メタモルフォーゼ

(5) 「初めてのブラ、そして水着」

今、僕は上半身裸で、閉店後の上野の某衣料品店の試着室にいる。ダイエットですっかり痩せた僕の体重は五十Kgまで落ちちゃった。鏡で見る僕の体は、三ヶ月前と比べると、頬は少しこけて腕は細くなり、鎖骨とかあばら骨が浮き出ている。
 でもちょっと違うのは、はっきりと大きくなってちょっと黒ずみ、隆起しちゃった二つの乳首と、それを中心にして骨の見えていない部分が丸く有り、あきらかに女性のバストの基礎が出来た胸。そして全身が男の子の痩せかたと違って、そう、痩せた体の上に何かとっても薄くて柔らかい物を全身に被せられた、そんな感じがしする。
「いいですか?失礼しますよ」
 試着室に入って来たのは、前お世話になった店員さんだった。
「あ、胸可愛くなりましたね。じゃあちょっと両手を上げてくれる?」
 そうなんだ、今日から僕はブラジャーを付ける事になったんだ。店員さんのメジャーの冷たい感覚が胸をくすぐる。早くも僕の男性自身がすごく反応してるけど、ガードルとスカートに守られて店員さんには気が付かない。
「七0の七五、AA七0ね。ちょっと待って下さい、そのままで」
 僕は真っ赤になってうつむく。以前まいちゃんの時もこんな感じだったんだろな。ふと顔を上げ鏡を見ると、そこには真っ赤になった僕が写ってる。ちょっと伸びた髪をサイドに分けて前髪を可愛くルーズに降ろして…、まだちょっとセットに苦労するけど。
 やがて店員さんがゆり先生と一緒に試着室の中へ。
「ゆっこちゃん、初着式よ」
 ゆりせんせい先生が笑う。とうとうこの時が来たんだ。
 ブラの紐が両手にまとわりつき、カップが僕の乳首を隠していく。足ががくがく震えていく。ちょっと力が入り、開放感の有る乳首ときゅっと束縛される胸のアンバランスな感覚。そしてホックが背中で止められた瞬間、僕の全身に電気が走った。
 胸を束縛するって感覚は、女の子になったんだって感覚と、可愛くなーれって何か魔法をかけられた様な感覚と、もう男らしい事しちゃいけないって感覚が入り交じった様な複雑な気分。
 ゆり先生の手が入り、肩紐を調整され、幾分柔らかくなった胸の肉をカップの中へ
入れられてく。このままいけばもうたぶん二度と萎む事は無い胸。もう僕は遊びでブラ付けるんじゃなくなっちゃった。膨らみ始めた胸を整えるため、付けなきゃいけなくなったんだ。
「どう、ゆっこちゃん。女の子になった感じは」
 だめ、答えれない。涙がじわって目にたまっちゃう。涙目で鏡に写った僕は、そうあの雅代ちゃんとHする前、彼女が見せたあの可愛い姿になっていた。
「女の子にとってもブラは特別な物だもんね。でも、この人ブラ付けるとほんと可愛く見えるわね」
 店員さんが半ばあきれた様に言う。指示通り横を向くと、僕の胸にはくっきりとブラの可愛い膨らみ。
「じゃあ、あとは服を着て。今度は水着選ばなきゃ。ちょっとあの子たち見てくる。こーらまいちゃんっ、ビキニだめって言ったでしょ…」
 そうだ、今度水着選ばなきゃ。ブラウスを着る為スカートのホックを外す。ストンと落ちるスカートのホックを手にとり、手早く畳んで脇へ…。
ねえ、あなた本当に男の子?だよね」
 店員さんが不思議そうに聞く。ブラウスを着た僕の胸には透けたブラの線とほのかな膨らみ。
「今はそうです。でもあとしばらくすると…」
 僕はふと微笑んだ。

 美咲先生主宰のクルージング用に、今度はみんなで大騒ぎしながら水着の品定め。まだはっきり残っている男の子のラインを消す為、「ワンピース、パレオ付き」の指示が出ていたんだけど、特に胸の有るまいちゃんはビキニを欲しがってむずがる。
 色とりどりの水着から、僕は白がベースに青と緑がにじんだ少し派手な水着を選び、試着室へ。下着の上から試着するなんて知らなかった。両足から水着を履き、ピンクに白の水玉のパンツの上からぞぞっとなでながら僕のボディーラインに水着が吸い付いていく様。
 脳裏に小学校の時の思い出が浮かぶ。ごわごわしたスカート付きの水着を着て遊んだ僕の背中に焼き付いた水着の跡。その後さんざん怒られて、こっそり女装出来なくなったんだっけ。
 肩紐に両腕を通すと、店員さんがパレオを
「こう結ぶと可愛いですよ」
 と腰に結んでくれる。鏡にはちょっと痩せてるけど、い・ち・お・う女の子に見える僕がいる。痩せてるマイナス点を少し派手な水着の模様とパレオがカバーしてくれてる。胸は、あはははっ、胸のパツトが何とか小さな膨らみを演出してくれてる。うん、おおっぴらに見せる訳でもないからいいっか。そっと腰の部分を上からなぞるとぞくぞくした気持ち。
「もう、泳ぐ時も胸を隠さなきゃいけなくなったのね。私はもともと女だからわからないけど、元が男だから暑そう」
 店員さんがちょっと笑う。
「仕種が女の子にしてはぎこちないわね。やっぱりまだ男の子だわ。早く変身してね。女の子はいろいろなデザインを楽しめたり、まわりから注目されたり。嬉しい事がいっぱい有るのよ。そのうち分かってくるでしょうけどね」
 僕は一発で決めたこの水着。ともこちゃんは、不思議な氷とペンギンの柄のワンピースとパレオ。まいちゃんは結局、白に黄色系の花柄のAラインスカート付きの水着を選び、何とか無事に別荘へ戻った。

 七月になり、僕達のトレーニング内容は少し変わった。食事はあのコンニャクとか大豆タンパクとかを使ったダイエットメニューじゃなく、ごく普通の物になり、僕達はやっとちゃんとした料理の勉強が出来、食事の楽しみも増えた。一応夏休みなので勉強は九月まで私服で自主学習中心になり、午後のメニューも週一、二になった。そのかわり、ボイストレーニングと英会話が午後週に二回加わった。電子ピアノをちょっと改造したキーボードを引き、女性の先生について一回一時間程度するんだけど、すごく苦しい。講義が終わった後僕達は声が出ない程だった。
 英会話なんだけど、僕達来年は一応外国に留学していた帰国子女の形で某高校に入学するらしい。その為のア・リ・バ・イ作りの一環みたい。もう僕達を受け入れていたという外国の中学でのアリバイもちゃんと作られているみたいだけど。本当、どういう研究機関なんだろ。
 美咲先生も、夏休みでもあり、僕達の女性化に一応満足したのかあまり怒らなくなった。何かいろいろ自室で研究してるみたい。でも未だに黒のタイトに白のブラウス。黒メガネに棒を持った姿は止めて欲しい。
 そして、一般食に戻したのは訳が有った。かなりがりがりに痩せた僕達に栄養を与え、女の子特有の柔らかくて丸みをおびた皮下脂肪を付けさせる為だったんだ。胸が膨らみ始めた頃から栄養を採ると、いい結果が出るみたい。禁じられていた間食も有る程度まで自由になり、数ヶ月ぶりのおやつに感激し、夜のケーキが楽しみになっていった。
 効果は二週間位でもう出始めた。がりがりの僕達の腕と肩に柔らかくて丸みの有る脂肪がうっすらとつき始め、あごの線が滑らかになっていった。日がたつにつれ、今度はあばら骨の隙間が少しずつ埋まっていった。体も以前にも増して目立って白くなり、所々血管が浮き出てきた。バストだけはまだ相変わらず小さいままだったけど、僕達は日毎に変わっていく体に感激。でも時折
「わあ、こんなに柔らかくなつちゃった…」
とか
「あ、ここ丸くて柔らかくて可愛い。どうしよう…」
 なんて感じで、時には脅える事も有った。そして今までの外出先は別荘の近くの村みたいな所だったけど、とうとうその規則も解けた。
「ちゃんと膝を揃えるの」
「いずれ大きくなるけど、おしりをしっかりサドルに下ろして、下品に前越しにならないでっ!そう女になるんだから早く漕ぐ必要ないんだから」
 とか美咲先生に女の子の自転車の乗りかたについて厳しい指導が有り、少し訓練した上で、遠出するようになった
 やがてある日、とうとう三人で初めて伊豆急に乗り、熱海とかへ度胸試しに繰り出した。平日とはいえ、夏休みで人が多い中、何ヶ月ぶりかの人込みに僕達は最初すっかりおじけづいて、改札がなかなか出られなかった。でも誰も僕達に気を留める様子が無い事が判ると、今度はブラの線と丸みをおびた肩と、ちょっとふっくらした頬に、自分自身に自信を言い聞かせて、僕達は思いきった気分で女の子することにした。
 久しぶりに伸び伸びとした気分。でも十分も経たない内にだんだん不安になってくる。それは、僕達が美咲先生に叩きこまれた女性の仕草は、やっぱりまだぎこちない面が有る。ともこちゃんやまいちゃんの仕草とかを、周りの女の子とかと比べてみても、うーん、基本は合ってるんだけど、そう、堅苦しいがちがちした雰囲気。普通の女の子達は動作も全て基本が丸く可愛い一体化した円運動で、細かくやたらと動かしてる。
 特に感動を全身で表現し、関係無いのにお尻とか足を動かしたり、手を組んだり、指を動かしたり…。僕達は個別は出来るんだけど全体的な流れが全然出来ていない。そして、体の形。一番女性化の進んでいるまいちゃんでも、特にスカートごしのお尻の形がぜんぜん違う。細くくびれたウェストと、まんまるでボリューム有る可愛いヒップは、さすがのまいちゃんもかなわなかった。
「ねえ、やっぱ戻ろう。あたし自身無くしちゃった」
 人前なので女言葉で話すともこちゃん。僕もまいちゃんも同感だった。少しは自信を持ってたつもりだったけど、完全に打ちのめされ、僕達は別荘へ戻った。そして翌日、ともこちゃんにとってちょっと悲しい事件が有った。

 翌日、難関高校の入試問題を解いていた時、コンコンとドアを叩く音と共にドアが開き、入り口で立ち止まったゆり先生がこちらを向いて手を胸元で小さく振る。
「あ、先生」
「あれ、担当授業今日でしたっけ」
 僕達の問いにちょっと微笑んだだけだった。今から思えばちょっとこわばっていたかも知れない。
「ともこちゃん…ちょっと」
 不思議そうな顔をして、ともこちゃんがゆり先生と出ていく。その日、昼になってもともこちゃんは戻って来なかった。昼食の準備をする頃になってもともこちゃんはいない。
「ともこちゃん、別荘裏の丘にいるはずよ」
 ちょっと元気無い声で美咲先生が僕に言う。
「探してきます」
短く答え、スカートを翻して裏庭へ出て行く僕。
 
 ともこちゃんを探すのに苦労はしなかった。海の見える眺めの良いちょっと小高い岩場にともこちゃんが、風に向かって髪をなびかせ座っていた。
「とーもこっ」
 ちょっと明るく僕が挨拶。手を出した僕の手にともこちゃんが軽くタッチ。スカートをはいた足を大きく広げ、風に向かっている。
「どーしったのっ」
「うん、風と話してるの」
 感受性の強いともこちゃんらしい答えに、僕はにこっとして構わず話しかける。
「早くいかないと、お昼みんな待ってるよ」
「今日、食べたくないんだ」
「また、先生に怒られるよっ」
「いいよ、たぶん今の僕の心境知ってくれてるし」
 こっちが可愛くしてるのに、ちょっと穏やかじゃない。ともこちゃんはいきなり横を向き腕組み。
「どうしたの?怒られたの?すねてるの」
 そうだとしたら、たぶん以前の注射の件かな?
「ちゃんとした男の子の時の僕を思い出してるんだ」
 ぼそっとともこちゃんが言う。でもそこにいるのはブラの線も可愛らしい、スカートを姿のちょっとふっくらし始めたともこちゃん。
「どうしたの、絶対変だよ」
「静かにしておいて、お願い」
「どうしてっ、心配してるのにっ」
「いずれわかる事だよっ、そっとしといてよ、お願いだから」
 男言葉と女言葉が混じった形でともこちゃんが答えた。何か有る。僕はそっとお尻に手を当てともこちゃんの横に座る。二人で海風に当たった後、しばらく黙っていたともこちゃんがやっと口を開いてくれた。
「僕、明日去勢されちゃうんだ。男の子とはさよならなの…」
 突然の事に僕はびっくりした。なんでともこちゃんだけが…
「僕、本当はね、本当は心の底から女の子になりたいなんて思わなかったんだ。途中でも戻れるって聞いてたから、有る程度女の子を楽しんで、もし女の子が嫌になった時は戻ろうと思ってたのに…」
 ともこちゃんの目に涙が浮かぶ。
「もう、戻れないんだ…男の子に…」
 彼?はそう言うか言わないうちに僕の胸にしなだれかかり、絞り出す様な泣き声を上げた。その後ともこちゃんの話を聞いていると、こういう事らしい。
 僕達の受けてる治療の場合、途中で何が起こるかわかんないから、なるべく最初から去勢せず、ぎりぎり戻れる時まで精巣を残しておくらしい。それと、僕達が来年移植される卵巣は、本人の精巣より細胞を抜き出して遺伝子操作した物を培養して作られる。本人以外の物はだめなんだ。
 ともこちゃんの場合、先日大量に注射した薬が彼?の精巣を破壊しはじめ、やがて壊死させてしまうらしい。戻す事はもはや出来ず、しかも早く取り出さないと卵巣すら作れなくなるし、そのままにしておくと、壊死の後、体組織の損傷が始まり、股間にやがては作られるであろう女性器が作れなくなるらしい。さっき、この場所で二人の先生にこの事を宣告されたみたい。去勢された男の子になるか、このまま女の子になるか。実は心の底からは女の子になりたくなかったともこちゃんが、悲しい選択を迫られたんだって。最も半分変身したくなかったなんて、先生達には言わなかったらしいけど。 
「ね、ともこ、女の子楽しもうっ、思いっきり楽しんで、女の子になろっ」
 僕自身どうなるかこれからわかんないけど、僕はともかくともこちゃんをはげます。
「大丈夫よゆっこ。もう決心してるし、もとはといえば、僕が無茶したんだもん。」
「でも、もう僕失敗はゆるされないんだよね」
 また男言葉に戻ったともこちゃん。そういうと、僕達お互い抱き合った。抱き合うなんて、男の子の時なんて絶対しなかったのに。でもその胸でまた泣き出すともこちゃん。一番変化が遅かったともこちゃんが、結局一番早く妖精になっちゃいそう。
 なんだか羨ましいと思いつつ、僕は泣き止むまで僕はともこちゃんをじっと抱きかかえていた。
 その日の午後、ともこちゃんはあのブルーの服でゆり先生の車に乗り込んだ。乗り込む前、玄関に立つ僕達に「バイバイ」ってちょっと寂しげに可愛く手を振ったのが印象的。
 エンジンがかかり車が動き出すと、横でまいちゃんが小声でで唄っている。
「赤い靴、はいてた、女の子、異人さんにつれられていっちゃった…」

 三日後ゆり・美咲両先生が戻り僕達にともこちゃんの事を話してくれた。男としての機能が無くなるという事の重大さにしては、手術事体は簡単ですぐ終わったらしい。その後カウンセラーの効果もあり、今は平常心に戻りぐっすり寝ているみたい。取り出された精巣はその日の内に卵巣に変える為に処置に出された。それと、培養作業を一緒にする為に、僕達の精巣の組織のサンプルを早急に欲しがっているらしい。ちょっと恐かったけど、僕とまいちゃんは同意するしかなかった。その日の夕方、局所麻酔をされた僕達の精巣にサンプル採取用の注射針が打ち込まれた。いくぶん萎びた僕の男性自身から薄い赤の液体が取られていく。これで卵巣を作るなんて考えてもみなかった。

 八月になり、ついに待ちに待ったクルージング。手術が終わったともこちゃんと、あの純ちゃんともそこで合流出来るんだって。前の日の朝から僕とまいちゃんと美咲先生とで料理とか飲み物とかの用意で別荘は修羅場だった。
「オーブン見ててっ」
「ドレッシングっ、油が多いっ」
「卵はそうじゃないでしょっ、もう教えた通りにやってよっ」
 あの姿にエプロンで見事な手つきで次々と料理を作る傍ら、美咲先生は厳しく僕達に指示。もう慣れたけどなんだか辟易する。でも明日までの我慢我慢。
 翌日の朝、興奮する僕の男性自信はスイムショーツで押さえられ、ちょっと滑らかに柔らかく白っぽくなってきた僕の体を、新品の水着が覆っていく。水着の紐が、僕の体にうっすら付いてきた皮下脂肪に食い込んでいく新鮮な感覚を感じた後、パレオを付け、鏡の前でくるっと一回転。そして水着モデルがする様に、ファッション誌を見ながら覚えたポーズをとってみる僕。胸とお尻が貧弱な所を除けば、ううん、不安だけど、何とか女の子に見えるかな。ひょっとしたら初めて人前で女の子の水着姿を見せる事になるかもしれないけど、うーん、あとは可愛い仕草がうまく決まればなんとかごまかせると思う。
 ハイビスカスの髪止めを付け、Tシャツをはおり、白いサンダルをひっかけ、まいちゃんと一緒に荷物を持って別荘の地下室からいまだ降りたことの無い階段を降りていくと、
「すごーい」
黄色のヘアバンドをしたまいちゃんが声を上げる。白くて可愛い桟橋の有るプライベートビーチの奥の自然の洞窟みたいなのを利用した格納庫に、白にパープルの女性らしい彩りの可愛くてかっこいい中型のクルーザ、「さふぁいあ」号って書いてある。
「まさかこんなの持ってたなんて」
 天気もいいし、可愛い水着を着て、こーんな素晴らしいクルーザーで海へ出るなんて最高っ!!
 たくさん荷物を桟橋の先に運び終えて一休み。早くも朝の日差しが僕達の体を焼きにかかる。でもいいんだ。今回は思う存分水着の跡を付けるんだ。水着の紐が食い込んだ僕の肩はもう汗ばんでいた。
 胸が目立つ様になってきたまいちゃんのスカート付き水着姿もとっても可愛い。お互い体とか水着をさわりっこして、体の変化を確かめていた。その時、
「ゆっこー、まいーっ」
 桟橋を走ってくる二人の女の子。あのペンギン柄の水着は、あっともこちゃん。ははっ、意識してお尻を降りながら走ってるみたい。でも後ろの、え?白に花柄のパレオのビキニ!?本当の女の子?
「ゆっこ、久しぶりーっ」
 抱きついてきたそれは純ちゃんだった。卵巣移植された彼?のBカップの胸がころころと可愛く僕

に当たる。ポニーテールに可愛い水着。そして小さいけど、ふっくらしたヒップ。そして、まるっこくなった顔の輪郭に、ふわっと可愛い唇。
「純ちゃんすごく変わった。可愛い、本当の女の子みたい」
「ちがうよ、ほらっ」
 純ちゃんはいきなり自分のパレオをめくる。そこには、あ、小さくなってるけど女の子とは異なった膨らみが。
「ゆっここそ、この胸はなあにっ」
 はしゃいだ純ちゃんが、くるっと僕の後ろへまわり、後ろから僕の胸をぎゅっ。
「あん!」
 僕は思わず声を上げる。そのまま純ちゃんは僕の首へ手をやり、意識的に胸を押し付ける。途端に僕のパレオの中で、男性自身が起き始めた。
「あっ今私に興奮したでしょ」
「えっそんなことないよ」
「パレオめくるぞぉ」
 だめ、そんなことされたら恥ずかしい。まだ僕の精神はかなり男が残ってる証拠だもん。
 「しばらくともこちゃんと暮らしたんだよ。いろいろ聞いちゃった。ゆっこの事。あと、この娘がまいちゃんね。宜しくっ」
「宜しくーっ」
 可愛い女性用水着を着た四人の男の子?は五分もたたないうちにみんな仲良しになっちゃった。そして今度はゆり先生が来た。
「先生かっこいいっ」
 まいちゃんが叫ぶ。
 シャネルのワンピース、大きな麦藁帽子に黒のサングラス。意識してしゃなりしゃなりと歩いて来る姿はいつものゆり先生とは違った雰囲気。
「へっへえ、どう?」
 ゆり先生がポーズを取る。意外にナルシストなんだ。あと美咲先生は?「さっきクルーザに乗りこんでたよ」
「ええ、あの格好で?」
 白のブラウスに黒のスカート、黒ぶちメガネを思い出す僕。
「まさか、そんなわけ無いでしょ」
「だって、美咲先生のあの姿以外見たことないもん。お風呂とか寝る時もあの格好なんじゃない?」
「それじゃ、ブルースブラザー〇でしょ」
 ともこちゃんの質問を軽く流すゆり先生。その時、クルーザーのエンジンの音が聞えた。
「あ、美咲先生来た」
 まいちゃんが、遠くから興味ありげにその運転席を覗く。ゆっくりと桟橋に近づくにつれて、ゆり先生以外はみんなぽかんとした。そこにいたのは皆の知っている黒ぶちメガネの美咲先生ではなかった。ゆり先生の様な均整のとれたボディに、大きな胸。それを包む燃える様なオレンジに黄色の花のビキニ。長めのパレオをかっこよく身にまとい、そして、
「あれ、本当に美咲先生なの?」
 とみんなが驚くのはその変身した顔だった。腰まで有る長い黒髪に円らな瞳。サングラスしているゆり先生と比較すると、ひょっとして美咲先生の方が美人!?
「みんなおはよ。あれ、ゆり、こういう時だけ早いじゃん。何その遅れた格好?」
 みんなの目線を気にせずぽんぽんと冗談とは言えない言葉を。僕はおそるおそる聞いてみる。
「あの、本当に美咲先生ですか」
「何よこの子、他に誰だっていうの」
 その美人はちょっと笑いながら答える。
「だっていつものあの先生と感じが違うし、顔だって、怒ってなくって、すっごく可愛いし…」
 まいちゃんも恐る恐る尋ねる。
「みんなわかった?これが本当の美咲先生なのよ」
 遅れといわれ、ちょっとむっとしたゆり先生が答えた。
「でも、どうしてあんなに普段怒ってるの?あんなに恐いの?」
 ともこちゃんが尋ねると、先生は突然両手をバンとクルーザに叩いて叫ぶ。
「だってねえ、あんたたち!ゆりもそうだけどさっ!今まで男の子だったのをたった数ヶ月で女の子にしろだなんて!どれだけ大変かわかる!?それも三人も押し付けられてさっ!超スパルタ教育でないと絶対無理でしょ!その為にあんな怖そうな変な格好もしたのよ。叩いたりぶったり、罵ったり。あたしがそういう事嫌いだってゆりも知ってるでしょっ!!あたしは研究もしたかったし、せっかく買ったこのクルーザで遊びたかったし!」
 それ以上言おうとする美咲先生にまずまいちゃんが飛び込んで行った。僕もともこちゃんも美咲先生の胸に飛び込み、わんわん泣き出した。
「先生、ごめんなさい」
 口々に叫ぶみんなの涙が美咲先生の肌とパレオを濡らしていく。それ以上怒鳴ろうとした美咲先生は、そんな僕達を見てふと優しい顔つきになった。
「まあ、いい体験だったわ。ちょっと事件は有ったけど何とか成功しかかってるし、そしてこんなに可愛い…」
 そう言って先生は、泣いている僕達三人の頭を軽くなでた。
「こんなに可愛い三人の妹が出来たし」
 美咲先生を抱きしめる僕達の手にぐっと力が入る。
「ゆり、来年はあんただからね」
「え、あたし、いやあたしはとてもとてもこんな大役、はは」
 ゆり先生がサングラスごしに動揺している。
「さっ行こう。早く行かないと、折角のクルージング日和だし」

 クルーザーに乗った僕達は、初めて女の子としての夏を体験した。途中美咲先生の島に寄り、泳いだり、体を焼いたり。お昼のバーベキューがとっても美味しかった。
「たくさん食べてね。皮下脂肪つけるんだから」
 ゆり先生の言葉にみんな目を白黒。今だけだろな、たべなきゃいけない時って。じわじわと僕の白くなりつつ肌が日焼けしていくにともなって、僕の肩から背中にかけだんだん跡がついていく。時折見せ会いする僕達に、
「ああ、幸せ」
 といって、ビキニの上をポロッとめくる純ちゃん。そこには普通の女の子には負けない程に膨らんだ可愛い胸。遊びすぎた僕達はその後ちょっと昼寝。その時三人は昨日まであんなにけむたく思ってた美咲先生によりそう様に寝た。
「ちょっといたずらしようか?」
 ゆり先生の提案に美咲先生もOKし、陽も上がり切った昼さがり、僕達の船は遠く葉山のハーバー沖へ繰り出した。そう、クルージングを楽しんでいる何隻かのクルーザーの中に乗り込んで行ったんだ。
 女の子ばかり?六人乗ったクルーザーの存在が夏休みの葉山に知れ渡るのに時間はかからなかった。
「ハロー、さふぁいあズクィーンの皆様、ハゥワイユー!合流して江ノ島まで行きませんか、どうぞ」
「こんにちわ、僕達**大学のヨット部ですけど、研究の為さふぁいあ号を拝見させて欲しいんですけど、メリットありますか?どうぞ?」
 いろんなメッセージがひっきりなしに入ってくる。
「ふふふ、絶対ナンパだよ、この大学連中」
 美咲先生がサングラス超しにふっと笑う。でも純ちゃん以外の僕達は気が気でならなかった。
「先生、本当にこっちに来たらどうするの?」
「いいじゃない、さんざん遊んであげてさ、やばくなったら「私達ティーンニューハーフでーっす」ってやれば?」
 そんなの恥ずかしくってできないよ。
 遠く、江ノ島近辺からもメッセージが届く。僕達の為にレストランを予約したんだって。すごく強引な奴…。美咲先生とゆり先生はそんなメッセージに対して時には冷たく、時には誘惑めいた応対をする。
「さてと、面白くなるわよ」
 水飛沫を上げてスピードを上げながらさふぁいあ号が走ると、後から五・六隻の船が追いかけて来る。純ちゃんがはしゃぐ中、ともこ・まい・僕は恐くなって只じっと追いかけて来る船を見つめていた。もし追いつかれたら?僕達が男だってばれたら?それは初めて「女」として男に追いかけられる恐怖を感じた時だった。でもそれも不思議とだんだん薄れてくる。三人とも心の変化は同じだったみたいで、僕達はぎゅっと体を寄せ合った。
「僕達を追いかけて来る男達」
 何だか人気者になったみたい。最後には純ちゃんと一緒になって後続の船に手を振り出す僕達。
(あれ、僕って、今??)
 それは自分自身が男の子だって事を一瞬忘れてしまった最初の事だった。

 そんな追いかけっこも暫く続き、他の船がリタイアしていく中で一隻だけ最後まで追いかけて来る船がいる。美咲先生もたまらなくなって無線機に呼びかける。
「こちらさふぁいあですけど、そろそろ帰途につきたいのですが、帰してくれませんか、どうぞ」
 それに答えて以外な答えが帰って来た。
「こちら、アウトドア雑誌「どぅびー」の者です。皆様と船の写真だけ撮らせて頂けますか。そうしたら帰ります。どうぞ」
 僕達はびっくりして顔を見つめ合う。
「写真だって、どうする?いいっか。ゆっこちゃん達も写れば?」
「僕、絶対嫌だよ!」
 美咲先生の前にもかかわらず、ともこちゃんが声を震わせる。
「絶対ばれちゃうよ」
「そう?私はばれないと思うな。三人ともその容姿なら。ばれなきゃいいんでしょ?撮られても?」
「ううん、その…」
 美咲先生がともこちゃんを説得した形になった。
「みんな、女の私達が言ってるんだから大丈夫よ。自信持ってね」
 ゆり先生が纏め、プレスの人々と交渉に入った。

「うん、クルーザーはこの位でいいか。次はお嬢様方、ええと君美咲さんね。こちらで、はいそう…」
 この暑いのに髭もじゃの三人のカメラマンの人々は、僕達と船がすっかり気に入ったらしく、大量の器材を積み込み、少なくとももう十本位フィルムを替えてる。幸いにもプレスの人々の興味はゆり・美咲先生に行ってる様子だった。でも恐怖はすぐ襲って来た。
「はい、次はコギャルの四人の皆様の番。うーん、パレオ外した方がいいかな。取ってこっちに並んでみて」
 ああやっぱり来た。だって取るわけにいかないもん。スイムショーツ付けてるとはいえ、あの膨らみは明らかに分かる。そこへ純ちゃんが出てってカメラマンの人に何やら話してる。カメラマンは首をかしげた後分かったというそぶりを見せた後暫く他のスタッフの人達と何か話している。
「ねえ純ちゃん、何て言ったの?まさか僕達男だとか」
「違うよ、むだ毛処理してないとか、生理直後だとか、いろいろごまかしたの」
 他のスタッフと軽く打ち合わせた後、カメラマンは僕達に近づいて来た。
「残念だね、時間も無いし、じゃ可愛いパレオむ四人娘ってことで。うーん、みんな結構スリムでボーイッシュだしね。じゃあ四人肩をくっつけて、カメラに向かってかがみ気味で。うんそう、それだと可愛くなるよ。小さなお尻もカバー出来るし。そうか君たちまだ中学なんだ。道理で細すぎると思ったよ」
「俺、後三年位後にもう一度撮りたいなあ、その頃だとお尻とか胸とか成長してるだろうね」
 ちょっとおたくっぽいカメラのアシスタントみたいな人もそう呟く。撮影用にと、ゆり先生が僕達にピンクの口紅を差し、軽く眉を引き、マスカラを入れてくれた。初めてのモデルとしての撮影。しかも女の子として。僕の頭の中はすっかりポワンとなっている。
「はい、左手を腰に。上向き加減で、視線は…、足はこうして…」
 男性向けの女の子らしいポーズなんて当然全く知らない僕達に、プレスの人とかゆり先生がいろいろ教えてくれる。
 やがて撮影終了、クルーザーで去っていくプレスの人々に僕達はいつまでも手を振っていた。僕にとって夢の様な一日はこうして終わった。
一週間後、僕達の元にプレスの版下のコピーが送られてきた。すごい、四ページ!
「夏の葉山に超可愛いギャル六人のクルーザーグループ追跡。あははははっ」
「ギャル六人だけのクルージング?、そうだったの?」
「可愛くてスリム。ボーイッシュなパレオコギャル四人、わあ可愛く写ってる」
「あー、勝手に自己紹介書いてるー,え、私陸上やってたの?まいはバレーボールだって!?」
「僕、女の子になったらモデルやろうかな」
 二枚のコピーを奪う様に見る僕達。半年前までは平凡な男の子だったはずのなのに、こうして女の子のライフスタイルを一つ一つ植え付けられ、女の子として教育されていく僕。おかあさん、僕とうとう女の子でざっしモデルデビューまでしちゃった。
 ふと物思いにふけ、うつ伏せになってまだはしゃいでるまいちゃんとともこちゃんをじっと見つめた。まだ慣れていないせいか、大きくなってきた乳首がつんと感じた。
胸のときめく様なクルージングの感激がまだ収まらない、八月も終わりのある日の昼さがり。ちょっとカラフルな南国の花の描かれた白のノースリーブのシャツに薄い黄色地に白と紫の花柄のフレアスカート姿の僕は、夏の最後の海を見ようとあの桟橋の有る浜辺へ降りてきた。こんな事って女の子に変身し始める前だったら絶対思わなかっただろう。
 誰もいないプライベートビーチの岩場に腰掛け、ちょっと肌寒くなった風を体に受けながら、僕はぼんやり海を眺めてる。今こうするのが何だかとっても好きになってきたんだ。何故かって聞かれてもわかんないけど、ただ気持ちいいだけなんだ。
 太陽の光の加減とか風の強弱が肌に敏感に分かる様になって。去勢される前のともこちゃんの「風とお話してるんだ」の言葉がすっごくよく分かる。誰も来る様子も無い、来ないよね。女の子らしくしようと思ってた僕はちょっと気分が楽になり、足を大きく開いたり、方膝を立てたりしてくつろぐ。そんな僕の前に名前の知らない海鳥が三羽ふらふらっと着地。何故か急に膝を戻してスカートを押さえる僕。鳥にパンツ見られたかなって、あはは何考えてんだろ僕。
 再び僕は風と太陽とお話しを始めた。あれ、なんで僕こんな幼い気分になるのかな。風を受けるスカートの不思議な着心地のせいかもしれない。
 そう、ねえ聞いて聞いて。前まではいつも僕達お風呂場でじゃれあってたでしょ。お互いの体の変化を見て。特に食事制限が緩められてから後なんか不思議だった。去勢されたともこちゃんは、前はあばら骨とかのでこぼこが結構有ったのにすっかり無くなって、ただ殆ど男のままだった乳輪は手術後大きくなって、そして戻ってからはみるみる山型に突き出しきたんだ。まちばりの頭みたいだった丸い団子の様な乳首もみるみる円筒型に。ともこちゃん自身嬉しいっていうより恐かったっていってたの。まいちゃんはもうAカップのブラが苦しいって言うし。
 後ね、ともこちゃんの手術跡までもちょっぴり見せて貰ったの。お風呂場で本人すごく恥ずかしがってたんだけど、ともこちゃんの男性自身はもうすっかり皮かむりになっちゃって、本来あの袋が有る場所にはちょっと赤黒いしわの有るあざみたいなのが有ったの。
うん、ちょっと恐かった。
 でも最近もうあんまり見せっこしなくなったんだ。みんなお互い共通の変化が出てきてから。どこだと思う?すごく柔らかい肉がみんなの太股におしりの下の部分を中心にいっぱい付いてきて、可愛い丸いカーブが付いてきたの。男の子によくあるあのおしりのエクボが完全に埋まり、小さな四角のお尻は角が取れ始め、まるで沈んでいくよう。ヒップに付いた柔らかい肉がどんどん増えて、とうとうパンツからはみ出てきたんだ。三人ともなんだかそう、体の変化が恥ずかしくなってきて…。
 あとね、ぽちゃぽちゃの柔らかい肉をちゃんと女として普通の位置に持っていく為、常にハードファンデーションを一週間後から来年二月まで強制的に着せられちゃうんだ。朝からお風呂にはいるまでの時間。今日試着してきたけど、やっぱり今の季節ちょっと暑い。パンツ・ブラ・ガードル・ボディスーツ・ウェストニッパー。もう何でそこまでやるのって感じがしたけど、あの締め付けられる感じがなんだか少し心地いい。
「あ、付けてる」
て感触。鏡で見る装着後の僕達の体は、ウエストがほんのちょっと括れた可愛い姿。脂肪がかなり付き始めたまいちゃんがその上からスパッツと可愛いTシャツを着たの。そしたら、矯正された下半身がまるっこくて可愛い。
「ええええっ、これまいちゃん!?」
って感じだったんだ。
 あ、僕誰に話しているんだっけ。なんだか独り言を時々言う癖も付いてきて、どうしちゃったんだろ僕。
 相変わらずの心地よい潮風の中、ちょっと可愛く小首をかしげたままずっとまどろみ、渚の女の子してた僕の目に、少し先の波打ち際に、なにかゆらゆら浮いている物が見えた。
「何だろ?タオルか何かかな」
サンダルを履き、小足で砂浜を可愛く走る僕。ううん決して意識してじゃない。じゃけんに走ってスカートに砂がつくの嫌だし、女の子のサンダルってちょっと窮屈だから自然にそんな走りかたになっちゃう。
 波打ち際まで走って来て僕はスカートの裾を、今日つけてるパープルのショーツと足の間ににそっと挟み込む。そして見つけたもの。それはとってもかっこいいブルーのトランクス型の男性用海水パンツだった。
「ふうん、不思議ねぇ、ここゴミだってあまり流れてこない所なのに」
 何だか宝物でも見つけたみたいにそれを持ち、元の岩場に戻ってきた。
じっと眺めているうちに複雑な気分になってきた僕。去年の今ごろはそう友達数人と房総半島へ泳ぎにいったっけ。男三人女三人。中には僕と初めてB体験までいった雅代ちゃんもいた。僕は緑色のトランクス。他の男の子達もかなり地味なパンツの中で女の子達は、一人は黒のビキニ。もう一人はパステルピンクのワンピース。そして雅代ちゃんは、胸とおなかにフリルのついた可愛い白のワンピ。泳いだ後の夜、三組のカップルがおのおの夜の海辺に。その次の日、雅代ちゃんを家へ送った時彼女の部屋で初体験したんだっけ。
 そう思った瞬間僕ははっと我に返った。そうお互い下着のままで愛しあった時、僕の手には、膨らみはまだあまり無いけど可愛い雅代ちゃんの乳首。それを触りながら、
「僕にもあったらなあ」
なんて思っていたんだっけ。
 僕は再度誰も見ていない事を確認してから、手をクロスし、一呼吸置いてノースリーブを脱いだ。ショーツと同じ色のパープルのブラが目に写ると、僕はそっとブラの上から手を当ててみる。丸い感触は、そうあの胸の無い雅代ちゃんと同じ。そしてスカートのウェストからちょっとはみ出ている僕の体の肉は幾分白く、彼女のそれの様にぷるぷると柔らかい。
「たった一年たっただけなのに…」
 ブラを外そうとしてちょっとためらう僕。ちょっぴり恐いんだ。あのときの雅代ちゃんの胸は今はっきり頭の中に浮かんでいる。
 ちょっと唾を飲んだ後、慣れた手つきで後ろ手にホックを外す。二つの胸にふっと開放感を感じ、ふるっと乳首に当たるブラのレースが、僕の胸の膨らみを感じさせる。
「やっぱり、同じみたい」
 円筒型とはいかないけど干しブドウの様になった乳首。水着の跡のせいかも知れないけど白く柔らかい胸。恐る恐る胸に当てる手に、あの時の雅代ちゃんの時と同じ感触が。そして
「あ…」
 ひやっとした少しくすぐったい感触と共に僕の口から思わず出た小さな声。雅代ちゃんの胸にそっと触った時も彼女は嫌がらなかったけど、小さな声を出していた。
「雅代ちゃんと同じになっていってる」
 だけど、その時の僕は嬉しいというか恐いという感覚が強かった。だって、もし僕がそうなった時、僕の胸を触ってくれるのは!?僕の頭の中に僕の男性友達の顔が次々と浮かんでくる。えーっ、そうだった。僕は日ごろ忘れようとしている事を思い出してしまう。そう、僕このままいけばいずれ男の子に抱かれる運命なんだ。
「いやだよーっ、僕。男に抱かれるなんて」
 思わず声を出してちょっと目を伏せてしまう。むさくるしくてがさつだから嫌いな男の子に僕が抱かれて愛されるなんて!だから僕女の子になりたい。何故?え、それは…。どうして答えられないの、僕。あーんわかんないよ。もう、決めたっ、泳ごっ!
 なんでそうなっちゃうか自分でもわかんない。ただちょっと頭を冷やしたい気分は有った事は確か。男物の海水パンツは丁度有るし。いいもん、僕胸は雅代ちゃんみたいになったけど、まだ体は男だもん!。
 すっと立ち上がり、スカートを履いたまま可愛いパープルのショーツを脱ぐ僕。え、誰も見ていないのに?だってこれから女性化するんだから、女の子らしく。あれ、僕さっき女の子になるの嫌がってなかったっけ?あーーん!もういいっ!
 足元で可愛くくるまったショーツを拾い、たたんだノースリーブの上にブラと一緒にきちんとたたんで置いて、えっと、次は濡れてるけどうまく履けるかなあ、この海パン。僕Mサイズであれば何でも履けたから。
 足を通し、スカートの中をうまく通し、うん履けた。でも、あれぇーー!?
ふとももからおしりにかけては何故かピチピチ。でもウエストにいくとちょっと緩い。そのままスカートの腰に手をやり、チャックをおろす。ストンと落ちるスカートに目もくれず、腰の紐でぎゅっと締め上げる。
「そうだよね、分かってたのにね、僕」
 お風呂場で恥ずかしくなった訳を再度思い出す。たぶん今回が男性の海パンをちゃんと履ける最後の時かもしれない。来年の今ごろは、もう普通の物はもうおしりが入らないだろう。
「履けるとしても、女物のホットパンツかゴブパンツか、フレアパンツなのかなあ」
 そのままサンダルを掃き浪打際へ駆け出す僕。スカート履いてないけど、スカートの癖と、いつぞやの矯正ギプスの癖のせいで、ついつい可愛く小股に走ってしまう。女性水着のくっきり付いたちょっと見女の子が、胸を露に、トランクス姿で走る姿は誰か見てたらすごく奇妙だろな。
 長い間ブラに包まれながら可愛く変化した僕の胸への、久しぶりの風と太陽のキッスがとても気持ちいい、そして浪打際で可愛くしゃがんで水で胸を濡らそうとしたとき
「いたっ、いたたたっ」
 僕は思わず声を上げてしまう。そう、女性化しはじめたおしりとももの肉に容赦なく硬くてごわごわの海水パンツが食い込んでいく。でもそんなこと気にしない。だって、わかっていたし、そうでなきゃおかしいもん…。
 あのクルージングの日、海で泳ぐ事の好きだった僕にとって、女性用のスイムウェアは実際はとても窮屈で暑く、泳いでいても水の感覚があまり気持ち良くなかったんだ。でも胸を隠さなきゃいけないから仕方が無い。胸をあらわにして泳ぐのは今日が最後。このままだともう二度と男性として海に入る事は出来ない。海に男性として今日さよならを言おうか。
 僕はつんと尖った胸を触りながら、純ちゃんの可愛いビキニを思い出す。来年は僕のこの胸は少なくともあの位までは膨らんじゃうんだろな。
 そんな事思いながら、ザブーンと打ち寄せる波に向かってダイブ。その瞬間、
「え-っ、うそっ」
 と思わず水の中で叫んでしまう。
 体がとても軽い。そして膨らんだ胸の肉と乳首が、冷たい水にすごく敏感に反応する。
(気持ちいい…・)
 暫くの間僕は波に体を任せる事にした。ふと僕の体を何かが軽くつつく気配がする。びっくりして辺りを見ても誰もいない。正体は小魚達だった。こんな事は今まで無かった事。僕が浅瀬へ逃げても小魚達は執拗に追い、数を増して、僕を追ってくる。僕が立ち止まると僕への可愛いキスが始まった。ホルモンで変化し始めた僕の体から男性としての気配が消えはじめ、代わりに優しい女性の何かの気配が出始めたのを感じたのだろうか。
 尚も追ってくる小魚から逃げる様にちょっと沖へ。泳ぎには自信が有るんだけど、女の子の体型になれば水着とか体力の衰えとか、あと膨らんだ胸とか、大きくなったヒップとかが邪魔して、そう伸び伸び泳げなくなるだろう。思いっきり泳げるのは多分今日が最後、僕の体は思う存分水を切った。
 水に直接当たる胸がすごくいい気分。これは今だけしか感じられないと思う。男の子は胸の感触は鈍感だし、女の子は、上半身裸で泳ぐ事なんて、普通に考えたら有り得ないもん。
 「ばいばーい、来年の今頃は、僕胸を隠して泳がなきゃいけないから、今のうちに水で思いっきり触ってね」
 僕がやっと水から上がった時、もう陽は傾いていた。真白だった日焼け外の肌はうっすら赤みが差している。不思議に泳ぐ前の、あの不思議なちまちました気持ちはどこかに行ってしまってる。あの気持ちって何だったんだろ。

 その答えは意外に早く分かった様な気がする。
「男性機能停止」
 つい先日の定期検診の結果として、その言葉が、翌日ゆり先生から僕に伝えられたんだ。僕の体の男性自身は、男性としてはもう役に立たなくなったみたい。昨日の海辺での一瞬とはいえ、あんなに不思議な幼い気分になったもその為なのかな。それと、もう一つ重大な事は、今受けてる女性化治療をたとえ止めたとしても、特別な治療をしない限りはもとに戻る事は出来ないらしい。やっぱり昨日の海辺での不思議な感覚はそのせいなんだって気がしてならない。
「でも、ゆっこちゃんが一番最後よ。男の子でなくなったのは」 

 九月になり授業再開。クルージングの時の事も有り、僕達と美咲先生の間は嘘みたいに和やかになった。もう先生は怒ったりしない。僕達も学問の授業の他、次々と与えられる課題をこなしていった。授業が終わった後、お風呂の後も部屋で一人で仕種の勉強。濡れた髪をちょっとかきあげ、小首をかしげてちょっとポーズ。自由時間に眺めた雑誌の女の子のポーズを覚えて練習するのが僕の日課の一つになっていた。
 そんな中、僕の一人遊びもだんだん変っていく。スカート姿のまま、ベッドに寝転び、男性自身をもてあそぶ今までとはあきらかに違ってきちゃった。鏡を見つめながらゆっくりスカートと上着を脱ぐと、鏡に写るブラとガードルを付けた可愛い僕。指先に意識的に神経を集中させ、いつかTVとかで見た女の子の仕種を真似て、後ろ手にブラを外すと現れる、可愛い尖った胸。水着跡のついた体は、昔良くみた女の子のヌード写真とはぜんぜん比べものにはならないけど、凹凸が皮下脂肪で埋まり、中性的で奇麗。
「こんなに可愛くなっちゃった…」
 男性自身には触らず、尖った胸をゆっくり可愛く愛撫すると、冷たくくすぐったい。感覚と共に、たちまち乳首が隆起していく。人差し指と中指で可愛さを意識しながら乳首をはさむと何だか切ない気分。
「うん…、ん…」
 口から漏れる言葉が何だか恥ずかしい。そして何よりもすべすべしてきた指がなんだか嬉しい。毎日クリーム塗っているせいもあるけど。
 しばらく触っているうち、だんだん熱くなっていく体を冷やす為、ふかふかだけど冷たいベッドにそっと寝転ぶ。よいしよって感じでガードルを脱ぎ、可愛い白のショーツの上から小さくなった僕の男性自身をそっと愛撫。
「あは、もうさきっぽが濡れてる…」
 おへそのあたりを触ると、柔らかくなった皮膚の下にぽちゃっとした柔らかい肉。下腹部には、女の子特有の脂肪もようやく付きはじめたみたい。うん、僕変ってきてる!
「女の子になってきてる…」
 急にエスカレートして、不思議な感覚に身をまかせ、乳首と男性自身を同時に愛撫。それはもう女の子の遊びスタイル。
「うん、うん、…」
 時間かかるけどようやく立ってきた男性自身の先はぬるぬるした液で湿っぽい。
「あはっ、まだ勃起するんだあ」
 また出てきたあの幼くきゃぴきゃぴした気持ち。そう僕の体の中に一瞬だけど一人の女の子が出てくる。すっかり皮をかぶった男性自身の先を、皮から出して、指ではさんでしごく。
「ああっ、ああん、うううん」
 乳首といっしょに激しく愛撫すると、もう止まらない。いくところまでいっちゃう。そして、かなり長い時間かかるけど(これは女の子みたい)フィニッシュが来るのは僕がまだ男の子である証拠。それと共に潮が引いていく様になる僕のテンション。まるで夢から覚める様に。
 しばらく余韻にひたっているとやってくる、さっきとは別の何だかきゅんとした孤独感にも似た気分。いろいろな感覚や気分が次から次へと出ては消えちゃう。どうしてなんだろ。
 そういえば、この一人遊びの方法も体の変化に伴って少しずつ今の形に変化してたんだっけ?最初は普通に男の子がやっているのと同じだったのに。男性自身が衰えてだんだん勃起しなくなり、反面胸が感じる様になり、いつのまにか、胸とか太股とか触っているうちにだんだん男性自信が興奮してくる様になって…。どこまで変っていくんだろ、僕。
 そうこうするうち、眠気が襲ってくる。さっきの様な、
「今日は一人Hしたいっ」
 という気分は、最初四、五日に一度だったのが、だんだん日を置いてやってくる。逆に1回の時間がだんだん長くなってくるきて、そして終わった後は不思議と以前よりすやすや眠れるんだ。
「僕何やってんだろな」
 頭の中にまだ頑強に残っている僕の男の子の部分がそう呟かせた。

 十月になり、僕達の訓練は一応基礎は終了という事になった。
「無事終わったらご褒美を上げる」
 といっていたゆり先生の言葉を期待していると、思わぬ朗報。聞いた時、僕達は有頂天。僕達は軽井沢へ訓練終了記念のテニス旅行へ行く事になった。そして、ご褒美というのは、そう、女性用のテニスウェアなんだって。今まで短くても膝下の丈のスカートしか履いた事の無い僕達がいきなりミニスカート履けるなんて夢にも思ってなかった。
「先生、軽井沢にも別荘持ってるの」
 まいちゃんがわくわくして聞く。
「いいえ、一般の別荘よ」
「じゃあ、テニスコートは?」
「一般の所を借りるのよ。森の中の静かな所なのよ」
 意味ありげに美咲先生がちょっと意地悪そうに答える。えっえっ?それってもしかして、
「ゆり先生、そこって一般の人も来るの?」
 ちょっと脅えてとも子ちゃんが聞く
「あたり前でしょ。別荘とテニスコート借り切る程のお金なんてないわよ」
 美咲先生が代わりに答える。だってこんな大きな別荘とクルーザー持ってるのに。
「いい、百%遊びじゃないんだからね。あなたたちの記念すべき女の子デビューの初日なんだから」
 この前、熱海へ行って恐くなって帰ってきた事を思い出す僕。長いスカートだったから良かったけど、今度はいきなり短いテニススコート?それも普通の人達が見ている前で!?太股とかパンツとか見えるんでしょ!?ゆり先生!まだ早いよぉ!それって洒落になんないよー!

 

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