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昭和46年11月 復帰措置に関する建議書 |
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琉 球 政 府 | |
琉球政府は、日本政府によって進められている沖縄の復帰措置について総合的に検討し、ここに次のとおり建議いたします。 これらの内容がすべて実現されるよう強く要請いたします。 昭和四十六年十一月十八日 |
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琉球政府 | |
行政主席 屋 良 朝 苗 |
目 次 |
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一 はじめに………………………………………………………………………………………… 二 基本的要求……………………………………………………………………………………… (一)返還協定について……………………………………………………………………………… (二)沖縄基地と自衛隊配備問題について………………………………………………………… 1.沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律案の問題点……………………………… 2.沖縄の復帰に伴う防衛庁の関係法律の適用の特別措置に関する法律…………………… (三)沖縄開発と開発三法案について……………………………………………………………… 1.沖縄開発の基本的理念……………………………………………………………………… 2.開発の方向……………………………………………………………………………………… 3.開発三法の問題点……………………………………………………………………………… (四)裁判の効力について…………………………………………………………………………… (五)厚生、労働問題について……………………………………………………………………… 1.社会保障………………………………………………………………………………………… 2.年金制度………………………………………………………………………………………… 3.社会福祉………………………………………………………………………………………… 4.医療保障………………………………………………………………………………………… 5.労働問題………………………………………………………………………………………… (六)教育・文化について…………………………………………………………………………… 1.民主的教育委員制度の確立…………………………………………………………………… 2.教師の権利と教育内容保障…………………………………………………………………… 3.教育文化諸環境の整備と格差是正…………………………………………………………… (七)税制、財政、金融について…………………………………………………………………… 1.税制措置………………………………………………………………………………………… 2.財政措置………………………………………………………………………………………… 3.通貨不安の解消措置…………………………………………………………………………… 三 具体的要求……………………………………………………………………………………… (一)沖縄復帰に伴う対米請求権処理の特別措置等に関する暫定法の立法要請(要綱)…… (二)沖縄振興開発特別措置法案に対する要請…………………………………………………… (三)沖縄開発庁設置法案に対する要請…………………………………………………………… (四)沖縄振興開発金融公庫法案に対する要請…………………………………………………… (五)沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律案に対する要請………………………………… 1.総理府・自治省関係…………………………………………………………………………… 2.大蔵省関係……………………………………………………………………………………… 3.文部省関係……………………………………………………………………………………… 4.厚生省関係……………………………………………………………………………………… 5.農林省関係……………………………………………………………………………………… 6.通商産業省・運輸省関係……………………………………………………………………… 7.郵政省関係……………………………………………………………………………………… 8.労働省関係……………………………………………………………………………………… (六)沖縄の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案に対する要請………………………… |
一 一三 一三 二三 二七 三三 三八 三八 三九 四三 四七 五一 五一 五三 五四 五六 五九 六四 六四 六七 七二 七五 七五 七七 七九 八一 八一 八六 九三 九四 九五 九五 一〇一 一〇六 一〇八 一一一 一一四 一一九 一二二 一二八 |
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一、はじめに 沖縄の祖国復帰はいよいよ目前に迫りました。その復帰への過程も、具体的には佐藤・ニクソン共同声明に始まり、返還協定調印を経て、今やその承認と関係法案の制定のため開かれている第六七臨時国会、いわゆる沖縄国会の山場を迎えております。この国会は沖縄県民の命運を決定し、ひいてはわが国の将来を方向づけようとする重大な意義をもち、すでに国会においてはこの問題についてはげしい論戦が展開されております。 あの悲惨な戦争の結果、自らの意志に反し、本土から行政的に分離されながらも、一途に本土への復帰を求め続けてきた沖縄百万県民は、この国会の成り行きを重大な関心をもって見守っております。顧みますと沖縄はその長い歴史の上でさまざまの運命を辿ってきました。戦前の平和の島沖縄は、その地理的へき地性とそれに加うるに沖縄に対する国民的な正しい理解の欠如等が重なり、終始政治的にも経済的にも恵まれない不利不運な下での生活を余儀なくされてきました。その上に戦争による苛酷の犠牲、十数万の尊い人命の損失、貴重なる文化遺産の壊滅、続く26年の苦渋に充ちた試練、思えば長い苦しい茨の道程でありました。これはまさに国民的十字架を一身にになって、国の敗戦の悲劇を象徴する姿ともいえましょう。その間大小さまざまの被害、公害や数限りのない痛ましい悲劇や事故に見舞われつつそしてあれにもこれにも消え去ることのできない多くの禍根を残したまま復帰の歴史的転換期に突入しているのであります。 この重大な時期にあたり、私は復帰の主人公たる沖縄百万県民を代表し、本土政府ならびに国会に対し、県民の率直な意思をつたえ、県民の心底から志向する復帰の実現を期しての県民の訴えをいたします。もちろん私はここまでにいたる佐藤総理はじめ関係首脳の熱意とご努力はこれを多とし、深甚なる敬意を表するものであります。 さて、アメリカは戦後二十六年もの長い間沖縄に施政権を行使してきました。その間にアメリカは沖縄に極東の自由諸国の防衛という美名の下に、排他的かつ恣意的に膨大な基地を建設してきました。基地の中に沖縄があるという表現が実感であります。百万の県民は小さい島で、基地や核兵器や毒ガス兵器に囲まれて生活してきました。それのみでなく、異民族による軍事優先政策の下で、政治的諸権利がいちじるしく制限され、基本的人権すら侵害されてきたことは枚挙にいとまありません。県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからに外なりません。経済面から見ても、平和経済の発展は大幅に立ちおくれ、沖縄の県民所得も本土の約六割であります。その他、このように基地あるがゆえに起るさまざまの被害公害や、とり返しのつかない多くの悲劇等を経験している県民は、復帰に当っては、やはり従来通りの基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおります。 また、アメリカが施政権を行使したことによってつくり出した基地は、それを生み出した施政権が返還されるときには、完全でないまでもある程度の整理なり縮小なりの処理をして返すべきではないかと思います。 そのような観点から復帰を考えたとき、このたびの返還協定は基地を固定化するものであり、県民の意志が十分に取り入れられていないとして、大半の県民は協定に不満を表明しております。まず基地の機能についてみるに、段階的に解消を求める声と全面撤去を主張する声は基地反対の世論と見てよく、これら二つを合わせるとおそらく八〇%以上の高率となります。 次に自衛隊の沖縄配備については、絶対多数が反対を表明しております。自衛隊の配備反対と言う世論は、やはり前述のように基地の島としての復帰を望まず、あくまでも基地のない平和の島としての復帰を強く望んでいることを示すものであります。 去る大戦において悲惨な目にあった県民は、世界の絶対平和を希求し、戦争につながる一切のものを否定しております。そのような県民感情からすると、基地に対する強い反対があることは極めて当然であります。しかるに、沖縄の復帰は基地の現状を堅持し、さらに、自衛隊の配備が前提となっているとのことであります。これは県民意志と大きくくい違い、国益の名においてしわ寄せされる沖縄基地の実態であります。 さて、極東の情勢は近来非常な変化を来たしつゝあります。世界の歴史の一大転換期を迎えていると言えましょう。近隣の超大国中華人民共和国が国連に加盟することになりました。アメリカと中国との接近も伝えられております。わが国も中国との国交樹立の声が高まりつつあります。好むと好まぬにかかわらず世界の歴史はその方向に大きく波打って動きつゝあります。 このような情勢の中で沖縄返還は実現されようとしているのであります。したがって、この返還は大きく胎動しつつあるアジア、否、世界史の潮流にブレーキになるような形のものであってはならないと思います。そのためには、沖縄基地の態様や自衛隊の配備については慎重再考の要があります。 次に、核抜き本土並み返還についてであります。この問題については度重なる国会の場で非常に頻繁に論議されておりますが、それにもかかわらず、県民の大半が、これを素直には納得せず、疑惑と不安をもっております。 核抜きについて最近米国首脳が復帰時には核兵器は撤去されていると証言しております。ところが、私どもはかつて毒ガスが撤去された経緯を知っております。 毒ガスでさえ、撤去されると公表されてから、二ヶ年以上も時日を要しております。毒ガスよりさらに難物と推定される未知の核兵器が現存するとすれば、果して後いくばくもない復帰時点までに撤去され得るでありましょうか。 疑惑と不安の解消は困難であるが、実際撤去されるとして、その事実はいかにして検証するか依然として不明のまま問題は残ります。 さらにまた、核基地が撤去されたとしても、返還後も沖縄における米軍基地の規模、機能、密度は本土とはとうてい比較にならないと言うことであります。 復帰後も現在の想定では沖縄における米軍基地密度は本土の基地密度の一五〇倍以上になります。なるほど、日米安保条約とそれに伴う地位協定が沖縄にも適用されるとは言え、より重要なことは、そうした形式の問題より、実質的な基地の内容であります。そうすると基地の整理縮小かあるいはその今後の態様の展望がはっきり示されない限りは本土並基地と言っても説得力をもち得るものではありません。前述の通り県民の絶対多数は基地に反対していることによってもそのことは明らかであります。 次に安保と沖縄基地についての世論では安保が沖縄の安全にとって役立つと言うより、危険だとする評価が圧倒的に高いのであります。この点についても、安保の堅持を前提とする復帰構想と多数の県民意志とはかみ合っておりません。県民はもともと基地に反対しております。 ところで安保は沖縄基地を「要石」として必要とするということであります。反対している基地を必要とする安保には必然的に反対せざるを得ないのであります。 次に、基地維持のために行われんとする公用地の強制収用五ヶ年間の期間にいたっては、これは県民の立場からは承服できるものではありません。沖縄だけに本土と異る特別立法をして、県民の意志に反して五ヶ年という長期にわたる土地の収用を強行する姿勢は、県民にとっては酷な措置であります。再考を促すものであります。 次に、復帰後のくらしについては、苦しくなるのではないかとの不安を訴えている者が世論では大半を占めております。さらにドルショックでその不安は急増しております。くらしに対する不安の解消なくしては復帰に伴って県民福祉の保障は不可能であります。生活不安の解消のためには基地経済から脱却し、この沖縄の地に今よりは安定し、今よりは豊かに、さらに希望のもてる新生沖縄を築きあげていかねばなりません。言うところの新生沖縄はその地域開発と言うも、経済開発と言うも、ただ単に経済次元の開発だけではなく、県民の真の福祉を至上の価値とし目的としてそれを創造し達成していく開発でなければなりません。従来の沖縄は余りにも国家権力や基地権力の犠牲となり手段となって利用され過ぎてきました。復帰という歴史の一大転換期にあたって、このような地位からも沖縄は脱却していかなければなりません。したがって政府におかれても、国会におかれてもそのような次元から沖縄問題をとらえて、返還協定や関連諸法案を慎重に検討していただくよう要請するものであります。 さて、沖縄県民は過去の苦難に充ちた歴史と貴重な体験から復帰にあたっては、まず何よりも県民の福祉を最優先に考える基本原則に立って、(1)地方自治権の確立、(2)反戦平和の理念をつらぬく、(3)基本的人権の確立、(4)県民本位の経済開発等を骨組とする新生沖縄の像を描いております。このようなことが結局は健全な国家をつくり出す原動力になると県民は固く信じているからであります。さらにまた復帰に当って返還軍用土地問題の取扱い、請求権の処理等は復帰処理事項の最も困難にしてかつ重要な課題であります。これらの解決についてもはっきりした責任態勢を確立しておく必要があります。 ところで、日米共同声明に基礎をおく沖縄の返還協定、そして沖縄の復帰準備として閣議決定されている復帰対策要綱の一部、国内関連法案等には前記のような県民の要求が十分反映されていない憾みがあります。そこで私は、沖縄問題の重大な段階において、将来の歴史に悔を残さないため、また歴史の証言者として、沖縄県民の要求や考え方等をここに集約し、県民を代表し、あえて建議するものであります。政府ならびに国会はこの沖縄県民の最終的な建議に謙虚に耳を傾けて、県民の中にある不満、不安、疑惑、意見、要求等を十分にくみ取ってもらいたいと思います。そして県民の立場に立って慎重に審議をつくし、論議を重ね民意に応えて最大最善の努力を払っていただき、党派的立場をこえて、たがいに重大なる責任をもち合って、真に沖縄県民の心に思いをいたし、県民はじめ大方の国民が納得してもらえる結論を導き出して復帰を実現させてもらうよう、ここに強く要請いたします。 二、基本的要求 (一)返還協定について 終戦以来、沖縄県民は、本土に復帰する日のあることを固く信じ、あらゆる困難を克服しながら本土復帰を要求し続けてまいりました。そして、二六ヶ年にわたる異民族支配の下で身をもって体験した幾多の苦難と試練を通して県民が最終的に到達した復帰のあり方は、平和憲法の下で日本国民としての諸権利を完全に回復することのできる「即時無条件かつ全面的返還」であります。また、これまでたえず軍事的に利用され、悲惨な沖縄戦をも体験した県民は、再びこのような状態に自らを置くようなことがあってはならないと、日頃から心に固く決めているのであります。これらのことは、沖縄の歴史と県民の心情を素直に理解しようとする気持ちがあれば、何人にも容易に納得できるところであります。 一昨年十一月二二日の日米共同声明によって沖縄の復帰は、一九七二年中に実現することとなり、目下その具体的な準備が進められつつあります。そして、すでに返還協定の調印も終え、日米両国議会においてその批准のための審議がなされつつあります。 わたくしたちは、佐藤総理大臣をはじめ日本政府当局が沖縄県民の苦労と心情を理解され、強い決意でこれまで米国との外交交渉を進めてこられたことについては、県民を代表して卒直にこれを多とし、敬意を表するものであります。しかしながら、沖縄県民は、日米共同声明ならびに沖縄返還協定の内容には、けっして満足しているのではありません。これらの取りきめは、県民の要求を十分に満たすものではなく、現在県民の間には次の諸点について強い疑惑、不安、不満が抱かれているのであります。 その第一は、一九六九年十一月の日米共同声明と沖縄返還協定によって、日本が極東における米国側の戦略体制下に組み入られるのではないかという懸念であります。返還後沖縄は、日米安保条約の適用地域に含められることになっておりますが、共同声明では、「現在のような極東情勢の下において、沖縄にある米軍が重要な役割を果している」ことが認められ、また、「沖縄の返還は、日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている条約上の義務の効果的遂行の妨げとなるようなものではない」とも謳われております。さらに韓国の防衛について日本は、事前協議にたいし「前向きにかつすみやかに態度を決定する」ことを米国に確約しており、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素である」と述べられています。 政府は、復帰後沖縄の基地は、日本本土にある米軍の施設区域と同じように、日米安保条約の目的に従って米軍に提供され、その枠内において使用されるのであるから、沖縄基地の役割も大きく変化する旨述べられておられますが、事前協議制度が弾力的に運用され、エースもノーもあり得るという政府の度重なる発言と、ジョンソン国務次官をはじめ米国政府高官の発言や証言内容とを考え合わせると、日米安保条約が本質的に変化したのではないかという強い疑惑の念を抱かざるを得ません。たとえばジョンソン次官は、日米首脳会議にたいする背景説明のなかで「朝鮮と台湾等に関する事前協議において日本政府が前向きにかつすみやかに態度を決定するということはたんに沖縄に関して適用されるだけではなく、日本本土南部の米軍基地に関しても同様に適用されるのであって、この点でなにがしかの変化があります。」と説明しております。さらに同次官は、日本はこれまで日本本土の安全だけを考えてきたが、今度の場合に周辺地域にも関連があることを認めるようになった旨の証言を行なっています。こういうことから、日米安保条約が質的に変化するのではないか、あるいは本土が「沖縄化」するのではないか、という強い疑惑が生じてくるのであります。もしもこの懸念があたっているとしますと、沖縄県民の求めた復帰とは全く相反することになり、沖縄県民としては何としても容認しえないものであります。 第二の疑惑不安は、「核」の問題であります。政府は、共同声明の第八項でニクソン米大統領が、日本側の説明に「深い理解を示し、日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく、沖縄返還を、右の日本政府の政策に背馳しないよう実施する」ことを確約していること、さらに返還協定(第七条)で核撤去の費用を日本が負担することを定めたことを挙げて、核は沖縄から確実に撤去されることを説明されております。しかし核の撤去の時期及びその確認方法はまだ明示されておりません。さらに重要なことは、核の有事持込みがあり得るのではないか、ということであります。ジョンソン国務次官は前述の背景説明で、「第八項は、特別の事態にさいし米国がもし必要と認めれば日本と協議を行なうという米国の権利をきわめて慎重に留保しており、しかもこのことが核兵器に適用されることは明確であります。」と説明しております。ジョンソン次官の説明をまつまでもなく、ごく単純に考えても、もし事前協議においてエースもノーもありうるというのであれば、当然に核の有事持込みもありうるということにならざるを得ないでありましょう。しかし「核ぬき」というのは決して一時的なものであってはならず、ぜひとも永久に撤去すべきものであり、できうる限り基地そのものもなくしてもらいたいというのが、沖縄県民の真の要求であることを御理解いただきたいのであります。 第三は、沖縄基地の態様についてであります。政府は、日米安保条約とその関連取りきめが沖縄にも本土におけると同様に適用されるのであるから、それは「本土並み」返還であると説明しております。しかしこれは「形式的な」本土並み返還であって、沖縄県民の要求する、いわば「実質的な」本土並み返還ではありません。沖縄返還協定の「了解覚書」によると、返還されるのは与儀ガソリン貯蔵地、本部飛行場その他一部だけであり、嘉手納空軍基地、海兵隊基地、瑞慶覧陸軍施設、第二兵站部、那覇軍港、宜野湾、読谷飛行場などの主要基地はほとんどそのまま存置されることになっております。現在、沖縄全土に米軍使用地の占める割合は十二・五%でありますが、復帰後も米軍が使用する面積は一〇・〇%であり、返還によって減少するのはわずか二・五%であります。しかも返還される基地の中には自衛隊が代って使用することを予定しているのもあります。政府は将来、国際情勢の変化に応じて米軍基地の整理を要求する旨述べていますが、積極的に整理縮小しようという意欲やそのための具体的計画はまだ提示されておりません。 基地の態様に関する問題はこれだけではありません。第一特殊部隊、第七心理部隊、SR71戦略偵察機などはそのまま残されることになっています。政府は、これらの特殊部隊の活動の存続を認め、ただその内容については、実態によってこれを改めたり、活動を制限する旨を明らかにしております。 さらに、V・O・Aの取扱いについて返還協定(第八条)は、復帰後五年間これを存続させることとし、その後の処置については復帰の二年後に日米両国政府の間で協議する旨規定し、これをうけて特別措置法(第一三一条)は、電波法の特例措置を定めております。しかしながら、このV・O・Aの取扱いに関する取りきめは、県民の間で、 (1)このように外国政府の直接運営する放送施設を沖縄にかぎって存続させることは、外国放送施設の設置を禁止している電波法の原則に反するばかりでなく、それでは本土政府がかねてから県民に約束してきた「本土並み返還」の趣旨にも反するのではないか。 (2)V・O・Aは、現在中波一、短波五二、超短波一七の計七〇波の周波数を占有しているが、これをそのまま存続させることになると、今後周波数の確保の面で国益に反するばかりでなく、近年とみに高まりつつある国内電波需要に対応する電波割当計画の策定にも耐えがたい障害にはならないか。 (3)V・O・Aを使って大統領直属の対外宣伝機関である海外広報局(U・S・I・A)が中国語、朝鮮語、ロシヤ語及び英語で中国や北朝鮮などの共産圏諸国に対して反共宣伝放送活動を行なっているが、外国のこのような活動を継続させることは、今回の国連総会において中国の国連加盟を実現させた国際情勢の動向や日中間の国交回復を要求する国内世論に反するばかりでなく、これから実際に中国との国交を回復するうえでも障害とはならないか。 などの点で問題視されております。そして、このV・O・Aは、沖縄本島北部の国頭村から一、〇〇〇1,000キロワットの超大電力をもって放送を行っているため、その周辺地域ではテレビ、ラジオの受信に混信妨害を与え、また有線電気通信設備にも誘導妨害を与え、そのためにその隣接地域では電話の架設もできない状態であります。しかも、返還協定第八条の運用について合意議事録では、「V・O・Aを日本国外へ移転する場合に、予見されない事情によって代替施設が返還協定第八条所定の五年内に完成されないときは、日本政府はこの代替施設が完成するまで沖縄においてV・O・Aの運営を継続する必要性に対し十分な認識を払う用意がある」とされているため、このような状態が一体いつになれば解消するのかその見通しすらつかず、V・O・Aの性格とこれを背負いこんでいく沖縄の将来を考え、これに深刻な不安を覚えずにはいられないのであります。去る五月一七日に行なわれた立法院のV・O・Aの撤去に関する決議も県民のそのような気持ちを端的に表明したものであります。 第四は、いわゆる資産買取りの問題であります。その対象とされているものは、琉球電力公社、琉球水道公社、琉球開発金融公社はじめ、琉球政府庁舎、裁判所庁舎、英語センター、文化センター、さらには道路などとかなり広範囲に及んでおります。 しかし、日本政府が引き継ぐことになっているこれらの資産は、形式はともあれ、その実質においては元来純然たる米国の所有に属するものというより、沖縄県民に属するとみられるべき要素が少なくありません。たとえば、前記三公社はいずれも一般資金並びにガリオア資金の見返り等でつくられたものであり、沖縄において営業を行なって現状のような資産となったものであります。琉球政府庁舎にいたっては、明確に「琉球住民に献呈さる」との銅板の表示が同庁舎入口にかかげられているのであって、すでに住民のものになっていると信じられてきたものであります。 したがって、これらの資産は、日本政府がわざわざ米国政府から買取らなくても、本来沖縄県民に属するものとして、沖縄県民の福祉増進と復興のために使用されるべき性質のものであったといえましょう。 第五に、対米請求権処理の問題があります。これは、アメリカが沖縄を支配してきた二六年間において、県民がこうむった損害をどのように処理するかという問題であり、奪われた人権の回復が図られるか否かという県民にとってはかりしれないほど大きな影響を及ぼす重要問題であります。 しかるに、返還協定では、ごく一部を除き、この請求権は放棄され、県民がこうむった損害の賠償、犯された人権の回復には考慮が払われておりません。二六年に及ぶ米軍支配下で沖縄県民のこうむった損害は筆舌につくしがたいものがあり、しかも「補償」または「賠償」の名に値するほどの救済措置は、ほとんど講じられていないのであります。 政府が返還協定において沖縄県民の同意をうることなく、対米請求権を放棄した以上、米施政下において沖縄県民のこうむったこれらの損害については、国がその責任において処理すべきであり、そのために沖縄県民に不利益を与えるようなことがあってはなりません。そのような観点から、今回の国会においては、沖縄県民の請求権処理に関する特別立法を制定していただくよう要請するものであります。因に、これについては、すでに本土政府当局に文書をもって同様な要請をしてあります。 わたくしは、さきに、新生沖縄県の基本理念の一つは、沖縄が二度と再び軍事的手段に利用されるようなことがあってはならないこと、したがって沖縄県民の要求する復帰対策の基本もすべての戦争及びこれにつながる一切の政策に反対し、沖縄を含むアジア全域の平和を維持することにあることを挙げてきました。そして、沖縄県民の要求する最終的な復帰のあり方は、県民が日本国憲法の下において日本国民としての権利を完全に享受することのできるような「無条件且つ全面的返還」でなければならないことも繰り返し述べてきました。しかるに、右に挙げた返還協定の内容は、明らかに沖縄県民のこれらの理念や要求に反するものであります。そこで、わたくしは、日本政府当局及び国会議員各位がこれらの諸点に対する沖縄県民の心情を卒直に理解され、単に問題を党派的立場で議論するのではなく、沖縄県民の将来の運命がこれらの論議の成り行きいかんにかかっていることに留意され慎重の上にも慎重を重ねてご検討いただき、沖縄県民の疑惑、不安、不満を完全に解消させて下さるよう強く要請するものであります。 (二) 沖縄基地と自衛隊配備問題について 「沖縄の中に基地があるのではなく、基地の中に沖縄がある」と言われるように、沖縄における基地のもつ比重は絶大であります。 沖縄の総面積は、本土において小さい県にランクされる神奈川県とほぼ同じ、二、三八八平方キロであります。しかるに、沖縄にある基地の総面積は、約三〇〇平方キロに及び、これは沖縄全面積の一二、五%、沖縄本島においては、その二二、五%にあたり、日本全土にある米軍基地総面積にほぼ相当するのであります。しかも、そのうち田畑が約二九%、完地が三%となっていて、県民の日常生活に直接影響を及ぼすのが、全軍用地の約三二%も占めております。特に基地の集中している中部地区の六市町村(嘉手納村、読谷村、北谷村、コザ市、宜野湾市、浦添市)はその面積一三〇平方キロ中、基地面積は約七〇平方キロ、すなわち総面積の五四%に達し、さらに市町村の例をあげると嘉手納村八八%、読谷村七九%、北谷村七四%、コザ市は六七%等であります。 本土の米軍基地面積は、全土の〇、〇八%にすぎないとのことであり、沖縄本島の基地の密度は、実に本土の二八〇倍にも及ぶことになります。また、基地(施設および地域)数は沖縄が一二〇ヶ所、本土一四八ヶ所あると言われていますが、本土の基地の数え方に準ずると、沖縄の基地はさらに多く、数百ヶ所にも達するようであります。さらに沖縄の米軍基地は、核兵器をはじめ、各種の近代兵器をもって装備され、いつでも広範なアジヤ各地に発進できる攻撃基地として、世界の類例のないものであり、本土にある米軍基地の数百倍に及ぶ機能をもっていると言われております。 このようなぼう大な面積の土地が軍用地として接収され、また、その強大な機能の中に沖縄がおかれているために、沖縄県民の生活は、あらゆる面で極端な圧迫を受け、いびつな状態になっております。かっての肥沃な田畑も基地になって農業は破壊され、市街地の中心部分に基地があるため、都市の計画的開発と経済発展を阻害しております。 そればかりでなく、いわゆる「基地公害」や米軍人軍属の犯罪、基地あるがゆえに発生する人権侵害の問題は、さらに深刻であります。空からトレーラーが落下したり、ジェット機が墜落したり、基地から流れ出た廃油によって井戸水が汚染されたいわゆる「燃える井戸」、米軍の演習等による流弾事故、米軍人軍属による頻発する交通事故による人身傷害、婦女子が殺傷、暴行されたり、また、原子力潜水艦による放射能汚染、ミサイル発射演習による漁業への影響等々、その数は枚挙にいとまがありません。 したがって、沖縄県民は、県民の人権を侵害し、生活を破壊するいわば悪の根源ともいうべき基地に対して強く反対し、その撤去を要求し続け、本土へ復帰することによって、これまで県民の蒙った米軍基地によるあらゆる被害は解消されるものと期待し、それを要求してきました。かりに直ちにこの県民の要求が全面的にかなえられないにしても、基地の態様が変わって、県民の不安を大幅に軽減することを強く求めてきました。 しかるに、この県民の当然の要求が、このたびの沖縄返還協定やこれを基本にして講じられようとしている国内措置において実現されていないことに対し、強い不満の意を表明するものであります。 一方、本土政府は、沖縄への自衛隊配備を具体的に進めているようであるが、米軍基地の存在に加えて、自衛隊が配備されることは、沖縄基地の強化をはかることにほかなりません。また、米軍基地の肩代りに自衛隊が配備されるとなれば、自衛隊の沖縄配備は、海外諸国を刺激し、沖縄基地にまつわる不安は増大こそすれ軽減することはないでありましょう。さらに、県民はかっての戦争体験、戦後の米軍支配の中から、戦争につながる一切のものを否定しております。したがって、ここにあらためて自衛隊の沖縄配備に対し反対の意思を表明いたします。 そこで、この沖縄基地と自衛隊配備問題に関連する「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律案」と「沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置に関する法律案」の両法案について以下問題点を指摘いたします。 1.沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律案の問題点 (1)この法案は、沖縄における米軍基地の存続を前提とし、その確保を図ることを目的としています。この法案には、基地をなくするとか、あるいは縮小していくという方向を示すものを見出すことができません。 沖縄に存する米軍基地は、米軍が占領軍としての権力と、絶対的、排他的な「施政権」によって、民主主義の原理に違反して、県民の意思を抑圧ないし無視して構築、形成されてきたものであります。そして、その基地の存在が県民の人権を侵害し、生活を圧迫し、平和を脅かし、経済の発展を阻害していることは、さきにも指摘したとおりであります。 平和を希求している沖縄県民は、軍事基地に反対し、その撤去を求めているのであります。したがって軍事基地の維持、強化を図ることを目的とするこの法案には基本的には反対せざるを得ません。 (2)この法案は、米軍基地の維持、存続に加えて、新たに自衛隊の配備を予定し、これを可能ならしめようとすることが目的となっています。 沖縄県民は米軍基地だけではなく、自衛隊の配備にも反対であります。自衛のための戦争といい、聖戦といわれたあの第二次世界大戦末期の沖縄戦において、沖縄県民は戦争の残酷さと悲惨さを身をもって体験し、戦後二十六年に及ぶ米軍支配の苦しい生活体験によっても、軍隊というもののもつ本質的性格をいやがうえにも知らされました。十数万の尊い生命を犠牲にした戦争体験と二十六年の長期に及ぶ米軍事支配下の生活体験を経た沖縄県民にとって、自衛隊の配備を許すことはできないのであります。 沖縄県民は、沖縄から一切の軍事基地を撤去して、沖縄を平和のメッカとすることを希求しているのであります。 (3)この法案の本質的問題点は、米軍基地の存続と自衛隊の配備であると考えますが、その他にも憲法や土地収用法など、現行法体系との関係において、重大な問題を内包しております。 その第一点は、暫定使用という名のもとに五年もの長期にわたって、土地所有者の意思如何にかかわらず、強制的に、米軍や自衛隊に、土地等の強制使用を認めていることであります。 私有に属する土地等を正当な手続を得ずして五年の長期にわたり、一方的かつ強制的に使用することは、実質的に土地等の強制収用であり、如何なる理由を付したにせよ私権に対する重大な侵害であって、財産権の保障を規定している憲法第二十九条に違反するものといわなければなりません。 法律上暫定使用を必要とするのは、使用の根拠となる法体系に変動がある場合に、新たな法体系による根拠を合法的に設定するまでの間に生ずる不可避的な空白期間を一時的にうめあわせる場合であるはずであります。講和発効の際の本土の米軍基地に関するこの暫定使用期間は六ヶ月であります。しかるに沖縄の土地等については、五年の長期にわたり、且つ、正当な法律上の手続きもとらず、一方的に強制使用することは、沖縄県民に対して差別を強いるものであり、法の下の平等を規定した憲法第十四条にも違反するものであります。 私有に属する土地等について、強制収用、使用等が許されるのは、憲法第二十九条に規定する公共の用に供する場合のみであり、公共の用に供する事業が何であるかは、土地収用法に規定されております。ところが、自衛隊の配備は、憲法第二十九条でいう公共の用に供する場合と、土地収用法で規定する公共の利益となる事業には該当しません。したがって自衛隊の配備のために土地等を強制使用することは、その点でも憲法第二十九条に違反し、また土地収用法の趣旨にも反するものであります。 自衛隊は、現在、沖縄の土地等を使用しているのではありません。復帰によって法体系が変るからといって、暫定措置を講ずる余地はありません。したがって、法的に暫定使用を認める根拠は全くないはずであります。現行法上自衛隊が強制的に他人の土地等を使用できるのは、防衛出動という緊急の場合だけであります。暫定使用の法的根拠がないにもかかわらず、あえてこれを認めようとすることは、現行法体系上不可能なことを、暫定使用の名の下に可能ならしめる。つまり強制的に自衛隊の配備のために土地等を使用しようとするのが、この法案の意図だと思われるのであります。このことは、自衛隊配備のための特別措置であり、県民の意思を無視した違法な措置といわなければなりません。そして五年間の暫定使用を既得権とし、これを足場にして、さらに長期間にわたる強制使用、収用等を意図しているのではないかとの危惧も払拭しえないところであります。 第二点は、この法案は施行と同時に米軍や自衛隊等に使用権を生ぜしめ、所有者に対しては、単に遅滞なく使用する土地の区域等の通知をしさえすればよいとしている手続面の問題であります。国や公共団体等が他人の権利や財産に強制的に制限を加える場合には、その必要性が認められたとしても、「正当な手続」を経なければならないことは、民主主義の原則であり、最小限度の要請であります。 しかるに、この法案では強制使用の対象物の特定も明確になされず、単に「土地の区域」という漠然とした事項の通知しか義務づけられていません。講和発効後米軍に基地使用を認めたときは、「使用しようとする土地等の所在、種類、数量、及び使用期間」を通知すべきこととされ、土地収用法でも「土地の細目(土地の所在、地番及び地目)」の公告をしなければならないことになっていることに対比してみた場合、これは正当な手続を回避し、権利者の利益を害するものであるといわざるを得ません。 第三点は、使用者の原状回復義務に関する原状とは、いつの状態をさすのか不明確な点であります。 この法案によると、土地等を使用することができなくなった場合、使用者は「土地又は工作物を現状に回復し、又は原状に回復しないことによって生ずる損失を補償しなければならない。」と規定しているが、この原状回復義務は、米軍が当該土地等を使用した時なのか、この法案により取得した時点なのか明らかになされておりません。後者だとした場合、この原状回復義務に関する規定は、ほとんど無意味になってしまい、権利者は図り知れない損失を蒙ることになります。 このように主要な問題点のみを指摘したかぎりにおいても、この法案が、いかに県民要求とも、憲法原理ともあいいれない不法、不当なものであるかが明らかにされたことと考えます。 かって、米軍は講和発効後の軍用地使用の法的根拠をつくりだすために、県民の意思を無視し、一方的に布令、布告を発布して形式のみを整えてきましたが、この法案の態度は、かっての米軍のやり方と何ら異るところはないといわれてもいたしかたないでありましょう。 以上の理由から、琉球政府としては、この法案の制定に反対し、本土政府の再考を要請するものであります。 2.沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律の問題について 「沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律」(案)についても、容認することのできない幾つかの重要な問題点を含んでいます。 (1)琉球政府は、一切の軍事基地に反対する立場に立って、従前から一貫して基地の整理、縮小、撤去を求めてきました。これに対して、日本政府も基地は漸次縮小していきたいと言明してきました。仮に、日本政府に沖縄の基地を整理、縮小し、いずれは完全撤去しようとする意思があるとすれば、行政組織についても、その点の配慮が必要であります。 そのような見地から現在の米軍基地維持と自衛隊の配備を前提とする那覇防衛施設局の設置にはにわかに賛成するわけにはいきません。また那覇防施設局の設置と関連してこの法律の第二条では、現在の琉球政府職員で復帰の際に防衛庁の職員となる者があることを想定し、これに対する防衛庁職員給与法の適用に関する特別措置を規定しています。しかしながら琉球政府職員は防衛施設局への身分引継ぎに強く反発しています。したがって琉球政府は職員の意に反してその身分を防衛施設局に引継ぐような措置を講ずることはできません。 (2)次に、講和前損害の補償もれに対する見舞金の支給を定めた第三条と、これに関連する事務の所掌や権限について防衛庁設置法の一部に必要な改正を加えた第七条についてであります。戦後二十六年にわたるアメリカ軍事支配のもとに沖縄県民がこうむった損害は、広範囲、多岐かつ莫大なものであります。琉球政府は、これらの損害について憲法上の国民の請求権として国に補償要求を訴え続けてきました。この法案の第三条に規定された講和前損害の補償もれの問題も、琉球政府の要求してきた項目であり、これに対する見舞金の支給が定められること自体は、それだけについていえば、一応是とされなければならないものであります。しかしながら、この補償もれの問題は、請求権問題のごく一部にすぎません。請求権問題については、別に「沖縄の復帰に伴う沖縄県民の対米請求権処理の特別措置等に関する法律」(仮称)の立法要請の中で、琉球政府の立場を一括して詳述することといたします。要するに、請求権問題は復帰に伴う沖縄側の最重要な要請の一つであります。多岐にわたる請求項目のなかから、その一部にすぎない講和前の補償もれだけ、それも物的損害を除外して、人身損害だけについて規定することは到底容認できないことであります。しかも、右の措置では、これを「見舞金の交付」として規定していますが、琉球政府は、憲法上の国民の権利としての要請をしているのでありますので、到底是認できるものではありません。さらにこの措置でもっとも重大な問題は、これが防衛庁関係法との関連で定められている点であります。琉球政府としては、この事項は基本的には戦後処理の一環であると考えております。したがって、この問題は、沖縄の復帰に伴う特別措置法または単独の特別立法によって措置すべきものだと考えます。しかるに、この問題を防衛庁関係法で措置していることは、あえて問題の本質をそらすものであります。したがって、このような日本政府の態度を容認することは到底できないところであり、琉球政府としては強く不満の意を表明するものであります。 (3)次に、軍関係離職者等臨時措置法(沖縄立法)第二条に規定する軍関係離職者のうち、同条第一号にかゝる者を、本土の駐留軍関係離職者等臨時措置法第二条第一号にかかる駐留軍関係離職者であるものとみなして特別給付金の支給に関する同法第十五条から第十七条までの規定を適用することを定めている法案第五条についてであります。 これも、前項と同様に、沖縄に巨大な米軍基地が存在し、多数の軍雇用者が存在するという現実認識を前提とする限り、その離職者を救済するための措置は必要としなければならないのであり、その限りでこの措置はむしろ当然のことであります。 しかしここで指摘しなければならないことは、右の駐留軍関係離職者等臨時措置法が性質上、労働関係の法規として分類されるべきであり、したがって、むしろ沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律案のなかで取り扱われるべきものであるにもかかわらず、ことさらにこの法案に取り入れられている点であります。これについても琉球政府としては、講和前補償もれに関する第三条の措置について述べたと同様の立場を表明するものであります。この措置は、すべからく沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律案のなかにとり入れられるべきであります。 (4)最後に、この法案中の最大の問題点は、第六条の政令への委任条項であります。この規定は、「この法律に定めるもののほか、防衛庁関係法律への適用については、当分の間、政令で必要な規定を設けることができる」と定めています。 沖縄返還協定は、その前文で沖縄の日本復帰が一九六九年十一月の日米共同声明の基礎の上に行なわれていることを再確認したことに留意して、返還を協定する旨述べています。そして、その日米共同声明は、第六項で、復帰後は沖縄の直接防衛の責務を日本が徐々に肩替りしていくということと、沖縄の米軍基地の保持に合意することを述べています。この共同声明での約束をうけて、今回の返還協定締結後間もなく、「沖縄の極地防衛責任の日本国による引受けに関する取り極め」が締結されています。この取極めで、沖縄への自衛隊配備の具体的計画が定められているのであります。これらの自衛隊配備や、米軍基地の保持、機能維持の約束を果たすための事柄が、要するにここでいう「防衛庁関係法律の沖縄への適用について………沖縄の復帰に伴う必要とされる事項」に入れるものとみられるのであります。これらについては、自衛隊法その他防衛庁関係法律の沖縄への適用に政令で適宜変更を加えることが予定されているわけでありましょう。そうでなくてさえ、憲法違反といわれる自衛隊法をはじめとする防衛庁関係法律が沖縄への適用に関するかぎり、国会審議にもかけられることなく政令で定めることを認めようということであります。しかも、政令による措置の方向は、すでに前記の日米共同声明路線に沿うものとなるであろうことは、容易に推測できることであります。 琉球政府は、このような措置を容認することはできません。 (三)沖縄開発と開発三法案について 1.沖縄開発の基本的理念 沖縄開発にあたっての第一の理念は、県民福祉の向上にあります。 従来ややともすると、所得水準の向上のみを目的とした経済開発がなされてきたのでありますが、沖縄開発にあたっては、人間尊重ないし人間性回復の精神を、その基底に置くものでなければなりません。本土においては、大企業中心の高度成長政策が推進されるにつれて、過密、過疎化、都市問題、公害問題などの進行、激化をみるにいたり、従来の開発のあり方に対し、再検討をせまられております。沖縄開発にあたっては、このような本土の轍を踏むことなく、あくまで人間主体の開発でなければなりません。 沖縄開発の第二の理念は、自治権尊重の立場に立った開発でなければなりません。沖縄県民は、異民族の支配下にあって、苦難な道を余儀なくされながらも民主的諸権利をかちとり、常に自治の確立を希求してきました。幾多の苦難の中で、県民が獲得し学んできた尊い体験は、復帰後においても無にすることなく、地域の独自性、多様性を豊かに開花させるために、役立てられなければなりません。 沖縄開発の第三の理念は、平和で豊かな県づくりを志向するものでなければなりません。 沖縄の軍事基地は、質量ともに、本土におけるそれをはるかにしのいでおり、そのため沖縄の経済社会に異常な影響を与え、第三次産業肥大化にみられるような産業構造の畸型化を招くとともに、他方、基地のもつ非人間的、頽廃的性格がいく多の社会的問題を惹起しております。 また、基地の存在は、総合的統一的土地利用計画にとっても大きな障害となっており、琉球政府の主体的開発計画の策定を阻害してきております。したがって、基地の撤去を前提としない限り、真の意味で恒久的な開発計画の策定は不可能であり、自由かつ平和な社会の建設などは到底望めません。 2.開発の方向 沖縄の開発にあたっては、住民福祉を中心とした社会開発に重点がおかれなければならないことは言うまでもありません。すでに沖縄においても、過疎、過密の問題をはじめ、都市問題、公害問題などの発生をみているところから、生活基盤的社会資本の整備をはかり、早急な対策が講じられなければなりません。 そのために、公共投資主導型の設備投資が必要であり、道路、港湾、空港、上下水道等の整備と住宅、教育施設、医療施設、福祉施設等の生活環境の整備を徹底的に図る必要があります。 沖縄経済は、基地依存度の高い消費経済偏重の構造を有し、第三次産業の肥大化と極度に高い輸入依存度を特徴としております。このようなゆがんだ基地経済から脱却するためには、一定の工業化が要求されますが、臨海型装置産業の場合、雇用吸収効果ならびに自治体財政への寄与も少ない半面、逆にその誘致には、産業基盤整備のための財政支出が大きく、しかも公害発生の危険は避けられないのであり、誘致企業の選定にあたっては、慎重な配慮が必要であります。 そこで、鉱工業は地場産業、既存企業の育成強化をはかることはもちろんであるが、県内に広く雇用の機会を造成するため、非公害型の電子工業、機械工業、縫製加工業等、労働集約型の企業の発展をはからなければなりません。臨海型工業については、土地利用計画にもとづいて、特定地域を指定して波及効果の高い業種を設定することが必要でありますが、その際とくに、用水多用型、公害型については厳重なチェックをしなければなりません。なお、沖縄の工業は、中小および零細企業が多く、本土からの分離による経済規模の制約に加えて、企業振興のための財政措置や長期低利の政策金融のたち遅れのあることを考慮し、国は中小、零細企業に対する特段の保護育成措置を、すみやかに講ずるべきであります。 農業についてみると、戦災によって耕地は荒廃し、生産手段もほとんど皆無に帰したほか、その後は軍事基地によるぼう大な土地の接収という厳しい条件下におかれてきました。その間、本土において実施されてきた農地改革、食糧管理制度、保護貿易制度など農民保護的な諸政策の恩恵をうけることもなく放置されてきました。復帰にあたって、国はこれらの制度によって、沖縄が当然に受けるべきであっただけの保護措置を保障するほか、沖縄の農業の独自性を育成しつつ、軍事基地の撤去などによって、農業基盤の整備をすみやかに推進しなければなりません。 そこで、従来からの甘蔗、パインアップルの保護育成を推進するとともに農家所得の向上をはかるために、今後土地改良等によって、農業基盤を整備し、沖縄の恵まれた太陽エネルギーを活用して、牧草の普及による肉牛の増殖、野菜類、果樹、熱帯花卉等の振興をはかって各地域の特性に適応した農業構造の改善をはかることが必要であります。 漁業についても、国は財政支出および投融資の遅れをすみやかに補完するとともに、本土から分離させられたことにより生じた漁業権や船数、漁獲量の枠などについても特別の措置を講じなければなりません。 そこで、漁業の整備に重点をおくとともに協業化による漁船の大型化、設備の近代化をはかり、亜熱帯の立地を生かして鰻、車エビ、ヒトエ草等の沿岸栽培漁業を幅広く普及する必要があります。 次に第三次産業の柱である観光産業については、沖縄は自然景観に恵まれている関係から、将来相当の来客数があるものと推測されるので、自然の保全に留意した観光道路、観光施設宿泊施設等の開発をはからなければなりません。 以上の社会開発、経済開発をはかるためには、水資源、電力の開発を先行させることが肝要でありますが、これには莫大な資金を必要としますので、これに対する全額国庫負担という特別な財政措置が講じられなければなりません。 一方、沖縄の開発を計画的に推進するためには、軍用地開放後の跡地利用を含む土地利用計画の策定とこれを実施するための国の思い切った助成措置が必要であります。 さらに、地域開発に欠くことのできない軌道を含む交通機関の抜本的対策がすみやかに検討されなければなりません。 新生沖縄県の開発は、以上述べたように、軍事基地の撤去を基本条件とし、住民福祉の向上および地方自治の尊重を最重要課題として推進されなければならないのであります。 3.開発三法案の問題について 地域開発の目的は、その地域社会の開発を進めることによって、地域住民の生活水準と福祉の向上をはかることであります。したがって、具体的な計画の策定にあたっては、まず地域住民の要望が率直に反映され、計画実施に際しては、地域住民が主体的に参加できるようにしなければなりません。地域住民との密接な連携がなければ、地域開発本来の目的は実現できないからであります。 しかるに、「沖縄開発三法案」の内容を検討してみると、地域開発の原則、すなわち、開発計画の中に、地域住民の創意をもり込み、その計画実施にあたっては、地方公共団体が主体的にこれにあたり、国は地方自治体の計画策定ならびに実施を財政的にうらずけるための責務を負うとの原則が十分にとり入れられていないように思われます。 「沖縄振興開発特別措置法案」の第四条で、開発計画原案の作成については、県知事の権限とされているが、計画の決定は、「沖縄振興開発審議会」の議を経て、関係行政機関の長と協議の上内閣総理大臣が行なうことになっております。 このように、計画の最終決定権は、総理大臣に委ねられております。しかも計画決定に重大な影響を与えるとみられる審議会の構成は、その過半数が「関係行政機関の職員」よりなっているのであるから、これでは、知事を通じて表明された県民の意見よりも中央の意向によって、すべてが決定されることになりかねません。したがって、この審議会の委員構成は、県民の意向がこれに十分反映させられるよう再考されるべきであります。 さらにこの開発計画を推進するための国の財政負担について、同法案は個別事業ごとに補助率を定めるような仕組みとなっており、しかもその実質的な決定が政令に委ねるようになっているが、沖縄が終戦以来国政のらち外におかれ、異民族支配のもとに放置されてきた結果各面に幾多の格差を生じていることにかんがみ、この開発計画全体について、国の特段の助成措置が必要であります。次に「経済の振興および社会の開発に資することを目的」に「沖縄開発金融公庫法」が制定されることになっているが、その第四条によれば、資本金については、現に沖縄に存する琉球開発金融公社、大衆金融公庫、それに琉球政府特別会計を加えた正味資産を充てるとされています。これらの資産は本来沖縄県民に属するものであるから、国は新らたな出資をおこない積極的規定を設け公庫を充実強化し、県民の期待に応える必要があります。 一方、公庫法第三条は「主たる事務所」を那覇市に置き「従たる事務所」を東京に置くとしています。そこで、この「従たる事務所」を通じても貸付業務を行なうことができるものとすれば、形式はともかく、運用いかんによっては、東京の事務所が「主」となり、那覇の事務所が実質的にこれに従属させられることにもなりかねません。このような幣害をなくするためには、東京事務所の任務は、主として関係行政機関との連絡行政機関との連絡調整に重点をおき、実際の貸付業務等は、那覇事務所の窓口を中心にして行うようにすべきであります。 次に沖縄開発庁設置法案によれば、国の行政組織の上で類例のない総合事務局が沖縄に設置されるようになりますが、沖縄の総合事務局の所掌事務は、総務部門、開発工事を実施する部門、許認可行政部門及び本来ならば第三者機関として設置されるべき公取委事務所など開発庁の権限以外の各省庁の業務も含まれることになっております。 沖縄県のような小さな地域にぼう大な国の機関が設置されると、沖縄の地方公共団体の自治、特に沖縄県の自治に重大な影響を与えるように思われます。したがってこのような事務局を設置する場合には、沖縄県側の自治を最大限に尊重することを当然前提としなければなりません。 そのような見地から同事務局の権限及び内部組織については、沖縄の実情に即応するような必要最少限のものにとどめ、また適切な運用をなされなければならないのであります。 地方自治の侵害は、戦前戦後を通じて、自治権拡大を最重要課題として要求してきた沖縄県民の最も忌避するところであります。私たちは、これまで繰返し強調してきたように地域開発はあくまでも地方自治の本旨に則って、地域住民の経済的水準ならびに福祉の向上を目的とした地域住民本位の開発でなければならないと考え、これに対する国の配慮を強く要請するものであります。 (四)裁判の効力について 米国の施政権下において行われた裁判の効力を復帰後どのように取扱い、国内法上これをどのように処理するかは、それが国家権力の本質と県民の人権に重大な関係を持つものであるだけに、極めて重要な問題であります。そして、これは、本来国の司法権に関する問題であり、復帰後の国内措置としてこれをどのように処理するかという問題であるから、その処理の仕方については、当然日本国憲法及びその下における全国法秩序と適合するものでなければなりません。そうでなくして、もしそれが施政権者に対する配慮や国の外交政策上の都合によっていささかたりとも歪められるようなことがあるとすれば、国の司法権の基本理念は崩壊し、これに対する国民の信頼を維持することも困難となりましょう。 このような観点からこの問題を考察するとき、米国の施政権設下においてその発動として設置された米国民政府裁判所及び琉球政府裁判所は、いかなる意味においてもこれを日本国憲法上の裁判所と同列におくことはできないのであります。 これについては、何人も異論のないところであり、米国の施政権下において行われた裁判の効力を判断するにあたっては、まずこの点に留意しておく必要があります。 民事裁判は、もともと裁判権そのものも私人間の紛争を処理するためのものとして設定され、訴訟手続全体が弁論主義によって支配され、裁判の結果についても法的安定性が最大限度に尊重されなければならないのであるから、米国の施政権下において行われたものであっても、それが内容的に日本国憲法及びこれを頂点とする全国法体系の上で公序良俗に反するものでないかぎり、その効力を承認して差し支えないものであります。したがって、これについては、特に問題にすることはなく、ただそれが適切な経過措置によって復帰後国内法体系の中に適当に組み込まれればそれで足りるわけであります。 しかしながら、刑事裁判については、そのような形で簡単に処理するわけにはまいりません。刑事裁判の場合は、裁判権が国家刑罰権の発動権能として設定され、しかもそれはもっぱら国の法秩序を維持する目的で発動されるのであるから、訴訟の全体を当事者の弁論だけに委ねることはできず、裁判の結果についても民事裁判のように法的安定性の法理をもってこれを論ずることはできないのであります。このように、刑事裁判は、国家主権の直接の発動であるから、外国の裁判の効力をそのまま承継するとか、あるいは自国の裁判の効力の承継を他国へ強制することは、事柄の性質上できるものではありません。したがって、米国の施政権下において行われた刑事裁判の効力を復帰後もそのまま維持し、あるいは日本政府がこれを引継いで執行するということは、理論的に全く筋のとおらないことであります。返還協定第五条一項及び二項が民事裁判については、復帰後も「その効力を認め、日本政府が引き続きこれを執行する」旨規定しているのに対して、刑事裁判については、日本政府において「その効力を認めることができ、また引き続き執行することができる」というふうに規定し、(同条第三項)日本政府においてその効力を認めるか否か、また引き続き執行するか否かを自由に選択できるようにしているのも、正にそのような見地からでありましょう。 一方、米国の施政権の下で設置された裁判所は、いずれも米国の大統領行政命令及び布告布令をもって設立されたものであり、また統治機構的にも米国の施政権の行使を分担し、またはこれに奉仕するものとしてその統治機構の中に組み入れられ、裁判権を行使するにあたっても、法制度的には米国民政府の発する布告布令に従い、かつこれによって付与された権限の範囲内においてのみこれを行い、裁判の独立性も十分に保障されていなかったのであるから、これらの裁判所が米国の施政権下で行った刑事裁判の効力を復帰後もそのまま承認することは、到底できるものではありません。終戦以来米国の施政権行使に反対し、本土への復帰を要求し続けてきた県民の心情としても、これを承認することはできないのであります。 したがって、終戦以来米国の施政権下において行われてきた刑事裁判の効力については、奄美大島が復帰したときの奄美方式を先例として踏襲すべきであります。それでなければ、復帰後沖縄については、刑法総則の例外を認めることになり、しかもそれは県民を不利益に差別するものであるから、憲法第一四条に違反し、また憲法第九十五条の規定に基づいて、県民の過半数の支持がえられないかぎり国としてもそのような措置はできないはずであります。 (五)厚生・労働問題について 1.社会保障 沖縄における社会保障は、すべてが「無」からの出発でありました。米軍は占領政策として「島ぐるみ救済」活動を平和宣撫工作の一環として展開してきたのであります。そして社会経済がようやく安定するにつれて、劣悪ながらも経済的貧困層いわゆる社会的沈澱層といわれる人々に対する現物、現金の支給を制度化する「救済制度」を制度化してきたのが、沖縄における社会保障制度のはじまりであります。 このように沖縄における社会保障の成立過程は、本土の社会保障が憲法の保障する生存権理念の発露として展開されてきた過程と比べて、全くその質を異にするものであります。つまり、沖縄県民は、これまで憲法の保障する生存権理念の外におかれ、一方米軍の植民地機能維持のための恩恵的な住民感情を緩和するための一定の枠の中で、生活を余儀なくされてきたのがこれまでの実態であります。 このように戦後沖縄の社会保障は、日米両政府の谷間にあって、近代国家の社会保障制度から大きく立ち遅れてきたのであるが、一九六一年の池田、ケネデイ声明以降、ようやく沖縄が日本の一部であることが確認され、さらに、一九六七年の佐藤、ジョンソン会談において復帰への道程として、本土との「格差是正」がとりあげられ、社会保障に対する財政援助と制度の整備がなされるようになったのであります。ところが沖縄の社会保障は医療保険にみられるように、沖縄の医療を保障する制度としては全く不十分で、県民の意に合致しないものであり、年金制度にしても、本土政府の強力な指導によって、一応制度体系は本土並みに整備されていますが、その水準ははるかに低く、社会保障制度としての機能を充分果しておりません。 そこで、私たち沖縄県民は復帰によってこれまでのゆがみや空白が一挙に解決されるものだと期待していたのでありますが、今国会に提案されている特別措置法案をみたとき、それが県民の期待に十分応えていないことに失望するものであります。すなわち、制度の一体化は措置されていますが、その制度を支える所得向上や医療供給体制の整備、福祉施設の拡充などの措置が明らかにされていないことなのであります。 「平和で豊かな沖縄県づくり」のためには、制度の本土並みだけでなく、二十六年間の空白と、県民の長い苦渋な生活に報いるに値する莫大な社会福祉基本施設整備の投資を優先することが何にもまして大切であると考えます。 2.年金制度 沖縄の年金制度は、厚生年金、国民年金とも、沖縄の本土復帰のメドがようやくついた一九六八年に立法化され、一九七〇年から保険料の徴収事務が開始されました。制度の内容も復帰のさいスムーズに本土制度に移行できるように、厚生省の指導を受け、制度の体系、給付水準をほぼ本土並みにしてきました。しかし、厚生年金については、制度の遅れに伴う高令者に対する四年から十四年期間短縮の措置が講じられておりますが、本土並みの受給要件を満たさないため、同年令、同年金額の給付措置が必要であります。 国民年金についても九年の遅れがあるため、沖縄法においては保険料納付の免除期間が措置され、さらに期間短縮についても一年から二十四年の特別措置がなされております。しかし、過去納付金の免除期間があるため、本土の同年令者との間に支払額に相当の差異があり、これらの者が追納して同額給付が得られるような措置をとる必要があります。 厚生年金の保険料についても本土料率をそのまま適用すると沖縄においては莫大な負担増となりますので、その面の特別措置が必要であります。さらに船員の場合、船員保険法が適用されるため(沖縄の場合現在各種保険の適用を受けていて。)各種保険がまとめられ、現行の保険料よりも高くなります。このことは、勤労者の負担増だけでなく、労使折半の建前上、沖縄の中小船舶経営者に及ぼす影響を考えると、大きな問題であります。 次に年金の各種保険の余裕金及び積立金は現在、琉球政府の資金運用部資金に預託され、公共事業、特別会計などに貸し付けられ、その額は全資金量の七〇・六%(七一年三月末現在)を占める沖縄の公共投資に大きな役割を果しております。これらの積立金はそれぞれの制度に引き継がれることになります。その他、年金制度の遅れに伴う過去期間の通算や追加費用の政府負担についても、国の責任において、もれなく保障すべきであると思います。 3.社会福祉 戦後の沖縄における社会福祉は、米軍による生活必需物資無償配給制度による救済事業から出発し、一九五三年に、生活保護法が本土法の理念と形式を踏襲して制度化され、これが沖縄における社会保障の中軸をなしてきたのであります。 ところで、関連社会保障制度の皆無(とりわけ医療保険制度の欠陥)の中で、その扶助内容と適用基準はきびしく、理念だおれのような制度でありました。しかも、保護開始理由の大部分が疾病であり、貧困と疾病の悪循環がくり返えされ、防貧制度の欠落が、いかに扶助対象者を拡大再生産してきたかがうかがえるのであります。 一九七一年度現行基準(第十一次改訂)では、生活扶助は、全県一律に本土四級地並みであります。復帰後は、憲法理念による生存権意識の高揚によってこれまで生活の苦しかった多くのボーダーライン層が扶助対象者として急激に増加する可能性がありますので、その保護を当然の権利として実施できるよう財政措置が必要であると考えます。 保護の実施機関については、暫定措置として市部に置く福祉事務所を段階的に設置することになっていますが、これは現在の市財政基盤の現状からしてやむをえないとしても、全体的な沖縄の地域開発を進める中で、市財政の強化を図り、住民自治の本旨に則って市行政の中で処理するようにもっていくべきであると考えます。 その他児童福祉、身体障害者、老人、特殊婦人等の福祉向上についても、行財政上の特別措置を講じ、国の責任による大幅な財政支出によって、これまでの空白を早急に埋めるよう特段の配慮を要請するものであります。 また、社会福祉施設の絶対数は著しく不足しており、その整備は緊急かつ重要であるので特別の措置が必要であります。さらに、特殊婦人の更生事業については、単なる法律的な防止政策や取締的な施策では不十分でありますので、生活保障を基軸とする強力な施策を講ずるよう要請いたします。 4.医療保障 特別措置法案の医療部分に、琉球政府の要請や措置要求はもちろん閣議決定の対策要綱の内容すら十分もり込まれていないことは残念であります。 沖縄の医療行政は、本土に比べてきわめて劣悪な状態にあることはここにあらためて指摘するまでもありません。そこでこの遅れた医療行政を一日も早く本土並みに引き上げるためには、まず第一に国の直接的な財政支出による格差是正の具体的プランが特別措置法案および開発法案にもり込まれなければならないと思います。 次に医療機関については、現在本土水準に比べて、一般病床が四分の一、結核病床が六割弱、精神病床も六割弱、伝染病床は五分の一、保健所は人口一六万人に対し一ヶ所と本土との格差は大きいものがあります。これらを本土水準に引き上げるためには、単に既存の医療機関を国立にして引き継ぐという措置だけでは不十分であり、新たに国立の各種医療機関を設立することをはじめ、県立の医療機関の設置拡充、公的医療機関の引き継ぎに対し、大幅な財政措置を講ずることが必要であります。また、医療要員については、本土と比べると医師数は半数以下であり、看護婦数は三分の一程度、薬剤師数は六割弱という実情であります。このような状態を救済するために介輔制度の暫定存続および臨時准看護婦に関しては措置されておりますが、これだけでは焼石に水であります。 したがって、医療機関要員養成機関設置に関して、新たに特別措置を講ずる必要を痛感するのであります。すなわち、琉球大学医学部設立の目標を具体化させることをはじめ、看護学校の拡充、設立、臨床研修病院の存続に特別援助が必要であります。 無医地区対策に関しては、沖縄地域自体が本土におけるへき地的性格をもつことを十分に考慮しつつ、その中における無医地区対策には、一層の配慮が必要であります。とくに無医地区における診療に従事する医師、歯科医師、その他の医療従事者の確保に関しては、単に琉球政府の協力要請に応ずるという消極的態度ではなく、無医地区医療における悪循環が解消するまでの間、大幅な財政措置が必要であります。 社会疾病については、現在沖縄においては結核症の有病率は、本土と大体同様の一・五二であるが、結核病床数は人口万対本土平均病床数の六割弱で、精神病有病率は、本土の約二倍であるのに対し、病床数は人口万対本土平均病床数の六割に満たない実情であります。これらの格差是正のためには、これまでも述べてきたような処置を講じ、本土水準に到達するまでの間、現在琉球政府がとっている社会疾病対策を尊重し、その継続維持のための措置が必要であります。すなわち結核医療については復帰の際現に全額公費負担を受けている者、ならびに復帰後新たに結核医療を受ける者については自己負担のないよう措置することとし、又精神障害の医療についても同様の措置をとること。以上のことを特別措置法の中に規定する必要があります。 次にハンセン氏病療養所については、国立移管する旨、一般的に規定しているが、設備拡充のための保障を具体的に示すべきであります。さらに、衛生関係業務が円滑に施行されるように基盤の整備に関しては特別配慮が必要であります。 5.労働問題 復帰を目前にした沖縄では、現在、一般住民の間に諸制度の変革その他によって、復帰の時点からその生活基盤が奪われはしないかとの不安が高まっております。 このような住民の生活不安を解消するためには、沖縄の復帰に際して国の抜本的な福祉政策、経済政策の確立がなんとしても必要であります。沖縄の労働者は戦後米国の軍事支配の下で「無の状態から一歩一歩諸権利を獲得し、それを拡張してきたというのが実情であります。復帰に伴う本土法の沖縄への適用については、これらの事情を考慮し、沖縄の県民および労働者の要望が十分いれられた労働政策がうち立てられるような特別の配慮が必要であります。とくにこの点で留意しなければならないのは、本土地方公務員法の沖縄への適用と、軍関係労働者の間接雇用制度への移行措置に関する問題についてであります。 沖縄においても、過去に、本土の地方公務員法にほぼ相当する「市町村公務員法」と「地方教育区公務員法」を制定しようとする動きはありました。しかし、これらの法案はいずれも県民に受け容れられず、廃案になりました。本土においても公務員の争議行為を一律に禁止している国家公務員法や、地方公務員法については再検討すべきであるとの声が高まり、政府も公務員制度審議会を発足せしめて、公務員の労働基本権のあるべき姿を調査、研究させているのが実情であります。また最近の本土の裁判所の判例に照してみても、単に「公務」に従事しているということだけで、公務員の労働基本権を制限、あるいは剥奪している国家公務員法および地方公務員法については幾多の疑問が投げられていることは周知のとおりであります。したがって、本土においてこの問題が十分に調査、研究され、最終的な結論がでるまでは本土の地方公務員法の沖縄への適用については慎重に配慮されるよう強く要請するものであります。 沖縄の軍関係労働者の労働関係は米軍が一方的に公布した布令一一六号「琉球人被用者に関する労働基準および労働関係法」によって規制されておりますが復帰により軍関係労働者が間接雇用制度に移行することになり、民間労働者と同様、労働三法の適用を受けることになります。したがってその限りにおいては大いに前進したことになりますが、なお一抹の不安を抱かずにはおられません。沖縄の米軍基地は本土のそれと違い強大な総合的戦略基地であり、極東の状勢いかんによって軍事目的遂行のために、その運用がゆがめられ、軍労働者の労働基本権が抑圧される懸念があるからであります。 なお、沖縄の労働関係法(布令一一六号を含む)には本土の労働関係法に比べて労働者にとって有利な面もある(解雇手当、産前産後の有給休暇、年休の取扱等個別的労働関係)ので、復帰に伴う本土法の沖縄への適用に際しては、その点を考慮し、少なくとも復帰によって労働者の既得権を失わしめることがないように措置すべきであります。 次に布令一一六号の適用下にある沖縄の軍関係労働者は、同法によって第一種「米国政府割当資金から支払いをうける直接被用者」第二種「米国政府非割当資金から支払いをうける直接被用者」、第三種「琉球列島米国軍要員の直接被用者」および第四種「契約履行中の米国政府請負業者の被用者」に分類されていますが、現在沖縄の「軍関係離職者等臨時措置法」の適用範囲にある軍関係労働者は、同法施行のために要する資金の都合により第一種、第二種被用者に限られ、第三種および第四種被用者は同じ布令一一六号の適用下にある軍関係労働者でありながら、原則として同法の適用を排除され、同法の恩恵を享受できない状態に放置されております。このことは、米軍による軍関係労働者の分類が全くその都合によってなされたもので、これらの被用者が第一種、第二種被用者と同様、軍関係労働者として布令一一六号の適用下におかれてきた事実並びにその従事している労働の実態に徴してみれば明らかに不合理であるといわねばなりません。したがって、復帰に際しての移行措置を実施する場合には、これらの第三種及び第四種被用者の実情も十分に組み入れられ、国の「駐留軍関係離職者等臨時措置法」の中に組み込む等特別の施策を要望するものであります。とくに、第四種被用者の中にはかつては第一種あるいは第二種被用者であったものが、米国のドル防衛策の強化によって第四種被用者に入れられた者が多く、その労働の実態は、第一種、第二種被用者とそれほど異なるものではないことに注目しなければならないと思います。 次に復帰によって転廃業を余儀なくされたたばこ製造業者、製塩業者、通関業者、自動車検査業者及びその被用者、葉たばこ生産者等についてはその生活基盤を確保せしめるための特別の措置をするよう要望いたします。また、復帰を目前に控えてすでに経営不振におちいっているといわれる、基地関係業者およびその被用者についても妥当な政策が実施されるよう具体的な措置を要望いたします。 要するに、復帰に伴う移行措置の実施についてはあくまでも沖縄県民の立場に立って、その福祉増進のための施策が必要であります。労働政策においても積極的な施策が講じられ、復帰後の新生沖縄県民が、明るく平和で豊かな希望にみちた生活が営めるよう特段の施策と配慮を切望するものであります。 (六) 教育・文化について 1.民主的教育委員制度の確立 沖縄の教育行政制度は、教育の自主、独立と民意の反映という民主教育の基本理念を基調とし、民立法によって県民がかちとったものであります。それは、教育区が市町村とは別の法人格を有し、区教育委員の選出方法も直接公選で、住民に直接責任を負う民主的教育委員制度であり、県民のあいだに長年なじまれ、定着し、この制度の沖縄教育行政における功績は高く評価されてきました。そのために県民は、沖縄の現行の教育委員会制度の存続を訴え、琉球政府もそれを強く要請してきました。 したがって、復帰によって、本土の地方教育行政法がそのまま適用されることになると、教育委員は任命制となり、この沖縄の民主的教育行政制度は否定され、県民がこれを守り育てるために長年にわたって苦労し努力してきたことが、すべて水泡に帰すことになります。制度の移行による混乱と不満は、県民の教育に対する熱意と信頼を低下せしめ、教育にその自主、創造性を失わせ、沖縄教育の将来のために、憂慮されることになります。 そのために、琉球政府中央教育委員会、教育委員協会、教育長協会、PTA連合会などをはじめ、すべての教育関係団体は、こぞって沖縄の民主的教育委員会制度の存続を訴えており、また、新聞論調や世論調査の結果もその圧倒的な支持を示し、今やその存続要請は沖縄の決定的な世論であります。 しかるに本土政府はこの県民の切実な要求をよそに、先に本土法の全面適用を閣議において決定し、復帰対策要綱にもそれをおり込んだのであります。これに対する県民の失望は大なるものがあります。 思うに、沖縄の教師や父兄は、過去二十六年間、戦争による壊滅の中から教育を生み育て、異民族支配という変則的政治形態の悪条件の中で、よくこれを克服し、正しい日本国民教育をめざして教育に精励し、教育を正しく守り育て、今日のような教育水準にまで引き上げてきたのであります。 米軍の圧力と干渉の中で、祖国を慕い、祖国の教育との一体化をはかってきた沖縄の教育関係者の労苦はなみなみならぬものがありました。このことを正しく理解していただきたいと思うのであります。 とくに、米軍の一方的教育布令を排除し、教育を県民の手にとりもどすための、教育基本法をはじめ、教育諸法規を民立法した県民の闘いは、日本の教育史に特筆されるべきものであり、その成果は高く評価されなければならないと思います。それだけに県民の教育行政制度に対する関心は高く、それを守れという要望も強いものがあるのであります。 このような経過と実績をもっているだけに、沖縄において教育は、他の分野に比べ、制度、内容ともいち早く本土に近づけ、米軍の干渉をはねのけ、自主創造の教育成果をあげることができたのであります。また異民族支配のもとでよく国民意識のそう失をくい止め、国語の純化をはかり、祖国復帰と平和教育の教育実践ができ、また、平和的日本国民の教育の理想をつらぬき通すことができたのも、これら民主教育制度に負うこと実に大なるものがありました。 本土においてもかっては、憲法や教育基本法の精神と理念に則り、現在沖縄にあるような民主的教育制度が実施されていたことは、ここで指摘するまでもありません。しかるにそれが昭和三十一年、多くの権威ある学者、教育委員、教職員をはじめとする教育関係者、革新政党や革新民主団体等、良識ある国民の多くの反対を押しきって、現行制度に改悪されたことは周知の通りであります。 私たち沖縄県民は、この際本土において、現行教育制度の非をあらため、沖縄の祖国復帰を契機として本土法も沖縄と同様な制度に改正されるよう要求するものであります。 教育こそは実に国家百年の大計の礎であります。その意味において沖縄の教育制度の移行については重大であります。本土政府においては、その取り扱いについていまいちど検討をし直していただき、国会においては慎重に審議を尽くされ、沖縄教育の将来をあやまらさぬよう強く要請するものであります。 2.教師の権利と教育内容保障 復帰に伴って地方公務員法、教育公務員特例法および教育の中立性確保臨時措置法が復帰時にそのまま沖縄に適用するようになっております。 これらの三法には、教育の公共性や教育の中立性を理由に、教職員の基本的人権を抑圧、禁止する規定があります。すなわち、争議権の禁止、団体協約の締結権の禁止をはじめ政治行為の制限、勤評の実施などの条項であります。 いま沖縄においては、公立学校職員の労働三権は保障されており、現に労働組合法によって、学校長、教頭等の管理職も加入して、沖縄県教職員組合が結成されております。 政治行為についても、教育基本法第八条によって、制限と選挙法の教育者の地位利用の禁止以外に別段規制を受ける立法がなく、教職員の政治的発言が保障されてきております。さらに勤評実施の法的根拠がなく、その必要性もないため、教育現場は自由な創造的な教育活動がなされてきました。 それが本土法の即時適用となると、教師の団体行動権が、刑事罰をもって強権で禁止され、政治行為も他の地方公務員以上に全国的な地域制限で厳しくされ、懲戒の事由として処罰されるしくみとなってしまうのであります。 勤評実施ともなれば、本土において、かってその実施の際大混乱がひきおこされたように、沖縄においてもその二の舞いをさせられることは必至であります。 沖縄の教職員が一九五三年に労働組合を結成しようとした際、米軍から教員の労組結成は思想の強要であるとされ、争議権だけでなく団結権すら認められなかった事実があります。政治行為については、布令一六五号(琉球教育法)によって全面禁止され、教職員の政治的発言が極度に抑圧されていたのであります。同じように、布令によって教員の契約制が実施され、渡航制限による思想調査やCICによる教員の監視がなされていた事実もあります。 これらの規制から解放されたのは、ようやく十四年前からであり、県民の自由を求める幾多の犠牲によってつくり出されたのが現在の諸権利であります。ところが、一九六七年、教公二法(地方教育区公務員法および教育公務員特例法)が立法院で立法化されようとしました。教公二法は本土の地公法や教育公務員特例法に準じたもので、教職員をはじめ、多くの教育団体や県民から反対され、ついに廃案となったのであります。 県民がこの法律の立法に反対した主なる理由は、沖縄は長年米軍の支配下にあって、ただでさえ県民の権利が大きく抑圧されているにもかかわらず、自らつくる法律でさらに自らをしばることは愚であり、民主社会においてあるべきことではないと県民の多くが判断したからであります。したがって沖縄の教育復興をはかるためには、教職員に可能なかぎりの自由を保障することが必要であるとされたからであります。この自由は復帰後においても当然保障されるべきものであると考えますので、前述の三法の権利規制は不要であります。 教育公務員の争議権禁止は、憲法で保障される生存権の擁護と相容れないものであり、違憲性をもつ疑いのあることは、多くの学者が指摘している通りであります。そのことは本土において教育公務員の争議行為に対する無罪判決の事例でもわかるのであります。 政治行為については、教育の中立性という立場から教育基本法の第八条で制約を受けることは当然でありましょう。それ以上の制約は、教育の中立を犯し、教育を通じて特定政党を支持するような言動があってはじめて妥当でありましょう。しかし、沖縄においてこのように教育をゆがめ、社会に幣害を与えるような行きすぎた教職員の政治行動はありません。教育基本法第八条において政治教育を施す義務を教師は負っており、教師は「良識ある公民たるに必要な政治的教養」を児童生徒に体得させねばならないのであります。 そのためには、教育は自由な雰囲気の中で行なわれるようにすべきであると考えます。勤評のごときは校長をして教育現場の教職員を職制でしめつけ、権力支配を容易にし、職場を暗くするだけであることは、本土の例で明瞭であります。 勤評実施で本土の教育界は血の争いをおこしました。これを沖縄にもち込むことは、沖縄の教育に大混乱を招くことが予想され、憂慮するものであります。 本土における混乱や、沖縄の教公二法のいきさつからして、地公法、教育公務員特例法の条文の中にある規制条項を削除し、特別措置をしていただくよう強く要請するものであります。 さらに「教育の中立性確保臨時措置法」の適用は不要であります。 次に「学校教育法」や「施行規則」および「改訂指導要領」がそのまま適用されると、学校現場における教育の自主性が奪われる恐れがありますので、特別な措置と配慮を要請いたします。 3.教育文化諸環境の整備と格差是正 教育の目的を達成するためには、人的、物的条件整備がまず優先されなければなりません。それに要する費用は、義務教育無償の原則に立って、公費でまかなわれるべきことは当然であります。そして、教育基本法でうたわれる教育の機会均等、教育上差別されてならないこともまた当然で、憲法でいう国民の教育を受ける権利が保障されるべきであります。 しかるに、沖縄の場合、同じ日本国民教育を施しながら、教育費に対する県民の負担はその率において極めて高いものでありました。したがって、本土の基準に達するには、なお相当の期間を要するのであります。 校舎や設備の保有状況は類似県の約七〇%であり、その格差を是正するには多額の資金が必要とされております。 このような不備な教育条件下では、教育効果は上がらず、教室不足からいまなお、数百の老朽、間仕切り教室でそれを補っている状態であります。とくに、特別教室や屋内体育館、学校図書館などは、ようやく手がつけられたにすぎず、その遅れは比較にならないほどであります。 本土においては、教育が国の責任において行われるようになって、教育のあらゆる条件は、一定の水準によって全国的にその均衡を維持しております。しかるに沖縄は、この水準にはるかに及ばず、大きな格差を生じているのであります。 その要因は施政権の分離という異状態勢下においてそれを理由に施政権者と本土政府が責任を回避してきたためであります。 沖縄に義務教育費国庫負担法に準じた財政措置がなされたのはつい五年前からであり、また国の財政支出を義務づけた教育財政関係法に準ずる財政措置もまだ十分になされておりません。 去る大戦において、沖縄の学校校舎は一〇〇%破壊されてしまいました。そのため校舎その他も戦後の困乱期において県民が力をあわせてゼロの状態からようやく現在の状態まで整備してきたのであります。それだけに、沖縄の学校校舎に対しては、当然戦災復旧の考え方に立って、国の責任においてその整備を図るべきであります。 しかるに沖縄振興開発特別措置法案によっても教育環境全般について特別措置が十分に講じられておりません。 そこで沖縄における教育現況に留意し、教育水準を一日も早く本土並みに引き上げるよう国の特別の措置と配慮を重ねて要請するものであります。 なお、沖縄戦で国宝指定の十一の文化財が失われ、かろうじていま一六三の指定文化財が沖縄に保存されております。これらの文化遺産を国の保護事業で守っていく必要があります。沖縄の文化が国民だけでなく広く世界文化へ貢献するよう積極的な国の保護行政を要請するものであります。 (七)税制、財政、金融について 1.税制措置 沖縄県民は、異民族支配の窮乏を担い、本土と異った環境の下で苦労しながらやっといまの生活を築いてまいりました。そのため県民の多くは、いま復帰を目前に控えて、日本国憲法の下で名実ともに日本国民または人間としての権利を回復することのできることに対する喜びや期待とこれまで営々として築きあびてきた生活の基盤がどのように変転していくかの不安と錯そうした気持で政府の復帰対策措置に大いに関心をもっておりましたが、税制措置につきましては、本土政府も沖縄の立場を充分に理解され、前向きの対策が講ぜられつつありますが、次の点で懸念されるものがありますので、本土政府のご理解を求めたいと思います。 その第一は、沖縄租税特別措置法の規定による重要物産の製造等についての所得税又は法人税の免除については、同法の適用期間の残存期間に限り、復帰後もその適用を認められることになっているが、沖縄の重要産業の一部を改正する立法が、一九七一年十月二十二日立法第百四十五号で公布され、産業の発展若しくは雇用の増大に寄与し、県民の生活の安定に資することが著しいと認められる産業に対して、今後重要産業の指定が行なわれることとなりますので、その指定のあった産業についても、沖縄租税特別措置法の相当規定が適用されるよう配慮が必要であります。 その第二は、住民税についてでありますが、所得割の課税標準が、前年所得課税のたてまえから、昭和四十七年度分のその金額は、沖縄法令の規定による総所得金額の計算の例によって算定される。沖縄所得税法は、財産課税としての性質を有する相続・贈与による所得も一時所得としてその課税の対象となっており、本土の所得税法とは異なるので、当該相続・贈与に係る所得を除いた金額を所得割の課税標準とする経過措置を講ずる必要があります。さらに給与所得については、給与控除額が本土の場合と異なるところから不公平が生じないよう、本土法により算出する経過措置が必要であります。 その第三は、自動車重量税の適用に関する問題であります。本土においては、鉄道を含む道路整備五ヶ年計画の財源措置として自動車重量税が新設されておりますが、鉄道がなく道路交通施設の完備していない沖縄にこれを適用することは問題であります。従って当分の間その適用を延期し、その間に総合的な交通機関の整備をはかる必要があります。 2.財政措置 沖縄は、終戦以来異民族支配の下で独立国並みの制度運営を余儀なくされ、本来国の責任において措置されるべき国政業務まで負担してまいりました。しかも、米国政府が施政権者としての財政的責任を十分に果してこなかったため、他府県との教育、社会福祉、産業基盤、その他公共施設等各面において格差を生ずると共に極度の硬直化現象をきたし、多額の借入金に依存せざるを得なかったのでさります。琉球政府のこの借入金の処理については、それが沖縄を異民族支配でに放置してきた結果であることに鑑み、国は自らの責任においてこれを処理し、また単に他府県並みの交付金方式にこだわることなく諸施策の格差並びに借入金の抜本的な対策を講ずることによって、新生沖縄県の発足にあたっては、それが障害にならないよう万全を期していただきたいのであります。この点については、すでに本土政府当局は、事柄の本質と問題の重要性を認識され、それが解決について検討されておられますが、その処理のいかんによっては新生沖縄県に深刻な影響を与えることにもなりかねませんので、ここに強く指摘すると共に、琉球政府の借入金以外の債務の処理については併せて、要請する次第であります。 沖縄は、終戦以来国の国内復興対策のらち外におかれ、また施政権者としての米国政府の施策に弱い面も多かったため、いまだにその所得水準は、全国平均の約六割程度にしか達しておりません。一方、教育、社会福祉、産業基盤施設その他公共施設等各面においては全国の平均水準にはほど遠い状態であります。したがって、復帰後の新生沖縄県における財政措置を講ずるにあたっては、沖縄が長期間に亘って日本の施政権の外にあったこと及び沖縄がおかれている社会的条件等による特殊事情を十分考慮し、同時に沖縄の振興開発を図るための巨額の財政需要が見込まれ、さらにそれに対応するため、他府県よりも多くの職員をかかえるなどの行財政の特殊性があり、また産業や風土の相違もあり、これらに基づく特別の財政需要があります。これらの財政需要に対しては、単に現行地方交付金制度の枠内だけで措置することなく、地方交付税の上乗せ、国の補助率の最高を下らない率の確保、県発足当初における財源の確保等国の思い切った特別措置が必要であります。 3.通貨不安の解消措置 去る八月一六日のニクソン声明とこれに続く本土政府の外国為替変動相場制への移行措置によって、ドルを通貨として使用している沖縄では、貿易取引や県民生活の全般にわたってその影響をうけ、これによる県民の不安と損失ははかりしれないものがあります。本土政府は、その後この外国為替変動相場制への移行によって生ずる生活物資の価格高騰を抑制するための生活物資価格安定資金として一〇億円、本土在住学生の学資補助資金として一億円をそれぞれ支出する旨の措置を講じて載きましたが、これだけの資金で十分に対処できるものではありません。沖縄県民は、自らの意思によって異民族の支配をうけているのではなく、また好んでドルを通貨として使用するようになったのでもないのであって、県民がこのような状態におかれるようになったのは、すべて日米両国政府の一方的な決定によるものであるから、国はこれらの点を考慮し、この通貨不安問題によっていささかたりとも県民に不利益を与えることのないよう抜本的な措置を講ずる必要があります。 この通貨不安問題に対する抜本的かつ恒久的対策としては、現在のドル通貨を円通貨へ切換えること以外にはないのであります。さきに琉球政府が本土政府と協議のうえ「通貨及び通貨性資産の確保に関する緊急措置」を講じたことは、通貨交換を実現するための過度的措置としてとられたものであります。したがって通貨交換が遅れれば遅れるほど県民の不安や損失はそれだけ増大することになります。国はその点を考慮して早急に一ドル対三六〇円による通貨交換、賃金の円換算措置(一ドル対三六〇円の割合)、一〇月九日以降交換時までの資産増加分に対する補償措置等の措置を講じ、また通貨交換が実現されるまでの間の本土沖縄間の貿易取引上の為替差損、学生、長期療養者等に対する生活資金の送金為替差損等についても引き続き特別の救済措置を講じ、この通貨不安問題によって県民にいささかたりとも不利益を与えないようにしていただきたいのであります。 三、具体的要求 (一)「沖縄の復帰に伴う沖縄県民の対米請求権処理の特別措置等に関する法律」(仮称)の制定要請 沖縄県は、去る第二次大戦において戦場となり、その結果、アメリカ合衆国軍隊の占領するところとなり、あまつさえ、県民の意思が問われることなく昭和二十七年四月二十八日に発効した日本国との平和条約第三条によって、沖縄県の領域及び住民はアメリカ合衆国の施政下に置かれることを余儀なくされました。爾来今日に至るまで二十六年間、沖縄県民の人権はもとより、財産権等の諸権利は、本土では到底想像もできないほど軽視され、無視されてきました。 いま、ようやく本土復帰を目前に控え、県民は、その軽視され、無視されてきた人権及び財産権等の諸権利が、本土政府によって回復されることを心から願望し、且つ期待しております。 本土政府は「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」いわゆる沖縄返還協定第四条第一項で「日本国は、この協定の効力発生の目前に琉球諸島及び大東諸島におけるアメリカ合衆国の軍隊もしくは当局の存在、職務遂行もしくは行動またはこれらの諸島に影響を及ぼしたアメリカ合衆国の軍隊もしくは当局の存在、職務遂行もしくは行動から生じたアメリカ合衆国及びその国民並びにこれらの諸島の現地当局に対する日本国及びその国民すべての請求権を放棄する。」ことを認めております。したがって、放棄された県民の対米請求権について、本土政府は、その責任において、これの救済を保障する法律的措置を講じ、且つ現実に補償すべき責務があると思料いたします。 しかるに本土政府は、県民の期待に反し、いわゆる対米請求権の放棄に伴う救済措置について、今国会に提案された沖縄関係法律案の中には、法律的措置を講ずる規定はありません。このような本土政府の態度に対して、沖縄県民は強い不満と不安を抱いているのが実情であります。 ここに琉球政府は、沖縄県民が、施政権が分離されアメリカ合衆国の施政権行使を認めたことによりアメリカ合衆国の軍隊等の行為等によって蒙った損失、損害等については、本土政府がその責任と負担において補償すべきであると考え、「沖縄の復帰に伴う沖縄県民の対米請求権処理の特別措置に関する法律」(仮称)の制定を強く要請するものであります。 「沖縄の復帰に伴う沖縄県民の対米請求権処理の特別措置に関する法律」(仮称)要綱 一、目 的 この法律は、対日平和条約の発効前及び同条約の発効後、施政権の返還までの間、アメリカ合衆国の施政権下において、日本国民の蒙ったすべての損害について、国の責任において補償するための必要な特別措置を講ずること。 二、対 象 対日平和条約の発効前及び同条約の発効後、施政権の返還までの間に、アメリカ合衆国軍隊もしくはアメリカ合衆国当局の存在、職務遂行もしくは行動から生じた損害及び米軍人並びにその要員による作為及び不作為から日本国民が蒙った損害で次にかかげる事項 ア 平和条約発効前の人身損害 イ 平和条約発効後の人身損害(米国の外国人損害補償法により処理されたものを含む) ウ 平和条約発効前の財産損害 エ 平和条約発効後の財産損害 オ 軍用地の形質変更による損害 カ 米軍による入会権制限に伴う通常損害 キ 軍用地接収(契約を含む)に伴う通常損害(残地補償、隣接財産の補償、離作補償、水利権補償) ク 軍用地料の増額(土地裁判所の増額要求訴願で棄却されたものを含む。) ケ 滅失地損害 コ 演習による漁業操業制限又は禁示による損害 サ 原潜入港による漁業収益損害 シ 解放地の境界設定費 ス 沖縄返還協定第四条第二項、第三項および海没地の問題の解決に関する交換公文によりなしたアメリカ合衆国の処理に不服なもの 三、 時 効 この法律で規定する請求権は復帰後十年間、時効は完成しないものとすること。 四、 裁判権 原則として被害の生じた地を管轄する地方裁判所または沖縄県庁所在地を管轄する地方裁判所。 五、 損害の疎明 損害額は疎明で足りるものとすること。 六、 所掌機関 総理府を所掌機関とすること。 七、 この法律の施行について必要な規定は政令で定めること。 八、この法律は施政権返還の日から施行すること。 (二)沖縄振興開発特別措置法案に対する要請 第一条(目的) ・「沖縄の特殊事情に鑑み」の次に「地方自治を尊重しながら、平和で豊かな沖縄をつくるため」を入れる。 ・第二条第二項の規定は、「離島」について政令で区分することを予定していると思われるが沖縄本島以外の島を「離島」とするよう措置すること。 「辺地」についても規定して“離島”と同様の保護措置が講じられるようにすること。 振興開発計画の内容について ・第三条第一項(振興開発計画の内容)に次の事項を加えること。 (イ) 軍事基地の跡地利用、(ロ) 軌道、(ハ) 都市の整備開発 ・第四条(振興開発計画の決定及び変更)に次の事項がおりこまれるように措置すること。 (イ) 内閣総理大臣は、前項の振興開発計画の案に基づき、沖縄振興開発審議会の議を経るとともに、関係行政機関の長に協議し、沖縄県知事の同意を得て、振興開発計画を決定すること。 (ロ) 国は振興開発計画の実施計画を決定し推進するに当っては、県知事の意見を尊重することとすること。 ・第六条(沖縄の道路に係る特例) この条第二項によって、道路管理者が申請する場合は、「沖縄県知事を経由して」を要する措置をすること。 ・第七条(沖縄の河川に係る特例) 第七条第六項によって、建設大臣が新築するダムの建設に要する費用はその全額を国が負担するものとすること。 ・第八条(沖縄の港湾に係る特例) (イ) この条第二項によって港湾管理者が申請する場合は「沖縄県の知事を経由して」を要する措置をすること。 (ロ) この条第三項の費用については、その全額を国が負担するものとすること。 (ハ) この条第五項、第六項及び第八項「公用に供するため国が必要とするものを除く」の部分は削除すること。 ・法律の中で沖縄の都市の整備及び開発に係る国の補助の特例を追加すること。 沖縄の地方公共団体が行なう都市の整備及び開発に係る次の事業に要する費用については、国が特別の助成措置を講ずること。 (イ) 都市計画事業(街路、区画整理、市街地再開発) (ロ) 下水道事業(公共、流域下水道(統合下水道を含む)、都市下水道、処理場) (ハ) 水道事業(上水道及び関連施設、(ダム構築、工業用水道を含む)) ・法案の中で教育環境整備に係る特別助成措置を追加すること。 国は次に掲げる事業に対し、高率の特別助成措置を講じ、事業に要する経費の対応費については、交付税及び地方債等で十分な国の保障がなされるよう措置すること。 (イ) 幼稚園教員給与並びに施設の補助 (ロ) 私立学校施設設備の整備充実 (ハ) 県立高等学校及び特殊学校施設整備充実 (ニ) 教職員定数の維持及び確保と陣容の強化 (ホ) 教育研修センター設備充実 (ヘ) 教職員の研修強化 (ト) へき地教育環境の整備充実 (チ) 学校施設用地の確保 (リ) 風しん障害児就学奨励(通学費、学寮費、学用品費等) ・第十条(地方債についての配慮) この条は地方財政法第五条に規定する範囲内で起債をする場合、国は特別な配慮をするとの規定にとどまり、起債範囲の拡大と地方交付税の算定に当っての措置がないので、次の措置をすること。 ・振興開発計画にもとづいて行う事業につき地方公共団体が必要とする経費については、地方財政法(昭和二十三年法律第一〇九号)第五条第一項各号に規定する経費に該当しないものについても地方債をもってその財源とすることができるものとすること。 ・振興開発計画に基づいて行なう事業につき、地方公共団体が必要とする経費の財源に充てるため起した地方債(当該地方債を財源として設置した施設に関する事業の経営に伴なう収入を当該地方債の元利償還に充てることができるものを除く。)で、自治大臣が指定したものに係る元利償還に要する経費は、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の定めるところにより、当該地方公共団体に交付すべき地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入するものとすること。 ・第十六条(特定事業所の認定等) この条は優良事業の認定に関する規定であるが、認定に当って、県知事の関与が必要であるので、同条第一項及び第二項による認定又は取り消しの際は関係行政機関の長は沖縄県知事とも協議することとする措置をすること。 ・自由貿易地域について 琉球政府が要請している自由貿易地域制度の趣旨に従い同地域の管理者を地方公共団体の長とし、地域内事業の許可は、沖縄県知事が行ない、同地域への搬入貨物には関税法の適用について特例措置を講ずること。 ・第三十二条(株式) 国は沖縄における電気の安定的かつ適正な供給を確保するため、設備の更新拡充に必要な資金を積極的に出資すること。 ・第四十一条(沖縄失業者求職手帳の発給等) この条第一項第一号に「二、その他復帰に伴なう社会経済状況の変動により、やむなく失業するにいたったものであること」を加えるとともに同項第二号についても所要の改正をすること。 同条第一項第二号中「一年以上引き続き」とあるのを失業保険の受給権の発生期間と同一にして「六箇月以上引き続き」と改めること。 ・第五十三条(審議会の組織等) 第五十三条第一項第六号の学識経験者については、沖縄県知事の指名する学識経験者十人以内とする措置を講ずること。 別表中 イ「義務教育施設等」とあるのを「義務教育その他教育、文化施設設備等」に改め、中欄に次の事項を加える。 ・義務教育諸学校の算数数学教育設備、図書、特殊学級設備、学校管理設備、環境衛生検査器具 ・特殊学校の算数数学教育設備、特殊教育設備 ・へき地教育振興に係るスクールバス・ボート、ジープ、学校風呂、寄宿舎居住費、遠距離児童生徒通学費、へき地学校保健管理費 ・風しん障害児童教育対策施設設備 ・学校給食総合センター、低温流通化施設等 ・社会教育、社会体育に係る市町村公民館、市町村図書館、県立博物館、体育施設(体育館、水泳プール、柔剣道場、陸上競技場)野外活動センター、青年の家付属施設並びに市町村図書館、県立図書館図書、視聴覚ライブラリーに対する補助 ・史跡環境整備補助、一般修理、民俗資料、天然記念物調査、発掘、無形文化財記録に対する補助 ロ「高等学校教育施設等」とあるのを「高等学校教育施設設備等」に改め、中欄に次の事項を加える。 ・高等学校施設(柔剣道場、学校寄宿舎、定時制高校照明施設)設備(視聴覚備品、数学教育設備) (三)沖縄開発庁設置法案に対する要請 ・第九条(総合事務局の所掌事務等) 沖縄開発庁の地方支分部局として沖縄総合事務局が設置されることになっているが、その所掌事務は、総務部門、開発工事の実施部門、許認可行政部門、公取委事務所などぼう大な組織となっています。 沖縄県のような小さな地域にぼう大な国の機関が設置されると地方公共団体の自治に大きな影響を及ぼすおそれがあるので、同事務局の権限及び内部組織については沖縄の実情に即応する必要最少限のものにとどめ、その運用面についても留意すること。 (四)沖縄振興開発金融公庫法案に対する要請 ・第四条(資本金) 資本金については、現に沖縄に存する琉球開発金融公社と大衆金融公庫、それに琉球政府特別会計を加えた正味資産を充てるとされているが、これらの資産は本来沖縄県民に属するものであるので、国はこれに新たの出資について積極的規定を設け、公庫をより充実強化し県民の期待に応えるよう措置すること。 ・審議会の設置について 公庫に審議会を設置し、委員の過半数は、沖縄県知事の推せんする者をもって充てる措置をすること。 ・第二十三条(業務方法書) 業務方法書の作成及び変更については、審議会に諮問する措置をすること。 (五)沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律案に対する要請 1.総理府・自治省関係 (1)琉球政府公務員(教育区及び連合教育区の教職員を含む。)の身分の承継、給与の取扱い等について ・第三十二条(琉球政府の職員の承継)、第三十五条(地方教育区の権利義務の承継) これらの規定は、琉球政府の公務員のうち、国、沖縄県、市町村又は、公共的団体に身分が承継される職員の範囲を常勤の職員のみに限定して引継ぐこととしているが、常勤の職員のみならず非常勤職員についても常勤職員に準ずる措置をすること。 ・第五十五条(特別の手当)、第六十四条(裁判所職員に対する特別の手当等)、第百五十一条(沖縄県の職員等の給与に関する経過措置) これらの規定は、琉球政府の公務員のうち、国、沖縄県又は市町村の職員となるものに対し、特別の手当を支給することを定めているが、当該職員の基本給の取扱いについては、単に特別の手当として措置することなく、当該職員が復帰の日の前日において琉球政府から受けていた給料月額(一ドル対三六〇円換算の現給)を保障する措置をするものとし、この場合において初任給、昇格、昇給等の基準に照らし不利益を受けることとなる職員については不利益とならないように措置すること。 ・法案においてなんら法文上の措置がされてない既得権たる積立年次休暇の取扱いについては、復帰時に国の責任と負担においてその全積立日数を買上げるよう措置すること。 ・第六十一条(国の行政機関の職員の定員に関する暫定措置)、第六十三条(裁判所職員の定員に関する暫定措置) これらの規定は、復帰後沖縄に置かれることとなる国の行政機関及び裁判所の職員の定員について政令又は最高裁判所規則で定めることを規定しているが、当該機関の当該職員の定員については、それぞれ行政機関の職員の定員に関する法律又は裁判所職員定員法で定める職員の定員とは別個に、法律上措置するものとし、この場合においては、定員削減、待機命令及び本土所在の政府機関への配置換え等を行なわないよう措置すること。 ・沖縄県及び沖縄県の区域内の市町村の職員となる地方公務員については、地方公務員法の特例として、労働三権を保障する措置をすること。 ・琉球政府公務員のうち、国家公務員となる職員については、国家公務員等退職手当法を即時に適用するものとし、この場合において、当該職員の在職期間の計算については、行政分離前の国又は県及び行政分離後の琉球政府(その前身機関を含む。)の勤続機関を通算する措置をし、当該職員のうち元南西諸島官公署職員等の身分恩給等の特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第一五六号)第六条の規定により、通算辞退をした者については実退職時までの総在職年で在職年を計算し、金額控除をすること。 ・地方自治法附則第八条の規定により都道府県職員に対する特例として認められているいわゆる地方事務官制度は、沖縄県の職員については適用せず、これに相当する職員は、すべて沖縄県の職員とする措置をすることとし、それに要する財政措置について所要の手当をすること。 (2)各種公社等及び各種共済組合等の職員の身分の承継について ・第三十六条(琉球水道公社)、第三十八条(沖縄放送協会)、第三十九条(沖縄下水道公社)、第四十条(住宅の供給を目的とする沖縄の特別の法人)、第四十一条(沖縄学校安全会) これらの規定により、沖縄県又はその他の法人に権利及び義務が承継されることとなる各種公社等の職員の身分の承継についても、法案第三十二条(琉球政府の職員の承継)及び第三十七条第二項(琉球電信電話公社の職員の承継)の規定と同様に、各種公社等の権利義務を承継する沖縄県又はその他の法人がそれぞれ当該職員の身分を引継ぐ措置をすること。 ・第四十三条(各種共済組合) 沖縄の公務員等共済組合法、公立学校職員共済組合法、私立学校教職員共済組合法又は農林漁業団体職員共済組合法に基づく各種共済組合の権利義務は、法案第四十三条の規定により、本土法に基づくそれぞれに相応する各種共済組合が承継することになっているが、これら各種共済組合の職員の身分の承継についてもその権利義務の承継と同様に、沖縄の各種共済組合の権利義務を承継する各種共済組合にそれぞれ当該職員の身分を引継ぐ措置をすること。 (3)免許資格等の措置について ・第五十三条(沖縄法令による免許等の効力の承継等) 復帰前に本土法令の規定に相当する沖縄法令の規定によりなされた免許等は本土と処分の基準が著しく異なる等特別の理由がある場合を除き、それぞれ本土法令の相当規定によりされたものとみなされているが、本土にあって沖縄にない免許、資格等についても講習等により免許、資格等を与える措置をすること。 ・第五十四条(沖縄において従事していた業務等の継続) 一定の業務又は職業についての制限又は禁止を定めている本土法令の規定に相当する沖縄法令の規定がない場合においては、復帰前沖縄において適法にこれらの業務又は職業に従事している者は、高度の専門的知識を要するものである等特別の理由がある場合を除き、政令で定めるところにより、引き続きこれらの業務又は職業に従事することができるとしているが、当該者については、一定の資格等を要する場合であれば講習等を受けさせ資格を与える等の措置をし、その他の者についてはこれらの実績経験等を尊重して復帰後も円滑に業務が継続できるよう措置すること。 ・第一五六条(政令への委任) 沖縄法令による資格試験等に必要な資格、要件を有する者は復帰後も本土法令によって適法に当該資格試験等に要する期間又は経験を有する者とみなす措置をすること。 ・(沖縄法による医師(歯科医師)の国家試験受験資格) 沖縄法による医師(歯科医師)免許を取得した者に対しては全員に対して医師国家試験の受験資格を与える特別措置を講ずること。 ・関係法令の改正による措置等 沖縄における免許試験及び免許資格の特例に関する暫定措置法の規定により、社会保険労務士等となる資格を所定の手続を経た者について与えることとしているが、資格要件を有しながら所定期限までに所定の手続を経なかった者についても関係法令を改正し、救済措置をすること。 (4)交通方法等の切替え時における経費の負担について ・第五十八条(交通方法等に関する暫定措置) この規定は、復帰後三年を経過した日以後の政令で定める日から本土並みに交通方法を変更することを定めているが、その変更の際に生ずる損失等に要する一切の経費については、国において負担する措置をすること。 (5)土地調査業務に関する措置について 沖縄における土地調査業務については、沖縄の特殊事情を十分考慮のうえ、当該業務が支障なく実施できるよう国の責任と負担において法律上の措置をすること。 2.大蔵省関係 ・第三十一条(琉球政府の権利義務の承継) 琉球政府の権利義務の承継についての具体的配分基準及び方法等についてはすべて政令に委任されており法文上何ら明記されてないので、権利義務の承継については、新生沖縄県の行財政の確立並びに県民福祉を最優先し次の措置をすること。 (1)琉球政府の一般会計の借入金(財政法第四条に基づく公共事業借入金並びに財政法第四条の特例措置に基づく借入金をいう。)は、全額国庫の負担とする。なお、沖縄県が引き継ぐ公社等(下水道公社、土地住宅公社)の借入金についても同様とすること。 (2)琉球政府の借入金以外の債務(観光開発事業団の民法法人移行に伴う債務も含む)の処理に要する経費は全額国庫負担とする。 (3)琉球政府の医療保険の積立金は沖縄県が承継し管理運営する。 ・第四十九条(通貨の交換) 返還協定の効力発生の日以後に通貨の交換を行なうことを規定する本条は全面削除するものとし、早急に通貨の交換を行なう措置をすること。 なお、賃金の円交換措置(一ドル対三六〇円の割合)並びに一九七一年十月九日の通貨及び通貨性資産の確認措置後、通貨の交換日までに生じた所得についても所要の補償措置をすること。 ・第六十八条(たばこ製造廃止業者等に対する交付金について) 製造業の廃止に伴う損失についてのみ措置され、製造工場の設置、製造業務に携わる従業員の身分の引継ぎ等について何ら明記されてないので次の措置をすること。 (1)沖縄県に専売公社の製造工場を設置し、たばこ三社の従業員の身分を引継ぐこと。 (2)葉たばこ生産者に対しては、生産指導の体制を強化し、葉たばこの買上げについては、現行どうりとすること。 ・第六十九条(たばこ専売法に関する特例) たばこ販売業者については、五ヶ年程度製造たばこの小売人とみなすこととしての暫定期間を設け、販売形態に混乱の生じない措置を講ずること。 ・第七十二条第二項、第百五十四条第二項(琉球政府税の承継等) 国税相当琉球政府税又は県税相当琉球政府税の還付については、本土の国税通則法又は地方税法の規定を適用すると定められているが、沖縄法令による還付加算金は一日につき〇・〇四パーセント(年に一四・六パーセント)であるのに対し、本土法令によるそれは、年七・三パーセント(一日につき〇・〇二パーセント)であるため、復帰後に本土法令により還付を受ける納税者は不利益となる。したがって、復帰前に納付を受けた国税相当琉球政府税又は県税相当琉球政府税の還付について国税通則法又は地方税法の規定を適用する場合は、国税通則法第五十八条又は地方税法第十七条の四中「その金額に年七・三パーセントの割合」とあるのを「その金額に年一四・六パーセントの割合」に読み替えること。 ・第八十条第二項(内国消費税等に関する特例) (自動車重量税) 沖繩県の区域においては自動車重量税は昭和四十七年十一月三十日まで適用しないことと定められているが沖繩においては、国鉄の施設のないこと及び自動車取得税の新規適用等自動車に係る税負担が加重されるので、幹線道路の本土なみ整備及び公共交通機関の本土なみ導入が実現するまでの間、自動車重量税法の適用を延期すること。 ○第九十条第一項及び第三項(国有財産の管理及び処分の特例) (イ)協定第六条第二項の規定に基づきアメリカ合衆国から譲渡を受けた財産で沖繩の地方公共団体に対し、譲渡し、又は貸し付けられるものは、「政令で定めるもの」に限定しているが、これらの財産はすべて沖繩の地方公共団体に無償で譲渡する措置をすること。 (ロ)愛知外相書簡(外国企業取扱い)の「V国有地及び県有地の賃貸借」の規定には従前と同一条件で一年限り賃貸借できる旨定められているが、本条には従前と同一条件で使用収益できる期間は「政令で定める期間内」とあり、契約更新については、何ら規定されていないので次の措置をすること。 (1)国県有地の賃貸借は、復帰の日から借地借家法の適用を受ける賃貸借とすること。 (2)外国人又は外国法人に賃貸している県有地であって賃貸借開始の際、琉球政府の同意を得る手続きを経てないものについては、復帰の日から一年間明渡しを猶予し、猶予期間終了とともに明渡しするものとする。 ○第九十一条(金地金売払いの特例) この条で規定する政令で定める用途に供する金地金には、医療用金地金を含むものとして措置すること。 ○法案の中に次のとおり措置すること。 (1)中小企業関係者が融資を受ける場合の措置について 沖繩振興開発公庫からの中小企業関係者が融資を受ける際、沖繩信用保証協会の保証債務が中小企業信用保険公庫に付保することができるよう措置すること。 (2)第五十三条関係(銀行法関係) 琉球銀行についても、本土銀行法上の免許を受けたものとみなすこと。 3.文部省関係 ○第六条第三項(沖繩県の主要公務員の選任又は選挙) ○第九条第二項(市町村の機関に関する経過措置) これらの条項に規定する中央教育委員並びに教育区教育委員の任期が満了すれば地方教育行政の組織及び運営に関する法律(「地教行法」という。)が適用されるが、地教行法の特例として、教育委員の公選制を維持存続する措置をすること。 なお、これに関連する法案第三十四条、第三十五条及び第九十四条第二項に規定についても所要の措置をすること。 ○第九十四条第一項(沖繩の学校その他の教育機関に関する経過措置) 沖繩の学校教育法によって設置された学校又は、各種学校については、政令に委任することなく本土法による学校又は各種学校とみなす措置をすること。 ○第九十六条第四項、第五項(私立学校教職員共済組合法に関する特例等) この条項は、沖繩の組合員に対し、無拠出期間については控除支給することを規定しているが、沖繩の組合員の過去期間については次の措置をすること。 (1)旧長期組合期間(昭和二十九年一月一日から昭和三十六年十二月三十一日まで)は、本土の旧法の長期給付に関する規定の例により計算すること。 (2)本土の新法による組合員期間(昭和三十七年一月一日から昭和四十六年九月三十日まで)は、本土の新法の長期給付に関する規定の例より計算すること。 ○沖繩県及び教育委員会の教職員については、教育公務員特例法第十一条、第十二条及び第二十一条第三項の規定を適用しない特別措置をすること。 ○「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律」を復帰時に即時適用すると風しん児担当教員や技術教員など、沖繩の実情にそぐわない面があるので、教員の定数の標準については、規定数を認める特例措置をすること。 4.厚生省関係 ○第百二条(准看護婦に関する特例) 沖繩の公衆衛生看護婦、助産婦、看護婦法附則第十三条第一項で設置されている臨時准看護婦養成所は昭和四十九年二月二十四日まで存続させる措置をすること。 ○第百四条(厚生年金保険法等に関する特例) (1)保険料率については一挙に本土並みとすることは、被保険者、及び事業主の負担が増加することとなるので、逐次本土並みに料率を引上げる等の暫定措置をすること。 (2)この条には国民年金の保険料の追納についての措置規定がないが、沖繩の国民年金法により保険料免除みなし期間を有する者で復帰後に受給権の発生するものについても保険料免除みなし期間の保険料が追納できるよう措置をすること。 ○年金受給権者等については次の措置をすること (1)国年令者に対し同年金額の給付ができる特例措置をすること。 (2)公的年金制度に加入し得なかった高令者及び年金受給発生前に資格喪失した高令者に対する救済措置をすること。 ○精神病の同意入院患者治療費の公費負担について 復帰後の沖繩の同意入院患者の治療費の公費負担については本土の精神衛生法の特例として公費負担ができる措置をすること。 ○社会福祉施設職員退職手当共済法の特例 沖繩の社会福祉施設職員の被共済期間の計算は昭和三十七年四月一日以降その職員期間を含めて算定するものとし、共済契約者が納付すべき掛金については国で負担する措置をすること。 ○社会福祉事業振興会法に基づく社会福祉施設の整備に必要な資金の無利子貸付けについて 法人が福祉施設の整備等に必要な資金として借入れるものについては、当分の間利子を徴収しないものとし、元本の返済については相当の据置き期間を設ける措置をすること。 ○戦傷病者戦没者遺族等援護法の特例 対馬丸、台湾疎開遭難死没者については準軍属として援護法を適用する措置をすること。 ○墓地埋葬等に関する法律等の特例 墓地埋葬等に関する法律第十七条の規定による報告は、個人経営の墓地については異動がない限り、その必要を免除すること。 ○医療保険制度 復帰に伴う医療保険の取扱いについては法案になんらの措置もなされてないが、沖繩における医療供給体制が本土の水準に達するまでの間、次の特別措置をすること。 (1)保険料率の経過措置 保険料率を一挙に本土並みとすることは、被保険者及び事業主の負担に対する影響が大きいので、段階的に本土並みに料率を引き上げる等の措置をすること。 (2)診療報酬点数表の経過措置 診療報酬点数表は、沖繩の特殊事情を勘案しその実態に即応するよう一定期間の経過措置をすること。 (3)医療保険の余裕金の沖繩県での運用 医療保険勘定の余裕金は、被保険者等に還元するため沖繩県で運用するので、本土の健康保険に引き継がない措置をすること。 5.農林省関係 ○第八十四条(関税等に関する特例) 関税の税率が沖繩の関税率に比して高くなる物品のうち、ランチョンミートその他政令で定める物品の輸入数量については法案に何んらの措置がなされていないが、これらの物品については、輸入割当制を実施し、漸次輸入量を減らす措置をすること。 ○第九十条(国有の財産の管理及び処分の特例) この条第三項に規定する国有財産のうち国有林野については、次の特別措置をすること。 (1)明治四十二年勅令第三十二号により、沖繩県に八十年契約で無償貸与された国有林野四、四九六ヘクタールは、もともと沖繩県の林野であったのを強制的に国有に編入されたものであり、また、六十年余の貸借期間中、県有林野並みに取り扱われて県民生活に密着し、林産物の生産供給、農地等の拡大等地域住民に多くの利害関係があるので、復帰の際は、沖繩県に無償で譲渡すること。 (2)農耕地の拡大等のため、沖繩の森林法によって貸付けされた国有林野については、同林野が森林経営の用に供するためには、最早不適当であるので、借受人売渡しすることとし、この場合の売渡し価格は、農業経営の自立を可能ならしめる価格(自作収益価格)とすること。 ○第百六条(農林漁業団体職員共済組合法に関する特例等。) (1)沖繩農林共済組合法附則第五条の規定により、組合員であった期間とみなされた期間については、断続した期間についても本土法の農林共済組合の組合員であった期間とみなすこと。 (2)給付事由に係る給付の額については、一部減額することとなっているが、未納掛金期間にかかる給付額については全額支給する措置をすること。 ○第百十条から第百十三条(食糧管理法に関する特例等) 法案第百十一条から第百十三条(食糧管理法に関する特例)によれば、米穀の消費者価格(原材料用価格を含む)及び生産者価格並びに麦の政府売渡し価格については、一定年間現行価格を基準として本土の価格の変化の状況を参酌して農林大臣が定めることになっており、その後の一定年間で本土価格と一元化されることになるが、沖繩の特殊事情を考慮して次のように措置すること。 (1)米穀の生産者価格については、生産費及び所得補償方式の食糧管理制度により即時本土買い入れ価格による買上げを実施することとし、その際、等外米を除くなどの買入れ制限をすることなく、特に等外米の買入れ価格については、現行沖繩の買入れ価格を下まわらないようにすること。 (2)沖繩における消費者米価並びに麦の政府売渡し価格については、据置くこと。 ○ 沖繩産糖は、従来「沖繩産糖の糖価安定事業団による買入れ等に関する法律」により買上げされて来たが、沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案(以下改廃法案という。)第六十六条で廃止され、それ以後は、本土並みに買上げられることになる。しかし、沖繩においては、基本的な生産基盤の整備がなされてなく、土地生産性及び労働生産性も低い状態であるので、今後の沖繩の糖業振興を図るためには、次のような抜本的改革を図る特別措置が必要である。 (1)沖繩産糖の買上げについては、さとうきび作の生産費調査の労賃算定基準などを改善しつつ、これを基礎としてさとうきびの再生産と所得を補償するような価格決定方式に転換させること。 (2)甘味資源特別措置法の適用にあたっては、沖繩全域(含蜜糖地域を含む)を生産振興地域に指定し、生産の振興に努めると共に、さとうきびの収穫機械を国の責任のもとに開発し普及すること。 6. 通商産業省、運輸省関係 ○輸出入に関する特例 輸出入の取扱いについては次の措置をすること。 (1)既存の輸出入実績及び輸出入業者の既得権を十分尊重すること。 (2)本土においては、輸入割当品目で、沖繩では自由品目になっているものについては、沖繩を別枠とし、各品目ごとに数量を割当し、輸入業者は既存業者を優先すること。 (3)本土と沖繩の双方において輸入割当品目になっているものは、沖繩の既存輸入業者が輸入できるようにすること。 ○石油業に関する特例 給油所の新設については既存給油所との間に過当競争をまねかないよう配慮すること。 ○転廃業対策 転廃業対策としては煙草、塩の製造業者について、廃業補償する旨がうたわれているが、他の業種については、措置が明らかではないので全転廃業者に対して、次の措置をすること。 (1)復帰に伴う諸制度の改廃及び軍事基地の撤去など縮小によって、転廃業を余儀なくされる企業に対しては、国において救済措置をすること。 (2)廃業については、補償金を支払うものとし、転業の場合は、転業資金を長期低利で融資する措置をすること。 (3)事業の縮小、合併を余儀なくされる企業についても、これにより余剰設備等となるものは、廃業とみなし、補償すること。 ○百貨店に関する特例 (1)既存業者は本土法令によって許可されたものとみなす措置をすること。 ○計量法に関する特例 沖繩で認められている尺貫法及びヤードポンド法による計算単位等をその残存期間中認める措置をすること。 ○電気計器検定義務の移管に伴う措置 沖繩に検定義務を行なう試験所を設置し、琉球政府で行っていた業務を引継ぐ措置をすること。 ○商工会議所等の特例 商工会議所法及び商工会の組織等に関する法律の適用に際しては、名称使用禁止規定を三年間適用しない措置をするとともに、既存の商工会議所及び商工会については、組織変更の認可を受け、商工会議所又は商工会となりうるような措置をすること。 ○繊維製品製造設備の登録に関する特例 復帰時点に沖繩に存する繊維製品製造設備については、本土法により登録されたものとみなす措置をすること。 ○沖繩の自動車損害賠償責任保険契約に関する経過措置 沖繩法による自動車損害賠償責任保険契約の対人損害のてん補に係る保険金額は、「沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律」の施行の日から自動車損害賠償法(本土法)第十三条第一項に規定する保険金額とすること。 ○港湾に関する特例措置 (1)沖繩の主要港を港則法の適用をうける港として、同法別表に入れ、さらに重要港については、政令で特定港としての指定をすること。 (2)沖繩の主要港を港湾法に基づく重要港湾及び特定重要港湾として政令で指定する措置をすること。 (3)那覇軍港を県に移管し那覇商港と合わせて管理運営できる措置をすること。 ○空港に関する特例措置 (1)那覇空港を第一種空港としこれについては、自衛隊の使用を禁止する措置をすること。 (2)離島空港は第三種空港として運営できるよう措置し、空港整備に要する経費については国が全額負担する措置をすること。 (3)下地島パイロット訓練飛行場に要する経費については、国が負担することとし、また、同飛行場をいかなる軍事目的にも使用しないこととするよう措置するとともに、飛行場から発生する公害についても国の負担において万全の措置をすること。 ○海運業に関する特例措置 現在就航中の船舶については、内航海運事業法による許可とみなす措置をするとともに、近代化貨物船の健造促進、又は、離島航路補助については、長期低利融資又は、補助措置をすること。 ○辺地離島バスの運行確保に対する補助の特例 辺地離島バスに対する補助方式を適用するに当たっては沖繩における特殊事情を考慮して相当期間二分の一額を国が補助して残りの二分の一額は長期低利融資が受けられるよう措置すること。 ○車検制度に関する特例 (1)沖繩の道路運送車両法による指定検査人及び補助業務にたずさわる者で、指定検査人になる資格条件を有する者は、指定自動車整備事業の自動車検査員の資格を付与する措置をすること。 (2)各自動車検査所に従事している職員については、就職の斡旋、転業資金の誘資等が受けられるよう措置すること。 (3)検査施設及び既得権(営業権等)に対しては適正な補償をするよう措置すること。 (4)民間による自動車検査制度の廃止に伴う指定自動車整備事業等への移行の際には、施設、機械器具等の整備対する補助措置及び育成措置をすること。 7.郵政省関係 ○第百三十条(公衆電気通信法に関する特例) (1)この条の規定は、昭和四十六年六月十七日以前に、琉球電信電話公社に対して行われた加入電話加入契約の申し込みが、この法律の施行の日以後に日本電信電話公社から承諾された場合における設備料については、加入申込み時期を基点とする三段階に区分して負担額を定めているが、復帰の日以前に琉球電信電話公社に対して行われた加入契約の申込みが、この法律の施行後に、日本電信電話公社から承諾された場合における設備料については、従前の例によることとすること。 (2)復帰の日以前に琉球電信電話公社に対して加入電話加入契約の申込みがなされたもので、復帰後日本電信電話公社から承諾されたものに対しては、電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律(昭和三十五年法律第六四号)を適用しない特別措置をすること。 ○第百三十一条(電波法に関する特例) この条は沖繩協定第八条を受け電波法の特例としてヴォイス・オブ・アメリカ中継局を、この法律の施行の日から起算して五年間継続使用を認めるとしているが、同協定第八条及び「合意された議事録」の沖繩協定第八条に関する部分並びに特別措置法第百三十一条を削除すること。 ○第百三十二条(極東放送) 極東放送については、その継続を認めた愛知外相書簡(外国企業の取り扱い)「放送事業」及び特別措置法案第百三十二条第一項、第二項及び第六項を削除すること。 ○公共放送に関する特例 テレビジョン難視聴地域の解消及び放送サービスの格差是正について、具体的な計画時期等が明示されていないので、テレビ、ラジオ難視聴地の早期解消を図るための具体的な実施計画及び沖繩、島島間のテレビジョン同時放映を実現するための計画を策定すること。 ○未実施郵政事業に関する特例 郵便貯金法第五十条の規定により、地方郵便局長に指定の権限さ与えられている「集金による積立郵便貯金の預入を取扱わない地域」の指定について、沖繩に関しては当分の間郵政大臣が行なうこととしているが、当該地域の指定については改廃法案第八十二条に基づき、沖繩県に設置する沖繩郵政管理事務所の長が行なえる措置をすること。 ○特別郵便局に関する特例 復帰後沖繩の既設郵便局並びに新設される郵便局については、特定郵便局制度を適用しないよう政令等で措置すること。 8.労働省関係 ○第百三十七条〜百四十条(労働条件に関する経過措置) 第百三十七条の規定によれば、復帰前に沖繩の労働基準法第八条の事業又は事務所に使用されていた者が、特例措置法の施行の日から一年を経過する日までに、当該事業又は、事務所を解雇された場合に限り、解雇手当を請求することができるようになっているが、単に一年に限定せず、労働基準法の特例として沖繩の労働基準法で認められている解雇手当制度を認める措置をすること。 なお、当該制度の実効性を確保するために罰則規定を設けるものとすること。 第百三十八条の規定によれば、現に沖繩の労働基準法の規定により、年次有給休暇を積立てている者は、特別措置法施行後も当該年次有給休暇を請求することができるようになっているが、この措置に併せて復帰後に当該年次有給休暇を行使せず退職した者については、既得権の保障として、退職時にそれを買上げできるように措置すること。 なお、当該制度の実効性を確保するために罰則規定を設けるものとすること。 第百三十九条の規定によれば、復帰前の布令第百十六号の適用を受ける者であって、引続き同一の使用者に使用されている者で、特別措置法の施行の日から、一年に限り、有給病気休暇を請求することができることとなっているが、単に一年に限定せず、労働基準法の特例として、同布令で認められている有給病気休暇制度を維持存続させる措置をすること。 なお、当該制度の実効性を確保するために罰則規定を設けるものとすること。 第百四十条の規定によれば、沖繩の労働基準法第八条の事業又は事務所に使用されており、かつ、引き続き当該事業又は事務所に使用されている者については、特別措置法の施行の日から一年に限り、平均賃金の支払を請求することができるようになっているが、健康保険法の適用を受ける者については(同法により出産手当金が支給されるので)即時適用し国民健康保険法の適用を受ける者についてはこれにより出産手当金が支給されるまでこの規定を存置する措置を講ずること。 なお、当該制度の実効性を確保するために罰則規定を設けるものとすること。 ○第百四十二条〜第百四十四条(労働者災害補償保険法の適用及び失業保険に関する経過措置) 労災保険及び失業保険の保険料率は、即時本土法適用を前提としているが、沖繩法の保険料率を存続させる措置をすること。 ○第百四十五条(軍関係離職者に関する経過措置) 第四種雇用員中、実質的に第一種、第二種に相当する者、第一種、第二種雇用員のうち間接雇用移行の際間接雇用からもれる者、さらに、民政系VOA、FBIS等の雇用員等についても駐留軍関係離職者等臨時措置法の規定の適用につき第一種及び第二種同様特例を設けること。 ○地方調停委員会及び船員地方労働委員会の設置に関する特例 公共企業体等労働関係法第三十条、第二十五条の規定による「沖繩地方調停委員会及び事務局沖繩支局」並びに、労働組合法第十九条の規定による「沖繩船員地方労働委員会及び事務局」を設置する措置をすること。 ○強権発動の排除に関する特例 沖繩の労働関係調整法第六条では「警察その他政府の機関は、労働関係の調整に対し、強権を発動することはできない」旨の規定があるので、これを存続させる措置をすること。 ○間接雇用に関する特例 沖繩の軍労働者の間接雇用への移行に際しては、次の措置をすること。 (1)本土の間接雇用制度と異なる特別な措置をとらないこと。 (2)労働基本権と制約する形の間接雇用にしないこと。 (3)賃金体形その他必要な制度への移行にあたっては、既得権を保障することとし、いかなる形の不利益も排除すること。特に、賃金表の適用の際は「特別手当」とせず、現給保障をすること。 (4)人員整理をすることなく全員引き継ぐこと。 (5)実質的に第二種の取扱いを受けている被用者は、諸機関労務協約に該当する者とし、さらに現在請負業者のもとにある第四種雇用員についても可能なかぎり、基本労務契約及び諸機関労務協約に該当する者とすること。 ○外国人季節労働者の導入に関する特例 沖繩の基幹産業である糖業、パインアップル産業の合理化が促進されかつ該季節労働者の供給体制が確立されるまでは台湾からの労務者が導入できる特別な措置をすること。 ○外国人技術労働者の導入に関する特例 復帰前に沖繩法によって在留を許可された者は、本土法(入国管理令)によって在留資格が与えられたものとみなし、又その後の措置については後継者の養成訓練に必要な期間(一年乃至三年)在留資格を認める措置をすること。 ○失業保険及び労災保険積立金の処理 失業保険及び労働者災害補償保険の積立金のうち支払準備金等必要な額を除いた分については特に本土との格差の大きい労働福祉施設の拡充等に活用するこによって沖繩の被保険者に還元する措置をすること。 ○休日手当 琉球人被用者に対する労働基準及び労働関係法(千九百五十三年琉球列島米国民政府布令百十六号)第七十九条の規定による休日手当は、復帰後も存続するよう措置をすること。 ○渉外労務管理業務委託に関する特例 復帰の際間接雇用業務の県への委託に当たっては、沖繩の特殊性に充分対処しうる管理機構、組織並びに定員を配置し沖繩県受託者として当該制度の円滑な運用ができるよう特例措置をすること。 (六)沖繩の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案に対する要請 ○農林省設置法の一部改正について (イ)第十七条中「さとうきび原原種農場」を「さとうきび原原種農場パインアップル原原種農場」に改めること。 (ロ)第三二条の二第二項中「鹿児島県」を「鹿児島県及び沖繩県」に改めること。 (ハ)第三二条の二の次に次の一条を加えること。 (パインアップル原原種農場) 第三二条の三、パインアップル原原種農場は、パインアップルの増殖に必要な種苗の生産及び配布を行なう機関とする。 2 パインアップル原原種農場は沖繩におく。 3 パインアップル原原種農場の内部組織については農林省令で定める。 (ニ)第三三条第二項中「宮崎種畜牧場−宮崎県」を「宮崎県種畜牧場−宮崎県/沖繩種畜牧場−沖繩県」に改めること。 (ホ)第八十二条第二項中「遠洋水産研究所−清水市」を「遠洋水産研究所−清水市/南海区水産研究所−那覇市」に改めること。 ○改廃法案第二十二条(法務省設置法の一部改正)中別表十二に次の出張所を加えること。 那覇入国管理事務所 嘉手納空港出張所 嘉手納村 那覇入国管理事務所 金武湾港出張所 与那城村 ○改廃法案第四十七条(国立学校設置法の一部改正)中に次の条を加える。 (イ) 第七条の二中「鹿児島工業高等専門学校−鹿児島県」を「鹿児島県工業高等専門学校−鹿児島県/沖繩工業高等専門学校−沖繩県」に改めること。 (ロ) 第八条中「弓削商船高等学校−愛媛県」を「弓削商船高等学校−愛媛県/沖繩商船高等学校−沖繩県」に改めること。 ○改廃廃法案第六十一条(植物防疫法の一部改正)の第十六条の三中「若しくは有害植物又は土で、」を「又は有害植物で」に改めること。 ○沖繩の共済組合関係法等による既得権及び期待権の措置について (イ)第四十三条中第五十一条の五第二項及び第百五条中第三十二条の三の規定によれば、特別措置法の施行日前に給付が生じたもののうち、退職一時金の支給を受けた者について政令で定めるところにより通算退職年金を支給することになっているが、この場合において、沖繩の共済施行法上認められている通算対象期間を認めるよう措置すること。 (ロ)第四十三条中第五十一条の八第一項及び第二項、並びに第百五条中第百三十二条の七の規定によれば在職期間の組合員、期間への算入及び公務によらない遺族年金の受給資格に係る組合員期間の取扱いについては、施行日に引続いてない期間は給付の基礎期間に算入しないこととしているが、当該期間の給付の基礎期間算入については、沖繩の共済施行法の例による取扱いを認めるよう措置すること。 (ハ)第四十三条中第五十一条の八第六項並びに第九十六条、第二十六条の八第三項及び第四項の規定によれば、既給恩給額の控除方法について支給恩給額の二分の一を控除することになっているが、当該既給恩給額の控除方法については、沖繩の控除方式を認めるよう措置すること。 (ニ)第四十三条中第五十一条の十及び第九十六条中第二十六条の九並びに第百五条中第百三十二条の九の規定によれば、受給資格及び退職年金の額等に関する経過措置については、政令へ委任さているが、沖繩の共済施行法により認められている受給資格及び退職年金の額等については、その既得権及び期待権を認めるよう措置すること。 (ホ)第九十六条中第三十六条の八第一項及び第百五条中第百三十二条の六の規定によれば、長期給付については、新法及びこの法律の規定を適用することになっているが、受給資格及び退職年金等が沖繩の共済施行法の例により取扱われるよう措置すること。 (ヘ)済四十三条中第五十一条の五第一項及び第九十六条中第三十六条の五並びに第百五条中第百三十二条の三の規定によれば、特別措置法の施行日前に給付事由が生じたものについては、なお従前の例により組合が支給することとなっているが、この場合においては沖繩の共済施行法により認められている受給資格及び退職年金等が認められるよう措置すること。 (ト)第百五条中第百四十三条の二十三の規定によれば、市町村関係団体職員共済組合の組合員であった者等の在職期間の取扱いについては、施行日前の何らの制度の適用も受けてなかった期間は、一時金の算定の基礎期間に算入していないが、沖繩の共済施行法の例により当該期間も一時金の算定の基礎期間に算入するよう措置すること。 |