百株が咲いて 見事な情景を作り出しています。
注目すべき地点の一つ。
≪須磨区≫
須磨区も一部探索を始めました
須磨寺 月見山 離宮公園あたり
離宮公園の東の道路ぞい 水野町水野橋近辺で小群落を幾つか発見できました。 石やコンクリの
川の淵 川床の隙間にも生育あり。
天井川上流の公園のようなところ(天井川公園?)にも少し自生ノジギクの小群落が2−3ありました。
ここはノジギクを育てて増やすのに良い場所として目をつけました。
「離宮公園」内にはもともと自生していた模様。 しかしほとんど伐採されてしまっている様子。 これは園の外側周囲にのみ 少なからず生き残っていることからよく分かります。 園の外側までは伐採の手が届かなかったからでしょう。
園内には数株が残され傍らに 「ノジギクは大切な県花である」 という意味の説明板があるにもかかわらず 園内の自生ノジギクは伐採しつくされていることに矛盾を感じます。
「離宮公園」正面近くの西外側道路沿い(園の外側です)にかなり大きく元気な群落を見ました。 伐採が難しい
場所なので生き残れたと思われます。
山陽電鉄「須磨」駅周辺
須磨駅北側の西すぐ(山電用地?)
潮見台町2丁目2あたり
キバナを含む元気な小群落がありました。
近く(潮見台1丁目1)「潮見台ハイツ」向かい側の生垣状の緑地に自生生き残りと思われる小群落が点在しています。
潮見台3丁目 「潮見台公園」内
自生生き残りとみられる小群落あり。 写真省略。
高倉町2あたり 「一の谷川」
「二級河川 川起点」という標識のある場所北より
とても元気な小群落が 10か所以上点在しており美しい情景を作っています。
ほとんど知られていないと思われますが 注目すべき地点です。
「須磨一の谷グリーンハイツ」周辺
この広大な団地にそって流れる川(一の谷川?)沿いに群落が点在します。 疎らな点在ですが合計するとかなりな
数になります。
「須磨一の谷プラザ」東
国道2号線沿い。
当建物東(一の谷川ぞい)に 100株くらいあります。 昔はかなりな自生点だったことがしのばれます。
総じて 「一の谷川」 は小さな川ですが源流から河口近くまで 川沿いに群落が点在し 神戸では注目すべきノジギク自生点の
一つに数えてよいと思われます。
一の谷2丁目 付近
安徳宮
安徳宮付近のものは人為的に植えられたようです。 付近の自生地からのものと思われます。
一の谷2丁目ー3丁目
一の谷2丁目3丁目も神戸では代表的な自生地といえます。
山陽電鉄「須磨浦公園」駅付近<。 「須磨浦病院」付近。
このあたりも一の谷(4丁目)となります。 住宅地なので群落はとぎれとぎれですがまるでノジギクの宝庫です。
駅やや北の 「須磨浦病院」 ではノジギクが大事に守らて美しく咲き誇っており 別名 「のじぎく病院」 と名ずけたいほどの
うれしい光景です。
山陽電鉄 「東垂水」付近 (垂水区)
情報をよせていただく方があり 駅付近の線路ぞいの のり面に古い植生の生き残りと思われる小群落を幾つか確認しました。 右は
「滝の茶屋」付近ののり面で見つけました。
このあたりは住宅地として完全に開発されいるため 線路沿いに僅かしかしか生き残っていません。
舞子公園
ここも情報をいただき確認しました。 かなりな数を見かけますが同じく美しい野草で黄色の
”ツワブキ” と共に何処かから人工的に
移植されたもののようです。 どうやらツワブキが主役のようでそれに野路菊の根がくっついてきて勝手に育ったようです。
いずれにしても美しく育ちつつあります。
(ここでも神戸の人達はノジギクにはほとんど関心が無く 雑草としか見做さない・・・という印象を抱かざるをえないのが残念です)
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まだ 兵庫区 長田区 須磨区 は注目すべき自生点が今後も見つかる可能性大です。
六甲山系でも 北六甲(神戸市北区 及び兵庫区長田区の北部)の状況については 別のブログを作成しています。
→<北六甲のじぎく探索記>
(*) 生育の可能性の大きい山のふもとあたりは住宅地その他の私有地がほとんどです。 そのため十分な調査ができません。
すなわち 発見できるものの何倍かの自生地が未発見に終わる可能性があります。
(*) ノジギクはごく近くに生育するものでさえ 少し違っている場合があるほど変異の多い野菊です。
これは均一の形態を保ちやすいリュウノウギクとの違いでもあります。
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当サイトでノジギクと称するものは姫路地区のものと比較すると形態が少し違うのでノジギクではないのではないか
という見解を述べる方々がおられます。
この点に関しては下記のことを認識していただく必要があります。
神戸地区と播州姫路地区のノジギクの違いについて
両地区のものは次の理由で形態に微妙な違いがあります。
<播州姫路地区のもの>
この地区は瀬戸内海に面しており 生育するのはノジギクのうちでも瀬戸内海沿岸部の固有のものとされる ”セトノジギク”です。
<神戸六甲地区のもの>
舞子付近を境にして神戸地区は大阪湾に面し太平洋につながります。 生育するのは大半が ”一般的なノジギクないしその神戸六甲形の
変種” とみなすのが妥当です。
(
以上のように同じノジギクとよばれても別系統のもので 形態が若干違うのは当然なのです。
特に葉の形態にはかなりな違いがあります。
特に姫路のセトノジギクは3裂5裂する葉(鋸葉)が尖り気味です。 神戸の野路菊は葉が3裂5裂するのは同じでも周辺が尖らずに
丸みをおびているのが主体です。
また花(頭花)やその下の総苞と呼ばれる部分にも少し違いがあるはずです。
(ただし神戸のものはセトノジギクの神戸六甲形変種である可能性も考えられます)
上記のように播州姫路地区のものを標準として当サイトで見出したものをノジギクではない とするのは正しい見解ではありません。
当サイトでノジギクとよんでいるものは 「総ての面でノジギクの特徴をそなえている」 ことを十分に観察したものです。
また
明らかに遠方から移植されたと見えるもの
人家や施設の庭で栽培されているもの
イエギク等と交雑した疑いのあるもの
については記載していません。
<補1>
ノジギクは近縁種のリュウノウギクにくらべても寒さに弱い野菊です。 六甲山及び六甲山系では 400メートル以上の高所では気温が低いため生育の可能性はほとんどありません。
また 森林の中では日光が届かないため生育しません.。
ですから六甲山系南面でも 高度の低いふもとあたり(神戸市灘区東灘区)を中心に 開花期にノジギクに特化して調査すれば少なからず見つかるのではないでしょうか。
尤も そうした地域は住宅地として開発しつくされ 小さな私有地が入り組み またほとんどがコンクリート張りであるなど 探索は難儀するのが実情ですが・・・。
六甲山上など高所で白い野菊が見つかっても 近縁種のリュウノウギク や葉の形状の違う イナカギクやシロヨメナ で
ノジギクではありません。
ノジギクではありませんが・・・
新発見の神戸固有種??
市内の或る川の河口部で神戸には存在しないはずの野菊がみつかりました。
高知県と和歌山県の一部の南岸に自生する ”シオギク” という野菊に酷似しておりその近縁とみられます。
しかしシオギクが筒状花 (真中の黄色い部分)だけで形成されているのに対して、 神戸で発見されたものは写真のように外側に花びら(正しくは舌状花)
を持っているのです。
つまり他の自生地にない独特な形態をしており 状況からみて他地域から移植されたものとは思えません。 シオギクと酷似して
いることからその仲間に違いなく 外来種ではありえません。
神戸の海岸部のみに誰にも気ずかれないまま昔から自生していたものの生き残りのように見えます。 花径2ー2.5センチ程と小ぶりですが
なかなか美しい野菊です。
神戸市の南岸はほぼ100パーセントはコンクリートその他で人工化されてしまっており、 奇跡的に残った狭い土地にかろうじて少数が
生き残ったと考えるのが妥当と思われます。 野草など生態系に関心が薄かった時代に神戸市南岸部の土地が人工化され 古い植生が壊滅し誰にも
気ずかれないままだったのではないでしょうか。
もし太古から自生していたのに誰も気ずかなったものが今回発見されたとするととても貴重です。
和歌山県に存在するキノクニシオギクは 高知県のシオギクの変種とみられ 染色体数は共に72であるところから 神戸で発見のものも同じと考えられ
るので ”シオギクの神戸型変種” と見なすべきでしょうか。 ないしは ”新種” の可能性もあります。
いずれにしろ神戸固有種として貴重です。
とりあえず コウベシオギク と仮の和名をつけておきます。
より詳しい関連サイトを作成しています。
→ <ここをクリックしてください>
この野菊に関してご興味やご見解のある方はこ連絡をお待ちします。
当サイト 「イラスト工房ユニ」のノジギク関連ページ
ノジギク探索メモ
(筆者のメモ用)
北六甲ノジギク探索記
ノジギクとは? ノジギクの育て方
ノジギクと兵庫県
多聞寺
有馬温泉
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