メタモルフォーゼ

(33) 「元彼女との再会、雅代ちゃん、僕だよ…」

東京へ入ったバスは僕一人をある駅の前に降ろして、早乙女クリニックへ向かっていった。そうここは僕の実家の近くの駅。僕は久しぶりに実家へ行く事になってたんだ。

「ただいまーっ」
 可愛い女声になった僕の声がひっそりした家に響く。
「あれ、早いね。もう帰ってきたの?」
 台所仕事でもしてたんだろう。母がタオルで手を拭きながら玄関まで迎えに来てくれた。
「お父さんは?」
「出かけたよ。多分今日も明日もどこか旅行にでも行ってるって行ってたよ」
「・・・まだ僕の事許してくれてないの?」
「違うよ、まだ心の整理ついてないんだと思うし、娘になったあんたに会うのが恥ずかしいのよ」
「え、でもさ、僕」
 そういって僕は、そっと僕の下半身の変化の事を母に小声で耳打ちで話してしまう。誰もいないのはわかってるけど、やっぱり普通の声で喋るのは恥ずかしかった。
「ええ!?もうそんなに変わっちゃったの??」
「う、うん・・・」
 恥ずかしそうにうつむきながら、部屋へ上がる僕。
「はい、お母さん、伊豆のおみやげ」
 そう言って僕は伊豆の干物とかかまぼことかを母親に渡す。
「あれまあ、あんた男の時なんてこんな事してくれた事なかったわよね?」
「え、そうだっけ??」
 僕はそうごまかして自分の部屋に入っていった。
 男の子の物がほぼ処分されたがらんとした部屋の椅子に座った僕は、久しぶりの我が家の匂いを感じていた。前戻ってきた時とは違っている部分もある。多分僕のいない間にやってくれたんだろうか。カーペットは灰色からピンクに変わっていて、カーテンもブルーから可愛い白のレースが一杯付いたのに変えられていた。
(いつでも戻っておいで)
 この前戻ってきた時、帰る間際に母が言ってくれた言葉を思い出す僕。ちょっと胸がじーんとなる。ふと僕は残椅子に座りながら、他に処分する物が無かったかと机の引き出しの中を改め始め、その中に1冊の手帳を見つけた。
(あ、これ・・・)
 僕がまだ現役の男子高校生だった頃使ってた物だった。
(懐かしいなあ)
 ぺらぺらとめくりながら、書き込まれた事に対していろいろ回想する僕。と、僕は1つの電話番号を見つけた。
(こ、これって・・・)
 それは当時付き合って、Bまでいったクラスメートの雅代ちゃんの電話番号だった。
(懐かしい)
 それを見ながら昔のデートの事とか思い出していた僕は、何だか急に久しぶりに会いたい気がしてくる。
(だ、だめだよ、そんな。こんな姿になった今、きっと驚いて、そして嫌われちゃうし・・・もし他の女の子とかにばらされたら)
 でも押さえようとすればする程、もはや女の子そのものになった僕の思いは押さえが効かなくなってるのに気が付いた。
(ちょっとだけ、ちょっとだけなら・・・)
 僕は決心してポーチから携帯を取り出して、何回かためらった後、ええいって感じで3年ぶりに雅代ちゃんに電話した。
(電話番号変わってなけれゃいいけど)
 でも逆に変わっていて欲しいと思う気持ちもあった。もし変わってたら会わなくてもすむし。ところが暫く呼び出し音が続いた後、懐かしい可愛い声が聞こえてきた。
「もしもし、え?幸男・・・クン!?」
 雅代ちゃんは僕の事を覚えていてくれた。僕は昔の声を出そうと頑張るけど、もはや声帯まで変化した僕の口からは、低い女の子の声を出すのが精一杯だった。
「どうしたの?声変じゃん。えー、突然海外留学って聞いたけどさ、今帰ってきてるの?今どこ?家?」
 なるべく低い声を作り話す僕だけど、何とか今日これから久しぶりに会おうって話にした。携帯を切った後、僕はちょっと困った事になったと今更ながらに思う。大急ぎで母のいる居間に向かった。
「お母さん、あの、男の子の時の服って、まだある?」
「何言ってるの!もう着れないし、着る事無いって全部処分しちゃったじゃない。どうするのよ?どこへ行くつもり?」
 そう問いただす母に雅代ちゃんとの事を恐る恐る喋る僕。
「なんて子だろ、あんたって子は・・・」
 母は暫く顔に手をやっていたかと思うと急に笑顔で僕に向き合ってくれた。
「大丈夫、女でいってらっしゃい。お互い好きだったんでしょ?女になってもあんたはあんたよ。お母さんもそう思うし、雅代ちゃんもきっとわかってくれるわ。それに女って秘密めいた事結構好きなものよ」
「本当?」
「ええそうよ、女のあたしが言うんだから、間違いないわ」
「お母さん、ありがとう!!」
 僕は大急ぎで部屋に戻って、僕のかばんを探し始める。ところが、
「あ・・・、そうだった」
 かばんの中に残されていたまだ汚れていない服は、僕の気に入ってたあのジーンズのホットパンツとラメ入りのタンクトップだけだった。折角持っていったんだけど、いつ着ようかと迷ってたうちに結局着れなくなったのだった。
「いいや!これでいこっ」
 ゆり先生に破かれたワンピースの代わりに着て帰ってきた地味なベージュのスカートと黒のTシャツを脱ぎ捨てた僕のヒップは、ちょっとセクシーなホットパンツにくるまれ、大きくなった胸を包むブラが可愛いラメ入りのタンクトップで覆われていく。
(お母さん、なんて思うかなあ)
 そう重いながら、僕は顔を洗った後、化粧道具の入ったポーチを持って母のいる居間へ向かう。
「ちょつと、幸男・・・幸子!なんて格好してるの!?」
 その言葉に真っ赤になった僕。でもその言葉になんでもないってそぶりで僕は母の化粧台の前に座った。
「お母さん、ここ借りるね」
「もう、ほんとう、なんて子だろ。こんなにまで変わるなんて思わなかったわ」
 そういって母は部屋から出て行った。元男の子のわが子がちょっとセクシーな女の子の服を着て、自分の化粧台に座る姿にさすがの僕の母も耐えられなかったのかも。
(お母さん、ごめん)
 そういいながらも、僕は化粧水を手に取り、ファンデを塗り始め、化粧を始めた。やがて慣れた手付きでマスカラを引き、口紅をひき始めた時、母が何かを手に持って部屋に入ってきた。
「まったく、いつのまにか幸・・・子、ピアスの穴まで空けてるじゃないの。ほら、これ付けてみな」
 小さな箱から出てきたのは、目の覚める様な鮮やかな水色の小さなピアスだった。
「お母さん・・・」
 僕は絶句してそれを見つめる。
「あんまり可愛いから買ったんだけど、お母さんにはちょっと若すぎてね。あげるから付けていきな。白のその服には合うと思うけど」
「お母さん、ありがとう」
 僕は母の手をその小箱ごと握る。そんな僕のタンクトップに付いてるゴミとか、ホットパンツの形とかをいろいろ触って直してくれる母。そして、
「あんた、前より胸大きくなったんじゃない?」
「うん、今Dカップ近くなってる」
「えーっお母さんでもCだよ」
 そう言って僕の胸をつんつんとする母。
「まってな」
そうして今度は僕の頬に軽くチークを入れてくれる。
「夏だから、これくらいでいいかね」
 そして更に口紅の端を少し直して、眉墨で眉を綺麗に整え、髪を少しセットしなおしてくれる。鏡の前で母に化粧されたり、身だしなみとかを整えられていくのを見ていると、本当に僕この家の娘になったんだって実感が沸いてくる。
「やっぱりまだ幸子、化粧はまだまだだねぇ」
 そう言って楽しそうに笑う母。ようやく母と娘の関係になれて、とっても嬉しかった。
 待ち合わせに使ったのは以前も待ち合わせに良く利用した渋谷の喫茶店だった。とにかく暑い夏の昼下がり。小さなハンドバッグを手にホットパンツとタンクトップに透けたブラ。少し大きめな胸。時折化粧崩れを気にして、窓や鏡で自分の顔を覗く僕は、今時の女の子として夏の渋谷の街に完全に溶け込んでいた。
  いつもの喫茶店の一番奥の目立たない所と雅代ちゃんに指定した時、何か変に思われた感も有るけど、本当にそこに来てくれるかどうかが僕は不安だった。
「いらっしゃいませー」
 渋谷の街の中心から少し外れたとこにあるその喫茶店は、ホテル街に有るちょっと小奇麗な所で秘密話も出来る程客席の配置には気を利かせた所だった。どきどきしながら店の奥を覗くと、僕に向かって横向いた席に座っている雅代ちゃんがいた。オレンジのキュロットに白の可愛いブラウス。大きな目が特徴の可愛い顔にうっすらと化粧をして、ちょっと髪を伸ばして染めている他は3年前と全然変わってない。
「どうしよう・・・」
 さてその席に行こうとする僕の足はちょっとすくみ、心臓がどきどきした。普通の人にカムアウトするという怖さ、その後どうなるんだろうっていう恐怖。
「席をお探しですか?」
そんな僕をちょっと気にしている喫茶店のウェイトレスさんに軽く会釈した後、勇気を出して僕はその席に向かった。
「ここ、空いてますか?」
 いきなり自分の向かいの席に座ろうとする少女に雅代ちゃんが当然のごとくちょっとびっくりして僕の顔を睨む。
「あの、ここ人が来るんですけど」
 変な人っていう感じで僕の顔をじっと見つめる雅代ちゃん。
「ちょっといいかしら?」
僕は構わず席に腰を下ろして、ポーチを横に置く。
「あのっ、困るんですけど!」
 僕の顔をきっと睨みつける雅代ちゃん。とその時、
「雅代ちゃん、僕・・・僕だよ」
 思い切ってその言葉を口にする僕。雅代ちゃんのきっと怒った顔は、次第に何かを探る顔になっていく。そしてそれが数秒程凍った様に止まり、突然、
「!!!!!!!!!!」
 大きな目をかっと見開き、両手を口にやって、雅代ちゃんは息を大きく吸い込む様な異様な声を出す。
「幸男クン!!??」
 小さいけどはっきりした声で確認する雅代ちゃんの顔を、僕は目をそむけないように頑張って見つめ、そして片手で胸元に小さなVサインも添えた。雅代ちゃんはあたりを見回して自分達に注目してる人がいないか確かめた後、テーブル越しに僕に顔を近づけ、気遣って小さな声で僕に話し始める。
「どうしたのよ、その格好!女の子になっちゃったの!?胸有るじゃん!それパットなの!?女の子の名前って付いてるの??」
 あれこれ小声で話し出す雅代ちゃんだけど、ウェイトレスが近づいてくるのに気が付いた僕は一旦雅代ちゃんを制し、アイスコーヒーを頼んだ。
「飲み物が来るまで、ちょっと・・・ね」
 その間、雅代ちゃんは再び両手を口にやったり、天井や他の場所をそわそわした表情で見つめたり。程なくアイスコーヒーを持ち、僕がウェイトレスが遠ざかるのをじっと見つめていると、いきなり雅代ちゃんの指が僕の胸をつつく。
「ちょっと!それパットじゃないじゃん!女の胸じゃん!ねえ、どうなってるのよ!?」
 相変わらず小声で動揺を隠し切れない様子で喋る雅代ちゃん。
「僕ね、今、ゆきこって呼ばれてるんだ」
 そういって僕は傍らのポーチから僕の通ってる女の子の学生証を、まだ信じられないという表情で僕を見つめている彼女に手渡す。
「2年A組、堀幸子って、幸男クン、女で学校通ってるの!?体育とか、水泳とか、健康診断とかさ、更衣室とか、どうしてんの!?」
 雅代ちゃんは学生証の写真と僕を見比べる様にして相変わらず回りを気にして小声で話す。
「だから、僕もう普通の女の子で学校に行ってるのよ。もう卵巣とか子宮とか移植されちゃったし、あそこも女になってきてるし、胸もD近く有るしね。もうすぐ雅代ちゃんと同じ体になるんだ」
「そんな・・・嘘でしょ、有り得ないよそんな事」
「それが有るの。詳しくは言えないけどさ・・・」
 暫く別れてからの話をするうちに、雅代ちゃんもだんだん落ち着いてきた。
「なんかさー、女友達が1人増えたって感じがする」
 女の子への変身の具合を確かめる様に、細くしなやかで柔らかくなった僕の指を触りながら雅代ちゃんが言う。
「ありがと」
 僕はそんな雅代ちゃんの手を両手で軽く握って握手する様にして返事をした。もう手の感触はお互い殆ど差は無かった。
「ねえ、ちょっとデートしようか?久しぶりに歩かない?」
「あ、じゃおごったげるよ」
  雅代ちゃんの提案に僕は席を立った。レジでお勘定する僕は、後ろに雅代ちゃんの視線をじっと感じていた。
「ほんとだ、ヒップの丸みとか形とかさ、白い足とか普通の女の子と変わらないじゃん。本当に女になったんだー」
「だから、僕はもうほぼオンナなんだって」
 僕達は3年前を思い出して、久しぶりに渋谷の街を歩いた。結構2人も水準以上の可愛い女の子だったし、小指同士をからめて歩いたのでちょっと注目されていた。ウィンドシュッピングとかコスメの店とか、昔なじみの店を1件1件尋ねた。前と違ってたのは、以前は雅代ちゃんが服とか化粧品とか、自分に合わせていろいろ見ていたのに、今回は彼女はそれらを僕に合わせて、可愛いとか、これどう?とか薦めてくれる。
「最近出来たいい店が有るの」
 雅代ちゃんに連れられていったそこは、
「え!ここって」
 それは何と河合さんとともこちゃんと真琴ちゃんのあの店!でも当然ながら
(社員旅行の為本日臨時休業)
 の紙が張られていた。
「えー、残念だなあ。ここすごくセンスいいのに」
 がっかりする雅代ちゃん。何も知らないふりをする僕。
 次に行ったカラオケの店では、すっかりオンナで歌う事になれた僕が、振り付け付きで何曲か雅代ちゃんに披露する。それ見てはしゃいでる彼女を見て
(会ってよかった)
ようやく僕はほっとした。
長い夏の昼間だったけど、6時頃になってようやくあたりが暗くなりだした。渋谷の裏道を歩く僕達もちょっと疲れていた。
「じゃ、今日はこのへんで。また会ってくれるよね?」
黙ってうなず雅代ちゃんだけど、僕は彼女にすまない気持ちで一杯だった。女の子になる為に彼女に別れの言葉も無しにゆり先生の所に来て、それから連絡もしなかった。
「幸男クン・・・」
 雅代ちゃんがふと僕の前の名前を呼んだ。
「あたし、今日心の準備してきたんだよ。いきなりあたしの前からいなくなってさ、絶対どこかで元気にしてるって思ってたし、忘れられなかったんだ。まさか、まさか女の子になってるなんて思わなかったけどさ・・・」
 ふと僕は先ほどから雅代ちゃんに連れられる様にして歩いてる事に気が付く。今僕達がいるのは、以前純ちゃんが暴漢に襲われて逃げ惑っていたあのホテル街の近くだった。
 小指をからめていた雅代ちゃんの手が今度はしっかり僕の腕をからめてくる。
「雅代ちゃん、あの女同士でそれは・・・」
 既に僕の頭は女の子イコール同性というイメージが出来上がっていて、雅代ちゃんのこの行動はちょっと恥ずかしかった。ふとある小奇麗なホテルの前で雅代ちゃんは止まり、先へ行こうとする僕の手を無言で引き戻そうとしていた。
「雅代ちゃん、あの、僕・・・」
「幸男クン、あたしの3年間返してよ!あたしがどんな気持ちで待ってたかわかんないでしょ!」
「だって、あの、僕こんな所に入った事無いし・・・」
「こんな所に立ってると目立つでしょ!」
 雅代ちゃんは僕の手をさっと引いて、ホテルの中に入っていった。
 部屋に入ると、汗臭いにも関わらず、まず雅代ちゃんが僕にむしゃぶりつく様に抱きつき、そのままベッドに2人で倒れこんでしまう。
「寂しかったんだよ!とっても!」
 僕の上に乗った彼女はそう言って、僕のブラの谷間に顔をうずめた。
「あの、僕もう女の子だよ。同性で、嫌じゃないの?」
 男同士のこういう事なんて、僕は考えただけで嫌だった。でも女の子からみて女同士ってどうなんだろ?
「普通の女だったら嫌だよ、でもさ、幸男クンは幸男クンだもん。たとえ女になってもさ」
(お母さんの言った通りだった)
 僕の頭の中に母の言葉がよみがえって来た。
「ありがと」
 僕は軽く雅代ちゃんのひたいにキス。
 お互いの服を脱がしあい、互いのブラを可愛いと褒めあいながら外しあい、いつのまにか僕達ははしゃぎながら、ショーツ1枚になってベッドの上でじゃれあっていた。僕のはペパーミントブルーのコットンの可愛いレース付き。雅代ちゃんはレモンイエローのフリル付き。
「あたしより大きいじゃん!」
 僕の上になって僕の胸を触ってそう言った雅代ちゃんは、僕の可愛いつんとした乳首をペロペロとなめ始める。
「ちょっと、くすぐったい!」
 僕はそういって反撃のつもりで雅代ちゃんの胸を触りはじめた。
「あ、あん・・・」
 僕の乳首を舌でころがしながら、雅代ちゃんが気持ち良さそうな声を上げる。
(あ、懐かしい感触・・・)
 僕の女性化した指先には、以前と違って彼女のバストの部分部分の温度の違いとか、流れる血液とか、すごく細かい事が伝わってくる。
 でも以前と違う事が一つ。僕が以前じゃれあった時は、雅代ちゃんを自分の物にしてやるって感覚が頭に有った。でも今はもう違ってる。
可愛くて柔らかい雅代ちゃんを可愛がって、そして時々いじめちゃおっていう、何かお姉さんの妹に対する愛情に似た感覚になっていた。それにもう僕の下半身には雅代ちゃんを気持ちよくさせる物が無い。雅代ちゃんも僕がもう男の子としてのエッチが出来ないと確信してここに誘ったんだと思う。
(そのかわりの事をしてあげよう)
「雅代ちゃん、シャワーあびようか」
「う、うん」
 彼女はようやく僕の胸から口を外した。
 それから15分後、再びお互いショーツ1枚になった僕達。ベッドの上の雅代ちゃんに、僕はありったけのサービスをし始めた。
(ごめんね。長い間、寂しくさせて。ごめん)
 彼女の唇、胸、うなじ、脇、おなか、背中等、ほぼ女の子に変身した僕には、女の子の性感帯がどこにあって、どういう風にすれば気持ち良くなるのか、もう大体わかっていた。
「あん、幸男クン・・・」
 雅代ちゃんの口から漏れる可愛いあえぎ声が、だんだん大きく、そして色っぽくなっていく。そしてとうとう、
「ゆっこ、ねえゆっこ・・・」
 僕の今の名前を口にし始めた雅代ちゃん。その声に僕はちょっと切ない気持ちになる。
(僕、前は幸男だったんだっけ。今はゆっこ・・・女の子)
真っ白な彼女の体も所々紅がさし、満ち足りた顔で僕の髪を掴む雅代ちゃん。男の子だったらここで彼女の秘部に僕の男性自身をあてがおうとしたかも。そして男の子の場合はそれで一旦終わってしまう。
でも僕は今女の子。確かにいろいろ聞いてはいたものの、男の子の時とは違い長い間相手を愛撫してあげる事が出来る事に気が付く。そして頭の中ではとうとう、
(僕、愛してくれるなら、雅代ちゃんの様な柔らかい手じゃなくて、強くて、インパクトが有って、もっと思いっきり体を掴んでくれて・・・あ、なんて事考えてるんだろ僕)
  
殆ど1時間僕は雅代ちゃんを愛撫し続けると、彼女のレモンイエローのショーツはとうとうべっとり濡れていた。
(ごめんね。今の僕にもうあれが付いてなくて)
 僕はそっと彼女のショーツを脱がすと、そこに現れた女の子の大事な部分にそっと舌を当てようとしたけど、
(あ、あれ・・・)
 僕の頭の中で何かがそれを止める。なぜ?どうして?
(女同士何をやってるの?)
(女のそこって汚らわしい所でしょ)
 ちょっと聞いた事有るんだ。女にとって、他の女のその部分は、男の取り合いに必要な部分だから、女の子同士のそういう事は必然的に避ける様にオンナの脳にはプログラムされてるんだって。僕の頭の中にもそうれがもう出来上がってるのかも知れない。でもね、
(いいもん。僕今だけは男の子に戻る。多分、戻るのはこれが最後だと思うけど)
 そんな思いを振り切って僕がそこに舌をあてがうと、雅代ちゃんの声が一層色っぽくなっていく。僕の男性器が変化して出来たのと同じ物が彼女の割れ目の上にあり、僕は時間をかけてゆっくり、指で触って、そして舌で舐めてあげた。
「ゆっこ、ゆっこ・・・」
 雅代ちゃんの記憶からだんだん幸男が消えていくみたい。ちょっと寂しいけどさ、これでいいんだよね。
 たくさんそこを愛してあげた後、今度はその舌の花びらに舌をあてがった。そこの部分だけは、女の僕の体の中で唯一まだ出来上がってない所だった。
(僕にもいつか、こういうのが出来るんだ)
 そういいながら、その肉で出来た花びらの中に指を入れて、優しく動かしてあげる僕。そこまで彼女を愛撫しながらも、僕自身は全くむらむらとした事が起きないのが不思議。だからこそ奉仕の気持ちで彼女に長い間いろいろしてあげられるんだけど。
 唇で軽くはさんだり、指でくすぐってあげたり、なめてあげたり。時間がたつのを忘れて僕は雅代ちゃんに最後のサービスをしてあげた。
 どのくらい時間がたっただろう。急に雅代ちゃんの声がうわずり、腰を激しくうごかしたかと思うと、
「やーーーん!」
 彼女の叫び声とともに、まだそこを舐めてあげてる僕の顔に何か暖かい液体がかかるのが分かった。
(あ、これって、潮吹き??)
 女の子の体って本当に神秘的だと思う。と雅代ちゃんはベッドから起き上がると、僕の体に抱きつきすりすりし始めた。
「ゆっこ!ありがとう!」
 僕はそんな彼女の顔に手を当てて、最後に軽くキスをしてあげた。
「ゆっこ、ありがと。もういいわ、お礼に今度はあたしがやったげる!」
 ちょっとびっくりして僕は彼女の顔を見つめた。
「あ、あの。雅代ちゃん、僕のあそこってまだ完成してないから、見せるの嫌なんだけど。いいよ、本当にいいから」
「何よ!あたしを苛めっぱなしにするの!?」
 そういうと雅代ちゃんはイエローのショーツを元通りはいてキャッキャッとはしゃぎながら僕をベッドに押し倒す。そしてちょっと甘い声で僕に話しかけた。
「あのね、幸男クンはね、最後にあたしにいろいろプレゼントしてくれてさ、そして天国に行っちゃったの。あたしも幸男クンの事はきっぱり忘れて、新しい彼氏見つける」
 そういって僕の唇に吸い付く雅代ちゃん。
「え、だったらさ、もういいんじゃない?」
 時計はもう9時近くになっていた。もういい加減出ないと、延長になってしまう。と、雅代ちゃんは傍らの受話器を取り、フロントに電話し始める。
「あの、301ですけど、泊りにしたいんですけど」
「ちょっと、雅代ちゃん!」
「はい、わかりました。宜しく」
 勝手に休憩を泊りにして、黄色の可愛いパンツで包まれたヒップを振りながら再びベッドに来る雅代ちゃん。
「あたし、まだゆっこにお礼してないもん。ゆっこちゃん女の子になるんでしょ?あたしが今晩いろいろ教えてあげるよ!」
 もう雅代ちゃんの頭の中には幸男はいなかった。
「あ、あの・・・」
 そんな僕に雅代ちゃんは目を閉じて長々とキスをはじめ、僕の胸を愛撫し始めた。
「あ、ちょっと・・・」
 今度は僕がもてあそばれる番だった。彼女の冷たくて白い指先が、僕の全身を襲い始めた。流石に彼女も女の子。僕がさっき愛撫した所と同じ所を僕に対してさわり始める。あえぎ声を漏らしながら、僕はかちょっと変な気分になってくる。これって・・・
(もういい!レズったっていいもん!僕まだ完全な女じゃないしっ)
 ペパミントブルーのショーツだけの僕に、今度は雅代ちゃんがゆっくり時間かけて愛撫してくれる。特に僕の大きくなったバストを羨ましがる様に、時には自分の小ぶりのバストを押し付け、体を僕に押し付けたりもする。僕の顔もいつのまにかエッチな女の子の表情に変わっていた。僕は時々可愛い声を上げ、彼女の体を触ってあげる
 汗びっしょりになった時、とうとう彼女の手が僕のショーツにかかる。
「知らないよ、僕知らないよ・・・」
「なんで僕なんていうのよ、あたしって言わないと変だよー」
 とうとう僕からショーツが剥ぎ取られ、彼女の顔が僕の股間に近づく。恥ずかしくなって思わず両手で顔をおおう僕。
「ふーん、こんなになったんだ。クリがちょっと大きいけどさ、あとひらひらも無いけど、普通に女のあそこじゃん」
 あっけらかんと言う雅代ちゃん。と彼女の舌が僕の変化したばかりのありに触れた。その途端、
「きゃん!!!」
 僕は思わず声を上げのけぞった。それは全身にまるで電気が走ったかの様。
「あ、おもしろーい」
 再び彼女の舌攻撃が始まる。その一舐めごとに僕の体に走る高圧電流。自分の手で軽くしてたときはそんなでもなかったのに、滑らかな舌で攻撃されると、気持ちいいという感覚ではなくて責められている気分。
「だめ、だめ!やめて!僕のそこまだ女じゃないかも」
「えーーーっ」
 舌攻撃を止め、僕の顔をじっと見つめる雅代ちゃん。
「ねえ、本当にだめなの?」
「う、うん、だめ・・・」
 なーんだという表情で、彼女は僕を少し見下す様な表情を見せた。
「じゃあ、他の所にしてあげる」
 再び彼女は僕の胸にむしゃぶりつく。僕の口から再び可愛いあえぎ声が漏れた。
 その夜、ほぼ明け方近くまで、雅代ちゃんの僕に対するエッチの時の女の子教育が続いた。それはかなり前にゆり先生に手ほどきされたより数倍も濃くて丁寧。僕も楽しくてそして自分が更に女に変化していくのが嬉しくてたまらず、時間のたつのも忘れ、必死に彼女の真似をした。明け方になり、2人とも疲れ果ててぐったりする頃、今後の日常の仕草にも変化が出た位、オンナを仕込まれた。
 目線、口の開き方、舌なめずり、いくとおりもの微笑みの表情、指の1本1本の仕草、胸に手をやるにも、女の子は何通りもの仕草を無意識で使い分けるみたい。それに歩く時のヒップの動かし方加減、そして男の子にこびを売る為の全体の仕草や言葉遣いとかを何通りも仕込まれてしまった。
「ねえ、ゆっこちゃん。いつか男の子と初体験するんだよね?」
 明け方もうぐったりしている僕に、半分寝言の様に言う雅代ちゃん。
「そりゃ、いつかは・・・ね。女の子になっちゃったんだし・・・」
 ちょっとどきっとして僕が返す。
「覚悟出来てる?」
「え・・・」
 何か謎解きの様なその言葉。
「よくわかんないけどさ、ゆっこちゃんてさ、男の子だったでしょ?クラスメートの男の子の顔思い浮かべてさ、その子に犯される自分を想像した事ある?」
 ちょっと言葉に詰まる僕に雅代ちゃんが続ける。
「ほら、○○クンとか××クンとか、昔クラスにいたでしょ。その子達に女の子の人気が集ってたのよ。出来れば処女あげたいってさ。ゆっこちゃん、○○クンとかとエッチとかしてみたい?」
 確かに雅代ちゃんの口から出たその名前はクラスの女の子達の人気ものだったけど、今思ってみると、そいつに犯される自分の姿って、うわっ想像したくないかも。
「女はね、そういう男の子の下になって、又を強引に開かれてさ、自分の大事な所にあれをつっこまれてさ、自分が誰かわかんなくなる位気持ちよくなって、よがり声あげて、涙流して、時にはよだれまでたらしてさ、女からみればすごく情けない顔するんだよ。時には男の子の気を引くために感じてるふりまでしてさ、可愛い作り声まで出してさ」
 僕は布団に顔をうずめ、じっとそれを聞いていた。
「ゆっこちゃん、あなたにそれが出来る?」
 僕は目を閉じてその言葉を聞いた。それは確かに僕の体が女として完成していくにつれ、どうしても不安で仕方くて頭に残っている事だった。改めて彼女に言われ、僕は背筋がぞっとする。
「じゃ、どうすればいいのよ」
 ちょっとおどおどして雅代ちゃんに聞く僕。
「うーんとね・・・」
 そういいながら彼女はベッドの上のシーツの中で、僕の方に向けていた体を反対側に向ける。
「男の子を本気で好きになれればね。そしてさ、その子にすっごく甘いエッチしてもらえば・・・」
 そういって彼女は可愛い寝息をたてはじめる。
「それが、出来ないんだってば・・・」
 そう言った時、僕の心も温かいもので包まれていく。
「あのさ、今日の事とか、僕が女の子になったって事、誰にも言わないでね?」
「そんな事誰にも言えないじゃん!好きだった彼氏が女になったなんてさ、恥ずかしくて言えないよ!」
 清算を済ませ、ホテルの外に出た僕は彼女に口止めしたけど、どうやら大丈夫そうだった。
「また会える?」
 僕の言葉にちょっと雅代ちゃんは考えるそぶりを見せた。
「幸男君は天国にいっちゃったし、あたしも他の彼氏みつけるつもりだし、お友達として会う事あるかもね」
「あ、じゃこれ僕の携帯」
 雅代ちゃんに僕の携帯を教え、駅で僕達はバイバイして撲は実家への帰り道を急ぐ。只、撲が彼女に会ったのはそれが最後だった。雅代ちゃん、いろいろ今までありがとう。幸せになってね。
 新学期が始まったある日、撲のカラスが騒然となった。原因はあのクルーザのプロモーション用のビデオだった。そんな物クラスの誰の目にも留まらないだろうと思ってたのに、あろう事かそのビデオが9月始めの土日のクルーザの大きな展示会場で流され、船好きの撲のクラスメートの一人が親父さんとそれを見ていたからたまらない。
 彼は撲達が所々写った様々の広告用のパンフや、あげくのはてにプロモーションビデオまで手に入れ、その日の夕方、一部のクラスメートが彼の家でその鑑賞会をやったらしい。
 撲が何の気無しにクラスに入っていくと、既にみけちゃんと智美ちゃんを囲んでクラスが騒然となり、またたく間に撲の回りに輪が出来る。そして突然、
「おめえ!何で俺達もさそわねーんだよ!」
「だーから!ノーコメントだって言ってっしょ!!」
 ふと校庭を見ると、大声でそう叫んでいるますみちゃんがバンド仲間に追いかけられてそこら中逃げていくのが見えた。
  男の子達はみんなすごく喜んでいろいろ質問してくるけど、女の子達の半分は冷たかった。抜け駆けしたとか、何で声かけてくれなかったのかとか、クラス委員長の椎名つばさちゃんまでが撲を無視するそぶりを見せる。
(あーん、後のみんなへのフォローが大変だよ。あの子とあの子には事情説明して、あの子達には後でパフェおごって・・・、あの子には何か買ってあげて)
 いろいろ質問責めにあい適当に答えている撲の頭の中は、それを考えるのに必死だった。
「そう言えばさ、陽子もいたんだよ、あの中に。そしてさ、陽子の横にさ、ほら前渡辺っていたじゃん。そいつに良く似た女の子がいたんだよ!」
 誰かのその発言に、撲とみけちゃん、智美ちゃんがぎくっとする。
「なんかあいつ、女になる病気になったとかみんな言ってたじゃん!」
 一斉にその事についての質問攻めに会うみけちゃんと智美ちゃん。
「し、知らないわよ」
「あたしの知らない子だし。あ、ゆっこなら何か知ってるかも!」
 突然智美ちゃんがそういう事を言い出す始末。
(智美!まだ何か根に持ってるでしょ!)
 撲がきっと彼女を睨むと、彼女が引きつった笑いで胸元で手を振るのが見えた。
「おい、堀!あいつもしかして渡辺じゃねーのか」
 数人が撲に詰め寄ってきた。
「あんたらバカじゃないの?そんな事有るわけないじゃん!」
 一部の女の子達がそういって僕に詰め寄る男共をバカにする。
(でも、そんな事有るんだよな)
 そう思いながらも僕は、
「あ、違うの違うの。モデル事務所の娘でさ、村井綾ちゃんていうの。あたしも良くわかんないの」
 咄嗟に撲は嘘をついてその場をごまかした。それにしても女の子達のこういう事に対しての嫉妬ってすごく怖い。暫くおとなしくしてなきゃ。
 9月の授業も始まり、早くも今年の文化祭の事が話題になり始めた頃、撲は別の事で憂鬱だった。あの4人の女の子デビューの卒業研修が10月の最初の週にあるらしい。しかも
「あのさ、中村君達のテニスウェア選びが今週撲の店で有るからさ、あはははっ、逃げないで来てよっ」
今朝真琴ちゃんからそういう電話を受け、僕は朝から頭を抱えていた。
「久保田さんはいいけどさー、他の3人大丈夫!?」

 

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