体育祭が終わった後はもう文化祭の準備。いろいろクラスで考えた末、アンミラ風の喫茶店に決まったんだけど、そこはもう僕もからんだ企画なので、ウエイトレスは経験の有る僕とみけちゃんと智美ちゃん、そしてクラス投票で選ばれた三人の男の子に女装して女の子になってもらう事に。
選ばれた男の子達は、ちょっと女っぽい顔立ちの中村昭クン、ほっそりした佐野秀樹クン、そして小さめで可愛い系の朝霧優治クンの三人。選ばれて教室の前に立たされた時皆嫌そうだったけど、クラス中真剣に投票したのでみんな顔立ちが整った人ばかり。
強引に三人にしぶしぶOK取らせたのは、女子クラス委員長の椎名つばさちゃんだった。三人の男の子達の即席ウェイトレス教育はみけちゃんとつばさちゃんに任せて、僕と智美ちゃんと他六、七人の女の子は、メニューとか教室のレイアウトとかを決める為、智美ちゃんの家へ集合することに。
「打ち合せする前にいいもの見せてあげよっか」
智美ちゃんが見せてくれたのは、前の体育祭でクラスの誰かが撮っていたビデオだった。個々の競技とかが面白おかしく映し出される中、集まったクラスメートの女の子達の歓声が挙がる。須藤君が映ると、僕の背中につんつんと感じる智美ちゃんの冷たくて柔らかい指先。
他、クラスでも人気の男の子が映ると
「彼かっこいいよね!」
「ねえ、二人で誘わない?」
とかいろいろ思い思いに喋る彼女達。可愛いな、女の子達って。あ、僕も今はその仲間入りしたんだっけ。
「だーれのお尻っでしょうか!?」
ふと智美ちゃんの声にふと僕はテレビを見ると、そこに映っていたのは、ブルマ姿で歩いている女の子三人の後姿をこっそり映した物。紺の柔らかい布に包まれた丸くて可愛いお尻が大小三つ。それが歩く度にふるふると揺れている。
「いいなあ、みんな可愛いお尻だよね。私お尻小さいから…」
テレビの中の可愛いお尻を見つめながら、僕はため息をつく様に呟く。と、その時智美ちゃんのキャッキャッと笑う声が、
「智美ぃ、何笑ってんのよ!」
僕の正体を知っている智美ちゃんの意地悪な笑いだと思ったんだ。でも、それは違ってた。
「ゆっこー!自分のお尻みて何ナルシズムしてんのよ!」
「えええええ!これあたしのお尻!?」
やがてビデオはその三人の顔を映し出した。丁度僕の参加した女子千五百m競技直前の映像だったみたい。みけちゃんと智美ちゃんの大きくて可愛いお尻に挟まれた、小ぶりで可愛くて丸いお尻、その主はまぎれもなく僕だった。
「え…、うそ、これあたしだったんだ!?」
僕は、両手で柔らかくなった髪をかきあげ、じっとそのビデオに見入っていた。みけちゃん達と判れて一人選手控え場所に駆けて行く僕。腰のくびれはまだ無いけど、丸くて可愛いブルマから伸びる柔らかそうな太腿、体操服に透ける可愛いブラジャーの線。もう誰が見たって一人の女の子に変身した僕が、選手控え所の女の子達に溶け込んでいく。
その日の夜遅く、自分の部屋に戻ってきた僕は、まだその時の興奮が冷めないでいた。女らしいシルエットになった僕、女の子として男の子とペッティング可能までになった僕。
肌寒い空気の中、ショーツとブラだけになった僕はベッドにダイビングして、最近の僕自身の劇的な変化を頭の中でリプレイしていた。特に今になってもまだ鮮明に記憶している須藤君との初体験、僕にとってはもう懐かしい物になってしまった、あの男性自身の熱い感覚が、まだ太腿に残っている。そしてだんだんその記憶がはっきりと…。それがきっかけになり、僕の精神的な変身もそろそろ最終段階に入ろうとしていたみたい。
「もうそろそろ、女の子の一人エッチ、練習した方がいいのかな…」
全身をすっかり覆い尽くした柔らかな女の子の肉を所々指先で触りながら僕は独り言の様に呟いた。
「練習…してみよ…」
僕はブラの上から、あの日以来とても感じやすくなった乳首を愛撫し始めた。数分立たないうちに、微かな喘ぎ声と共に僕の理性が少しずつ消えて行く。冷たくて、くすぐったくて、いい気持ちで、ちょっと切なくて、そんな気持ちがだんだん僕を包みはじめた頃、僕の片手は、フィメールパッドをまさぐり始めていた。退化した男性器からにじみ出る透明な液体で、微かに濡れ始めていた割れ目の中を指でまさぐると、程なく退化したその男性自身が指に触った。
「やがては、クリトリスになるんだよね…」
指で丹念に皮を剥く様に探るとふと中心部が指に強く当たった。
「ひゃん!」
もう男の子の時とは比べ物にならないくらい、敏感に、そして小さくなってしまったそれを、僕は昔見たエッチビデオの女優を真似て、中指でソフトに転がす様に愛撫し始めた。
(あ…何だか、気持ち良くて、変な気持ち…)
女として感じ始めた僕の体は、寝たまま一瞬膝を立て、ぎゅっと足を窄める。うっすら開いた僕の口からは、喘ぎ声がはっきり出始め、張りの有るバストになった胸を触るもう片方の手に、何故か力がどんどん入っていく。前は優しくソフトに触られるのが好きだったのに。
そのうち、喘ぎ声は無意識のうちによがり声に変わり、窄めた足はいつのまにか開き気味に、胸と男性自身を擽る手に更に力が入って激しく動く。頭の中は以前須藤君に力強くだきしめられ、愛撫され、熱くて太い男性自身を素股エッチした時の感触と思い出でいっぱい…。
「あ…須藤…クン」
無意識のうちに、とうとう口から出たその言葉。さすがに口にした後、僕は
(あ、言っちゃった)
と真赤になっちゃったけど。一人エッチの時にとうとう男の子の名前を口走る様になったなんて、僕ってこんなに変わったんだ。
そして何故だか急に寂しさが僕を襲ってくる。僕にあんな事をしてくれた須藤クンはもう遠くにいっちゃってる。まだ僕の事好きなんだろうか、それとも、ひょっとして他の女の子と!?
「須藤クン…どうして行っちゃったの…」
湧いてくる涙を手で拭きながら、僕は女としての一人エッチを続けようとした。とその時、
「ゆーっこっ」
小さく響くその声に、僕は一瞬何かで叩かれた時の様に、声の方を向いた。
「ゆっこ、隣から微かに聞こえてたよ。だめじゃん、女の子が一人エッチする時は、鍵かけてさ、誰もいない時にやんないと」
そこにはブルーの可愛いベビードールの様なパジャマ姿で、意地悪そうに僕を覗きこむ純ちゃんがいた。女の子としての始めての一人エッチを見られた僕は、その事で顔が真赤になり、勝手に入って来た純ちゃんを怒る事すら出来なかった。
「えへへへへっ、暫く見てたよ。ゆっこの女の子としての一人エッチ。なかなか可愛かったよ」
「じ…純ちゃん、人の部屋に無断で入るなって!…じ…純ちゃんが言ってた」
真赤になった僕の怒った言葉は、僕の口を手で軽く押さえた純ちゃんによってうやむやになってしまう。
「ゆっこ、おめでとう。最終段階に入ったわね。記念に今日いいことしたげよっか」
「純ちゃん、あ、ちょっと…」
ねっとりとした唇が僕のそれに重ねられ、滑らかな指が僕の両方の胸を愛撫し始め、ずっしり重く、でも柔らかい純ちゃんの胸、そしてお尻が僕の体にのしかかった。
「あ…ん、純ちゃん、いいの?前にレズは嫌いって言ってたのに」
「ううん、今日は特別。ゆっこの心が最終段階の変化に入った事へのプレゼント。そうね、あたし、今日久しぶりに男の子の立場でやってあげようか」
「あん、純ちゃん…」
「まだあたしに初潮が来てないもんね、それまでの間だったら…」
「あっああん…」
激しく僕の体を苛める様に責める純ちゃん。完全に受身になり、嬉しそうに女らしくよがり声を挙げる僕、もうされるままだった。
お互い女の子になった喜びを激しく体で表して、そしていつしか寝てしまい、ふと目が覚めたのは明け方の五時位。隣で布団からはみ出して、すーすーと可愛い寝息を立てている純ちゃんに布団を送ってあげようとして、ふとその体を見てみた。
「わあ、もうここまで変身してる…」
大きく形良く脹らんだ胸、ベストとはいかないまでも、可愛くくびれたウエスト、そしてお尻にかけて見事に丸みをおびて柔らかくなったヒップライン。お尻に有る二つの丸く脹らんだその脂肪の塊。そしておなかから股間にかけてなだらかにふっくらと整ったビーナスライン。そろそろ純ちゃんが女として完成しつつ有る事を証明していた。
それに、もう体育とか身体検査とかある日以外は、もうフィメールパッド外しているんだって。確かにここまで変身したら、もう純ちゃんは前から見たらショーツ履いていない限り男の子だって事絶対にばれないと思う。
「純ちゃん、可愛い女の子になったね…」
布団をかけてあげた僕が再び寝付こうとした時、
「…お母さん…」
寝ぼけた純ちゃんが僕の腰に手を回し、抱き付いて来た。多分夢でも見てるんだと思うけど、いつもとは違う純ちゃんの仕草に、僕は一瞬戸惑った。でも僕は咄嗟に答えてあげた。
「なあに、純」
そしてその時だった。永作○美似のいつもの小悪魔の様な顔に、突然子供の様な幼い表情が浮かんだのを僕は見逃さなかった。そして僕の腰をぎゅっと抱きしめる。
「…どこへも、行っちゃやだ…」
そういえば、僕純ちゃんと長い間暮らしてるけど、純ちゃんの過去なんて聞こうともしなかったし、知ろうともしなかった。純ちゃんは純ちゃん。ゆり先生の所で暮らしているのが、ごくごく自然であたりまえって感じだった。そういえば、純ちゃんてお母さん、今いるんだろうか?察するに、もう別れて久しい様な感じがする。
僕は純ちゃんの頭をそっと撫でて呟いてあげた。
「ここにいるよ、純」
その言葉に、まるで幸せ一杯の子供って感じの表情を見せ、にっこりとする純。純、いい夢見てね。起きるまでこうしててあげるよ。
少し寝た後、目覚ましが鳴り、僕と純ちゃんは同時に目を覚ました。
「う…ん、純ちゃん、?」
「え…、あ、まだ七時位か…」
純ちゃんは大きなあくびをして、パジャマを羽織って部屋から出ると、カメラを手にすぐ戻ってきた。
「ねえ、ゆっこ。二人で写真とろうよ」
「え、写真?」
「うん、ゆっこの心が本格的に女の子になってきた事記念してさ。それに、何だかあたし今日気分いいの」
なんだかその理由が判る気がするなあ。携帯のカメラで三枚程写したその写真には、可愛いピンクのネグリジェ姿の僕によりかかるブルーのベビードールの純ちゃん。幸せ一杯って感じの二人の女の子(?)姿が笑顔で写っている。そして、それが僕の宝物になるなんて、この時は全く知るよしもなかった。
いよいよ文化祭は来週の月曜日という週末、お菓子・ケーキそして部屋の飾り付けの用意もOK。用意する日曜日が待ちどうしいって思いながら僕は夕食を食べていた。そう言えば男の子のウェイトレス三人は、今日みけちゃん家で泊まりがけで研修?だっけ。ちゃんとやってくれるのかな。
「純ちゃん所も文化祭月曜日だよね?何するんだろ」
「なんか、純ちゃんの企画でコギャルファッションショー喫茶とか言ってたよ。色々なブティックから服を借りてクラスメートに着せて、喫茶店みたいにした教室でファッションショーやるんだって」
「ふーん、面白そう。行きたいなあ」
ゆり先生と僕が何気なく会話し、僕がにやにやしながらサラダのトマトに箸を付けようとした時、大きな荷物を手に、ばたばたと慌しく出かける純ちゃんの姿が目に入った。ゆり先生がふと尋ねる。
「あれ、純?どこ行くの?文化祭の準備?」
「みけちゃんち」
「ぶっ!」
危うく口の中の物を吹き出しそうになり、僕は席を立って純ちゃんに詰め寄った。
「ちょっと純!みけちゃん家に何しに行くの!?」
「決まってんじゃん!あんたのクラスの男の子を調教しにいくの!」
「ちょっと!この荷物何よ!なんで純ちゃんが行くのよ」
「前にみけちゃんから電話が有ってさ、手伝ってくれっていわれたのよ。ゆっこも意地が悪いよね!こんな面白いイベント隠しておくなんてさ!」
純ちゃんが忙しそうにしてたから、言わなかっただけじゃん!それに、もう、みけえーーー!余計な事を!純ちゃんの事だ、必要以上に徹底的に仕込むに違いない!僕は純ちゃんの持つ大きなカバンを引っ張って抵抗した。
「だめぇ!純が行くと冗談が冗談でなくなっちゃうから!変に悦に入って戻れなくなったり、女装癖付いたりしたらどうすんのよ!」
「離してよ!あたしがこんな面白い事見逃すと思ってるの!!」
「これ以上私のクラスから男の子減らすのやめええ!」
「あたしが責任持つから、離してって言ってるのに!あ!真琴!」
「え、真琴!?どこにいるの!?」
一瞬僕の手が、引っ張りあいしている荷物から離れる。
「真琴!どこ?」
「いるわけないでしょ!ばーか」
その隙に玄関から風の様に出て行っく純ちゃん。ああ、もう知らないから!
「ゆっこちゃん、やっぱり心配だから、後で行って頂戴。ほら、無理矢理女装させられた男の子がその間に快感覚えてさ、その道に入るなんて少なくない話だからさ。くれぐれもやりすぎない様に見張ってて」
ゆり先生も少し心配そう。でも僕が純ちゃんを監視するなんて始めて。
「こんばんわあ…」
純ちゃんに一時間位後れて僕はみけちゃんの家に行った。
「あ、ゆっこ。来てくれたんだ。上がって上がって!もう始まってるよ」
大きな子犬がプリントされたハウスウェアでみけちゃんがお出迎えしてくれた。
部屋では既に、メイド服にうっすら化粧した三人が、棒を持った純ちゃんとつばさちゃんに指導を受けていた。丁度盆に乗せた空のコップを、盆ごと片手で持ち、水を出す訓練みたい。やってるのは、あ、佐野君だ。
「だめ!ほらお客さんの前では屈むんじゃなくて、両足を曲げて!そう可愛く!」
そう言いながら、純ちゃん自ら盆を持って実演。その姿にそこにいる一同が大笑いしている。
「あ、こうですか」
「うん、そう。大分可愛くなったじゃん」
みんな楽しそうに三人の男の子達にウェイトレスを教えている。
「朝霧クン。ほらしゃがむ時ってお尻に手を当ててって言ったじゃん!」
「中村クン、いらっしゃいませの挨拶の時は、お盆は体の前で両手で持って、ほらもっと頭下げて!」
その中村君がふと僕の前で後を向いた時、僕の目は一点でクギ付けになった。
「ちょっと!中村クン!あんた何ブラジャーしてんのよ!」
中村君の着ている女性用ブラウスには、女の印がくっきり。
「ちょっと、佐野クン!朝霧クン!後向いて!!」
えー、ちょっとぉ恥かしいよぉ、なんて言いながら後を向く二人。その背中にはくっきりブラの線。
「純!あんたの仕業でしょ!?まさかあの時持ってた荷物って…」
「そう、三人分の女の子の下着だよ。サイズ教えてもらってさ、可愛くてぴったり合うの探すの苦労したんだから」
「じゃあ、今あの三人て、下着から完全女装なの!?」
「そうよ、ゆっこが来る前、嫌がるあの子達に付けさせるの本当に楽しかったんだからさ」
ジュースの入っていた紙コップを口に咥えながら、意地悪そうに話す。
「みーけっ、つばさっ!やりすぎなんじゃないの?」
途端は吹き出して笑い出すつばさちゃん。
「あのね、最初服だけでいいかなって思ったんだけどさ、純さんのアドバイスで下着まで女物つけるとね、本当すごく仕草とか自然に見えるのよ」
僕が唖然としていると、
「最初恥かしかったけどさ、服だけ女より、下着まで女だとさ、なんか成り切れるって感じしない?」
「うん、俺もそんな気がする」
中村クンと朝霧クンがお互い頷き会う。あーん気持ち悪いよぉ
「あのさー、みんな毎日こんな下着付けてるの?ふーん、いいなあ」
突然佐野クンがどっきり発言。みんな驚くかと思ったら一同笑い出す始末。
「佐野クン、いいでしょ。女の特権よね。毎日こんな可愛い下着とか着れるの」
「もう、みけ!変な事言わないの!」
「え?ゆっこ?あなたそんな事言えるのかなあ?」
みけちゃんの意地悪そうな目つきが僕を攻撃!そうか、僕も元男の子だったんだ。で、でもさ!
僕が何か言おうとしたその時、みけちゃんのお母さんが部屋にお菓子を差入れに来てくれた。
「あ、お邪魔してまーす」
一同でご挨拶、
「まあまあ、こんな狭い場所で、まあ!あら!やだ!可愛いメイドさんねえ、ほほほ」
男三人のメイド姿を見て、みけちゃんのお母さんは笑うやら感心するやら。
「はい、あんた達!みけちゃんのお母さんにお礼の挨拶なさい」
「はーい」
「どうも、お邪魔してまあす」
純ちゃんの一言に、すっかり女の仕草が身に付いたメイド服の三人が手を前に揃え、足を内股気味に腰を曲げて可愛く挨拶。
「あらまあ、これは月曜日お邪魔させて頂くしかないわねえ、ほほほほ」
笑いながら、出て行くみけちゃんのお母さん。それを目で追った後、僕はすっと純ちゃんの後ろに行き、耳元で囁いた。
「純!もうどうなっても知らないぞぉ!」
もう何言っても皆聞きそうにないので、その日はそれで帰ってきちゃった。日曜は男の子達に混じって教室のセッティング。純ちゃんは今日も三人の男の子達のトレーニングだって。自分の高校の文化祭の準備ほったらかしていいのかなあ。そう、あの棒を持った姿って、ちょっと美咲先生を連想させる。しかし、何をどうあの三人に教えてるんだろ、本当に。
とうとう運命の月曜日。朝八時にたくさんのクッキーと紅茶の葉とコーヒー豆、そしてシフォンケーキの塊三つと生クリーム他いろいろ、智美ちゃんと一緒に、僕は朝八時頃教室に到着。すると、もう教室の中では、女の子達によるあの三人のメイクの真っ最中だった。メイド服の三人はもうすっかり女の雰囲気が出ている。
「おっはよーっ」
僕の挨拶にすぐ答える三人、そして僕の前へ、ちょちょっと、何女の子みたいに小走りに駆けてくるの!
「堀さん、おはようございますう」
「純さんには本当にお世話になりました。昨日女装で外出まで付き合ってもらって」
「度胸と慣れを付ける為なんですけど、最初怖かったですけど、もうすっかり慣れました」
「宜しく伝えて下さいね」
ちょ、ちょっと待って、朝霧クン!中村クン!佐野クン!いつの間に裏声使える様になったの?一体何が有ったの?僕の知らない間に、話し方とか、仕草とか、すっかり女そのものになってるじゃん!!特に佐野クン、話す時に両手を胸元に持ってこないの!!それに?何?昨日女装で外出させられたってどういう事!?
(もう!純の奴!只の学際の逆転ウェイトレスの為にここまでするかああ!!しかも自分の高校じゃないのに!)
僕の頭の中で、純ちゃんのイタズラっぽい笑い声が響いた。
戻ってメイクの続きを受ける三人は、まるで女同士の様に和気藹々と女子クラスメートと話している。ネームプレートまで付けて。中村クンは(Aki)朝霧クンは(舞優佳)佐野クンは(早苗)だってさ。
「ゆっこ、おはよっ。どう?三人すっかり女っぽくなったでしょ?」
ふと見ると、あの清楚な感じだったあのクラス委員長のつばさちゃんが、色っぽい膝上のピンクのミニのウェイトレス姿で、にっこりしている。
「今日、純ちゃんは自分の学祭で来れないからね、あたしが代理で、三人の面倒見るからさ。チーフだよ。あたし」
クラス委員長まで純ちゃんに巻き込まれたんだ。もう!
そうこうしているうちに三人のメイクが終ったみたい。やっぱ男の子の面影は当然残ってるけど、仕草とか、話し口調まで女にされてるから、なんか違和感が無い。こらあ、メイク終ったそこの三人!女みたいにひとかたまりになって、話しに興じるなあ!
「下手ねぇ…あんたたちのメイク…」
聞きなれたその声に、ふと教室の入り口を見ると、ゆり先生がドアにもたれかかって腕組みしている。
「あ、早乙女先生、おはようございまーす」
「おはようございまーす」
皆口々に挨拶する中、僕は挨拶もせず、ゆり先生の所へ駆け寄った。
「ゆり先生!僕純ちゃん止めたんだよ。でも、もうどうにも出来なかった」
「こら!皆の前で僕なんて言わないの!」
小声で注意受けた僕、もう何だか情けない。ふとゆり先生の手元を見ると、そこにはゆり先生愛用の化粧道具箱。
「どうせ、まともな化粧出来ないだろうと思ってさ、今日道具持ってきたのよ。それにもうここまで来たら行く所まで行ったら?さあ、出来たてほやほやの女の子達、一人ずついらっしゃい」
「ちょっと!先生!!」
あーあ、最後はゆり先生自ら締め括っちゃった。
「おはよーっ!」
今度はみけちゃんが入って来た。早速今度はみけちゃんに詰め寄る僕。
「みけ!あの三人こんなにしちゃってさ、どうすんの!」
「もう、ゆっこ!なんで今回いちいち反対ばっかするのよ!ライバル増えるの嫌なんでしょ!可愛かったらそれでいいじゃん!」
「おっす!」
少ししわがれた声で、今度はますみちゃんが入って来る。そうか、文化祭コンサートにエントリーしてたんだっけ、昨日一日練習してたからそんな声、
「おっす、お前ら元気か。昨日のカラオケボイストレーニングの効果出てるかー、あっ昨日の写真出来てるよ。三人とも可愛く写ってるぜ。ほら」
歓声を上げてますみちゃんの所へ駆け寄るあの三人に僕はマジで頭を抱えた。ああん、もういいよ。何か有ったらゆり先生と純に責任とってもらお。
「へえ、ゆり先生ってメイク天才!」
「どうしたら、男の子をこんなに可愛く出来るの!?」
一人十分位で、手早くメイクの仕上げをやってのけたゆり先生の横には、すっかり女になってしまった三人が座っている。
朝霧クンの場合、女の子達の手によって既に細く整えられていた眉は更に強くされ、マスカラと、ピンクの口紅を引かれ、ちょっと見ると吉沢○とみ風になっている。
もともとふっくら可愛かった佐野クンは、その頬をさらにメイクで柔らかく、目は奥二重にされ、大きな髪飾りでちょっと幼い感じに整えられた。その健康そうで可愛い顔は、昔の原田○世みたい。
中村クンの可愛い目は二重にされ、更にマスカラとビューラーで大人っぽく整えられ、メイク自体も大人っぽいものに半分やりなおしされたみたい。全て終ったそこには、雛形○きこ似の美少女がいた。
文化祭開催直前のミーティング、ブラとヒップパットとガードルで矯正され、黒のメイド服にエプロンをつけた三人は、女の子の歓声と男の子達の口笛に揉まれた。アンミラの制服に身を包んだ僕、みけちゃん、智美ちゃん。そして横に立った男の子三人のブロポーションがそんなに変わらないのが少し悔しかった。
文化祭での僕達の喫茶店は大好評!というより、来場のお客さん達殆どが普通の喫茶店として利用していたみたい。そして、あの黒のメイドさんが男の子だという事が予想外にバレない!オーダーを聞く声に、ごく一部の人が不思議に思う位だった。以外にも僕達もそうだったけど三人とも何回もお客さんにナンパされてたみたい。お客さん確かにたくさん来るのはいいけど、ちょっとこれじゃつまんないよー!
午後になると誰かがドアに
「ニューハーフ喫茶店」
と書いた立て看板を立てちゃった。すると、始めてそうなんだって気付いた人達が殺到!
三人の男の子の可愛すぎる仕草、可愛く膝を曲げてお給仕。ガラスケースからケーキをしゃがんで取る時のお尻に手を当てる仕草、首を傾げ、笑顔で応対する様子。あまりにも女の子してて、僕…は、まあ半分そうなんだけど、ミニスカートのつばさちゃん、そしてみけちゃんや智美ちゃんまでニューハーフに間違われていた。
忙しくて楽しくて、ちょっとどきどきして。楽しい文化祭は瞬く間に終った。最後のミーティングでは、佐野クン、朝霧クン、中村クンが、キスを迫られたり、押し倒されたり、スカートめくられたり、胸を触られたりして男の子達に襲われていた。でも三人はそれを変に嫌がらない。それどころか、苛められた相手を叩く所とか、めくられたスカートを押さえる姿とか、抵抗する様が女の子と同じ!
「朝霧!俺まじでお前に立っちまった!」
「ふふふ、ありがとう。お礼にキスしたげる!」
「中村!まじでさ、今度の日曜日デートしねえか?その格好でさ。俺なんかお前を可愛いと思う様になってさ」
「え、やめてよー、変な気持ちになっちゃうじゃん」
三日前、みけちゃん家で見た時の三人は確かにまだ男の子だったのに…。本当に、変な事にならなきゃいいけど!
次の週末は恒例のテニス大会。今修行中の陽子と真琴のカリキュラム開始が遅れたので、少し肌寒くなった季節に行なう関係で、場所は今度は暖かい伊豆の別荘近くのテニスコートとペンションを借りる事に。あっあーっ、そういえばいつの間にか陽子と真琴ってカリキュラム終了してたんだ。本当夏休み終ってから僕自体忙しくて、すっかり忘れてた!陽子はともかくとして、真琴ってどこまで変身しちゃったんだろ?
「真琴の変身がすごく早いのよ。まあ、今回陽子ちゃんにはあまり手が掛からなかったから、殆ど個人授業みたいな感じだったみたいね」
金曜の夜、テニスの用意をしながら、ゆり先生に何気なしに聞いてみたところそんな答えが返って来た。
「ねえ、真琴どんな風に変身したの?」
「ふふふ、行った時自分で確かめてごらんなさい」
僕はなんだかすごく気になって、真琴と陽子と一緒に暮らしているはずのまいちゃんに電話してみた。
「あ、ゆっこー、元気?今週来るんだよね、テニス。あたしね、ともこ経由で新しいテニスウェア買ったんだよ!あと真琴のウェアも新調したし」
「ねえ、まい、真琴どんな風になったの?」
その言葉に電話口からまいちゃんのキャッキャッと甲高い笑い声。
「あのさ、とにかく来週になったら分かるって!」
「えー、教えてくんないのー!ねえ、真琴今いるの?陽子は?」
「だめだめ、まだ最後のレッスン中。出れないわよ」
「美咲先生も大変なんだ…」
土曜日の早朝、荷物をいっぱい積めこんで純ちゃん、僕、ゆり先生は伊豆へ向かって出発。途中河合さんとともこちゃんを乗せて、少し肌寒い秋空の下でのドライブが始まった。後部座席に座った元男の子三人は、先日河合さんの店でテニスウェアを買いに来た陽子ちゃんと真琴ちゃんの話題で盛りあがっている。
「ねえ、真琴の事とか、誰も教えてくれないの。ねえともこ、会った時どんな感じだった?」
「もう、見たら判るって。今教えたら面白くないじゃん!」
「真琴のブラって、ともこがサイズ合わせしたんでしょ?」
ともこは今河合さんのブティックで、しっかりアルバイトしているらしい。
「あのさ、真琴の胸って脹らむのが早いのよ。今陽子ちゃんと同じBカップだよ。それにさ、ふふふふ」
「だから、どうなったのよ!みんな意地悪してさ!」
「だから、見たら笑うって!」
もうCカップ位まで脹らんだ胸を腕で抱きかかえる様にして身をよじって笑うともこちゃん。
「それはそうとさ!ゆっこなんでテニスウェア新調しなかったの?ゆっこだけだよ!うちに買いにこなかったのさ!」
「私ちゃんと買ったもんね。エレッセのかわいいの!」
僕に対しての冷ややかな投げ掛けに、純ちゃんが答える。そりゃ僕だってさ、もう一着欲しかったけど!
「陽子ちゃんも真琴もさ、すっごく可愛いの買っていってくれたよー、ゆっこ買ってくれなかったもんねー」
相変わらず意地悪く言うともこちゃんの胸を、僕はえいっ!とばかり攻撃した。片手にずっしりとくるふかふかの柔らかい塊、ともこちゃんの悲鳴と共に、今度は彼女?の両手が僕の胸を攻撃!
「キャーーーッ」
無意識に僕の口から出ちゃう悲鳴。以前須藤クンに襲われた時以来、僕の悲鳴はすっかり女の子の金切声に変わっちゃったんだ。
「こーら!もう騒がないの!」
運転しながらゆり先生が僕達をいましめ、助手席で河合さんがくすくす笑う。
「ねえ、河合さん、ともこちゃん、知ってる?ゆっこね、Bまで行った相手に振られてさ!その日ベッドで大声で泣いてるんだよ」
「えええーーーーー!ゆっこやったじゃん!お互い触りっこしたの!?」
「へええ、ゆっこちゃんも隅におけないわね」
純ちゃんの暴露発言に、ともこちゃんと河合さんのびっくりした声、
「ちがうーーー!振られたんじゃなくて!僕が襲われそうになって、一時的に振ったのー!」
女らしく、体全体を振るわせ、否定する僕。もう純!余計な事言わないの!
「ゆっこ、やーりぃ!」
ともこちゃんの手が今度は僕の着ている花柄のワンピース越しに、僕の股間にタッチ!
「こらーともこー!」
僕もまけじと、ともこちゃんの履いているピタパンの股間をぎゅっと攻める。ふっくらしたともこのそこは、ピタパンの柔らかい生地につつまれ、女の子らしいシルエットに!
「あーん!ちょっと河合さん!ゆっこったらうちに買い物にも来ないでさ、あたし苛めるんだよ!」
「こら!いいかげんになさい!まだ半分しか女になってないくせに!キーキーうるさい!」
ゆり先生が怒鳴る横で大笑いする河合さんだった。
伊豆の別荘に着いたのが午前十時頃。着くやいなや、僕は陽子ちゃんと真琴ちゃんに会いたくて、玄関に向った。と、その時、
「いたーー!痛い!!」
いきなり聞き覚えの有る真琴の男声、あれ、何やってるんだろ?まさか陽子苛めてるの!?
その声のする部屋に急ぐ僕、とその時、
「はい!真琴もう一回!今度三分ね」
「えーー!まだやるの!」
「真琴ちゃん、頑張ろうよ!絶対出来るからさ!」
「真琴!それ出来るまでテニスウェア着せないからね!」
「う…うん」
美咲先生の叱咤の声と陽子ちゃんの励ましの声、そしてしぶしぶという感じの真琴ちゃんの声。
(ああ、あれやってるんだ)
ふと僕は微笑んだ。僕も美咲先生に特訓受けた経験有る。あれすごく最初辛いんだ。女の子のペタン座りと足組みの練習…。僕なんて美咲先生と、当時遊びに来ていた純ちゃんの二人がかりで肩をぎゅーっと押されて、涙流したもん。
「こんにちはー、陽子、真琴!元気!」
勢い良くその部屋にポンと飛び込む様に僕、その時、
「え、真琴!真琴なの!?」
少しふっくらした様子以外あまり変わってない陽子ちゃんに比べ、真琴ちゃんは…。
あきらかに前よりぱっちりしてうるうるした目、長く伸びたまつ毛、ふっくらした頬、そして女っぽくふっくらした唇。ショートにカットした髪に濃い緑のタンクトップと、ストッキングにジーンズのホットパンツ。すっかり変貌していた真琴、丁度モーニ○グ娘のなっちをボーイッシュにした感じ!
「真琴!可愛くなったじゃん!」
僕は感激まじりで目を輝かせて言う。でも、皆その言葉は無視された。
「おはよ、ゆっこちゃん。悪いんだけど、真琴の肩を押さえて!」
「ちょっと、先生!」
美咲先生の言葉に、真琴ちゃんが悲しそうに言う。僕もこんなに可愛く変身した真琴が羨ましくて、陽子ちゃんの横に並んで肩に手をかけた。
「真琴、もうみんな来てるからこれで最後にするよ。じゃ用意、始め!」
ストップウォッチを片手に、椅子に足組みして威厳に満ちた姿で座る美咲先生の前で、真琴ちゃんは同時にぎゅっと両肩を押さえられ、子供の様なお尻が床にペタッと着地させられた。タンクトップ越しに手に感じる柔らかくなった真琴ちゃんの肩の肉と食い込むブラの感触。ついぐっと力が入っちゃう。
「堀さん!もっと力緩めてよ!痛いよぉ!」
「だめ、ゆっこちゃん!そのまま力抜かないで。あ、もっと押さえつけてもいいわ」
「痛い、いたたたっ…」
「真琴ちゃん頑張ってよ!私だってこの特訓受けたんだから」
「うーーー…ん!」
美咲先生のカウントダウンの声が続く。額に汗を浮かべて我慢している真琴ちゃんの顔がなんだか可愛い。そのうちゆり先生達が部屋に入ってきて、僕達を指さして笑いはじめる。
「真琴!頑張れ!」
純ちゃんが笑いながら応援する。
「三、二、一、はい終り!真琴お疲れ様!」
体を振り払う様にして僕達の手から離れ、床に転がる真琴ちゃん。ホットパンツから伸びる足はまだちょっと男の子かな?
「いたたたっ!もう、僕と陽子ちゃんてさ!最初から体の型が違うんだから!同じカリキュラムなんて無理だよ!」
僕と同じ様に自分を(僕)と呼ぶ真琴クン。あ、でも美咲先生の前で、その発言はちょっとやばいんじゃ…
「真琴!陽子はここまでなる前にあんたの何倍も苦労してんだからね!あんたの受けてるのは、ここにいるゆっこちゃん達と全く同じカリキュラムなのよ!全てはあんたの為になるんだから!嫌だったら出て行きなさい!!」
寝転がったまま言葉を失う真琴ちゃん。美咲先生の声が続く。
「真琴!あんた準備まだなんでしょ!来なさい、こっちへ」
部屋を出て行く二人を目で追いながら、僕は気になって陽子ちゃんに尋ねた。
「ねえ陽子、真琴って美咲先生に嫌われてるの?」
僕の問いに陽子ちゃんは、くすくす笑いながら答えてくれた。
「ぜーんぜん!美咲先生ってさ、真琴ちゃんが一番好きなんじゃない?私はもうこんなになってるから、日々のトレーニングなんておさらいみたいだからね。だから先生は殆ど一日真琴につきっきりなのよ」
その時、まいちゃんが大きな鞄を持って部屋に入って来た。胸元で軽く手を振る僕に、まいちゃんが笑顔で答えてくれる。
「ねえ、まいさん。真琴と美咲先生って仲いいよね?」
「え、美咲先生と真琴?うん、ぜんぜん平気。だって仲悪かったらさ、真琴のあんな肌を露出させる服装許す訳ないじゃん」
そういえば、僕達もあんな女っぽい服装許されたのは、まさにこれから始まるレクチャー終了のテニスの時が始めてだもんな。
「それにさ、美咲先生の趣味も入ってるの。かわいい男の子好きなんだから」
「えー、まい!それ本当!?」
僕はちょっとほくえそむ。ふとゆり先生が話に割って入った。
「真琴のケースって初めてなのよ。普通胸とかお尻とかから女性化が始まるんだけど、あの子胸がある程度脹らんだら、いきなり顔が変わったの。頬とか唇、そして目のあたりとかに柔らかい脂肪がたくさん付いてさ」
暫くして、真琴ちゃんが荷物を持って入って来る。と、その服装はさっきの姿に軽いジャケットを着たままだった。
「真琴!そんな格好で行くの?足寒くないの!?」
「え?うん平気だよ。僕この格好気に入ってるんだもん!じゃ先に車に行ってるね」
あっけらかんと答える真琴ちゃんに、僕は少し唖然とした。その時、まいちゃんが僕の耳元で囁く。
「真琴も陽子ちゃんも、今日の夜の事は知らないのよ。特に真琴!ふふっ、明日の朝楽しみ!!」
そっか、テニスの後の夜は、秘密トレーニングだっけ!うふっ!
二台の車で向った先は、伊豆の更に南の別荘地。ペンションに荷物を置いて早速テニスコートの女子更衣室へ!気後れして足をすくめる真琴ちゃんを無理矢理更衣室に押し込めると、そこには五、六人の女子高校生が着替えの真っ最中!同世代の女の子達に挨拶された真琴ちゃんは顔を真赤にして僕達の影に隠れた。
「それじゃトレーニングにならないでしょっ!」
とうとう純ちゃんに小声で怒鳴られ引きずり出されて、真琴ちゃんは結局女の子達の前で着替えをさせられる事に。陽子ちゃんは流石にこういう所での着替えはもう慣れたもの。真琴ちゃんも白くなった体に可愛いブラに包まれた胸を露わにし、そして、
「え、真琴ってあんなに可愛いウェア買ったんだ…」
恥ずかしそうに紺のアンスコを履き、一瞬思いつめた様な顔をした後、覚悟を決めた真琴ちゃんの体が綺麗なセルリアンブルーのワンピースのテニスウェアで覆われていく。可愛く脹らんだその胸元を僕がまじまじしと見ていると、それに気付き、つんとポーズをとる真琴ちゃん。
「どう?可愛いでしょ?」
僕は溜息をついて答える。
「真琴、あんた変わったわ、確かに」
僕のクラスの前の方にいた地味な男の子は、僅か数ヵ月でこんな可愛い姿に変身しちゃったんだ。
「わあ、可愛い!そのウエア」
「ねえ、どこで買ったんですか!」
突然先に入っていた女子高校生に話しかけられ、一瞬強張った顔をした真琴ちゃんだったけど、多分同性に見られたという安心感が有ったのかな。たちまちトレーニングしたばかりの可愛い裏声で仲良く話し始めたみたい。とうとう真琴ちゃんも女の子に溶け込み始めたんだ。
女の子?ばかりが集まった二面のテニスコート。目が覚めるブルーのウェアの横のピンクのウェアに白のスコートの陽子ちゃん。色とりどりのテニスウェアに包まれた三人の先生達を除く六人の元男の子達(内一人は女の子の印待ちだよっ)。
前回同様ギャラリーが集まり始め、その中で会社員らしき一グループは執拗にテニスそっちのけでゆり先生達三人の先生に一緒にプレイしましょうとアプローチかけてた。小悪魔的な可愛さが出てきた純ちゃん、そしてふっくらしたまいちゃんも、特定の人とかグループからナンパとかされていたみたい。結局僕には誰一人声かけてくれなかったのが、悔しい!同じく声かけてもらえなかったともこちゃんと、幾分むっとした顔でずっとラリー打ってた。
そういえば、まだ女性変身が始まったばかりの去年は、男ってばれるのが嫌で誰も声かけないでって思ってたっけ?
ペンションに戻って夕飯の後、しばしみんなでトランプ。そして暫くしてから、真琴ちゃんは美咲先生、陽子ちゃんはゆり先生に連れられ、ペンションの離れのスイートルームへ移動。何も知らない真琴ちゃんは、まだ皆と遊びたい!ってむずがったけど、無理矢理連れて行かれちゃった。後に残った河合さんと僕達四人はまだトランプに興じていた。
深夜〇時を回り、皆うとうとした頃、
「静かだよね」
ふと純ちゃんが離れの方を向いて呟く。
「あたし、去年の事まだ良く覚えてるよ。河合さんありがとね。私に初めて女を教えてくれたんだよね」
「いえいえ、どういたしまして」
長い髪の毛を揺らしながら、ともこちゃんと河合さんがにっこり微笑み会う。
「陽子はもう大丈夫と思うんだけどさ、真琴心配だよね。心に女が入っていく最初のメンタルトレーニングだもん」
ゆり先生に女である事を手取り足取り教えられた去年の事を思い出し、目を細めた。
「どっちか逃げ込んでくるかな?この部屋に」
純ちゃんが相変わらず、離れの方を向き呟いた。
「どうする?もう少し待ってみる?何か起きるかもしれないから」
河合さんの言葉に、僕達は後一時間程雑談しながら待ったけど、特に何も起きなかった。僕の頭の中には、陽子ちゃん、そして真琴ちゃんが先生達によって、脹らんだ胸を愛撫され、よがり方から女の心得、ベッドの上での仕草とかを教え込まれてるシーンが浮かんで来る。
(陽子、真琴。新しい世界に入ったんだよね)
明日の朝、二人どんな顔して挨拶するんだろう。わくわくしながら僕は眠りの準備に入った。
翌朝、僕達が起きたのは朝八時半。
「あー、もうこんな時間!」
雑魚寝同然で寝ていた皆を揺り起こし、大急ぎで朝食バイキングの部屋に向うと、既に真琴、陽子、そして先生達は朝食を食べていた。
「あ、おはようございます」
僕の挨拶の声に、真琴ちゃんと陽子ちゃんは、お互い顔を見合わせくすくす笑う。顔を見て笑ってやろうと思った僕が、逆に先に笑われて、僕はちょっと調子が狂っちゃって、次の言葉が出ない。ふと真琴ちゃんが、テーブルの上にうつ伏せたかと思うと、本当幸せそうな顔でにっこりして、窓から見える遠くの海を眺め始めた。その仕草は、今までの真琴ちゃんにはない、女らしい仕草。
「ねえゆっこ。ゆっこも去年されたのね。あ・ん・な・こ・と」
陽子ちゃんの言葉に僕は顔を只赤らめるだけだった。
「二人ともとても大人しかったわ。素直に女を受け入れてくれて。少なくとも去年のともこみたいに、途中で逃げ出す事なんてしなかったわよ。」
陽子ちゃんと真琴ちゃんは、まるで昨日の秘密訓練の余韻に浸っている様に、幸せそうに、時には目を会わせて微笑みあったり。少なくとも昨日の二人とは明かに違っていた。まあ、僕達も去年そうだったけどさ。
「堀さん、僕女になる決心して良かった」
「ゆっこ。女同士これからも仲良くしてね」
二人の言葉ににっこり微笑み、頷く僕。今年のカリキュラム終了のテニス旅行も上手くいったみたい。