メタモルフォーゼ

(39) 「バイバイ、男の子の僕」

「大体さー、ゆり先生達が悪いんだよー!純の事ひた隠しにしてさー。それに隠すなら隠し通せばいいものをさ、ぽろっと時折喋ったりしてさ…」
「ふーん、結構どじな所有るんだよね、とく特に美咲先生なんてさ。ライ先生とか、アメリカから時々来る砂教授とかにいろいろ聞かされたし」
「えー、ちょっと教えてよ!」
 あれから僅か三0分くらい後、僕と純ちゃんは、なんと道玄坂の某ホテルのベッドの上でくつろいでいたる。あんまりにも疲れたので、軽い気持ちで純ちゃんが僕に休んでいこうって言って、僕が同意した結果の事だった。
「アメリカの砂教授のゼミでサマーキャンプが有ってさ、美咲先生が日を間違えて一日先に現地に到着してね、しかも時間まで間違えて、当然誰もいないからあわてちゃって、それではぐれたと思ってまる一日そこで、夜もそのまま野宿しちゃったらしいの。誰か助けに来てくれるって思ったらしくって。電話もないキャンプ場でね。翌日の朝、みんながそこに着いたとき、美咲先生わあわあ泣き叫んで午前中一杯大変だったらしいよ」
「ふーん、そのまま家に帰ればいいのにさ」
「あっちは日本の感覚は通じないよ。気づいた時には帰りのバスももう無かったし。それに楽しみにしてたみたいでさ、みんなと合流できなくて、キャンプに参加できない事が嫌だったみたいよ。それとさ…」
 大きなダブルベッドにそのまま寝転び、他愛のない話してすごす僕達だった。
「おもしろーい。ねえ、美咲先生に携帯で確認していい?」
 僕は冗談でポーチから携帯電話を取り出し、純ちゃんの前で電話をかけるふりをする。
「だめよ!絶対口止めされてたんだから」
「えへへ、電話しちゃお」
「ゆっこ!ちょっと!!」
 ベッドの上に座っている僕から携帯を取上げようと、純ちゃんが背後から僕を襲う。
「ゆっこ!やめなって…」
 そしてその時、携帯を取上げようとする純ちゃんの両手が僕の胸に当たった。
「ゆっこぉ、やめようよ…」
 元々後ろから僕の胸を触るのが好きだった純ちゃん。その懐かしい感触がブラ越しに僕の胸に伝わってくる。そして前よりちょっぴり力強くなった感じ。
「う…うん、冗談だよ…」
 僕がそう言っても純ちゃんの手は僕の胸から離れなかった。むしろ指に力が入ってくるみたい。
「純ちゃん…やめようよ。休んでいくだけの約束でしょ…」
 純ちゃんは何も言わず、今度は僕の首筋に軽くキスまでし始める。
「ね、ねえ、純…その…」
「ゆっこ、胸大きくなったよね。それにすごくいい香りがする」
「ね、ね、純、純!ちょっと…あ…」
 純ちゃんにブラの乳首の所を指で襲われ、思わずのけぞってしまう僕。大好きな男の人に後ろから胸と首筋を攻められると、女の子なら誰だってもう観念しちゃうんじゃないだろうか。
「だめ、純、明日学校…」
「明日は文化の日じゃん…」
「そうだったっけ…」
半分男の子だった昔ならある程度抵抗できたのに、今の僕はもう抵抗できなかった。気持ちよければそれでいい。ゆり先生に怒られてもいい。純ちゃんと今こうしているだけで、僕…。
僕は首を横にして、首にキスを続ける純ちゃんの顔を手でそっと上げ、彼のほおにキスをすると、その唇に純ちゃんも口付け始めた。
甘くて、そしてとっても長いキス。気が付くと僕はベッドの上に仰向けに寝かされ、その上で純ちゃんが僕の顔をじっと見つめてる。
「ゆっこ、愛してる」
「あたしも…」
 純ちゃんのジーンズの股間にあつし熱くて硬いものを感じる僕。純ちゃん、もうここまで男の子に戻ったんだ…。
(僕、いよいよ処女失うのかな)
「いいなあ、ゆっこの胸、羨ましい」
 そういうと、純ちゃんは僕のスーツのボタンを外して、キャミソールを上げてプラの上から胸にほお擦りし始める。
(純もこうなるはずだったんだよね)
 そんな純をいとおしく思い、僕は純の背中をしっかり抱きしめてあげた。

 暫くすると、僕はショーツとブラ。純ちゃんはトランクスだけでベッドの上に重なり合っていた。気になってた純ちゃんの胸は、一時女性化のせいか、男の子にしては少し乳首がおおきかったけど、胸の膨らみはすっかり消えていた。しかも厚い胸板が出来始め、お腹には腹筋がついてる。
「ゆっこ、覚悟できた?」
「覚悟って何…よ」
「決まってるじゃん…大丈夫よ、僕まだ精子作れない体だし!」
 そういうと僕の真っ白なショーツに手を当てる純ちゃん。だんだん僕の口からはあえぎ声が出始める。オンナになってから、僕自身そんなに観察してない僕の女性自身。
「やっ、いや…」
ショーツが脱がされ、僕の出来たばかりの女の子の秘部に純ちゃんの舌が転がり込んでいく。
「や、やだ…」
 純ちゃんの両手は見事に膨らんだ僕の胸をまさぐり、指先はころころした僕の乳首を優しく触り始める。
(あ…僕、もうどうなってもいい…)
 全身電気が走るような感じだけど、それがすごく気持ちいい。出来上がって間もない秘密の割れ目の中からじわっと何かの液体がにじみ出で行くのを感じる。それって、女の子の体が男の子のあれを受け入れる準備が出来たって合図だってゆり先生が教えてくれたっけ。
「純、ふいたげるね」
 ふと顔を上げた純ちゃんの口元を、僕は軽く手でふいてあげた。
「ゆっこ、じゃ行くね」
「う…うん」
 その言葉に僕の心臓の鼓動は早くなり、顔は恥ずかしさでほてっていく。ちらつっと見えた純ちゃんの男性自身は、僕が男の子の時に付いてたものより少し小さかったけど、ちゃんと大きくそして硬くなっていた。
 そして再び純ちゃんの口が僕の口に触れる。僕が舌を入れようとしたその瞬間、
「いたあああああい!」
  僕に出来た秘密の割れ目の中でまるで火傷でもしたかの様な激しい痛みが走る。
「痛い!痛いったら!純!」
 不思議な事にその痛みは一瞬で済んでしまった。そしてその後、
「!?」
 痛みが続くかと思ったその瞬間、僕の口から何かひとりでに声が出る感じがした。しかもその声って!
「純!ちょっと、ちょっと待って、ちょっとやめて!」
 僕は耐えられなくなって、腰を動かそうとしていた純ちゃんをストップさせた。
「え、どうしたのよ、何かあったの?」
 びっくりしてその場で動きを止める純ちゃん。
「ちょっと待ってよ。ねえ、どうしよう…」
「だからどうしたの?具合でも悪いの?」
「ねえ、どうしよう!どうしよう…」
 僕の言葉にとうとう純ちゃんが少し怒り出した。
「どうしようだけじゃわかんないでしょ!?痛いの??」
 僕は純ちゃんの目をじっと見つめる。
「変な声が出ちゃうの…」
「はぁ?」
「あのね純、なんだかいやらしい声が出ちゃうの。恥ずかしいくらい…」
 それを聞いていた純ちゃんは一瞬あっけに取られた顔をする。
「あのねゆっこ、女の子になったんだから当然じゃん。もう、そんな馬鹿な事言うんだったら思いっきりしてあげるっ!」
「純!ちょっと待って…、あっあっ…」
 僕をいじめるかのごとく、純ちゃんは猛然と腰を動かし始めた。そしてその動きにつられる様に僕の口から、いつかエッチビデオを見た時の女の子と同じ声がひとりでに僕の口から漏れていく。それはやわらかくなったお腹の底から絞り出るかの様、そしてその声は僕が普段話している女声よりも二オクターブ位高い声。
 やがて全身がじーんとした快感に襲われ、僕はもう何もする事ができなかった。それってどう表現したらいいんだろ。こんな気持ちいい事、僕今まで経験した事無い。強いて言うなら昔鉄棒で遊んでいた時、下腹部に鉄棒を当ててそのままじっとしてると何だかとっても気持ちよくて、そのままの姿勢でじっとしていた事有ったんだけど、今経験してるそれって、少なくてもそれの十倍、いやひょっとしたら百倍も気持ちいいかも!?
「あん、あん、あん、あ…あ…」
 更に可愛い声に変わっていく僕のよがり声。
「あ…ゆっこ可愛い…、もっといじめちゃお」
「純…ちゃん、やだ、やめて、あーーっ…」
 次第に僕のあそこが熱くなって、そして頭の中が次第にまっ白になっていく。
「純、いい…とっても気持ちいい、もっと強くして…」
 僕は覆いかぶさっている純ちゃんの背中にまわしている手に力を入れ、少し爪を立て始めた。僕の頭の中からだんだん何かが消えていく。多分残っていた男の子の記憶の何かかもしれない。
もはや硬くなりつつある純ちゃんの肉体。それを優しく包み込む僕の白くて柔らかな女性化した肉体。純ちゃんが体を動かすたびに、僕の柔らかくなった脂肪は純ちゃんの固い体の隙間隙間に入り込み、大きくなった僕の胸は、そんな純ちゃんの体をクッションの様に支えてる。
(僕と純ちゃん、ひとつになってる…)
 あいかわらず僕の口から漏れる可愛いよがり声。そしてますます敏感になっていく僕の全身の性感帯とそして股間の大事な部分。
(あ…僕…まるで…体を…作り変えられていくみたい)
ねえ!これいつまで続くの!?
(あん、僕、頭が変になりそう、ううん、いい、変になってもいい!)
ううん、終わって欲しくない!ずーっと続いて欲しい。
(僕、僕…・じゃなくなるんだ…)
 信じられない!!この世の中に!こんなに気持ちいい事が有るなんて…。
(僕、僕じゃなくって…僕じゃなくって…僕じゃ…)
 目には涙がたまり、そして口からは恥ずかしいけどよだれが出てきちゃう。純ちゃんの一回一回の動きがよくわかるし、その一回ごとに僕のどこかが変わっていくみたい。
(僕じゃなくって…あ…あ…僕じゃなくなるー…)
 あれ、どうしたんだろ、何だか体が軽くなっていく…。
(僕じゃなくって、あ…あ…たし、あたし!)
幸子(幸男)初エッチ/月夜眠
幸子(幸男)初エッチ / 月夜眠


 その瞬間、僕の頭には何か電気ショックみたいなのが走り、暫くの間それがジーンと体のあちこちを走って行く。そして、そして
(僕…あたしになっていく…)
あ、あたし、あたし!あたしよ!あたしなんだ…、あたし!
(あ、あたし、あたしどうしよう!わあ!空飛んでるみたい!)
 暫く空を飛んでいるみたいだったあたしの体、とその瞬間にまッ逆さまに急降下していく感覚に変わる。
(あん、やだ!やだー!落ちる!落ちる!!!)
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
 あたしの口から突然かん高い叫び声が上がり、全身の力が抜けてしまう。その時、丁度フィニッシュした純ちゃんもあたしの悲鳴にちょっと驚いたみたい。
「ゆっこ?ゆっこどうしたの??」
 問いかける純ちゃんに、あたしはうつろな目を向けた。そして、涙とよだれでぐしゃぐしゃになった顔で笑う。
「今ね、あたしの体から、男の子が出て行って、そしてどっかいっちゃったの…」
 あたしの言葉に、ちょっと変な顔する純ちゃん。
「ゆっこ、すごく良かったしさ、可愛かった。あ…これ」
「あ…」
 あたしの太ももに真っ赤な血が所々に付いてる。処女じゃなくなっちゃった…女の子になって間もないあたしなのに、もう大人のオンナになっちゃった。多分あの激痛が走ったとき破られたと思うんだけど、すっごく痛かった。
「ね、お風呂はいろっか?」
「うん」
 純が先に起き上がってあたしを引き起こしてくれて、そしてあたしたち二人は部屋のバスルームに入っていった。

 純ちゃんより先にバスルームを出たあたしは、備え付けのバスタオルを胸にまいて、ベッドの端に座り、髪の毛をタオルで乾かし始めたる。ふと横を見るとそんなあたしが部屋の鏡に映ってるいた。そこにいるのは、今しがた女の子から女になった一人の元男の子。
 無事女になったのがちょっと嬉しくて、あたしは立ち上がって、今の自分の体を見ようと鏡の前に立ち、そしてバスタオルを外す。
そこに映る綺麗な女性の体になったあたし。ゆり先生の話だと、もう少しヒップは大きくなるけど、バストとかウェストは多分ここで変化は打ち止めらしい。更に鏡に近寄って、女になった自分の顔をじっと見つめた時、
(あれ…なんか前と違って、顔の影というか隅みたいなのが取れたみたい)
 その時、ゆり先生があたしに言ってくれた言葉をちょっと思い出しちゃった。
(女の子はね、エッチするごとに綺麗になっていくの)
 丁度その時、バスルームから純ちゃんが頭を拭きながら出てくる。
「ゆっこ、そろそろ寝ようよ。さっき電話で宿泊に変えたし」
 あたしはちょっと目を輝かせて、純ちゃんに駆け寄った。
「宿泊にしたんでしょ?じゃさ、も一回しよ?」
「え!?」
「いいじゃん!明日休みなんだし、ね、も一回しよーよ…」
 そう喋って、あたしは自分の声がさっきよりも一オクターブ以上高くなってるのに気がついた。さっきエッチの時に出した声まではいかないけど、その時の声とエッチする前の中間位の声の高さ。でもこの声、なんだか可愛い!アニメの声優さんみたい!あたしこの声好きになっちゃった。
 あたしは純ちゃんの手を取ってだだをこねる様に軽くふりまわし、そして裸のまま純ちゃんに飛びつき、そしてベッドの上に倒れこんじゃった。
「ね、ゆっこ、どうしたの?それにその声、エッチする前と何だか人が変わったみたい」
「いいじゃん…今日あたし女になった記念の日だし」
 おねだりの目線を純ちゃんに向け、ちょっと甘い声と仕草で純ちゃんを誘い、軽く唇にキスするあたし。すると、しかたないなーって感じでOKサインを目で出してくれる純ちゃん。
「わーー!やったーっ!純!純ちゃん!好き!だーーい好きっ!」
 あの空中飛行とジェットコースターがもう一回体験できるんだ。
    
 そしてその日からあたしにとって夢の様な生活が始まった。映画撮影後の休暇を日本でとる事にした純ちゃんと、恋人になったあたしは、再び早乙女クリニックの屋根の下で暮らす事になったんだ。
 みけちゃん達との遊ぶ約束の無い時は、学校から帰ると純ちゃんをデートに誘った。そして夜は時々一緒に寝たり、そして時々…。
 ゆり先生もそんなあたしたちを大目にみてくれた。デートとか多少のエッチは、純ちゃんは男に、そしてあたしは女に成長していく上で必要な事だって認めてくれてるみたいだった。
 只、ゆり先生や美咲先生は、あたし達のそんな事よりもっと気がかりになる事が有った。雅美ちゃん達四人の卒業課題の事。ここまで来たら、もう絶対あの四人を落第させられないというのがゆり先生の気持ちだった。
土日になると、時間の有る子は、あたしやともこちゃん、そしてまいちゃん、そして真琴ちゃんや陽子ちゃんまで伊豆の別荘まで手伝いに行かされる。その中で、真琴ちゃんだけにはいろいろ教えてもらいたくないあきちゃんと、あきちゃんを何とか言うとおりにさせようとする真琴ちゃんの掛け合いがとても面白かった。
土曜日お手伝いした夜は必ず純ちゃんがあたしを迎えに来てくれて、二人で手をつないで早乙女クリニックへの帰途につく。そんな二人の後姿をゆり先生と美咲先生が伊豆の別荘の門の所でいつまでも見送ってくれていた。
ある時、そこでふとゆり先生が羨ましそうにつぶやいてたらしい。
「いいわねえ、若いってさ。女の子にしてあげたあの子がさ、あたしより先に彼氏作ってさ、そして近いうちに一緒になっちゃうのかもねー。あたしとミサなんて若いとき勉強ばっかりで、今も仕事ばっかりでさ、彼氏作る暇も無いもんね」
 遠くの海に落ちる夕焼けを見ながらそう独り言を言うゆり先生の横で、何故か美咲先生がちょっとそわそわしてる。
「ねえ、ゆり…」
 そんな美咲先生を見て、ゆり先生がにっこり微笑む。
「いいのよ。純は多分成功するでしょうよ。あの四人が卒業したら今度は女の子を男の子にする研究でしょ?あたしに気兼ねせずいってらっしゃいよ。あんた可愛い男の子好きだったもんねー。いいわよ、日本の方はあたしと結城先生でなんとかやっていくからさ」
 そういってゆり先生は美咲先生の両肩を両腕でぽんと叩く。
「来年の春だったわよね、あんたがアメリカへ行くの。それまでは宜しくね」
 そう言ってゆり先生は寂しそうにくるつっと後ろを向いて別荘の中へ歩き出した。その後ろで美咲先生が、他にも何か言いたげな様子でじっとゆり先生を見つめていた事を、ゆり先生は知るよしもなかったらしい。

 エッチすると女の子は変わる。それは気分的精神的なものではなく、本当に体も変わるんだって事、あたしは純ちゃんとエッチしてから本当にわかったの。
 変身初期はあんなに嫌だった男の人との性体験。それが今はもう、時々だけどすごくしてほしくなっている自分。時々一人遊びする時だって、以前はAV女優さんを真似たりしてたんだけど、今は違う。はっきり相手を意識して、相手に可愛く思われる様に、もう一回してもらえる様に、時には演技も交えての練習みたいになっちゃった。
純ちゃんとの始めてのエッチから一ヶ月の間に、あたしは女の子からオンナに劇的に変化。そんな自分が嬉しくて、そして少し怖くもあった。
 長くボリュームが出てきたまつ毛。常にうるみ始めた目、頬はうっすらピンクがかかる。さらさらになって艶の出てきた髪と、きらきらと輝く様になった産毛。唇にも艶が出て更に厚ぼったく、そして更に柔らかく、そしてその口元は巷でいう可愛いあひる口に変化し、常に開き気味になっていく。更に真っ白になっていく体の匂いは、処女の甘い香りからフルーツの様なかぐわしい香りになり、手の指からは余計な肉と脂肪が取れ、白魚の様に綺麗になっていく。骨盤はようやく成長と変形が止まり、つんと上向きのヒップが完成。そして胸は時々純ちゃんにマッサージというか触られているせいか、更に柔らかさを増して、乳首もつんと上向きの理想的な形に変形しちゃった。
 声はもう元に戻らなかった。今までよりも一オクターブも上がってしまった声に、不思議に思ったクラスメートは大勢いる。
椅子とかに据わるときは、両膝をちゃんと揃える様になったし、普段の行動とか仕草はだんだん女の子のそれから、知らず知らずのうちに大人の女性の仕草に変わっていったみたい。
毎日付ける下着とか私服も、いつのまにか子供っぼいのは避ける様になり、派手ではない大人びた、それでいてデザインのいい物を好んで着る様になってしまう。
一番感じたのはお腹とヒップと太ももが完全にオンナになった事による変化だった。
体の中心部分は、男の子はどちらかちといえば胸の方だけど、女の子は下半身が全ての動きの中心になるの。女の子ってすごいボリュームの有る下半身に、華奢な上半身が乗っているんだってこと、
あたし変身してようやくわかったの。歩くだけでヒップがぷるぷる揺れるし、胸とお尻がオンナになった今、とっても重いし、ブラ面倒だし。
手の長さなんて男と同じなんだけど、女の子は上半身と肩幅がそんなに成長しないから、見た目どうしても手が長く、そしてそれが女らしく見える原因の一つなの。あたしも、成長途中で肩幅と上半身の発育を止められ、そして骨盤を異常発達させられたから…ね。女と同じ形になっちゃったの。
それに女の子はずっと自分自身と、赤ちゃんを育てるお腹を守るっていう母性本能に絶えず支配されている。それは子宮移植されてしばらくしてから自分にも宿ったのがわかるんだ。
絶対危ない事しない。女の子達とはいつも仲良く共同作業。男の子に認められる為にいつも綺麗で可愛く。そして力が無いから、ずる賢く。そういった事をベースにした女の子の基本的な動作が、エッチして大人の女になってから顕著にあたしの行動に現れてきたの。まあそれが、女らしい行動と考え方、なんだけど。

 男の子に戻りつつある純ちゃんとあたしが、同じ一つ屋根の下で暮らしている事は秘密にしておきたかったんだけど、そうはうまくいかなかった。河合さんの店でバイトしている真琴ちゃんが、どうやらうっかりますみちゃんに喋ってしまったらしい。
早々と処女を失ってから、自分でも体と心の変化がはっきりわかるのに、それを生まれつきの女の子のみけちゃん達が気づかないはずがない。なんか最近他のクラスメートの女の子の様子が自分を遠巻きにしてるみたいで、変な感じだったし、体育の着替えの時も、以前のあたしらしくない、シンプルだけど大人びたデザインのブラとショーツの組み合わせを智美ちゃんとかから指摘されたしね。もっともそんな女の子ってあたしだけじゃないんだけど。多分クラスの女の子の一割はもう彼氏と経験済みだと思う。

とうとうある日の放課後、あたしはみけちゃん達に校舎の屋上に呼び出されてしまう事になった。
「ねえ、ゆっこー」
 なんか普段と違う怒った様子のみけちゃんが口を開く。その横のますみちゃんとか智美ちゃんもちょっと複雑な顔をしてる。暫く沈黙が続いた。
「ゆっこ、あんた、誰かとエッチしたでしょ?」
「相手って、まさか男に戻ったっていう純さん?」
 みけちゃんに続き、智美ちゃんも怒った様にあたしに詰め寄る。別にあたし何もみんなに悪い事してないのに。でも、いつかゆり先生が言ってた。女の子って、時々変な事で怒ったりするって。あたしも今は女だけど、いずれそういうことする日が来るのかな、なんて思ったりしたけど、ここは素直に返事しておこうと思う。
「したよ。相手は、純ちゃん…」
「ほらやっぱり!!」
 みけちゃんが髪をかきあげで怒った風に言う。
「なんで!なんでなの!?元々女のあたし達より、なんで途中で女になったあんたの方が先に彼氏が出来て、そしてエッチまで出来るの!?」
(なんでそんな事いうのよ。それにみけちゃん、智美ちゃん、そしてますみだってそうだけど、みんな人気度高いんだから、すぐに彼氏作れるのにさ、あんた達の理想が高いだけじゃん)
 と思ったけど、あえてあたしは言わないでおいた。
 とみけちゃんの顔が急に優しくなる。
「という文句を一言あんたに言いたかっただけ!わかった!?」
 思いがけないみけちゃんの言葉にあたしはちょっと救われた気分になった。
「ゆっこ知ってる?他にエッチした女の子いっぱいいるんだよ。例えば○○ちゃんとか、××ちゃんとかさ…」
 そして屋上ではあたしたち四人の秘密のおしゃべりがしばらく続く。男の子の時には気が付かなかったけど、女の子ってこういう秘密話とか噂話、ときにはすごくやばい話、しょっちゅういろいろなところでやってるんだよ。
「ねえ、ゆっこさ、純さんとのエッチってどんな感じだったの?」
 いきなりすごい事を聞いてくるみけちゃんに、あたしはぎくっとして、彼女の顔を見た。
「だってあたしたちの中でゆっこだけだもん。エッチの経験あるのってさ」
「ねえ、教えてくだしゃいよ!あちきだって女だしさ!」
「ゆっこ、教えてくれたら許してあげる!」
 そういって意地悪そうに腕を組んでぼくあたしを睨む様にするみけちゃん。なんであたしが許すの許されないの言われなきゃならないのか良くわかんなかったけど、多分あたしがエッチしたって事で彼女のオンナとしてのプライドが多少なりとも傷ついたのかもね。
 むきになってんだ、みけちゃん。可愛いわね、まだあれ知らない娘って!

 まだ子供のみんなに、あたしは純ちゃんとのエッチの事いろいろ話し出した。痛かった事、気持ちよかった時の事、純ちゃんをを愛してるって思ったときの事。純ちゃんが側にいない時の寂しさ、その他いろいろね。そして一番変わったのは、自分自身の一人称が、僕からあたしになったって事!
あーおかしい!今やオンナとしてはあたしの方が三人より先輩になっちゃったなんて!。目を丸くして聞いてる三人に、あたしは昔男の子だった経験から、男の子って女の子をどういう時どういう風に見ているかって事、サービスでいろいろ教えてあげた。
 しかし、もうそれは容易な事ではなかった。あたしの頭からは多分日にいくつかの割合で男の子だった時の記憶が確実に消えている。いつかすっかり忘れてしまう日が来るだろう。そうなる前に少なくともこの三人のお友達には教えといてあげる。もはや貴重になっちゃったあたしの男の子時代の思い出を。

 純ちゃん出演の次の映画のクランクインが来年早々に決まったらしい。クリスマス過ぎにはもう日本を出発しないといけないんだって。
 瞬く間に来ちゃったクリスマスイブの夜。あたしと純は、人でごった返す渋谷の街を二人で歩いている。どこもかしこもカップルばっかり。みんな幸せそう。中には喧嘩しているカップルもいたけど、仲いいから喧嘩するんだよね。
あたしにとっては、こういう特別な日も、美味しいケーキも、ウインドウショッピングもいらない。只、純ちゃんが側にいればいいんだ。また暫く会えない日が続くらしいけど。
(でももう寂しくないよ。純ちゃんお仕事だもんね。長い苦労の末にやっと手に入れた華やかなお仕事。今度は何にでも変装できる香港のスパイの役なんだって?がんばってね、純!)
 色とりどりのイルミネーションの中で、あたしは純ちゃんの腕にしっかりしがみつく様にして、クリスマスイブの夜を楽しんだ。ふと純ちゃんの足が人気のまばらな住宅街の方へ進む。
(え、どこ行くんだろ?こっちって店とかあんまり無いよね?ホテル…とかも無いみたいだし)
 僕が黙って純ちゃんについていくと、純ちゃんの足は住宅街の中の小さな教会の前で止まる。備え付けのスピーカーからは、オーケストラの演奏するクリスマスソングが小さく聞こえていた。日本人はあんまりクリスマスにお祈りする慣習がないのか、カップルが二組、神殿の前で何か話していたけど、すぐにどこかに消えていく。誰もいなくなったその教会の中へ、あたしを外に残してすっと入っていく純ちゃん。あたしもすぐに後を追った。
「ねえ、純…」
 あたしの言葉も聞こえていない様子。
(あれ、純ちゃんてキリスト教徒だったっけ?)
神殿の前の小さな机の前に座ると、純ちゃんは手を組み、そして何かをお祈りしている様子。あたしも横でちょっと真似をしてみた。
 純ちゃんのお祈りってなかなか終らない。
「ねえ、まだ?」
 とあたしが純ちゃんの方を見た時、
「!?」
 彼の目から一筋の涙がつーっと頬を伝わり、そして小さなテーブルの上に落ちた。女の子時代、あんなにいたずら好きで、小悪魔のようで、そしてスカートを翻してチーマー達をやっつけてくれたあの純ちゃんが…
(え、何?ここで何が有ったの!?)
 あたしは只呆然と純ちゃんの横顔を眺めているだけだった。
 やがてすっと純ちゃんは立ち上がって、あたしをその場に残し、教会の外へ出て行く。
「純!待ってよ!」
 なんか男の子に戻りはじめてからの純ちゃんて、何だか昔と違って別人みたい。あんまり話さなくなったし、それにちょっと冷たくなってるし。
 再び駅への道を歩く純ちゃんとあたし。その上を小雪がぱらつきはじめた。
「純!雪降ってきたよ。急ごう!」
 あたしは純ちゃんの手を引いて道を急ぐ。いつしかあたりはあたしの見覚えのある風景に変わっていた。
(何が有ったのかしらないけど、今日の事は純ちゃんには聞かないでおこっと)
 暫く再び無言で歩く二人。と、突然今まで黙ってた純ちゃんが口を開いた。
「ゆっこ、あたし…いや、僕がゆり先生と美咲先生と初めて会ったのが、丁度四年前の今日なんだ」
「え?」
 あたしは突然の純ちゃんの言葉にちょっとびっくりして、彼に向き直る。
「あの日も、こうして祈った後、小雪が…、でもあたし、あんまり雪好きじゃない…」
 独り言の様につぶやく純ちゃん。あたしは、そんな純ちゃんに声をかけていいのかわからなかった。
「ま、そのうち、いつか話してあげるよ!ゆっこ」
 そういうと、いきなり純ちゃんはあたしのおでこを指でつつき、足早に駅のほうへ歩き始めた。
「もー、純!今日の純変だよ!」
 あたしはお母さんに買ってもらった真っ白なコートと、その下のミニスカートを翻し、クリスマスソングがあちこちで流れている渋谷の街中、純ちゃんの後を追った。

 次の日の夕方、車で純ちゃんを空港まで送り届けにいくゆり先生と、見送りに行くあたし。絶対泣かないでおこうと思ったのに、空港近くで飛行機が見えた時には、もうあたしは車の中でヒックヒックしていた。
「もう泣くなよ!ゆっこ!電話するし、手紙書くし!大丈夫だよ!ゆっこ以外好きになったりしないから!」
「純!絶対だよ!毎日電話ちょうだいよ!毎週手紙ちょうだいよ!」
 あんまりのあたしの言葉にゆり先生が運転しながら横槍を入れてきた。
「もうバカね!純だって忙しくなるし、第一国際電話なんていくらかかると思ってるのよ!あんまりバカ言って純を苦しめないの!」
「…わかった…」
「あはは、出来る限りの事はするから、ほらもう泣くな」
 そういってあたしの涙を指ですくってくれる純ちゃん。なんか男らしくなってきたね。
「うん、絶対ね、約束ね…」
 あたしは大切な彼氏の指をしっかりと両手で握る。

 空港で人目も気にせず、しっかりと抱き合ってあたしと長いキスをした後、純ちゃんは香港へ再び飛び立って行った。その飛行機が夜空に消えていっても、あたしはその方向をじっとみつめたまま、ただひたすら純ちゃんの事を祈り続けていた。
「ゆっこ、そろそろ行こう…」
 ゆり先生が促すけど、あたしはそこから一歩も動けなかった。と、突然!
「!!!!!!!」
  ゆり先生が何か訳のわからない呪文みたいな言葉を口にして、あたしの頭にポンと手をやった。
「な、何よ、今の…」
 あたしはぽかんとして、涙顔をゆり先生に向けたる。
「はーい!大事な彼氏が旅立って行ってしまった悲しみの思いは、たった今、再び帰ってくる大事な彼氏を待つ、憧れの思いにかわりましたーーー!」
 突然のゆり先生の行動に、あたしは言葉も出なかった。
「ほら、何か美味しいもの食べにいこっか?そういえば前伊豆で診察されたとき、あんた言ってたわよね?クリスマスディナーご馳走しろってさ」
「あーーー、忘れてたあ!」
 まるで魔女みたいなゆり先生の言葉の魔法にまんまと引っかかったあたしは、今度はゆり先生の手にぶら下がる様にして、空港のデッキを後にした。

 

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