ひゃっはー!ここから先はにゃんにゃかにゃん!

今夜はミステリーナイト!

「オカルト…ですか?」
「はーい!あたしだーい好きなんですー!」
 猫鰹屋での夕飯を終えたあたしはちょっと上機嫌。にゃんにゃか荘の割り当てられた一〇三号室。今は作り付けの質素な家具しかない部屋で、部屋の様子を見に来た紫音さんの前であたしの貴重なノートパソコンを開く。
「UFOとか、UMAとか、幽霊とかすごく好きなんです。あ、深夜一人では絶対観ませんけど、他の人と一緒なら平気です」
「怖い物見たさという訳ですか?」
 畳の上に寝転がって、まるで女の子が持つみたいに金ラメビーズピカピカのスマホを覗きつつ何か今一つ興味を示さない様子で喋る紫音さん。
「…すごく派手なスマホなんですね?」
「仕事で女のふりしている時用です。さすがにもったいないから二つ持ったりはしません」
 スマホの画面を指で操作しつつ、相変わらずスマホ画面を覗きつつ喋る彼。
「これ!これ知ってますか?森の中歩く雪男を十六ミリ映画フィルムで撮影した…」
「ああ、パターソンフィルムですか?確か近年撮影現場検証した結果、普通の人と変わらない大きさだったそうですね。最新のフィルム検証の結果、当時は見えなかった金属のスペクトルが背中に入ってて、とうとう撮影者が偽物と白状したとか…」
「ええ!そうなんですか!」
 ノートパソコンに保存してある映像を開くまでに紫音さんに言われてがっかりするあたし。
「じゃこれは?小高い水辺の淵から、水辺に立ってこちらを見上げてるビッグフットの…」
「かなり前に偽物とばれました」
「それじゃつまんないじゃないですか!」
 あたしは自分の宝物が偽物だと言われた様な気がしてがっかり。
「まあ、特に北米の雪男はあまり信用しない方がいいですよ。現地のいくつかの部族では、今でも呪術師を志す若者が何年も山の中で草木を身にまとって、人間社会を離れて生活してますから」
 あたしのパソコンの映像や写真も見ないでよくもそんな事を!
「わかりました。じゃあビッグフットでなくUFO…」
「UFOですか?まあ、ちょっと見せてごらんなさい」
 嫌な予感しつつもちゃぶ台の上に乗せたノートパソコンを紫音さんに向けるあたし。
「昔の写真は見せないでください。ほぼ百パーセント偽物か見間違いですから」
 そういいつつあたしが検索するファイルをのぞき込む紫音さん。
「これ!これどうですか!昔から言われてるアダムスキー型のUFO…」
「おや、F117ステルス爆撃機じゃないですか。正面から見ると確かにUFOですね、初の量産型でもう退役しつつありますよ。ほら、これです」
 自分のスマホからささっとそれを検索してあたしに見せる紫音さん。
「な、なんですかこれ?こんなのあるんですか?ステルスって」
「レーダーに映らない軍用機ですよ。まあおそらくあなたは軍用機には興味ないんでしょう」
「じゃあ、これなんかどうですか?空に浮かんだ見事なコウモリみたいな…」
「ほほほー、B2爆撃機ですね。図体でかいわりに爆弾あまり積めなくて値段も日本円で2千億円しますから、あまり普及しなかった奴です。あとこういうのもあります」
 紫音さんが見せてくれたのはまさにブーメランそっくりの飛行機。
「なんですかこれ?」
「YB49という奴です。まあブーメランみたいなのが飛んでたとか、夜中にVの字型に光球が飛んでたなんてのは大体こいつです。試作におわりましたが」
「最近こんな飛行機あるんですか?」
「いえ、こいつが生まれたのは第二次大戦の少しあと位です」
「えーー!」
 同様にささっとその実物をスマホで見せてくれる紫音さんにあたしはちょっとイラっと来る。
「じゃあこれはどうですか!夕焼けの空に複数の白いものが飛び交っている映像なんですけど!」
「太陽に照らされた鳥の群れですね。地上では太陽が沈んでいても、上空ではまだ太陽が沈んでないんです。日没直後のこの手の映像はみんなこれですよ」
 もう、なんなのよこの人!
「じゃあ次、UMA!」
「今度はなんですか?」
「ネッシーの有名な写真です!湖面から首を出す恐竜の…」
「ああ、外科医の写真ですか?とっくに撮影した本人が模型使ったトリックとゲロってますよ」
「あ…あの…」
「ネス湖のネッシーの正体はほぼチョウザメで確定しています。しかも体調数メートルの奴が一万匹いるそうです。イギリスの観光局もそれを公表すれば観光客が減るので公表しないだけです」
「じゃあこれは!?アジアの湖で撮影された、湖の中にいる恐竜の胴体と長く首を伸ばしたこの写真…」
「水浴びしている可愛いゾウさんですね。胴体に見えるのは頭で首に見えるのは鼻です」
「じゃあ!これは何なんですか!?これも有名な写真なんですけど、湖面に浮かぶボートの下に巨大なウミヘビみたいなのが映ってるんです!」
「ああ、小魚が群れなして移動している写真ですね。ゴンズイ玉みたいなものですよ」
 そろそろ疲れてきたあたしに、
「まだやるんですか?」
 と意地悪く聞いてくる紫音さん。
「…じゃあ、最後、幽霊の動画…」
「どんどんオカルトのレベルが落ちてきてますね」
「ほっといてください…。これはどうですか?道のガードレールの下で白い手がおいでおいでしてるんです」
「…これれですか?ああ、ガードレールに縛っているビニール紐が風にたなびいてる映像ですね。以前立て看板か何か縛ってあったんじゃないですか?」
「じゃあこれはどうですか!あたし観た時夜寝れなかったんですけど!怖いですよ!真夜中の伊豆の山中の山道の車でのドライブの全面映像なんですけどっ!道の左端に半透明の着物姿の不気味な幽霊が映ってるんです」
「あー、ああ、やっぱりこれですか?上半身がビニールシートで下半身は岩ですね。これがそんなに怖いんですか?早稲田大の大槻教授に笑われますよ!」
 もうやけになって次々と不思議な写真や映像を見せ始めるあたし。
「生首描いた掛け軸の目が開くんです!」
「ハエか何かが偶然目に留まったんですね」
「前が二人の人間の顔で後ろが河童のミイラの写真…」
「随分前に新聞紙と漆で作られてる事がわかりましてね」
「外国の家の火事の写真に少女が映り込んでるんです!」
「火は瞬間瞬間いろいろな形をするんです。私も京都の祇園の八坂神社でこんな写真を撮りました」
 そう言って紫音さんがスマホで見せてくれたのは、かがり火の写真だけど、どう見ても伝説の火の鳥のフェニックスにしか見えない。
「まあ、こんなもんです」
 もうこうなったら、幽霊の声!
「これどうですか!?岩崎〇美とレ〇ッカの昔のレコードに幽霊の…」
「録音スタジオのテープ使いまわしの結果、消去ヘッドの磁気不調で前のが残った奴ですね。うめき声やセンパイの声はちゃんと公式に公表されています」
 聞くまでもなくあたしの持ちネタを先にバラす紫音さん。
「キャトルミューティレーションというのが有って、牛がUFOに誘拐されて…」
「全てコヨーテやオオカミあたりの肉食動物の仕業ですよ。放置した死体の柔らかい部分を口で咥えて引っ張るとカミソリで切ったみたいにちぎれますし、血が無いのは全て地面にしみ込んだからです、FBIが既に実証実験やりました」
「あたしは!諦めません!これは!これは?」

 大体二十分後、くたくたになってはあはあ言ってるあたしの横で涼しい顔で相変わらずスマホを観るシオンさんがいた。
「はぁ、はぁ、紫音さんには、その…夢と…言う…物が、な、無いんですか!?」
「あなたはこんなものに夢を求めてたんですか?」
「ほっといてください!あたしもう寝ます!」
 まじ機嫌わるくなったあたしはパソコン画面を乱暴に閉じる。
「まあ、夢追うのもいいですが現実を直視するのも大事な事です。あなたの夢をぶち壊したお礼に、管理人の遥さんから布団を借りてきてあげましょう」
「そんなお礼ならいいです!」
 あたしの言葉を聞いてか聞かずか、部屋から出ていく紫音さんだった。
「待ってください、あたしも行きますから」
 紫音さんの後を追って部屋を出ていくあたし。しかし、そんなあたしの部屋の天井の端に何か邪悪な気配が有るのをあたしは知る由もなかった。

「ぐわあ!」
 気持ちよく寝ていたあたしの胸を突然何かが触る気配であたしは目を覚ました。
「おはようございます。声かけても起きないので、重要な連絡が有るので部屋の中に起こしに来ました」
 あたしの布団の横で紫音さんが外出用だと思うけどポンチョとチューリップハット姿で正座していた。
「な、何するんですか!そんな!あたしはもう女になりかけてんだから!変な真似やめてください!」
「ですが、私とあなたは同類のはずですよ。あなたが女なら私も女、男というなら私も男です。同性の胸触ったら悪いんですか?」
「訳のわからん事言わないでください!」
「触った感じだと、バストトップはもう女でしたね。胸は柔らかいですが、まだAには程遠い…」
「ほっといてください!」
 そう叫んでこれ以上触られるのが嫌で布団から飛び出して掛布団を両手で胸に当てて部屋の隅へ飛びのくあたし。
「な、何の用ですか!重要な事って?」
「私はこれから仕事に行きます。その間に私の部屋の二〇一号室を片付けてください。あなたのやり方でいいです。晩飯進呈いたします。おでんでいいですか?」
 おでんにはちょっと暖かい季節だけど、実家農家だし、おでんはよく作って食べたし、嫌いじゃないし…。
「いいですよ、それで」
「醤油、味噌、塩、トンコツ、味は何がいいですか?」
「じゃあトンコツにしてください」
 多分ラーメンとひっかけた紫音さん流のジョークだと思うけど、胸触られた仕返しであたしはそう答えた。
「トンコツ…ですか?」
「はい。一度トンコツおでんとやらを食べてみたいです」
「少々難儀なんですが…」
「期待してまーす」
 意地悪そうにつんとしてそう答えるあたし。作れるもんなら作ってみぃ。あ、そうだ。
「掃除する前に紫音さんの部屋見せてください」

「なっなっ!なんじゃこりゃあ!」
 昔の刑事ドラマの殉職した刑事の最後の言葉みたいなのが自然にあたしの口から出た。
 何と言えばいいんだろう。あちこちにいろんな色のLED電球がぶら下がっててるジャングル?只違うのは木々の代わりにいろんな衣装と衣装ハンガー。石の代わりに靴や多分小物とかが入った箱。下には落ち葉や泥の代わりに泥だらけの衣装に女の子下着や靴下。プラにストッキングにどうやって男が履くのっていう位のパンツまで転がっている。
「し、紫音さん、こんな所のどこで寝てるんですか?」
「ロフトがあります」
「ロフト…ですか」
 足元に注意しつつ、衣装のジャングルをかき分けて紫音さんの後についていくと、そこには…
「紫音さん…ここに洞窟がありますう!」
「注意してください。足滑らすと洞窟自体が壊れます」
 ロフトへ通じる梯もほぼ何かの衣装で回りが見えなくなってて、足元には無造作に積まれたまるで険しい山の登山道みたいな…
「紫音さん!この箱…キノコが生えてますぅ!」
「中開けてみるのも一興ですね」
「絶対嫌です!」
 こんな調子だと、多分ロフトもこんな…。そう思ったあたしだけど、そこに上がった途端意外な光景が目に飛び込んでくる。
「え…何ですか、このギャップは…」
 ゴミ一つ落ちてないピンクの絨毯に白に花柄のカーテン。カラフルに小さな箪笥に衣装ケース。コスプレ用だと思われる衣装と女物のスーツがかかった衣装ハンガーに、山ほどの化粧用具と香水の瓶が整頓されているドレッサー。香水の匂いのする四畳半位の小さな空間はまさに女の子の部屋そのもの。
「ここまでたどり着いたのはあなたが初めてです」
「なんか、紫音さんの性格そのものの部屋ですね」
 ぐるっとその部屋を観つつ、ドレッサーの前に行くと、そこにはあたしが本でしか観た事の無い高価な香水や化粧品ばかり。
「では下の部屋の掃除お願いします。クリーニング屋はアパート出て駅と反対方向に歩いたところにありますので、必要とあらば使ってください」
 紫音さんの隠し部屋にちょっと見とれていたあたしは、ここを掃除するというこれから来る現実に気づいて大きなため息。
「お仕事って、何やるんですか?」
「キャンペーンガールです」
「そうですか、いいですね…て、キャンベーン…ガール!?」
「はい、前回評判良かったのでまた呼ばれました」
「ガールって、女装して?」
「いかにも。世の中の煙草を吸ってる連中に電子煙草を押し付けて、地球温暖化防止に一役買う仕事です」
「紫音さんの事だから、どうせ無理やり押しまくるんでしょ?」
「はい、電子煙草片手に、指を頭に押し付けて、これに切り替えるか脳味噌をここでぶちまけるかと問い詰めるんです」
「はあ?」
「男のままでやったらその場で逆に撃ち殺されますが、メイド服姿で可愛い声で言うと、特に中年の親父はにこにこしながら、電子煙草本体の割引券受け取ってくれます」
「一度見てみたいです。紫音さんの女装」
「こんな所ですが…」
 そう言ってささっと彼はポンチョの内ポケットからスマホを取り出し、その写真を見せてくれる。それを観たあたしの顔が驚きの顔で引きつっていく。
「どれが…紫音さん?」
「真ん中が私です」
「嘘でしょ!」
 メイド服の女の子が三人。笑顔でピースサインで何かの店の前に立ってる写真の真ん中の背の高い女の子が、なんで!?
「ここであなたに嘘ついても一円の得にもなりません。そろそろ行きますので、あと宜しくです」
「あ、あの…」
 あたしが呼びかけるのも聞かず、洞窟みたいな階段を降りて行き、森の木みたいな洋服と城壁みたいに積み重なった小物の箱をかきわけて部屋の出口へ行く紫音さん。
「わかったわよ!やりゃいいんでしょ!」
 一人叫んであたしはロフトの階段を滑り落ちそうになりながら部屋のドア付近にたどりつき、まずはゴミ拾いから始めた。
 もうどういったらいいのかわからない。自分は掃除する機械だと自分に言い聞かせつつ、朝も昼も近くのコンビニでおにぎりとお茶立ち飲み食いして、ふらふらになりながらも紫音さんの部屋の掃除と片づけ。今まで生きていてこんなに働いた事は多分無いと思う。これが夏場でなくてよかったと自分に言い聞かせながら。

 あっと言う間に夕方。ようやくなんとか形になって部屋のドア近くにへたりこみ、うとうとしていた時部屋のドアが開いて化粧の匂いぷんぷんさせながら紫音さんが入って来る。それに気づいて目を覚ましたあたしの目には、彼の顔が一瞬驚いた顔になったのを見逃さなかった。あたしはその場でよろよろと立ち上がって彼に敬礼する。
「部屋の掃除…完了!箱に入った靴は部屋の隅に。衣類は洗濯できるのはベランダに干しました。クリーニングが必要な物は角のクリーニング屋へ…もう何度緒往復したかわかりません…。落ちていた紙類はダンボールへ。シミとかカビがついてもう助からないと思われる衣装はゴミ袋に入れて、あきらかにゴミとわかるものと別にコゴミ袋に入れて廊下に出してあります…。十五袋ほどありま…す…。部屋の電球はもう必要ないですからひとまとめにして箱へ…あと畳と台所と風呂場とトイレは、可能な限り磨いて…」
 ここまで喋ってとうとう力尽きてよろよろとなったあたしを紫音さんがしっかり受け止めてくれた。そのままあたしは続ける。
「…キノコの下は…ボロボロになった靴でした。あと部屋からゴキブリの死体が十六匹、ハサミムシの死骸が三匹、ネズミのミイラが一匹出てきました…」
「映画のUボートに出てきたへたれエンジニアですかあなたは?」
「へたれでもなんでも…とにかく寝かせてください…」
 ベランダに面した八畳の部屋にはの奥には小さな空間が出来て、天井まで積み上げられた靴・小物・アクセの箱。殆ど何も掛かっていない大きな衣装ハンガー。ここまでしてやっと世間並に普通に物がいっぱい置いてある部屋になった紫音さんの部屋。
「ここで寝かせてください。部屋に戻る元気も…胸揉まないでくださ…」

 どれくらい寝たかわかんないけど、民宿に友達と泊まりに行った夢を見ていて、そこでの夕刻ほぼ必ずと言っていいほど香ってくる大根と鰹出汁の美味そうな匂いであたしはふと目を覚ました。どうやらあたしが整理整頓した台所で紫音さんがおでん作ってる様子。でもどうみてもトンコツ味じゃないのはわかる。
(そんなの出来っこないよね)
そう思いつつあたしは起き上がって台所にいる紫音さんの方に歩み寄る。
「どうやら掃除の才能はありそうですね」
 そう言ってくれる紫音さんのの言葉を無視してあたしは意地悪そうにコンロにかかっているおでんの入ってるらしい土鍋を見つめる。
「やっばりトンコツ味のおでんも匂いは醤油と変わらないんですねぇ」
「どんなおでんでも基本の味は醤油です」
 なかなかあきらめの悪い人みたい。あたしがそっとおでんの鍋の蓋を開けようとした時、
「開けない方がいいですよ」
「いいじゃないですか。トンコツ味のおでんてどんなのか見てみたいんです」
 意地悪そうにあたしが言っておでんの鍋蓋を開けた瞬間、
「うははははははははは!」
 大音量の音と共にあたしは目に入った物を見て飛び跳ねて台所の横に積んだダンボールにぶつかり。
「ぶ、ぶ!豚豚豚豚豚!!」
 とうわ言の様に喋っていた。鍋には巨大な豚の頭が入っていて、それが大笑いしたのである。
「な、なんですか!その…」
「ああ、これすか?落とし豚です。光センサーと警告音付きのつまみ食い防止装置付きです」
「こ、こんなもの、さっき掃除した時無かったです」
「おでんのテーマが豚でしたので、仕事の帰りに買ってきたんです。鍋豚もあったのですが、事前にネタがばれるので買いませんでした」
「どっかにやってください!気持ち悪いです」
「ここは私の部屋なんですが…それにこの豚は木曽の木工の匠の一刀彫で高かった…」
「気持ち悪いですから!」
「うははははははははははは!」
 あたしの抗議に再び鍋の蓋を開け閉めして豚に笑わせる紫音さんだった。

「美味しいです!」
 あんなのが落とし蓋になってたおでんで食べるのが怖かったけど、醤油と鳥と鰹の出汁の効いた…
「うちのおでんは大根と鳥、はんぺん、魚河岸揚げ、厚揚げ、がんもどき、あと入れるとしたら牛スジと昆布と竹輪位でしょうか。変な練り物入れると出汁の味がおかしくなります。澄んだ出汁はハンペンと魚河岸揚げを美味しくします」
 あいかわらずうんちく語りながら大根口にしてる紫音さんだけど、
「あの、調味料ここに一通り揃ってるんですけど、使うんですか?」
 そこには塩、胡椒、からし、味の素、ワサビマヨ、ケチャップ、ナンプラー、ショッツルまである。
「私は使いませんが、真莉愛さんの好みがわからないので一通り用意しました」
「そんな変な食べ方しません…ショッツルは…どうなんだろ?実家に常備してたけど…」
 そう言いつつ、紫音さんの方を向いてハンペンに手を出したあたしの手が止まり、乱暴にちゃぶ台にお椀を置いて思わず壁に後ずさりして激突
「し、し…か、かかかかかかか…」
(紫音さん、壁見てください!)
 と言おうとしてるのに震えてうまく言えない、あたしは自分の座布団を顔に当てて紫音さんの後ろの壁から目を覆った。
「どうかしましたか?」
 そう言う紫音さんの後ろの壁からあきらかに幽霊衣装の女の人がぬっと上半身を出していた。ちょっと美人なんだけど目が真っ黒ですごく怖い!
「…うらめしや…」
(ゆ、幽霊って本当にうらめしやって言うんだ…)
座布団を顔に当てて震えながら思う私。だけど…、
「裏の飯屋がどうかしましたか?」
 紫音さん!後ろ!幽霊!気づいてないの!?
「…うらめしや…」
「あの糞高くて不味いラーメン屋の事ですか?」
「……うらめし…」
「何それ?ステマですか?新手の?」
「…う…」
 震えていたあたしはやっと声が出た。
「紫音さん!後ろ!お化け出てますぅ!」
「ああ、なんかそんな気がしてましたが」
 そこで初めて紫音さんは後ろを振り返り幽霊さんとご対面。
「うらめしや!」
 何故か少し嬉しそうに話す幽霊。
「なんだ、幽霊ですか。今ガンモ食ってるんで用があるなら後にしてください」
「…」
 困った様子で動きを止める幽霊は、紫音さんが食べ終わった後今度は彼の目の前、ちゃぶ台の上にゆらーっと飛んできて、再び
「うらめしやあ」
 その様子を座布団から片目だけ出して見るあたし。
「紫音さん!怖くないんですかあ!」
「幽霊ったって元は人間です。怖がるからこいつらはつけあがるんですよ。大体うらめしいって私が何かこいつにしたんですか?」
 紫音さんの言葉に怒ったのか、すごい形相で
「うーらーめーしーやーあ!」
 大声で叫ぶ幽霊。悲鳴を上げて再び布団を顔に当てて壁の方へ向き直るあたし。
「幽霊は信じない方なんですが、出ちまったのは仕方ないですね。幽霊退治方その一。塩!」
 そう言って紫音さんはちゃぶ台の傍らにある食卓塩の瓶を手に幽霊にふりかけると、
「あつ!あつ!熱!熱!」
 突然何かのバラエティ番組のコントみたいに大袈裟に塩を振り払う幽霊さん。
「へえ、塩は熱いんですか。メモっとかなきゃ…。味の素と胡椒はどうですか?」
 そう言いつつ二つの瓶の中蓋を開けて、目の前に浮かんでる幽霊にぶちまける紫音さん。
「ふぁーっくしょい!」
 突然の幽霊さんの悲鳴とくしゃみに、あたしは一体何が起きてるのかと座布団を手に後ろをちょっと振り返ると。
「なかなか面白いですね。それじゃ醤油とナンプラーとショッツル、ワサビマヨとか…」
「な、何するんや!このドアホ!」
 調味料山ほどかけられ、とうとう目だけ怖い美人幽霊が本気で怒りだして怒鳴り始める。
「大阪弁ですか?ねえオカルトマニアの真莉愛さん、大阪弁の幽霊って珍しくないですか?」
「知りません!」
 このままじゃ絶対呪われると思ったあたしは再び壁の方に向き直って答える。
「あの、この際なんで。壁から出てくるのはやはり生前に映画のエイリアンか何かを観た影響ですか?」
「んなもん、うちの勝手やろ!」
「まあともかく、出る時は事前にメールなり電話でアポ取ってからでないと住居不法侵入になりますよ。それと、本当に幽霊がいると信じさせたいなら、こんな姑息な手使わずに公式にテレビで記者会見か何か開いて…」
「あたしに言わんとってよ!理事長に言いや!」
「…幽霊業界にも組合みたいなものがあると…」
「いちいちメモ取るんやないわ!」
「いや、こう見えても知識欲旺盛なもんで…」
 醤油やナンプラーやワサビマヨでべとべとになってすごい匂いになった幽霊さん。
「…家戻ってシャワー浴びて着替えてくる…こんなみっともない恰好で次行かれへんわ!待っとりや!」
「次有るんだ…」
 そう言って顔に当てた座布団がら目だけ出して、すっと消えて行く幽霊さんを見つめているあたし。
「真莉愛さん、そんな所で遊んでないで、おでん冷めないうちに…」
「呪われます!絶対呪われますぅ!」
 何事もなかったみたいにハンペンを口にする紫音さんだった。

 数分後、何やら冷たい冷気と共に今度は二階にある紫音さんの部屋のベランダからすーっとさっきの幽霊さんが何故かすごい息き切らせながら入ってきて再びちゃぶ台の上に浮き始める。
「幽霊退治方その二、逆に驚かせる」
 そう言って紫音さんはいつのまにか閉じてあったおでん鍋の蓋を開けると、
「うははははははははは!」
 現れた豚の顔と笑い声に、
「きゃー!」
 と悲鳴上げてその場でジャンプする幽霊さん。
「何しに来たんですか?人を驚かせるというあなたのミッションは失敗に終わったでしょ?とっとと次行ってください」
「うるさいわ!ここまでされてこのままで引き下がれるかい!」
「足も無いのになんで息切らしてんですか?」
「足ちゃんとあるわい!ほら!」
 着物の裾をちょっと開くて見せる幽霊さん。幽霊にしとくのもったいない位の綺麗な足。
「大体なあ!江戸時代の丸山応挙って幽霊オタの日本画家のアホのせいで幽霊は足が無いと決めつけられたんやで!幽霊教習所で習ったんやから」
「丸山応挙を悪く言ってはいけません。大学入試にも出てくるんですよ。…幽霊教習所というのがある…と」
「今度はさっきみたいにいかへんで!対塩化ナトリウム丸ごと洗える合成繊維幽霊コスチュームや!」
「そんなの幽霊業界のどこで作ってるのかわかりませんが、なかなか根性がありますね」
「ふ…こちとら赤ちゃん生んだけどすぐ死んで、子守歌歌ってあげられなくて、悲しみのあまり橋から身投げしたんよ!こんな根性あんたにはないやろ!?」
 えー、そうなんだこのお化けさん…、ちょっぴりかわいそうな気もする。
「他人の事なぞ知りませんが、挑戦するなら受けて立ちましょう。そんな事もあろうとこちらも特別な塩を用意してあります」
「人の…いや幽霊の話聞いてなかったんか?」
「あなた幽霊になってまだ間もないのでは?」
「身投げしたのは去年の暮や!」
「まあいいです。こちらはモンゴルの塩を用意いたしました」
「モンゴルでも伯方でも一緒や!」
「但し、岩塩ですが。命に別状無い程度に小粒に砕いてあります。幽霊退治方その三、小石を投げつける」
「うちは死んでるっつーに…痛い!痛い!痛い!痛い!!」
 幽霊さんの顔とか手とかにもパチンコ玉位の岩塩を容赦なく投げつける紫音さん。大体そんなのいつ用意したんですかぁ!?
「続きまして、幽霊退治方その四。効くかどうかわかりませんが、手近な金属の棒を二本クロスさせる」
 そう言っておでん用のステンレスの菜箸をウルトラ〇ンみたく、
「ジュワ!」
 の掛け声と共に幽霊さんの前でクロスさせる紫音さん。
「ち、ちょっと!まぶしいからやめっつーの!」
 幽霊のその様子に紫音さんが驚いた様子。
「ちょっと、そこの幽霊さん」
「な、なんや!?」
「あんたキリシタンだったんですか?」
「わ、悪いか!」
「自殺していいんですか!?」
「いちいちうるさいっつーの!あんたは!」
(お化けさんと互角にやりあってるよ、この人…)
 幽霊さんと紫音さんの会話がたんだん漫才じみてきてなんだか怖くなくなってきたあたし。
「もう一つ実験してみますか。幽霊退治方その五、般若波羅蜜多心経!仏説・摩訶般若波羅蜜多心経!観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時…」
 その途端幽霊さんの動きがピタッと止まる。そして、
「は…、あかんあかん、こんな所で生きてる人苛めてる場合やない!うちにはもっとやるとこあるんや!もっとビッグにいかんと…て、なんでやねん!」
「…キリスト教信者の日本型幽霊には般若心教はいまいち効果が無いと…めもめも…と…」
「あんたなあ!幽霊で実験してたらあんまええ死に方せんぞ!そもそもさっきから言おうとしてたんやけど幽霊にこれ以上突っ込ませんといてんか!」
 もう別に怖くないから座布団で顔隠す必要もなくなったあたし。
「紫音さん、般若心教って…?」
「まあいろいろ使い方はあるんですが、幽霊が出た時使うのは、お前こんな事してる場合じゃねーだろ!という意味です」
「お化けなんて信じないみたいな事言ってたのに随分詳しいじゃないですかあ…」
 と、突然怒り出す幽霊さん。
「あのなー!昼間あんたがゆーてた伊豆山中の霊ってな!あれあたしの先輩や!あたしに良くしてくれたお方をビニールシートだの岩だの…」
「もうそろそろ決着つけましょう。幽霊退治方その六、罵詈雑言あびせる!関西式でいきますか」
 そう言って紫音さんはスーって息を吸い込み、
「アホ!ボケ!カス!鼻くそ!あほんだら!しばいたろか!頭カチ割って脳味噌ガタガタいわしたんぞ!いてまおかこのアホ幽霊!キリスト教徒の癖に自殺なんかするから死んでも誰からも相手にされへんのじゃ!わかっとんのかこのぼけ!」
「い、言ったわね…」
 とうとう黒い目に涙うかべ始める幽霊さん。
「とどめいきましょうか」
 そう言って部屋の外に出ると、あたしが集めたゴミの入った袋を持って入ってくる紫音さん。
「幽霊退治方その七、ゴミを投げつける。スペシャルサプライズで、ゴキブリとハサミムシの死骸とネズミのミイラも入っている…らしいですよ」
「ちょー!やーめーてー!!」
 幽霊さんの哀願する声を無視して、ゴミ袋を破って、破り口を幽霊さんに被せる紫音さん。
「折角掃除したのに!」
「だから私の部屋だからいいんです」
「もうやめたげてください!お化けさんかわいそうです!」
 身投げした話とか、すっかり幽霊さんに同情したあたしが紫音さんの足に抱き着いて止め様とするけど、
「別段恨みも無いのに脅しに来たのはあっちですよ」
 ゴミごとゴミ袋を頭に被せられてあとずさりする幽霊さん。
「やめ!やめーて!かんにん!もうけーへん!もう来ませんから許し…」
 とその時、ゴミ袋からこぼれ出た木箱を紫音さんが幽霊さんに投げると、にぶい音と共に見事幽霊さんの頭に命中。黒い目が真っ白になったかと思うと、そのまま二階のベランから外に背中からふわっと落ちていく幽霊さんだった。
 それを見届けた後、何事もなかった様に周囲がゴミだらけになったちゃぶ台の前に座る紫音さん。
「どうしたんですか?おでん冷めますよ」
「あたしもう食欲ありません!」
 ベランダへの入り口の大きな窓付近に転がってるネズミのミイラを身つつ怒った様に言うと、それを拾う為にそこへ行って、ついでにベランダから下の庭を見下ろすあたし。
「…お化けさん、大丈夫ですか…?」
 幽霊さんはもう消えていた。
「紫音さん!絶対呪われます!絶対復讐に来ますよ!紫音さんがビニールシート呼ばわりしたお化けさんとか連れて…」
 と、
「しまった!」
 そう言って口に竹輪咥えたまま立ち上がる紫音さん。
「ど、どうしたんですかぁ!」
「一生の不覚!」
「だから、何がですか!?」
「幽霊スマホで撮影するの忘れてた…」
 あ、そう言えば、あたしもそれやっときゃ良かった…。

 翌朝起きてすぐだけど、やっぱ幽霊に取りつかれたアパートに住むのやめよっかと大家の遥さんの部屋を訪ねるあたし。
「遥さーん、いますかあ?」
「いいよ、お入り」
「失礼しまーす…」
 と、部屋の中にいたのは、紫音さんと遥さんと、もう一人女性が…。
「お邪魔してまーす♪」
 そう言う彼女の顔をじっと見たあたしは思わず叫ぶ。
「き、昨日の!お化けさん!?」
 あわててスマホを取り出し今度は抜かりなく撮ろうと思ったけど、何か昨日の夜と違う幽霊さん。まず服が花柄のワンピースで、真っ黒だった目は普通の人の目になっている。
「撮っても無駄ですよ。今の彼女はどう見たって普通のただの女性にしか映りません」
「でもー!遥さん!その人幽霊なんですよ。怖くないんですか?」
「あたしゃ過去に仕事柄幽霊なんて何人も見てるよ。今更驚きゃしないさ」
「…ここで集まって何してるんですか?」
「この幽霊さんの人生というか幽生相談です。ですがもう終わりました」
「まあ、幽霊さんでも適材適所の働ける場所ってもんがあるんよ。番長皿屋敷のお菊さんなんて回転寿司屋ぴったりだろ?」
「まあ多分すぐ首になりますね。すぐ皿割るし、数え方とろいし」
「麻雀やってもションパイばかりする方ですけど、お菊さん今名誉理事長なんでぇ、お話しておきまーす」
「やめてください。呪われるの嫌ですから」
 遥さんと紫音さんと幽霊さんの話聞いててなんだか頭くらくらするあたしだった。
「これからは人にやさしい良い幽霊になって徳を積みまぁす。どうもありがとうございましたぁ」
 とにっこりする幽霊さん。そういわれれば邪悪な気配がすっかり消えて、下品な大阪弁も使わない笑顔も可愛い普通の女の人にしか見えない。
「あまり用も無いのにここうろつくんじゃないよ。告知物件指定されてネットの大島て〇あたりに掲載されたんじゃ迷惑だからね」
「はい、気をつけまぁす。それじゃあ、お邪魔しましたぁ」
 そう言ってすっと消える幽霊さん。無事成仏したんだろうか?
「ああそう真莉愛さん、朗報です。バイト先見つけてあげましたよ」
「え!本当ですか?」
「昨日行った猫鰹屋です。あなたの掃除の手際が良い事を店のマスターに話したら、それならという事で毎日閉店後の夜の九時から十二時までの三時間、店内と厨房の掃除を頼むとの事です。社会保険有りで深夜なんでとりあえず時給一二〇〇円という事で。
「わあ!ありがとうございます!」
 良かった!なんとか暮らせそう。アパートの前の張り紙が嫌だけど…。

 それから二日後、順調にバイトも始めたある日の午後、
「きゃああああ!」
 あたしの部屋で紫音さんの横でとんでも無い悲鳴上げるあたし。ネットで
(本物の亡霊)
 という言葉検索してみろと言われてそうしたら、出てきたそのスケッチを見て悲鳴を上げたあたし。それは真っ黒な目をして口が耳まで避けた、まるでピグミー続のミイラみたいな…
「外で寒いという言葉がしたので入れてあげたら、そんなのが入って来たそうです。その亡霊が立ち去った後に描かれたスケッチがそれです」
「なんてもの見せてくれたんですか!あたしもう夜怖くてトイレ行けません!」
 もうそれが表示されてるノートパソコン見るのも嫌だった。
「まあ安心してください。テレビで放送された時この幽霊の生前の奥さんという方が名乗り出て、このスケッチ引き取っていかれました」
「そ、そうなんですか?」
 ほっとしたあたしだけど、紫音さんはたて続けに三件の動画をあたしに見せてくれた。
 千葉県の小さな私鉄の電車の中で恋人を映した動画の車窓の鉄橋の上に、まさに先日出会った幽霊さんみたいなのが映ってる物。
 結婚式の動画のフラッシュに一瞬画面右半分に巨大な悪魔が映る物
 そして、部屋の子供を映した動画の外に、遠くの方で手を振る子供が映って、一瞬のうちにその子が部屋の子供のすぐ横まで移動する動画。
 怖かったけど、先日本物を観てるせいか、体が震えるという程ではなかったし、
「前の紫音さんの話だと、捏造とかフェイクが多いんですよね」
「そうです。この手の映像はアドビのフォトショップとプレミア有れば、私だって作れます。しかし…」
 一呼吸置いて紫音さんが続ける。
「恋人や友人の結婚式や子供さん映した映像に、はたしてこんな事するでしょうか?」
 そういえばそうかもしれない。だけど。
「もし本物だったとしても、それをこんな形で公表したりしませんよね?普通お蔵入りにしませんか?」
「あなたも鋭い事言う様になりましたね」
 とその時、いきなり部屋のドアが開いて大家の遥さんが息切らせて飛び込んできた。
「ちょっとあんた達!今テレビでやってるの、先日の幽霊さんじゃない?」
「本当ですか?」
 あたしの部屋にまだテレビが無いので大急ぎで遥さんのいる管理人室に急ぐあたし達。と、テレビでワイドショーみたいなのをやっていた。
「…今連絡入りました。先日から幽霊の声がするというこちらの住宅です。仕掛けたテレビカメラからは、ごらんの通り寝ている赤ちゃんの横には誰もいませんが、その横に仕掛けた無線機からは確かに女性の歌声が聞こえています!」
 そして、その声が拡大されると、

 お山に雨が降りました…
 たくさんたくさん降りました…
 ちょろちょろ小川が出来ました…

 いたずら熊の子かけてきて…

 スタジオがシーンと静まり返る中、子守歌だけが聞こえている。
「綺麗な声ですね」
「霊能者の話だと、赤ちゃんが生まれたけどすぐ死んじゃって、子守歌歌ってあげられなかった事を悲観した女性が自殺して、その事が忘れられずにさ迷い出て、泣いてる赤ちゃんをみつけると子守歌を歌ってあげて、泣き止むとどこかに去っていく(産女)の一種だと」
「えー!そうなんですか?その幽霊さんかわいそう…全然怖くない…お友達になってあげたい」
 スタジオ内で皆いろいろと言ってる中、
「ほう、この霊能者とやらは使えそうですね」
「何に使うんですか?」
 何やらメモを取る紫音さんの横であきれた様に呟くあたし。と、

 …それでも何かがいる様で…
 …もいちど…へっくしゅ! うわー今日めちゃさぶいわ…えと、どこまで歌ったんやったっけ?

「間違いなくあの幽霊さんですね」
 紫音さんがそういう横で、今度もしうちに出てきたら、紅茶とクッキーくらいご馳走してあげようと思うあたしだった。
 その後スタジオがどういう雰囲気になったかは、皆さまのご想像にお任せいたします。

※作者注) ここで紹介した幽霊撃退方法は一応効果があるとされてるものですが、実験した訳ではないので保証は致しかねます。
Page Top