メタモルフォーゼ

第十話「女の子になる最終関門2、男の人に抱かれる事」

 それは四月始め、伊豆の別荘。
「堀幸子さん」
「はい」
「美咲まいさん」
「はい」
「河合ともこさん」
「はい」
「以上三名。両性体への移行が確認されました。只、ともこさんは既に精巣除去されていますけど、他二名と同等に扱います。そして初期トレーニング全過程終了した事を証明し、後でフィメールパッドを替えも含め、五枚ずつ渡します。付け方の指導は後で」
 美咲先生の声が続く。
「次に、早乙女純さん」
「はい」
「無事、擬似女性体になった事を確認しました。今暫定的に子宮口は男性性器に繋げていますが、もし出血が確認された場合は速やかに連絡して下さい。女性性器形成の準備をします。そして二週間に一度、骨盤女性化の為の放射線治療を行います。」
 僕達両性体三人は互いに顔を見合わせた。出血って多分、生理!?そして女性器形成。、骨盤女性化!!そっかそこまで変身しちゃうんだ。純ちゃん。
 美咲先生の声に恥ずかしそうにうつむく純ちゃん。
「さあ、堅苦しいお話は終り!みんなおめでとう!じゃパーティー始めましょう!」
「やったあああ!」
「わああああい!!」
 可愛いパーティードレスに身を包んだ僕達四人の妖精達は、ぶつかり合う様に抱き合う。ピアノの生演奏が始まり、周りには二十人位のいろんな国のお客様。その中には僕の手術に立ち会った人もいる。でも、
「あれ、怪物は?」
 ゆり先生、(ダークグリーンに長いスリットのカクテルドレスが綺麗)がグラスを手にぷっと吹き出す。
「ライ先生?ふふっ、あの人はね、こういうの大嫌いなの。絶対来ないんだから。本当変わってるわ、あの人。コンピュータみたいな人だから。それよりお客様に挨拶してらっしゃい」
「はーい」
 薄緑で、胸元にレースが一杯ついた可愛いミニドレスの僕。今日の僕の髪型がいつもと違う。うん、生まれて始めて髪にリボンを結んだんだ。服と同じうす緑でちょっとポニーテールっぽく。なんか一気に女っぽく変わったって感じがした。
「ゆっこ、どういう風の吹き回し?そんなかっこするの。でも似合ってるわよ」
 この前と同じミニのブルーのドレスのまいちゃんが、お更にいっぱいオードブルを乗せながら話す。
 真っ赤だけど地味な雰囲気のパーティードレスの純ちゃんは、最初からミニケーキとかをぱくついてる。そして、あのブティックの河合さんとおそろいのダークチェリーブルーのセクシーなカクテルドレスを着て、河合さんの横でおすまししているともこちゃん。
「あ、ともこ!何お酒飲んでるの!」
「え、あ、何言ってるの。これグレープフルーツのジュースだよ。ね、河合さん。ほらかんぱーい」
 ともこのグラスに、マティーニのグラスを合わせ、同じカクテルドレス姿の河合さんがくすくす笑う。
「ここにいる四人が皆元男の子だなんて、本当信じられないわ」
 河合さんがため息つく様に言う。
 ふと美咲先生(シンプルな白のドレスが綺麗)が横に。
「河合さん、とも子を宜しく。可愛がってあげてね。たぶん相当のお手当て出ると思うわ」
「美咲さん。有難う。こんな楽しいお仕事させて頂いて。あ、ゆり先生」
 すっとゆり先生が寄って来る。
「マキちゃん、今度またいっぱい買うからね、あの店で。本当いい品揃えで助かるわ。あ、とも子の事宜しくね。それと今後の事だけど…」
 何やら大人の話しが始まったみたい。僕達四人はお客様皆に一人づつ挨拶してまわる。そのバックで、多分香港の人だと思う。僕達の好きな曲ばかり演奏してくれる女性のピアニストに、ノンアルコールのカクテルを僕達にいろいろ作ってくれるバーテンダの人。
「オウ、ビューテイフル」
「キュート!ベリキュート」
 特訓で英会話くらいぺらぺらになった僕達は、トレーニングの厳しさ、辛さとか、心と体の変化とか、思い思いにお客様達に話す。そしてその最中
「えっと、皆様に発表致します。今回治療を終えた四人のフェアリー達には、正式に私達の一員となってもらう事に決まりました。四人は今後も学生生活を普通に送ってもらい、女の子としてちゃんと生活する事、そして実験等に協力してもらう事を条件に、一ヶ月一0万円の手当てが支給されます。但し、このお金は、女の子に変身する為の出費のみに使う事が許され、もし無駄使いが発覚した場合は、その分来月は減額とし…」
 えええ、一ヶ月一0万円もくれるの!
 皆の笑い声にも関わらず、美咲先生が書類を読み上げる中、僕達は嬉しくて歓声を上げた。でも無駄遣いって…
「いいのよ。好きに使って。でもくれぐれも変な事に使っちゃだめよ」
 ゆり先生がウインクする。

 僕達が主賓のパーティーも終りを向えた。ゆり先生による最後の挨拶。そして、そして、
「ゆっこ、とも子元気でね。私すごく寂しくなるよぉ」
「まいちゃん、とも子ちゃん。今まで本当ありがとね。まい、寂しいからって泣かないでね。電話してきてね」
「ゆっこ、いろいろ気遣ってくれてありがと。まい、始めてだよね。離れ離れになるの」
 涙がとめどなく流れ、やがて僕達は互いに抱き合ってむせび泣く。
「あんたたち、どうせ一ヶ月に一度は会えるんでしょ。そんなにオーバーに」
 なんて傍らで喋る純ちゃんの目にも涙が溜まっていた。その時ちょっと傍らでもらい泣きしていたゆり先生が私達に割って入る。
「さあ、パーティーも終ったし。みんな部屋に戻って待ってて。贈り物を持っていくから」
 ちょっと酔ったゆり先生の顔は、少し赤い。

 薄緑の部屋のベッドに座ってその時を待つ僕。偽物とは言え、もうすぐ僕の股間には女性器が取りつけられるんだ。どんな形なんだろ。以前エッチした雅代ちゃんのって。ううん、あまり覚えてない。初体験で興奮しててよく覚えてなかったし、でもなんかあまり綺麗じゃなかったし。それに他で見たHビデオ思い出しても修正済だったし。
「ゆっこちゃん。持ってきたよ」
 ノックの音が聞こる。
「はっはい。どうぞ」
 小さな箱と、何やら小さなカバンを持ったゆり先生が入ってくる。僕はごくっと唾を飲む。
「さあさあ、ゆっこちゃん。可愛いのつけましょうね」
 ゆり先生ちょっと酔ってるみたい。
「ほらほら、ゆっこちゃん。ベッドに寝て頂戴。そして、これよ。あんたが付けるのは」
 鼻歌まじりでゆり先生がそれをつまみ出し、そしてパンツでも見せる様な手つきで、寝ている僕の顔の前に出す。
「う、うわあ、女の子のあそこって…、こんなの付けるの」
「何よ、変な子ね。普通の女の子のあそこって、もっとグロテスクだよぉ。あたしの見せようか」
 はははって先生が笑う。いいよ、そんなこと。
 それは逆三角形の一見皮膚色のパットだった。前の部分がかなり多めにカバーする様になってて、長方形に薄く生えた恥毛が有った。その長方形の後ろに…
「うわあ、先生、これやっぱりグロテスクだよぉ」
 過去に雅代ちゃんとペッティング経験の有る僕は、ある程度どんなものか知っていたけど、正直言って、世の中の男達がどうしてそんな物に興味が有るのか、疑問に思った事だって有る。絵とかイラストで見るよりは、ずっと奇妙な物なのに。
 黒ずんだ組織の真中に、少し肉厚に縁が覆われた割れ目が一本。そしてそこから除いている鮮やかなピンク色の皮膚組織。でも恐る恐るそれに触ってみると、とってもぷるぷるとして柔らかい。
「何言ってるのぉ、女の子はみーんなこれ持ってるのよ。さ、早く付けちゃお」
 あんまり気乗りしなくなった僕だけど、先生はおかまいなし。僕のドレスはたちまちまくられ、白いパンツがストッキングごとずらされる。
「いい、本当の女性自身が作られるまで、恥毛はまめに剃ってね。でないと接着剤の効きが悪くなるからね。悲惨よぉ、みんなとお風呂に入ってる時取れたりしたら」
 カミソリで丁寧に毛を剃られる僕。ゆり先生の柔らかな指が気持ちいいけど、僕のあそこはもうピクリとも動かない。
「じゃあ、付けるよ。へんしーん」
 股間にたっぷりクリームみたいなのを塗られ、やがて冷たい感触。
「ううっ」
 僕は目をつむり横を向く。あのグロテスクな気味の悪い物を付けられたと思うと、少し変な気分。やがて接着剤が乾いたのか、そのフィメールパッドとかいうのが、僕の股間にしっかりと、特に又の部分をしっかりガードする様に貼り付いていく。

 ゆり先生の手が、僕の小さな男性自身をちろちろと触ってる。でもそれはすぐ終った。
「はあい、ゆっこちゃん。女にしたげたよ。見てごらん」
 恐る恐る僕は起きあがって、偽物だけど、女の印の付いた自分の股間を見る。別に何の事は無い。さっきの人工組織みたいなのが貼り付いているだけなんだけど。でもそれは流石に見事に女の子の秘部を作っていた。又の部分の土台はかなり厚く硬め、そしてその上にはとっても柔らかい組織が作られている。自分の体との境界線は、それに付いている恥毛で見事にカモフラージュされてる。股間のその下をそっと指でなぞると、何かの突起物が有り、そのすぐ下にさっきの割れ目が有った。
「何だか、股がすごく窮屈。太ももに両端が食い込む感じだけど」
「女の子って、男の子よりまたぐらが広がってるでしょ。無理矢理それを作る為なの」
「あれ、僕のあそこはどこに?」
「ふふふ、割れ目の中触ってみなさい。女の子のあそこ、本で見た事有るでしょ。ほら、肉厚の外陰部の内側に、あれを格納する所が有るでしょ」
 ぷるぷるしているひだを指で掻き分け、言われた所に指をやると、あ、有った。僕は小さくなったそれを引っ張りだして、そして再び元に戻してみる。ふうん良く出来てるんだなあ。
「おトイレの時は、しゃがんだ後、それを出してするの。そしてちゃんと紙で拭いてから元の所にしまうのよ。でないと不潔になるから」
 実は僕、時々和式のトイレなんかで座るのが面倒な時、実は立ちションしてたんだ。でも、これを付けたらもう邪魔で出来なくなる。それに、トイレの時あまり紙使わなかったんだけど、もうこうなった今、使わずにはいられないみたい。
「あははっ、ゆっこちゃん。今のあなたの姿って、オナニーしてる女の子みたい。可愛いわ」
 先生の声にびくっとして、顔を赤らめてそそくさとショーツを戻す僕。
「あ、そうだ。どれくらい上手くカモフラージュされてるか、ブルマーで試したいんだけど、今東京だよね、あれ」
「あ、まいちゃんはここの近くの高校でしょ。ゆっこちゃん、履いてみてよ」
「うん、試してみる」
 ベッドから起きあがり、ドレスを直して、僕はまいちゃんの部屋へ向った。
「まーいっ、ブルマ貸して」
 いきなりドアを開けた僕の目に飛び込んだのは、しやがんだ美咲先生の後ろ姿と、その頭越しに見えるまいちゃんの姿。偶然にも、そこでは美咲先生がやはり体育の事を心配して、まいちゃんにブルマを履かせて、そのパッドのカモフラージュ具合を確かめていた途中だった。
「きゃっ、ゆっこ!いきなり何よ!もうっ」
 とっさに何故か股間を両手で隠すまいちゃん。でもちょっと微笑んで手を後ろ手に。
「ゆっこちゃん、まいももうレディなんだから、ちゃんと女の礼儀はわきまえないと」
「はい、すいません」
 もう、どう見たってまいちゃんは男じゃない。Cカップの大きくて可愛い胸をブラで包み、ブルマの股間はすっきり。その姿は、昔、更衣室の穴から着替えを見た女の子の姿そのものだった。
「ゆっこ、目立たないよね、あそこ」
「うん、全然大丈夫。ねえ、あとで貸して」
「あ、試してみるの?ゆっこも。いいよ」
 ブルマを脱ぎ、ちょっとつま先立ちで歩くブラとショーツ姿のまいちゃん。畳んで渡してくれたその紺の布の塊からは、暖かい体温と女の子の香りが微かにしていた。

「あ、本当。本当に僕、ブルマーがちゃんと履けてる…」
 フィメールパットは見事に僕の股ぐらを処理し、適度な隙間を作っていた。でも、お腹から股間にかけてのラインは、少しふっくらしたとはいえ、まだ絶壁みたいだった。でもいい。こんな女の子いるよ。ちょっとボーイッシュな。ええと…中学のクラスメイトの…。
「さ、ゆっこちゃん、もういいでしょ?返してらっしゃい。さあ、私は戻るわ。明日はゆっこちゃんの引越しも有るし」
「まーいっ、返しに来たよ。入っていい?」
 まいちゃんの軽い声がした後、ドアを開けた僕の目には、あ、ともこちゃん。でも、目は真っ赤ですすり泣く声で何か話してる。傍らのまいちゃんも目は赤い。たぶんお別れのお話だったんだ、そう思った時、
「ゆっこー!」
「ゆっこー、元気でね!」
 二人は抱き付いて来た。完全なお別れでこそないけど、今まで本当に苦楽を共にしてきた二人と別れるのはとっても辛い。今、まいちゃんの部屋には僕達三人だけ。さっきは人目を気にしてたけど、もう今は遠慮も何も無い。僕達はお互い柔らかくなった体をしっかり抱き合って大声で泣いた。その声もいつのまにか自然に出る女声。言葉は出ず、ただ嗚咽するだけの声。
「キャ」
 三人寄り添い合う中、ともこちゃんが部屋のベッドに足をすくわれて、まいちゃんのベッドに転がる。
「と、ともこ、何やってんのよ、もう」
 僕は泣きぐずりながらも笑って言う。その時
「ともこーっ」
 まいちゃんがベッドにダイブし、転がっているまいちゃんに抱き付き、頬擦りし始めた。
僕の体も無意識のうちに、ともこちゃんに抱き付くべく、ベッドに転がっていた。
ベッドの上はちょっとした光景になっていた。別れが真近に迫るのを感じ、僕達は三人でいられる時間をいとおしむ様に、お互いを触りっこし、時には口で軽く噛む様にじゃれあった。三人が男の子のままだったらそりゃ抵抗は有るだろうけど、丸くて可愛くて白くて柔らかで、そしてペニスが有って、おっぱいも有って、いい匂いのする不思議な生き物になった僕達には、何故かお互いこうする事に何の抵抗も感じなくなっていた。
 むせび泣きながら相手の柔らかさを感じるべく、子猫がお互いを舐め合う様な感じでお互いを触りあう。やがて下敷きになってたともこちゃんから、パジャマの上下が僕とまいちゃんによって脱がされた。ともこちゃんは抵抗しなかった。
「ともこ…」
 ともこちゃんのブラのホックに手をかけ、するするとブラが外されると、三人の中では一番小ぶりだけど可愛い胸が現れた。
「まい…ゆっこ…、今までありがとね」
 涙目で呟くともこちゃんは僕の体を少し愛撫する様にしたかと思うと、僕のブラのホックに手をかけた。
「あ…」
 柔らかいともこちゃんのお腹をキスする様に舐めてた僕、その僕のブラがするするっとともこちゃんに外されて行く。
「あははっ、ゆっこのブラ取っちゃった。でも一番可愛いよね、ゆっこの胸」
「そうよね。あたしの胸は大きいけどここまで可愛くないもん。吸っちゃお」
 まだブラ付けたままのまいちゃんが、僕の胸を口で転がし始める。
「ああん、まいちゃん、ちょっとぉ」
 恥ずかしくて顔赤らめる僕。
「ねえ、ゆっこー、ゆっこのこのおっぱいさ、膨らみ始めた時の事覚えてる?」
 まいちゃんに吸われているもう片方の僕の胸を、指で愛撫しながら話すともこちゃん。でもその声が頭に入らない。ああっ感じる…いい気持ち、何て感じやすくなったんだろ、僕の胸。ふとまいちゃんが吸うのを止め、今度は触りながら話し始めた。
「吸い心地も触りごこちもすごくいいよ、ゆっこのおっぱい。とうとうこんな風になっちゃったよね。ねえ、あの時さ、確かお風呂入っててさ、いきなりゆっこの叫び声聞こえてさ、脱衣所に行って見たら…」
「そう、そこで鏡見ながらゆっこがびっくりした顔で「膨らんでるーっ」て叫んでさ。あの時って乳首だけが大きくなってたんだよね」
 僕の頭の中に、あの時の事。そう、始めて胸の膨らみに気付いた時の事が浮かんで来る。そうなんだ。すっごく驚いて、すっごく恥ずかしくて。
「そいでさ、ゆっこがすごくはしゃいでさ、まだおっぱいが男の子のままだったともこが嫉妬してさ、薬無理矢理いっぱい打ってさ、あそこが腐りかけたんだよねーっ」
 意地悪く話すまいちゃん。
「ゆっこー、あたしに今さ、たまたまが無いのはさ、ゆっこがはしゃいだからだぞーぉ!」
 今度はともこちゃんが僕の胸にむしゃぶりつき、小さな口と舌で僕の胸を。
「キャーっともこっ!あはっ!くすぐったいから、やめてーっ」
 足をばたつかせて抵抗する僕、でも真剣に抵抗なんて出来っこない。
「ゆっこってさ、いじめると面白いんだよ。あたしもやろっ」
 今度はまいちゃんが僕のパンツを脱がせ始めた。あ、やめて、あのパッドがまだ張り付いたまま、恥ずかしい…。
 器用にパンツを脱がされた僕、そしてあの人口の割れ目を、まいちゃんは口で愛撫し始める。そして口で器用に柔らかな花びら掻き分けたと思ったら、
「あ、まい、そこは、ちょっと…うう…」
 まいちゃんの小悪魔の様な口は、割れ目から僕の退化した男性自身を引っ張り出し、指で優しくなぞると、皮に包まれたあそこが遂に現れた。
「ねえ、ともこー、みてよ!ゆっこのあそこってさ、もうカリの部分も退化しちゃっててさ、本当小さくて真っ白な蒲鉾ソーセージみたいになってんの」
「わあ、見せて見せて!」
 僕の胸を吸うのを止めたともこちゃんは、ベッドの上を這いながら僕の下半身を見物に。
「わあっ、かっわいいいい!」
 素っ頓狂なともこちゃんの声、もう僕恥ずかしさの限界。
「こらっもう、僕で遊ぶのやめてよ!」
 すねる様に僕。でも二人はそんな僕に目を向けた後、向き合って悪魔の微笑みを交わした。
「ええい、最初にゆっこを徹底的にいじめちゃお」
「まだ僕なんて言ってる、ゆっこが先、ゆっこが先!」
 二人は再び僕に襲い掛かる。軽く抵抗する僕だけど、本気ではなかった。しかし、もう二人の目はマジだった。
「可愛いおっぱいだよね…ゆっこぉ」
 二人に胸を吸い付かれた僕の口からたちまち出て来る女のあえぎ声、そして女の子の様にくねっていく腰。
「まいー、ともこぉ、うぅーん…」
 白くてすべすべの柔らかい軟体動物に変身した二人は、同じ体になった僕の体に全身で擦りより、手はパッドの上からあそこに伸びて行く。
「あっ、あん、ああん」
 僕の全身にいつのまにか出来た、女としての性感帯一つ一つが、まいちゃん、ともこちゃんの柔らかな体を感じていく。体にはうっすらと汗。そして交じり合って部屋中に漂って行く、女性香となった僕達三人の芳香。
「ゆっこぉ、すごく感じてるでしょ」
「う、うん。ああ、僕の体が、ともこちゃんを女として感じてるの」
「ううん、嬉しい。でもさ、それってまだ男が残ってるからじゃん。あははっ、あたしはそうだよね。あたしってさ、もう体的には子宮の無い女の子と同じだもん」
 新鮮な果物の様な女性香をふりまき、にこっとして体をぶるっと振るわせ、体の汗を飛ばすともこちゃん。両手で僕の秘部を弄びそして可愛い目で僕を除きこむまいちゃん。
「ゆっこ、好き」
「僕も好き、そして、ともこもだーいすき」
 その言葉に二人はまた僕を…ああ、もうくたくた。とってもいい気持ち。
「じゃ、次ともこの番ね」
「えええ、あたしーぃ?」
「ええい、ともこ!仕返ししてやるう」
「きゃーっ、ゆっこくすぐったい、やめてやめてっあははっ」
 まいちゃんより先に僕はともこちゃんに襲い掛かる。そして、あお向けのともこちゃんの上載って四つんばい。僕のおっぱいは重力で下にぷるんと下がった。
「ああ、僕の胸、こんなに可愛くなったんだ」
 それを触ろうとするともこちゃん、でも僕はふと思い付いて、彼(?)の乳首と僕の両乳首を軽く触れ合わせた。途端に冷たく、そして自分が女だって事を僕に分からせるかの様なせつなくて不思議な感覚。
「あ、ゆっこ、それ気持ちいいっ」
 僕は数回互いの乳首同士を触れ合わせた。
「ああっゆっこ、ねえ、ねえ、どうしてそんな事思い付いたのよっ」
 お互い可愛い女の子に変身しちゃったんだよって二人で確かめ合う、そんな感じだった。そして傍らにはいつの間にかまいちゃんが、まだブラ付けたままで、僕と同じ四つんばいでともこの顔を除き込む。
「ともこ、長い間一緒にいるけどさ、こんな事始めてするよね。前は確かに男友達だったけど、今は女の子同士で、しかもこれからさ、ホモっていうか、レズっていうか、不思議な運命だよね、今気持ち良くしたげる」
 体を起こして可愛く後ろ手にブラを自分で外す。胸に吸い付いたカップを外すと、そこには可愛い桜色の乳首の付いたCカップの大きくて可愛いバスト。色白の体の胸に付いたそのおっぱいは、もはや半分女になった僕の心の男の部分を引き戻してしまいそうな可愛さ。
「ともこーっ、ほらさ、大昔パイズリしてみたいとか、言ってたじゃん。今あたしの胸でやったげるよ」
「ああん、まい、ねえ、ちょっと、あたし何だか変な気分。まいにパイズリされるなんてさ、うわっすっごい柔らかい。ちょっと、ホモじゃんこれ、あははっ気持ちいいっ!」
 意味不明の言葉を口にするともこちゃんだったけど、だんだん口からは、女の喘ぎ声が漏れて来る。そして僕は覚悟を決め、ともこのパンツを脱がせにかかった。
(だって、ともこあんなに一生懸命僕のあそこにさ、いいことしてくれたもん。お返しだよ) 
 レースいっぱい付いた可愛いパープルのともこのパンツを脱がせると、ともこちゃんの声が少し変わった。
(ともこ、いくよっ)
 指先にまで脂肪がつき始め、柔らかくすべすべになった僕の指が、ともこちゃんの白い太ももを、まずご挨拶替りに撫でてあげる。
「あ、あん、ゆっこぉ…」
 フルーツの香りのするともこの体を舌で暫く舐めてあげると、嬉しそうに腰とかを動かす彼(?)僕の口はとうとう彼の付けてるパッドの割れ目にキスする様に。やはりグロテスクなその形に一瞬戸惑ったけど、すぐに僕の舌はその柔らかいピンクの組織に滑り込み、僕の口は小指の半分になったそれを咥えて引っ張り出した。
「あ…ん、ゆっこ、恥ずかしいよぉ」
 慣れない口でその皮を剥くと中からその芯ともいえるべきそれが出てきた。
「キャン!あん!だめぇ!」
 舌で一瞬触っだけなのに、ともこちゃんの体は、お腹の上にいるまいちゃんを跳ね除けそうな勢いで反り返った。
(僕の今やってる事って、これ女の子のする事だよね)
 僕はふとそう思った後、ともこちゃんのそれを口に含み、吸い、口で愛撫し、動かした。ともこちゃん、ありがとね。今までありがとねって心をこめながら。
「あああああん、ゆっこ、いい、いいわ、いいけど、頭おかしくなりそう!あああん」
 悲鳴に似た声がともこちゃんの口から。ひょっとしてあの手術の時、ともこちゃんもたぶんこんな声出しながら、女の子の胸に変わっていったんだって思ったりする。
 僕とまいちゃんのサービスに、とうとう疲れ果て、声も出なくなっていくともこちゃん。
「じゃ、次、まいね」
「まいの胸ってさ、愛撫してあげるの疲れそう」
 僕達のマツサージに最初はキャッキャッ言ってたまいちゃん。高橋由○子似のその目とその口がだんだん性を感じて行く女の表情になっていく。大きいおっぱいも、とっても柔らか。僕もいっぱい口で愛撫し、吸ってあげたんだ。まい、女を感じてるまいって、とってもかわいかったよ。
 男の子から女の子への変身中にだけ存在する不思議なひととき。男の子でもなく、女の子でもなく、その両方を持つ「妖精」であるひととき。じゃれあう事で互いに半分女の子になった自分の体を感じ合う、妖精になった僕達三人のミステリアスな夜遊びは朝方まで続いた。
 まいちゃんのベッドでパンツ一枚だけの姿で、三人抱き合う様に眠りについたのは、多分明け方四時位じやないかな。
 そして僕達がじゃれあっている頃、別の部屋ではゆり先生と美咲先生と、そして純ちゃんが怪しい夜遊びをしていた事を、僕はこのずっと後に知ったんだ。一足先に妖精から、擬似女性になった純ちゃんに、ゆり先生達は、大人の女としての手解きを伝授していたみたい。この時初めて大人の下着とかスリーインワンを付けたりして、子宮移植され、おとなしくなった純ちゃんから、また別の女の部分が引出されたって言ってた。

 翌朝、別荘には二台のトラックが到着し、まだ眠い目を擦っている僕達の荷物を運び出し始めた。でももう僕達三人は泣かなかった。僕達はどこへいっても一緒だよって、昨日三人で確かめ合ったんだもん。
 小春日和の中、ちょっと薄着している僕達のシャツに透けるブラのラインとかを、引越し業者の人達はなぞる様に見ていく。中には話しかけて来る人も。ちやほやされる女の子の特権をちょっと楽しく感じつつ、僕とともこちゃんは約一年程暮らした伊豆の別荘を後にした。
 いつまでも手を振っているまいちゃんに、僕とともこちゃんの目が少しだけ潤んだ。でも一ヶ月に最低一回は身体検査とかで会えるもんね。

 ともこちゃんとも別れ、今後僕の暮らす早乙女クリニックに到着。そしてそこには夢の荷物が届いていた。待ちに待った高校の制服!荷物の運び込みが終るやいなや、僕はスカートを脱ぎ捨て、悲鳴に近い声を上げ、包みを破り裂いた後取り出したのは、夏冬三着ずつのもちろん女子用制服!
 胸元に、縦に可愛いフリルの有る可愛いブラウス、グレーのチョッキにエンブレムの付いた右前の可愛いブレザー。そしてやはりグレーがベースに薄いグリーンと黄土色のチェックのスカート!!
「他の人のじゃない、僕の!僕の!僕が着ていく制服なんだ!」
 始終笑いながら、指定の紺のハイソックスを着込んで、
「三、二、一、ゼローッ」
 僕は鏡の前に飛ぶように立った。そして暫く声が出なかった。デザイン的にも可愛い制服に包まれた僕の姿、そこにはなんでもない、一人の広末○子に似た一人の女子高生が立っていた。髪を直し、服を整え、僕はすっかり変わった僕の姿を見つめた。
 思えば始めてここに来た頃、用意された服とスカートをこの鏡の前で着たんだっけ。化粧もしない、只女の子の服を着た男の子がそこに写っていたっけ。そして一年経った今、その鏡に映っている、胸元が豊な、化粧しなくても、どう見ても少女にしか見えない同一人物は…。
「私、堀幸子。一六才、女子高校生です。宜しくねっ」
 数日後に待っている、女子高生としての生活。ああ、本当に、本当に、本当にっ!!期待と不安で胸が張り裂けそう!
次の日の朝、興奮して殆ど寝られなかった僕がパジャマ姿で部屋の窓を開けると、まばゆい光が射し込む。その光をまぶしそうにしながらも、体に受けようとする、真っ白な可愛いパジャマ姿の僕。新しく用意された早乙女クリニックの中の、まだ消毒液が微かに匂う新しい部屋の大きな姿見を見ながら、着替えを始めた。今日は待ちに待った女の子としての学校デビューの日。
 まず、前に手渡されたフィメールパットを洗浄・感想容器から取り出し、慣れた手つきでパジャマを脱ぎ、ブラを付けた後、グリースの様な接着剤を塗り、それを股間に付け、小さな男性自身を外陰部に似せた部分の裏に納めた。すーっとする感覚と共にたちまち接着剤が乾き、それとともに股間が少しキュッと締めつけられた。
「うふふっ」
 僕は少し顔を赤らめてパンツを履き替え、そしてキャミソールと白のブラウスが僕の体を包み、数日前届いたあの女子用の制服が僕を飾って行く。最後に胸にボウを付け、ちょっと可愛く手を振ると、同じ仕草をする鏡の中の女の子。
「これ、僕なんだ。本当信じらんない…」
 少し鏡の中の僕をじっと見つめていた時、
「ゆっこ、起きてる?そろそろご飯にしない?」
 ドア越しに純ちゃんの可愛い声。ともことまいと別れた後、今後は純ちゃんが僕のルームメイト、そして女の子としての先輩になる。
「はーい、今行きまーす」
 食事は全て自分の分は自分で。慣れた手つきでスクランブルエッグを作ってると、純ちゃんが僕の分もサラダ作ってくれている。
「ゆっこ、どう、今の気持ち。今日から女子高校生なのよ。緊張しない?」
「え、うん、緊張するっていえばするし…」
「あんた、本当に楽観的なのね。あのね、女子高校生って、男と全く違った生き物でさ、それなりのしきたりとかルールだって、そして人間関係とか、すっごく難しいのよ」
 トマトを素早く切りながら純ちゃんが呆れた様に言う。
「ゆり先生から講義有ったと思うけど、あんな学問的な物じゃないの。本当はもっとドロ臭いんだからさ」
 僕はどきっとして、フライパンの手を止める。
「ああもう、卵焦げちやうじゃん。まあ、先生の教義と現実との違いを、早めに理解する事ね」
 そんな、行く前にそんな事言われると、何だか怖くなってくるじゃない。純ちゃんの意地悪!
 僕の分のサラダも持ってテーブルに行く純ちゃんがちょっと僕の方を向いてにっこり喋る。
「ゆっこ、いい?簡単な事よ。よく覚えてね。一つ、真似っこって言われてもいいから、他の女の子の仕草とか口調を徹底して真似る事。そして二つ目、女の子に理屈は必要無いの。ゆっこは別にそうしなくてもいいけど、女の子は感情で動く動物なの。いい?理屈は無用。言葉は特に気を付けてね。相手をくれぐれも傷つけない様に。そして三つ目、あなたももはや女の子なんだからさ、何事も全身で感じる練習してね、嫌な事とか有ったらさ、素直に嫌ってすねていいし、泣きたい時は泣いていいの」
 可愛くウインクする純ちゃん。
「うん、わかった」
 何だか以前から胸につかえていた物が何だか取れた様な気がした。ありがとう純ちゃん。

 ちょっと勇気を出して早乙女クリニックを出る僕、女子高校生として初通学!今まで別荘で暮らしてきた僕にとって街の人ごみは久しぶり。満員電車の中少し皆の目線が気になるけど、それは僕の思い過ごしみたい。皆の視線は僕を一人の女子高校生として見ているにすぎない物。しかし、僕はまだ、女として混雑した電車には慣れてなかった。
 特にサラリーマンのおじさんとか、ふらついたふりとかしてして容赦無く僕の胸とかに当たってくる。胸だけじゃない、お尻とかにも頻繁にタッチされる。とにかく男の子の時と違って、下着は薄くて服とかはかなりぴっちり目になってるから、服を通して相手の手の感触とか分かるんだ。
(うわあ、いやだあ)
 女の子達ってみんなどうやってこういうのガードしてんだろ。
 最寄の駅から電車に乗り、学校の近くの駅に近づくにつれ、だんだん数が目立って行く、僕と同じ服を着た女の子達、そしてグレーのブレザーの男子高校生達。
(なんだ、男の子達ってまだガキ顔じゃん)
ふとそう思ったけど、僕も一年前はあんなだった事を思い出し、少し吹き出す僕。
 とうとう学校に到着。一年生のクラスの校舎に入ると、皆まだ見知らぬ顔同士なのでとても静か。手渡されたクラス分の資料を見ると、僕は一年A組。そこに印刷されている(堀幸子)の名前を見た瞬間、
(ああ、僕本当に女子高校生になったんだ)
 って初めてその不思議な感覚を噛み締めた。
 教室に入って自分の名前の書いた紙の置いてある机に座る。そこには自分の名札、そして赤とオレンジ、黄色のチェック柄の可愛い僕の名前の入った女子用の生徒手帳。やがて続々教室に、男女学生が集まり始める。僕の周りに立ちこめる女の子達の独特の女性香。それに気を取られていた時、とんとんと背中を突つく可愛い指の感触。びっくりして振りかえると、その子はにっこりした。
「こんにちは、ねえ、お友達にならない?」
「あ、こんにちは。宜しくね」
 僕はびっくりしてそそくさと挨拶。
「ねえ、前の方にも声かけてもらえませんか」
 びっくりはしたけど、僕は前の娘の背中をつつく。たまたまその娘のしてるブラジャーに指が当たり、僕は自分の付けているブラのホックの感覚を少し感じてしまう。
「こんにちは、あの、これから宜しく」
「あ、こんにちは、お名前何て言うんですか?」
 周りを見ると、あちこちで僕達と同じ事している女の子達。たちまち小さな、にわかお友達グループが出来上がって行く。でも男の子達はほんの数人を除いては、全くコミュニケーションを取ろうとしていない。女子高校生って、もうここから違うんだ。
「ねえ、ゆっこ、携帯の番号教えて」
「あ、私まだ持ってないんです」
「ええ、そうなの?、じやさ、今日終ったら買いにいこ」
「あ、私も一緒に行っていい?」
「あ、一緒に行こうよ」
 もうホームルーム始まる前から僕の前後左右はお互いあだ名で呼び合う仲に。それにくらべて男って、本当無粋なんだから!。
 高校最初のホームルームが始まり、自己紹介で僕の番が回ってきた。僕はちょっと恥ずかしく挨拶、ちょっといろいろ飾りながら。
「堀幸子といいます。宜しくお願いします。趣味は…」
 授業の時間割が発表されると、僕は一瞬目が点になった。
(うわあ、明日初っ端で、体育だよぉ…)

 その日は午前中に終り、午後は早くも出来た女友達と早速渋谷に繰り出した。ちょっと大人しい武見陽子ちゃん、ロングヘアが可愛い水無川恵子「みけ」ちゃん、そしてメガネが可愛い、金井智美ちゃん。
 まず最初にマックでお昼、いろいろ自分の自己紹介、僕の場合、留学から戻ってきた帰国子女という事になってる。
「あまり話ししたくないの」
 って言うと、皆気を使ってくれて、その事には触れないでくれる。僕以外の三人はぺちゃくちゃ、本当に良く喋る。僕も伊豆にいた時いろいろ女の子の今の流行とか勉強してたから、何とか会話についてこれるけど、本当冷や冷や物。とにかく乗りが悪いと敬遠されるから、僕はとにかく皆に合わせて喋りまくった。
 次はプリクラだって。最近空いているとはいえ、この時期はどこも混んでる。比較的空いてるゲームセンター見つけてキティちゃんのプリクラに四人で並んだけど、もう前の子達いつまでも撮ってるし、その最中も僕は他の三人に話し合わせるのに必死。智美ちゃんなんか前の女の子に喋りながらメガネの底からガン飛ばしてるし、もう、早く終ってよ、前の女の子!!僕話し疲れたよ!
 やっと僕達の番だけど、僕の後ろの女の子達は、早く終れって目線送ってくるし、もう、順番なぜ待てないのっ、男の子だったらそんなに冷たい目線なんか送らないよっ!
「ゆっこ、どうした?疲れた?」
「ううん、なんでもない」
 陽子ちゃんの優しい言葉に僕は助けられる。
 やっと僕と陽子ちゃんの携帯を買いに、某電気店に。
「ここ、すぐ使えるから」
 案内する智美ちゃん。そういえば、ずっとここまで智美ちゃんが僕達を仕切ってるって分かった。そっか世話焼きなんだね、智美ちゃん。
 その智美ちゃんは、電気店にはいるやいなや、自分が買うんじやないのに、店員さんにいろいろ質問、僕も負けじと質問。もう調子狂っちゃって、時折男言葉出ちゃうけど、今まで喋ってて、女の子が男言葉使うのはもうここでは普通って分かったから、別段気にしなかった。でももう本当くたくた。
 結局僕はムービー、TV付きの比較的新しい物(だってお金はあるもん)陽子ちゃんは少し安い前モデルを買った。
 さあ次は、ストラップ?もう明日にしようよぉ、智美ちゃん…
「みんな、走るぞ!」
 智美ちゃんにせかされる様に走り出す三人。そして夕方近くなったこの頃から目立ち出したキャッチらしきお兄さんが走っていく僕達の前を塞ぐ様に声を掛ける。もう邪魔邪魔!!
 智美ちゃんの紹介でストラップ専門の小さい店へ。流石に可愛い店、しかも女の子ばっかり。店内にむっとする化粧の匂いと女の子達の独特の熱気。
「智美、すごいね、いろいろ知ってて」
「そそ、渋谷はあたしの庭だって。でもここの店はみけちゃんが先に見つけたんだよ」
 いろいろ可愛いデザインに可愛いキャラクタ。店中にたむろする女の子達に溶け込んで行く自分の姿が怖い。あ、そういえばみんなスカート短い。
「へへへ、新人女子高校生だとね、割り引いてくれんだよ、ここの店」
 みけちゃんが笑いながら喋る。
 可愛い熊とキティのストラップ買って、次は喫茶店で皆で携帯番号のを教え合う。しかし本当、街歩けばそうでもないけど、店とかはもう本当女女女!
 ちょっと気後れした後飛びこんだ女子トイレには、すでに別の高校の女の子が鏡の前でたくさんタムロ。
(何しにきたんだよ)
 なんて冷たい目で見る子もいる。もう今日だけで、女同士の裏をかなり見たって感じ。本当こんなの知らなかったよ。

「じゃさ、次カラオケ行こうぜ」
 また出た智美ちゃんの提案、僕はもう行きたくないけど、
(女子高校生は乗りが大切。乗りに遅れるとつまはじきされちゃうの)
 ゆり先生の講義通り、僕はなるべく疲れ顔を見せずに笑顔で頷く。
「じゃさ、スカート短く替えない?」
「うん、ゆっこも、陽子もやろうよ」
 智美ちゃんとみけちゃんの提案、あああ、今日一日でここまでやるのぉ
「あ、私うまく出来ないのそれ」
 僕がちょっと申し訳なさそうに智美ちゃんに言う。
「じゃさ、ボックスでやろうよ」
 もう内心ふらふらでたどり付いたカラオケボックス、今五時か。ボックスの中に入るといきなり監視カメラに上着をかけ、スカートを脱ぎ始める智美ちゃん。
「店員いれちゃだめだよ」
 言いながらみけちゃんもスカートを脱ぎ始める。
「智美!うわ、いきなり」
「いいじゃん、女同士なんだから」
「男いたら絶対出来ないよねー、こんなかっこ」
 僕の言葉を軽くいなし、スカートを細工し始める智美ちゃんとみけちゃん。
(あのさー、僕半分まだ男なんだよぉ)
 ブラウスから見える柔らかそうな生足、まだ男が残ってる僕は何だか興奮してくる。
「何、ゆっこ?ははは、可愛だろ?見惚れた?私の足」
 ソファーにごろんと転がり、足をすっと天上へ。もう、ピンクのパンツが目に刺さるよ!智美!
「はい、次ゆっこゆっこ!さ、がんばろー」
 勢いで僕もスカートを脱ぐと、以外にも細工の方法を優しく教えてくれる智美。スカートのウェストを外に二回折り、ベルトを通して…
 再び履いた僕のスカートは、既に膝上十センチになっていた。
「本当はもっと短くすんだけどさ、いいよね、始めてなんだから」
 横では陽子ちゃんが、みけちゃんに教わりながら同じ様にミニスカートに変身。モーニング○、スピー○、等など次々に入れられる曲を、僕は最後の力を振り絞って歌った。
 やっと解放されたのは夜七時。皆と別れ一人になった僕は、ふらふらになりながらセンター街のマックにたどり付き、始めての携帯で純ちゃんを呼び出した。
「もしもし、あ、ゆっこ、どうしたの?あ、携帯買ったんだ。今どこ?あたし渋谷だけど」
 純ちゃんも渋谷にいる。その声を聞いた途端、僕は半分泣きながら携帯に喋った。
「純、じゅーん!今センターのマック。早く迎えにきて!もう僕耐えらんない!」

「あ、彼女さ、一人?寝てるの?あのさ、暇?、俺達も暇なんだけどさ」
 半分うとうとしてた僕は、目を開け、すぐに事態を理解した。
 始めて女の洗礼を受け、くたくたになった僕に、今度は容赦なくナンパ…、え、この僕が、ナンパ!されてるの!?ちょっとちょっと、僕まだ半分男だよ。あ、そういう問題じゃなくて、
 ロンゲのバカ面なのが二人僕の前にいつのまにか座ってる。一人はいきなり煙草をふかし始める。
「すごいなあ、その制服○○学院じゃん、頭いいんだあ」
 うっさい!疲れてるのに!勝手に煙草吸うなよ!!僕まだ半分男だぞ!!!黙っている僕に奴らは容赦無く機関銃みたいにナンパ言葉。
「ねえ、一人で暮らしてるの?ここ良く来るの?今何してるの?待ち合わせ?」
 だんだん頭に来た。次何か言ったら怒鳴ってやろうとした瞬間、声より先に目に熱い物が溜まってくる。あれ、あれれ、喉から何かこみ上げてくる。そう思った瞬間
「ひっく、ひっく…」
 ちょっと待って、僕なんでこんな時に泣かなきゃいけないの!?ちょっと泣き止んでよ!僕!
 僕の気持ちとはうらはらに、僕は声を上げ泣き始める。店の中の人も何事かと僕の方を見る。
「お、おい、なんだよ!この女!俺達が何やったってんだよ!ったくよお」
 もう一人が僕のテーブルを思いっきり蹴飛ばす。怖い!何だか怖い!でも、僕自分の意思で泣いたんじゃないのに。
 男二人は僕に罵声を浴びせながら店から出て行った。丁度そこにやっと駈け付けてくれた純ちゃんが店に入って来た。その姿は、今日一日地獄の目に会った僕にとって仏の様に見えた。
「ゆっこ、どうしたの。あれその格好、はははははははっ!おっかしい!何短くしてんのよ」
「純!僕もう耐えらんないよー」
「ばかっ!何僕なんて言ってるの!ばれてもいいの!?」
 (僕)の声に敏感に反応し、小声で叱る純ちゃん。幸い店の他の人には聞こえなかったみたい。
「とにかく場所を替えよっ」
 僕は純に抱きかかえられる様に外に出、静かな喫茶店に腰を下ろした。

「ふうん、マックにプリクラ、サテン、ナンパね。渋谷とかに来なくてもさ、女の子にとっては普通の事じゃん。それとさ、夜七時に女の子一人でマックとかにいるなんてさ、ナンパしてって言ってるみたいなもんじゃん」
「でも、でもさ、あの会話のテンポとか、切り返しとかさ、気遣いとかさ、大変だよ」
「何言ってんのよ!そんな事あたりまえじゃん!そんなでめげてんの?」
 オレンジジュースにストローで息をぶくぶく吹きながら純ちゃんが僕をちょっと睨みながら話す。
「んで、どうすんの?女やめるの」
「……」
「男に戻る?」
「……」
 二言目はちょっと意地悪く純ちゃん。僕はじっと俯いたまま。
「まあ、頑張る事ね。今朝私が言った通りにすれば絶対大丈夫だからさ」
 僕は無言のまま頷いた。
 純ちゃんに付き添われ、家に戻った僕は、ベッドに倒れこみ、寝たままたちまち下着姿に。パンツに手を突っ込んで、フィメールパッドを剥がして脇の机に放り投げた。とても疲れた。始めて女子高生の会話を体験し、慣れない僕は今少し知恵熱気味だった。
「明日も戦争だよ」
 でも、その後お風呂へ入った時には少し回復していた。何よりも驚いたのは、あれだけ皆と話した事を殆ど覚えている事だった。頭の中に女として働く部分が増えてるからなんだろか?少し嬉しい気分。とにかく無事女子高生になったんだから。がんばってみよっと。それはそうと、
「明日いよいよ、体育。ブルマーデビューなんだ」
 ぴちぴちしてきた体が、お湯をはじいて行くのを感じながら、可愛くなった乳首をつんと弾く。
 
 真っ白な上着に紺のブルマを挟み込んだ物を手に、僕はすっかり仲良くなった四人と女子更衣室へ向ったんだけど、いろいろお喋りする僕の顔は、緊張と恥ずかしさで真っ赤になっている。とにかく、その日一人だったら絶対入れなかったと思う。
「ゆっこ、顔赤いじゃん、どうしたの」
「う、うんなんでもない」
「でもさ、ゆっこって記憶力いいよね。昨日の話とか殆ど覚えてんだからさ。私殆ど忘れてんだけど」
「それはそれで問題だよねー」
 みけちゃんと智美ちゃんが、上着に挟んだ真新しいブルマを指で確認するように触りながら笑う。
「あれ、陽子は今日見学なの?」
「うん、私、あまり運動しちゃいけないんだって」
「えーー、病気?体悪いの?」
「うん、いずれ治るっていってんだけど」
 陽子ちゃんだけはブルマの替わりに明るいブルーのトレーニングウェアを挟んでいる。そうこうしているうちに女子更衣室へ。隣の男子更衣室に入っていく同じクラスの男の子達を見ながら僕は女の園のドアの前に。
(大丈夫、大丈夫)
「ゆっこ、どうしたの、なんか変」
「あ、なんでもない」
 もういいもん、どうなってもっ!。みけちゃんにつつかれながら、突進する様にドアをくぐると、むっとする様な女の匂いと熱気が襲ってくる。目に入って来たのは、ブルマとブラだけだったり、上半身ブラで、スカートを履いたままブルマを履こうとしていたり、既に着替えて鏡の前で髪を直していたりしている女の子達。着替えているその姿は皆柔らかそうで可愛くて。
(僕も、ちゃんと女の子らしくしよっと)
 僕の女子高生としての初脱ぎが始まった。肱を閉じてブラウスのボタンを外すと、可愛く膨らんだ僕の胸が現れる。うふっと思った瞬間
「ゆーーっこ!、はい初タッチぃ」
 いきなりブラを触ってきたのは、既にブルマとブラ姿になった智美だった。
「ち、ちょっとおお」
 僕が少し意識して両手で胸を覆ったその瞬間今度は、陽子ちゃんが背中から手を回し、僕の手とブラの間に指を滑り込ませてくる。
「もっもう、陽子まで何だ…よ」
 危うく男言葉が出かかったのを必死で飲みこみ、少し抵抗する僕。
「いいよね、ゆっこってさ、体は筋肉質なのにさ、おっぱいだけすごく柔らかいもん」
「お尻も小さくてさ、いいよね」
 うわあ、僕の体もうチェックされてる。その時、
(とにかく他の子を真似る事)
 頭の中で純ちゃんの声が聞こえた感がする。素早く、上着を着た僕は、今度はふと背中を向けた智美ちゃんにむかって手を伸ばした。
(こんなの、僕男のままでやったら犯罪だよね)
「とーもーみっ」
 僕はすかさず、智美ちゃんの胸を後ろからぎゅっと触る。指にマシュマロの様な感触と、乳首のころころが伝わり、僕は始めての事にぎょっとして、指を緩めた。途端
「キャーーーー!」
 智美の口からすごい声。その声に驚き、僕はすっと離れた。
「ゆっこ、ともみ、もう何やってんの女二人してさ」
「入った、もろ入ったゆっこの指、だって揉むんだもん、あっははは」
 既に可愛いブルマ姿になり、呆れ顔するみけちゃんと、予想に反して笑いまくる智美ちゃん。
「あ、あたし、体育の先生に届け出してくる」
 只一人長いトレーニングパンツ姿になり、出て行こうとする陽子ちゃん。
「待って、ついてってあげる」
 みけちゃんと智美ちゃんが続いた。
「ゆっこは?」
「あ、先にいってて」
 じゃねって手を振る三人に胸元で手を可愛く振って答えた。更衣室には僕一人みたい。入ったはいいものの今度は出られない。大きな姿見の前に立つと、そこに映る、ブルマから出る白くふっくらした足、あのパッドで綺麗に股間をライン処理され、そして薄く透けたブラジャーのラインを持った一人の擬似女子高校生のブルマ姿。それは少しエッチな雰囲気も感じさせる、僕の変わり果てた姿だった。
(どうしよう、恥ずかしくて外に出られない)
 それは生まれて始めてブルマを履いた女の子の、恥じらいにも似た感覚なんだと思う。
(しまった、皆と一緒に出れば良かったんだ)
幸子になって初ブルマ/月夜眠
幸子になって初ブルマ / 月夜眠



 そう後悔している時、
「おくれますううう、遅刻しちゃいますううう」
 どたどたとすごい音を立てて一人の女の子が走り込んできた。あ、教室で前の方に座っている如月ますみさん…だっけ。
「あ、良かったお仲間がいらっしゃって、あの確か堀さんでしたですよね、私如月ますみですう。ああよかったお仲間がいて心強いですう、ねえどうですか、一緒に初怒られしませんか、そうしましょうそうしましょう、ちょっと待っててくださいな」
 機関銃のごとく喋る、頭にカラーの髪留めをやたらいっぱい付けた、そうもろ篠原と○えの様な娘が、いや朝、親にパン買いにいかされただの、駅から遠いだの一人でくっちゃべりながら、すごい勢いで着替えを始めた。よかった。これで僕もお仲間が出来た。
 スカートからブルマを履いたと思うと、ブラウスをスカートから引っ張り出す。ボタンを外すと小柄な割に大きな胸を隠す可愛い花柄のブラが鏡越しに見えたと思うと、たちまち上着でそれは隠れていった。その間僅か一分とかかっていない。
「あ、待っててくれたんですね、さすがは帰国子女、あっこれ喋っちゃいけなかったんですね、ごめんなさいでしたあ、あ、髪直してたんですか、これ余ってるから使って下さいな」
 お礼を言って差し出されるピンクの髪留めを可愛く意識して髪に留める僕。良かった。髪邪魔なのにピンが無いから困ってたんだ僕。気は利かしてくれるんだけど、良く喋る女の子。
「ねえねえ、何さっきから鏡ばかり見てるんですか、自分に酔っちゃってるんですか、でも小さくて可愛いお尻してますね、私なんかこんなに大きくて邪魔なんですよ、あ失礼します、ちょっと鏡使わせて下さいな」
 ブルマ姿のますみちゃんが、お尻で僕のお尻をぼんとぶつけた。お互いのプルンとしたお尻同士、女の子にしか許されない挨拶に不意を食らった僕は、ふらっとバランスを崩した。ぼんと横に追いやられた僕にむらむらと悪戯の心が生まれた。
「ますみいいいいい、やったなああ」
 僕は、髪留めを付けなおしているますみちゃんの柔らかい体を後から抱きしめ、胸に手を当てた。
「きやああちょっと何するんですかやめてください、ぎゃああああたすけてください堀さんにおそわれまするううう」
 でもその声は笑っていた。そっか女の子って更衣室でこんなことやってるんだ。
 人なつっこいますみちゃんに無理矢理手を繋がれ、早歩きで校庭へ行くと、ブルマが可愛い女の子達の集団の横で、おのおの体を動かしている、青のラガーシヤツに白の短パンの男の子達が見えた。その太くて硬そうな腿が毛むくじゃらになっている子もいる。それに目を細めた後、僕の足元を見た。ブルマから伸びた、すね毛をすっかり処理さた僕の生足がきゅっと冷たさを感じる。
(ああ、男の子達の体操服姿、とっても懐かしい。学校と学年こそ違うけど、僕も普通にいけば、あの子達に混じっていたんだよな)
「ねえゆっこさん、ゆっこさん、どうしたんですか男子の方ばっかり見て、誰か気になる人でもいましたか、かっこいい人でもいましたか、あ、いたんだ、いたんでしょ、ねえ誰ですか、誰ですか?」
「もう、うるさい!」
 カラーのヘアピンだらけのますみちゃんのその頭を僕は少しこずく。
「いったああい、何すんですか、そんな事するのは、あ、さては既にあの集団の中に意中の人があ」
 今度はますみちゃんのお尻をぽんと叩く僕。へちゃっとした感覚がなんか可愛い。本当、男の子のままだったら本当できないよ、こんなに事!

 先生の号令がかかると、男子生徒の横に僕と女子学生達は恐る恐る並んだ。男子生徒達の視線が僕と女子生徒達に針の様に突き刺さる。僕だけでなく、女の子達も恥ずかしそう。そうだよね、何て言ったって○○学院の新入生のブルマ姿だもん。それだけでビデオが闇で出てるって聞くし、他の人達にはそう簡単に見られない貴重な見世物だよね。うわあ、嫌だ!恥ずかしい!男の子のショートパンツと違い、もろ足が見えて、お尻の形がはっきり出て、そして僕の前の子のブラが透けて見えてるのが見えるんだけど、僕のブラもたぶんこうやって透けて、後ろの男の子達に、ああ、どうしょっ。
 引率の女性の先生に連れられてまずは校庭をランニング、やっと男の子達の視線から逃れたと思ったら、今度は
(うわっ何!?この感覚)
 走る度に揺れる、僕の胸に出来あがった二つの膨らみ。そして足を動かす度にお互い食いこみあう、柔らかくなったお尻の肉の感触。ふと見渡すと、僕と同じ姿の女子高校生が、皆胸を揺らしながら…、ブルマに包まれた丸いお尻を揺らしながら…。僕も他から見ればそうなんだろな。そしてたちまち匂ってくる女の子達の汗の匂い。
(ああ、僕とうとう女子高校生になっちゃった。)
 乳首に感じる不思議な感覚と、女の汗の匂いに包まれたこの瞬間、とうとう彼女達に溶け込んでしまった僕を改めて強く感じてしまう。
 僕達?のランニングは二週で終り。でも女の子達はもうみんな疲れ気味。流石に筋肉とか衰えてきたとはいえ、男が半分残ってる僕はまだ殆ど疲れていない。そりゃそうだよね。可愛そうな男の子達は、怖そうな男の先生の指示でまだ走らされているみたい。なんか、僕だけずるい様な気分。
 女の子達はコミュニケーションを図る為、最初はソフトボール大会になっちゃった。皆で準備している間も、可愛そうな男の子達はまだ走らされている。みんな疲れ顔みたい。
こっちはこっちで楽しくソフトボール。チーム分けが終りゲーム開始したけど、流石は女の子達。中学の時ソフトボール部だった子もいなくて、打つも守るも下手といっちゃ失礼なんだけど、ともかくおままごとの様なゲームが開始された。横で見ている女の先生も続発する珍プレーの度に笑う。
 あれ男の子達は?何と次は腕立て伏せとかスクワットとかの筋力トレーニング、わあ可愛そう。
(頑張ってね、男の子達。僕半分そうだけど、許してね。横で見ててあげるから)
「ゆっこ、次だよ」
 智美ちゃんにつつかれ、バットを持つ僕。当然元男を隠すんだから、手加減しなきゃ。そしてバッターポックスに入った僕はうっかり軽く素振り。でもそれを先生は見逃さなかった。
「あれ、堀さん?ソフトボールとかやってたの」
 一瞬ぎくっとした僕、そうだよね、女の子って打つ前なんて素振りしないし。
「あ、いえ、やってませんけど」
「ふうん、それにしてはいい振りするじゃない。スボーツ何かやってた?」
 あ、なんかちょっとやばい雰囲気。
「いえ、何も」
「ゆっこー、打ってよ!」
「ゆっこー」
 雰囲気からクラスメート達が悟ったのか、あちこちから声援が来た。
(まともに飛ばしたら絶対やばいよ、本当手加減しよっと)
 相手の女の子の三球目、僕はわざと女の子らしくおどけて打ったつもりだった。でも、僕の目は無意識のうちにそのボールを追っていた。カキーンと音がし、フライ気味だったけど、その打球はセンター(といってもセカンドのすぐ後にいたんだけど)にいた女の子の遥か上を超えていく。
(しまった!)
 と思ってももう後の祭り。とにかく僕は手加減してゆっくり走るけど、らくらくホームイン。
「ゆっこー、ゆっこすごいすごい!」
「ゆっこ、かっこいい!!」
 女の子達の声援が僕に集中した。
「おい、今の誰?」
「誰だよ、女であんなに飛ばす奴」
 筋トレ中の休憩で休んでいた男子にしっかりチェックされちゃった。
「宮田先生!今の誰?誰が打ったんですか?後でバスケに勧誘に行きますから」
 男子側の怖い先生の顔がおどけた表情になり、女先生に名前を聞いていた。
「大塚先生!早いもの勝ちよ、受持ちのクラブへの勧誘は」
 女先生は、その男子の体育の先生にやり返していた。

「はーい、三アウトチェンジ。堀さん、じゃファーストに入って」
 先生の言う通り僕は、ライト(といってもみんな守備位置なんてでたらめだったけど)からファーストに。それで今分かったんだ。女の子って勝ち負けなんて全然意識しない。とにかく楽しければいいんだって事。僕もなるべくはしゃいでプレーする事にした。ファーストに入った僕の所には、女の子達からとんでもない送球ばっかり来る。
「ゆっこ、いったよー」
「ゆっこ!取ってーっ」
「ゆっこごめーん!」
 僕はなるべく声を上げ、笑いを絶やさぬ様、プレイというか、遊んだ。そしてまたもや僕の打順。
「ゆっこー!打てぇー」
 あちこちから声援が聞こえ、その声を聞いて、運動を止め、女子のソフトを注目する男子もいる。そんな中一球目を大きくわざと空振りして、キヤハハって笑う僕。
「堀さん、まじめにやんなさい」
 先生の声に第二球目、今度は手加減してサードにゴロを転がしたけど、女の子達がそう簡単に取れるはずがない。三人の女の子達の横を擦りぬけて、ボールははるか遠くへ。女の子達の黄色い声援がまた大きくなった。

 体育が終った後、教室では僕はちょっとしたヒロインだった。僕の名はたちまちクラスメート全員どころか、他のクラスまで知れ渡っているらしい。でも僕にとってはちょっと迷惑だった。当然ながら、僕は完全性転換まではごく普通におとなしく暮らす事。そして、当然ながら体育系のクラブへの入部は禁じられていた。でも、その日の昼休み、どこから聞き付けたのか女子体育系クラブの部長達が僕の勧誘に来た。女の子達の情報伝達と行動力ってすごい。
「堀さんという人いますか?女子バスケット部の者ですけど」
「女子バレー部ですけど、堀さんいますか」
 当の僕は一足先に、近くの喫茶店に皆と避難していた。
「ねえ、なんでクラブに入らないの?絶対その方がいいのに。あたしなんて羨ましい方だよ」
「ねえ、あたしもバスケットだったら興味有るから、入らない?一緒に?」
 陽子ちゃんとみけちゃんが僕に話す。
「ねえ、ゆっこさんゆっこさん、あたし軽音楽部でギターやるんだけど、入りません?確かギターとピアノやってたんでしょ」
 横からますみちゃんが口を出した。
「うっそぉ、ゆっこってさ、スポーツ得意な上に、ギターとピアノまでやるの?」
 今度は智美ちゃんが驚く。
 ギターとピアノは伊豆の別荘で基礎的な事だけは教養として習っていたんだけど。
「ううん、みんなごめん。私ね、放課後はみんなとこうして楽しく遊んでいたいのよ。クラブってちょっと嫌なんだ」
「ゆっこって変わってるよね。でもあたし好きだよ。ね、でさ、今日の放課後もたぶんクラブの勧誘有るだろうからさ、皆でどっかゆっこ連れて逃げない」
「あ、原宿いきましょいきましょう、ね、中学の時から私の庭だからさ」
 智美ちゃんとますみちゃんが握手した。

 僕の女子高生活はいろいろ有るけど、とりあえず順調に進み出した。まず、僕はクラスでいろいろな友達が出来始めた。おしやべりとかしているうちに、まず一週間目に会話のイントネーションが、そして次の一週間で手の仕草が女子高校生らしく変わっていった。
 髪のいじりあい、連れション、携帯電話遊び、ウインドウショッピング、小物集めと交換ごっこ。そして何よりもおしゃべり。そう、もうこれにつきる。ギャル語なんかも、生まれてこの方、今まで覚えてきた日本語と置き換わる様に、ごく自然に口から出始める。
 最初の一日は辛かったいろんな何気ない会話も、だんだん精神的に慣れて、もうますみちゃんに勝るとも劣らず話せる様になった。女の子達に囲まれて揉まれ、僕は普通の女の子とはとは少し違う、女子高校生に変身するべく、いろいろな事をスポンジみたいに吸収していく。ああ、どうしよう。怖い。だんだん僕が僕でなくなっていく。

 ある金曜日の夜、僕が早乙女クリニックに帰り、部屋でくつろいでいると電話がポロンポロンと鳴った。
「あ、純ちゃん、どうしたの」
「ゆっこー、ちょっと来てぇ」
 電話の主は純ちゃんだった。ドアを開けると、純ちゃんがベッドの上でうんうん言っている。
「ゆっこ、お願い、腰マッサージして」
 僕は純ちゃんのスカートの上からマッサージを試みた。でもどうも効果が無いみたい。
「ゆっこ、ガードル脱がせて、パンツ少しずらしてもいいから」
「えーっ、自分でやりなよぉ純ちゃん」
「あーのーねっ、あたし今あれ受けてきたんだよ。骨盤の放射線治療!もう、今動くだけで痛いんだから!」
 僕は純ちゃんのスカートのホックを外し、スカートを脱がせにかかる。
「いたっいたたたっ」
 体を動かす度に痛がる純ちゃんに僕は優しく声をかけ、スカートを脱がせると、大きく可愛く膨らんだパープルのガードルが目についた。
「あのさ、いたたっ、サポータ替りにガードル付けてんだけど、全然効かないの」
 ゆっくりゆっくりガードルを脱がせた時、僕はふうっと溜息をついた。腰のくびれは殆ど無いけど、腰のあたりから大きく盛り上がった脂肪の塊は、大きな丸みを作り、股間から太ももにかけて見事な女らしいラインを作っていた。只、真白になった彼の体のうち、多分放射線の影響からだろうか、その女になったお尻の部分は少し赤みがさしている。
「純ちゃん、暫く見てなかったけどさ、お尻すっごい大きくなったね」
「あ、いいから早く揉んでぇ」
「純ちゃん、どこマッサージするの?」
「全部…」
 ところが、その柔らかい部分の、どこの部分も少し強く押しただけで、純ちゃんは悲鳴を上げた。
「純ちゃん、ゆり先生呼んだ方がいいよ」
「もう呼んだよ、いたたたっ」
 そうこうしているうちにゆり先生が部屋に入って来た。
「あ、ゆっこちゃん、お見舞い?ありがとね。純ちゃん、大丈夫?ううん、薬じゃだめみたいね」
「先生、何とかしてよぉ、こんなのを二週間に一回じゃ、あたし死んじゃうよぉ」
「ううん、今は最初だし変形がすごく激しいからこんなに痛いんだと思うんだけどさ」
「先生、早く!何とかして!痛いんだから」
 半分泣きながら純ちゃんは訴える。先生は小さなカバンから鎮痛剤のモルヒネを取りだし、少量を注射器に写し、純ちゃんのお尻に打った。
「あ、先生、少し楽になったみたい」
 ところがその言葉のすぐ後、純ちゃんはすーすー寝息を立て、寝入ってしまった。
「先生、純ちゃん大丈夫なの」
「うん、大丈夫だとは思うんだけど」
 僕の問いに少し疲れた様に話すゆり先生。だけど少し暗い表情。
「先生、何か心配ごとでもあるの」
 純ちゃんのパンツを上げ、すっと布団をかけてあげるゆり先生。
「ここまで女性化に成功したのは純ちゃんが始めてなのよ。放射線とホルモンによる骨盤再変形治療も、彼女が最初なの。まるで、モルモットみたいで、辛いわ」
 僕は驚いて先生の顔を凝視した。ライ先生が実験体二六号と純の事を言ってたのを思い出した。
「先生、先生!あの、純ちゃんの前の、二五人は…」
 先生は首を振ったまま、何も答えなかった。
 純ちゃんの苦しみは一晩寝れば治ったみたい。只、今後痛み止めをどうするかでゆり先生はすごく悩んでいた。僕も来年この治療を受けるんだろうけど、なんだかそれを考えただけで気分が滅入ってしまう。今はあまり気にせずにしよっと。

 

Page Top