メタモルフォーゼ

(32) 「開通…しちゃった…」

その日の昼近く、機能のおまつり騒ぎが全く嘘の様に静まり返った、あの美咲先生のクルーザがおいてある洞窟から伸びる桟橋付近。暫くの間その事を思い出し、時には思い出し笑いした後、その洞窟の有る岬の先を岩場伝いに更に抜けると、そこには小さな砂浜が有る。そこは全く人が踏み入れた事の無い美咲先生の別荘のプライベートビーチで、そして2年前、女の子になりかかってきた僕が、男の子として最後に海水パンツを履いて泳いだ思い出の場所だった。
 あの時、膨らみかけていた胸は、いまやもうDカップ近くに成長し、ウエストにははっきりしたくびれが出来て、そして大きくて丸く、そして股間も広がりつつあるヒップはもう普通の女の子と変わらない。そしてその股間には・・・、もはや男性器の姿は無く、代わりに出来つつある女の子の印。
「お久しぶり。戻ってきたよ」
 独り言を言った後、僕はサンダルを脱ぎ、砂浜から海に入り、暫くの間何故か女の子がよくする波遊びを始めた。なぜ女の子だけがこれをするのか良くわからないけど、暖かい日差しをあびながら冷たい水で足を濡らすのは、なんだかとっても気持ちいい。
 波の音と、時折海鳥の泣き声、そして風の音以外は全く聞こえない、本当のプライベートビーチ。波遊びをやめて、遠くを見つめながら暫くの間、2年前のあの日から、女の子に変身してきた今までをずーっと思い出す僕。
 初めてブラ付けた日、初めて女の子の水着で泳いだあの日、そしてテニスウェアデビューと、その夜の女の子の秘密レッスン。卵巣埋め込み手術をされて女子高校生デビューした時、学校で初めて女の子の名で自分を呼ばれた時の事。そして須藤クンとの初体験、
でも、一番の思い出は何と言っても純ちゃんの事。元気なのはわかってるけど、暫くはライ先生の監視下にいるらしい事だけはわかってる。ライ先生って香港だっけ、いつもいるのは。この海、香港に繋がっているよね。
「じゅーーーん!僕女の子になったよ!」
 方角すらわかんなかったけど、何だかそう叫ぶと純に届く様な気がして、僕は海に向かって叫ぶ。でもその声はたちまち波の音に消されてしまう。
 なんだかたまらなくなった僕は浜辺の岩陰に戻り、そして着てきたワンピースを脱ぎ捨て、ブラを外して、そして誰もいないのを再度確認してから、ショーツを脱いで、岩陰に他の衣類と一緒にまとめた。
 ほぼ女の体になった僕の裸を、暖かい日差しが照らす。
「今日も暑くなりそう・・・」
 そう呟いた後、僕はゆっくりと海の中を進んで行く。波が足を、そして下半身をくすぐり始め、すっかり逆三角形に生え揃ったヘアがゆらゆらする。そして、
「わっ」
 胸のあたりまで漬かると、波が僕の大きくなったバストを持ち上げたり、下ろしたりもてあそび始める。
「変な気持ちっ」
 そのままざぶーんと海に身をまかせ僕はる僕。海水だから目は開けられないけど、暫く裸で泳いでいくうちに、2年前もそうだったけど、小魚達が僕の体にキスをしたり、体をぶつけたりし始める。2年前は感じなかったけど、今の僕には、そのぶつかってくる小魚の1匹1匹が、その感触で判別出来る様な気がする。
(僕、戻ってきたよ、ほら、女の子になって)
 水着を着けて無いから大きくなった胸が邪魔だけど、僕はまるで人魚になった気分がして、時間のたつのも忘れて泳ぎ続けた。

 いつのまにか泳ぎ疲れて浜辺で寝転がる僕。日焼け止め塗ってたけど、胸にはうっすらと昨日着けてた水着のカップとストラップの後が付いていた。
「これも女の印だもん」
 なぞる様にそれを指で触っている時、僕は突然尿意をもよおし始めた。
「どうしよっか、海の中でしちゃってもいいんだけど、誰も見てないし・・・」
 そう誰も見てないはずだけど、僕は岩陰に入って座り、ごく普通にトイレをしたつもりだった。
(そういえば、最近確認してないけど、僕のあそこって今どんな形になってるんだろ・・・)
 ところが、そう思った時、突然僕の小水が出にくくなってるのに気づく。
「あ、あれ・・・」
 普段は、退化して、学術用語で陰核っていうみたいなんだけど、それになりつつある部分の先から出るんだけど、ものすごく出が悪くなってる。そのうちだんだん体の中に溜まっていく感じがして、膀胱付近が少し痛みだと。
「え、え、どうしよっ」
 ちょっと、僕どうなっちゃうの!と思った瞬間、
「あ、あれれ、どうなってるの??」
 痛みがすっと引いて行き、そして今までとは違う部分から、小水が出ている感じがし始めた。それは今までみたいに、ぴゅっと出るという感じではなく、じわっとあふれ出る感じ。え、これって!?
「ま、まさか!?」
 僕は股間に手をあてて、出ている場所を確かめる。それは女性自身に変わりつつある、あの割れ目の中央付近から、泉の様に沸いていた。
「あ・・・あ・・・」
 トイレが終わっても暫くは声が出なかった。金縛りになった様に体が動かず、そして心臓はかなり長くの間バクバクと動いていた。
「ぼ・・・僕・・・」
 僕は恐る恐る、最後の時を迎え、われ目の中に引っ込んでしまったたその小さな小豆位の突起を指で触ってみた。途端に
(ひゃん!!)
 ジーンとした変な気持ちが体を襲う。
「これって・・・クリ○リスって言うんだっけ・・・」
生まれてから18年近く、僕に男性のシンボルとして付いていた男性自身は、今こうして最後の役目を終えて、まさに今女性自身の一部に生まれ変わってしまったんだ。

ほぼ女の子の体になった幸子(幸男)/月夜眠
ほぼ女の子の体になった幸子(幸男) / 月夜眠


「あ、あの・・・」
 急いで美咲先生の別荘へ戻った僕は、ちょっとバツが悪そうにゆり先生に声をかけた。
急がしそう大きな段ボールを持って行くゆり先生は、それに気づいたのか気づかないのか倉庫の方へそのまま歩いていく。
みんな昨日の後片付けを一生懸命やってて、あらかた片付いていた部屋とかホールを目にして、僕は今更何を手伝って良いかわからなかった。
「こらっ、今までどこほっつき歩いてたの!」
  おおきな掃除機を手にエプロン姿の美咲先生がいつのまにか僕の後ろに立っていて、雷を落とす。
「昨日の後片付けと掃除でみんな大忙しだったのよ!みけちゃん達まで手伝ってもらってさ!あんた一人どこでサボってたのよ!」
 そんなことになってるとは知らなかった僕はうつむいて反省している所を美咲先生見せた。
「これ渡すから、あたしのクルーザーの中掃除機かけといて!わかった?」
 そういって僕の強引に掃除機を持たせ、別の部屋に行こうとした美咲先生。
「あ、あの、美咲先生」
「何よ!この忙しい時に!」
 ぼくは掃除機を持ったまま美咲先生に駆け寄り、誰も聞いてないのに小声で、自分の変化の事を耳打ちした。だってすごく恥ずかしかったし。
「嘘!うそでしょ!?」
(嘘って、それどういう事?)
 僕が逆にその意味を聞こうとした時、
「ゆり!ゆり!ちょっと来てよ!!」
 掃除機を手に呆然としている僕を尻目に大あわてで玄関ホールの掃除をしているゆり先生の所へ走っていく美咲先生。何やら2人で小声で話した後、
「ゆっこちゃん、それ本当?」
 そう言いながらゆり先生が僕の所へ走りよって来て美咲先生も後から付いてくる。その後ろでゴミを持って出てきた陽子ちゃんが不思議そうな顔をしてた。
 僕の横に来たゆり先生が僕の背中に手を当てて、ちょっとあたりを見回した後、
「こっち来て」
 そう言いながらゆり先生は、昨日僕達が大人のオンナに変身していった、あのメイクルームとして使われた居間に入っていく
「いいから、そんなものそこへ放っといていいから!」
 掃除機を廊下の片隅に置いて、僕と岬先生はその部屋に入っていく。
「ちょっと、そこに寝て、パンツ降ろして」
「えーーーーーーーーっ!」
  突然のゆり先生の言葉に僕は思わず声を上げる。
「何やってんのよ、そうしないと診れないでしょうよ、早く下ろして」
(だって、僕もうほぼ女の心と体を持ってるんだから、いきなりそんな事言われたって・・・)
「早くっ!」
「あっちょっと!」
 美咲先生が僕の後ろから両脇に手を入れて僕を強引に後ろに引き、倒してしまう。
「もう、世話の焼ける!」
 ゆり先生倒れた所をすかさず僕のワンピースに手を入れ、強引に僕のショーツを下ろし、ちょっと抵抗する僕の足をくぐらせてもぎ取ってしまう。
(その時、今思えば僕の心の中にいつの間にか出来た小さなスイッチが入ってしまったのかも知れない)
「ミサ、もうちょっと上に上げて」
「こう?」
「ゆり先生、ちょっと恥ずかしいよっ」
 美咲先生に大きく開いた両足を捕まれ、ゆり先生は変わっていく僕の大事な部分を触診し始めた。しかも、女としての大事な所を・・・
「あっ、あんっ」
 ゆり先生に大事な部分を触られる度に僕は思わず声を上げてしまう。男性自身が変化して出来上がったそれは、いつのまにか男の子の時よりも遙かに敏感に、そして繊細になっていたんだ。
「ゆっこちゃん、もう変な声出さないの」
「だって!」
 美咲先生がそう注意するけど、そんなの無理。
「あれは?もうふさがってる?」
「うーん、ちょっと大きめでけど、完全に女のあれになってるわ。でも、まだ男性器の名残が残ってる。先もまだ割れてるけど、完全にふさがったかどうかわかんない。でもゆっこちゃんの話聞くと、もうここからは出なくなったんでしょ?もう男性器としては終わっちゃったと見ていいかもね」
「あそこの形ってどう?」
「外陰部は出来てるけど、内陰部はぜんぜんまだ。ほら割れ目だけでさ、まだ中のひらひらは出来てないでしょ。あ、ミサ、ほら尿道だけ出来上がってる!ほら!」
「え、どこ?ライ先生は勝手に出来るって言ってたけど、あたし信じられなかったの。あれ後で絶対手術で作らないとだめなんじゃないかなって思ってたんだけどさ、あ、ほんとだ、出来てる」
 とうとう美咲先生は僕の手を離し、ゆり先生の横に行って僕の下腹部を触診し始める。その時、僕の大事な部分から何かしみ出していくのがわかった。二人の女性の指が僕の大事な部分をあちこち触るから・・・
(もう、やめてよ、恥ずかしいじゃん!)
 でも不思議に声が出なかった。と、なんだかふわふわっとしたとてもいい気持ちになっていくのに気が付く。
(あ、これって・・・)
 その時、僕はちょっと意地悪な事を考え付く。
「ほら、粘膜が厚くなってるし、濡れ方もさ、女そのものじゃん」
「じゃ、あのひらひらとか、膣もいつのまにか出来上がるんだ。すごいじゃん、ライ先生の作ったのって!」
 僕の恥ずかしいって気持ちをそっちのけで、僕のあそこばっかり見てはしゃぐ様に話している2人。
(意地悪してやるっ)
 急に僕は、感じている女の子のふりをして、声の調子と息遣いを変え始めた。
(それは最近夜密かにやってる遊びもかねたトレーニングで、昔見たアダルトビデオとかいろいろなドラマ、映画のエッチシーンとか、男の子を誘う時の表情とかを思い出し、その女の子の真似をするという物。徳に最初感じてる女の子の真似をするって事自体すごく抵抗有ったんだけど、だんだん慣れてきて、そして男性器が女の子のあれに変わりつつある時、それを触る気持ちよさも手伝って・・・)
 僕はちょっと起き上がると、口をちょっと開け、触診しているゆり先生をうつろな目で見つめ、肩を少し揺らす仕草をする。
「ゆり先生・・・」
 ちょっと甘えた声を口から漏らす僕。先に美咲先生がそれに気づいたみたい。
「あ、ちょっと、ユリ!」
 ゆり先生も僕の表情に気が付いたのか、ふと触診の手を止める。
「ゆり・・・先生・・・」
 そう言うと僕はゆり先生に飛びつき、腰をしっかり抱えて大きな柔らかいゆり先生の胸に顔をうずめ、すりすりし始めた。
「ちょっと、ゆっこちゃん!ミサ、お願い、離して!」
「ゆっこちゃん!離しなさい!」
 美咲先生が僕を捕まえて引き離そうとする。でも僕はしっかりゆり先生の腰を抱きしめて意地でも離れようとしなかった。ほぼ女の子になった僕の腕だけど、かろうじてまだ男の子の筋肉は残っていたみたい。美咲先生の妨害に僕はしっかり耐えて、引き続き僕は顔でゆり先生の胸を襲い続ける。
「もう、ちょっとミサ、何とかして」
「あっちゃあ・・・、スイッチ入っちゃったかな・・・」
 ゆり先生の声にちょっと困った様に美咲先生が喋る。
(僕をこんな恥ずかしい目にあわせてさ、もっと仕返ししてやるっ)
「ゆり先生、好き・・・、ああん、やーらかい・・・いいにおい・・・」
 僕はうんと甘え声でゆり先生に迫り、今度は唇を奪おうとしてゆり先生の肩に手を回す。
「こら!ゆっこちゃん!離しなさい!」
 引き続き美咲先生が僕を引き離しながらそう言った時、
「あらそ?そんなにあたしの事が好きなんだ・・・」
 突然ゆり先生はそう言うと、いきなり僕の顔を両手でしっかりと包みこむ。
(え・・・?)
「ゆっこちゃん、可愛い女になったわね?ご褒美よ」
 そう言うと、ゆり先生はいきなり僕の唇を奪い、長々とキスをし始める」
(ち・・・ちょっと)
 予想外の展開に僕はちょっと驚き、ゆり先生の体に絡ませた手の力を緩めた。
「あらあ、唇も柔らかくなったじゃない。そんなにあたしにかまって欲しいわけ?」
 そう言うとゆり先生はちょっと引こうとした僕に襲い掛かり、僕は畳の上に押し倒されてしまう。更に馬乗りになったゆり先生はワンピースの上から僕の胸を荒々しく触り始める。
「どうしたの、ゆっこちゃん?あたしにいじめられたいんじゃないの!?」
「あ、あ・・・」
 さっき、ゆり先生に意地悪してやろうという僕の気持ちはいっぺんに吹っ飛んでしまった。
「良かったわ、ゆっこちゃんにその気が有るなんて、これからも楽しくなりそう。これは男の子がまだ残ってるのかしら?それともレズの気が有るのかしらね?」
「ちょつと、ゆり!」
 美咲先生が横で呆然とその光景を見守っている。
「こんなものいらないわね?」
 ゆり先生はそう言うと乱暴に僕の着ているワンピースの背中に手をやり、ファスナーを降ろしにかかる。
「いやあっ!」
 精神的にもオンナになった僕の口からは、もう男の子の抵抗の言葉は出ない。僕はワンピースの裾をしっかり掴んで脱がされない様に抵抗する。
「あら、抵抗するわけ?」
 あろう事か、今度はゆり先生は僕のワンピースの肩の部分を荒々しく掴む。
「ビリッ!」
 鈍い音がして僕のワンピースの肩の部分が破け、白く柔らかくなった僕の肩にブラのストラップが見えた。
「やめて!」
 すっかり正気になった僕の声も聞かず、ゆり先生は今度は僕のブラを無理矢理引き剥がそうとする。獲物を狙う女豹の様な目と、うっすら笑みを浮かべ、乱れた髪を振るうゆり先生の顔は今まで見た事も無い位怖い顔になっている。
「痛っ・・・」
 ブラのワイヤーに僕の大きくなった乳首が触れ、その痛さに僕がもがくと、馬乗りになったゆり先生の所に破けたワンピースを残し、僕は何とか脱出出来た。
「逃げても無駄よ!」
 すっとゆり先生が立ち上がると、素っ裸になって無意識に股間と胸に手を当てる僕はたちまちゆり先生に捕まって押し倒されてしまう。
「さあ、ゆっこちゃん!女同士楽しみましょうね」
 再び馬乗りになったゆり先生は自分のブラウスのボタンを外し始めた。ブルーのブラ一杯に膨らんだゆり先生の胸が僕の目に入ってくる。
「どうしたの!?」
 騒ぎに気づいたみんなが次々に部屋に入ってくる。それは異様な光景だってと思う。髪を振り乱したゆり先生が裸の僕に馬乗りになって、今にも僕をもてあそぼうとブラウスを脱ぎ捨て、スカートを降ろそうとしているその光景!
「ゆり先生、どうしたんですか!」
「先生!やめてよ!ねえ、どうしちゃったの!?」
 でもゆり先生はそんな言葉に耳も貸さず、とうとう自分のスカートを器用に外して片手に持ち、それを僕の顔にポンと乗せた。リンゴの様な甘い香りが僕の鼻をくすぐるけど、僕は怖くて怖くてたまらなかった。
「ゆっこちゃん、行くわよ」
 大勢に見守られている事にも動じず、仰向けに寝ている僕に馬乗りになりゆり先生はとうとう背中に手をやりブラのホックを外しはじめた。逆に裸にされ、ゆり先生に襲われそうになっている僕。とうとう僕の口から謝罪の言葉が出る。
「ゆり先生ごめんなさい!さっきのは、あの、うそなんです!お芝居なんです!あの、ゆり先生を困らせようとして・・・」
 でもゆり先生は耳を貸さない。とうとうゆり先生は自分のブラを手に取り、怪しい微笑みを僕に向ける。そしてどんなグラビアアイドルにも負ける事が無い位、大きくて可愛くて美しい胸が揺れていた。それがかえって怖い!
「ゆり先生!ごめんなさい!もうあんなことしません!」
 僕は再びゆり先生に哀願する。と、皆がおびえて見つめる中、みけちゃんがたまらずゆり先生の所へ駆け寄った。
「ゆり先生、どうしちゃったんですか!何が有ったのかわからないですけど、あまりにもおかしすぎます!いつものゆり先生じゃ・・・」
 と突然、
「ゆり、そろそろ勘弁してあげたら?」
 いつのまにか気配の無くなった美咲先生が部屋の片隅に立って腕組みしながらこちらを見ている。ゆり先生はふと無表情になり、手にしたブラを僕の顔に投げつけた。
「冗談に決まってるでしょ・・・」
 僕に投げつけたブラを再び手に取って立ち上がり、皆に背を向けするすると胸に付けて長い髪を両手でばさっと整えるゆり先生。
「やっぱりそうだったの?普段と違うし、さっきあたしにウインクしたから、もしやと思ってたけどねー・・・」
 ちょっとあきれた様に言う美咲先生。ブラをつけたゆり先生は再びみんなに向き直り、傍らのブラウスを取って手を通し始める。
「全く!掃除は手伝いに来ないし、触診させようとしないし、おまけにあたしに意地悪しようとするし!大体エッチとか男を知らない女の子が、あんな誘惑ポーズなんて本気で出来る訳無いでしょ!目みればわかるわよ!あんなの嘘だって!あんたが心理学者のあたしを欺こうなんて100年早いわよ!ほんとに、変身するにつれ女の嫌な所まで身についてきて!!」
 そう言いながら手早くスカートを履くと、再び僕を睨みつけるゆり先生。みけちゃんとますみちゃんが傍らにあったタオルを僕にかけ、ショーツとブラを渡してくれた。僕は怖くて身動きも出来ず、目からは大粒の涙が出てくる。
「ね、ゆっこ、部屋に戻って着替えてから、ね、ちゃんと後片付けとか掃除しようっ」
 みんなに抱きかかえられる様に部屋から出て行く僕に、美咲先生が小声で呟く。
「あんた、まだユリの本当の怖さを知らないみたいね」
 ゆり先生って、女の子?ばかりの中とはいえ、あんな大胆な事を平気でするんだ。気の強い美咲先生が、なんで優しいユリ先生を恐れるのか、僕はなんとなしに分かった様な気がする。
 程なくゆり先生が部屋から出て行き、それに美咲先生もついて行って、みんな自然に持ち場へ戻っていく。
「ユリ、あんたにしちゃ珍しいわね、あんなに怒るなんてさ」
 ホールの掃除に戻るゆり先生に美咲先生が話しかける。
「あ、あれ?あれも冗談よ」
「へっ!?」
 思いがけない返答に美咲先生が立ち止まる。
「あの子からかうと面白いんだからあ」
 つかつかとそのままホールに行き、雑巾絞りを始めるゆり先生。
「あきれた・・・」
 傍らの柱にもたれかかり、軽く腕組みしてふくれる様にして、美咲先生が呟く。

 すっかり掃除も後片付け終わったのはもう夕方近く。僕から見ればすっかり機嫌を取り戻したかにみえるゆり先生の提案もあり、僕達女の子?だけで近くの天然温泉のクアハウスへ行く事にした。
 折角いろいろ裏方で働いてくれた中村クン朝霧クン達には悪いんだけど、当然ながら今回遠慮してもらった。だって4人とも今男湯にも女湯にも入れない体になってるんだもん。
「ほら、10月になったらあんた達テニスで女の子デビューじゃん。それまでさ、おおやけの場は我慢ね!」
 バスに乗り込む前、4人に向かってそう話す僕にますみちゃん達がけらけら笑う。
「えー、あと2ヶ月少しで、本当に女の子デビューなんでしゅか!?あちき本当に信じられない!」
 そしてバスに乗りながら、陽子ちゃんと真琴ちゃんが2人に向かって意地悪く笑う。
「朝霧クーン、中村クーン、佐野クーン。僕達先に女の園に行くからねー」
「久保田さーん、良かったらどう?あなたならひょっとしたらさ」
 そういってからかう2人を河合さんがせかす。
「あの子たち、むかつくーっ」
「もう絶対何もしたげない!」
「早く女になんないかなー!」
 もう男の子の喋り方も忘れ始めている3人が口々に悪態つく横で、一人久保田さんが笑っていた。
 ところが、そう言ってた真琴ちゃんは、バスの中で目的地のクアハウスに近づくにつれて、だんだん口数と元気がなくなり、とうとう足ががくがくと震え始めている。
「ね、ねえ、ゆっこ大丈夫かな?」
 小声で真琴ちゃんが僕に尋ねる。
「だって、あんたもう学校で体育はブルマだし水着は女でしょ?何を今更怖がってんのよ。更衣室だって女子だしさ」
「でも裸じゃないもん。僕他の女の前でさ、まだ裸見せたことないし」
 僕の言葉にまだ不安そうな真琴ちゃんだった。

 そのクアハウスは、海と街を一望出来る峠の中に有った。
「わーっすっごい綺麗!」
 大きなガラス張りからは、夕焼けの海と灯りがともり始めた街が一望でき、みけちゃん、智美ちゃん、ますみちゃんの純女の子達と、元男の子だけど、ほぼオンナの体になった僕とともこちゃんとまいちゃんの6人は、風呂場に入るやいなやそのガラスにへばり付く様にして、その夕焼けを楽しんだ。遅れて陽子ちゃんもタオルを胸に巻いてみんなの輪に加わる。
「あれ、真琴は?」
 僕の言葉に皆が振り向くと、ようやく真琴ちゃんが脱衣所から少しおどおどしながら入って来る。
「真琴!おどおどしないの。十分女の子に見えるよ。ほら、おっぱいだってさ、こんなに膨らんでるし」
「本当?」
 僕の言葉に少し真琴ちゃんは元気を取り戻す。
「わあ、すごい綺麗!」
 そう言うと、真琴ちゃんはともこちゃんの横に行ってお互い何かしゃべり始める。その2人の様子を後ろにまわってみていた僕は、裸の2人の後姿の違いを眺めていた。
半分女の子になった真琴ちゃんは、お尻にはオンナの肉が付き始めていたものの、まだ腰骨は殆ど発達していなくて全体のボリュームは小さく、女性として成長し始める中学1年の女の子って感じだった。その横のともこちゃんは、もう大きくなった腰骨に更にオンナの肉が取り巻き、ヒップもちょっとへっぴり腰気味の女の子独特のスタイルで、ウエストもくびれ始めていて、小柄だけどごく普通の女の子という感じだった。
ふとその横に並んだ陽子ちゃんのヒップは、真琴ちゃんよりも一回り女の子の肉が付いてて、丸く大きく膨らんでいた。
(ふーん、たった1年でこんなに変身に差が出るんだ)
 僕がじっと後ろ姿を見ているのをともこちゃんが気づく。
「ゆっこ何みてんのよ」
「ううん、なんでもない。みんな可愛いヒップになったわと思って。それにどうやら陽子と真琴の女湯デビューもうまくいきそうだし」
 頭にタオルを器用に巻きながら小声で話して微笑む僕だった。
 その日は別荘に泊り、翌日は別荘に美咲先生とまいちゃんと陽子ちゃんと、中村クン、朝霧クン、佐野クン、そして久保田さんを残し、名残惜しかったけど、河合さんのマイクロバスで東京へ戻った。

 

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