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先住民族の権利に関する国際連合宣言(仮訳) 国連総会第61会期2007年9月13日採択(国連文書A/RES/61/295付属文書) 前 文 総会は、国際連合憲章の目的および原則、ならびに憲章に従い国家が負っている義務の履行における信義誠実に導かれ、 すべての民族が異なることへの権利、自らを異なると考える権利、および異なる者として尊重される権利を有することを承認するとともに、先住民族が他のすべての民族と平等であることを確認し、 すべての民族が、人類の共同遺産を成す文明および文化の多様性ならびに豊かさに貢献することもまた確認し、 国民的出自または人種的、宗教的、民族的ならびに文化的な差異を根拠として民族または個人の優越を基盤としたり、主唱するすべての教義、政策、慣行は、人種差別主義であり、科学的に誤りであり、法的に無効であり、道義的に非難すべきであり、社会的に不正であることをさらに確認し、 先住民族は、自らの権利の行使において、いかなる種類の差別からも自由であるべきことをまた再確認し、 先住民族は、とりわけ、自らの植民地化とその土地、領域および資源の奪取の結果、歴史的な不正義によって苦しみ、したがって特に、自身のニーズ(必要性)と利益に従った発展に対する自らの権利を彼/女らが行使することを妨げられてきたことを懸念し、 先住民族の政治的、経済的および社会的構造と、自らの文化、精神的伝統、歴史および哲学に由来するその生得の権利、特に土地、領域および資源に対する自らの権利を尊重し促進させる緊急の必要性を認識し、 条約や協定、その他の国家との建設的取決めで認められた先住民族の権利を尊重し促進する緊急の必要性をさらに認識し、 先住民族が、政治的、経済的、社会的および文化的向上のために、そしてあらゆる形態の差別と抑圧に、それが起こる至る所で終止符を打つために、自らを組織しつつあるという事実を歓迎し、 先住民族とその土地、領域および資源に影響を及ぼす開発に対する先住民族による統制は、彼/女らが、自らの制度、文化および伝統を維持しかつ強化すること、そして自らの願望とニーズ(必要性)に従った発展を促進することを可能にすると確信し、 先住民族の知識、文化および伝統的慣行の尊重は、持続可能で衡平な発展と環境の適切な管理に寄与することもまた認識し、 先住民族の土地および領域の非軍事化の、世界の諸国と諸民族の間の平和、経済的・社会的進歩と発展、理解、そして友好関係に対する貢献を強調し、 先住民族の家族と共同体が、子どもの権利と両立させつつ、自らの子どもの養育、訓練、教育および福利について共同の責任を有する権利を共に認識し、 国家と先住民族との間の条約、協定および建設的な取決めによって認められている権利は、状況によって、国際的な関心と利益、責任、性質の問題であることを考慮し、 条約や協定、その他の建設的な取決め、ならびにそれらが示す関係は、先住民族と国家の間のより強固なパートナーシップ(対等な立場に基づく協働関係)の基礎であることもまた考慮し、 国際連合憲章、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、そして市民的及び政治的権利に関する国際規約、ならびにウィーン宣言および行動計画が、すべての民族の自己決定の権利ならびにその権利に基づき、彼/女らが自らの政治的地位を自由に決定し、自らの経済的、社会的および文化的発展を自由に追求することの基本的な重要性を確認していることを是認し、 本宣言中のいかなる規定も、どの民族に対しても、国際法に従って行使されるところの、その自己決定の権利を否認するために利用されてはならないことを心に銘記し、 本宣言で先住民族の権利を承認することが、正義と民主主義、人権の尊重、非差別と信義誠実の原則に基づき、国家と先住民族の間の調和的および協力的な関係の向上につながることを確信し、 国家に対し、先住民族に適用される国際法文書の下での、特に人権に関連する文書に関するすべての義務を、関係する民族との協議と協力に従って、遵守しかつ効果的に履行することを奨励し、 国際連合が先住民族の権利の促進と保護において演じるべき重要かつ継続する役割を有することを強調し、 本宣言が、先住民族の権利と自由の承認、促進および保護への、そしてこの分野における国際連合システムの関連する活動を展開するにあたっての、更なる重要な一歩前進であることを信じ、 先住民族である個人は、差別なしに、国際法で認められたすべての人権に対する権利を有すること、およびその民族としての存立や福祉、統合的発展にとって欠かすことのできない集団としての権利を保有していることを認識かつ再確認し、 先住民族の状況が、地域や国によって異なること、ならびに国および地域的な特性の重要性と、多様な歴史的および文化的背景が考慮されるべきであることもまた認識し、 以下の、先住民族の権利に関する国際連合宣言を、パートナーショップ(対等な立場に基づく協働関係)と相互尊重の精神の下で、達成を目指すべき基準として厳粛に宣言する。 |
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【『けーし風』第67号(2010.6.30)からの重引。 元は『市民外交センターブックレット3 アイヌ民族からみた「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の解説と利用法』(権利宣言・市民外交センター仮訳、2008年、市民外交センター刊)より抜粋とのこと】 |
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先住民族の権利に関する国際連合宣言・全文(仮訳)pd版 | ||
「先住民族の権利に関する国連宣言」採択とウチナーンチュ ――先住民族としての琉球人・沖縄人 当真 嗣清 1.国連宣言採択 《国連総会は2007年9月13午後(日本時間14日未明)の本会議で、「先住民族の権利に関する国連宣言」を賛成多数で採択した》。このニュースは、琉球弧の先住民族会(AIPR)の良き理解者であり、友人である国連NGO「市民外交センター」の木村真希子さんから第一報がメールにて私達にもたらされました。続いて「国連先住民10年ニュース」の小林純子さんから日本の各マスコミの国連宣言採択の配信記事が続報として送られました。 この宣言は、民族の自決権や土地・資源の権利、知的財産権などを掲げていることを考えると、世界の先住民族の兄弟たちに新たな希望と目標さらには勇気を与えたと言っても過言ではないと思います。 2.先住民族 琉球・沖縄 かつて琉球王国であった琉球・沖縄は、徳川幕府の命を受けた薩摩藩の侵略そして傀儡化(かいらい)によりその形を変えられてしまいました。その後明治政府の琉球併合により強制的に琉球藩の設置そして廃藩、続く「沖縄県」を押し付けられてきました。琉球、沖縄人の否定、さらには同化政策による日本人化が進められ、それは現在に至るまで続いております。 3.琉球・沖縄の現状 現在の琉球・沖縄が置かれている状況を考えるに、国内法ではとても私たち沖縄人が抱えさせられている問題は解決にほど遠い。それどころか最近の日本政府の琉球・沖縄に対する対応は文部科学省の「高校歴史教科書書き換え問題」に見られるように、むしろ私たちの考えと逆行している様相を呈しております。 4.AIPR 国内の法律や政治の枠内では解決できないことでも国際的な見地から国内問題が解決できないかとの観点から国連の人権機関を活用することを考え、自己決定権の回復を目指す活動をし、行動する団体として「琉球弧の先住民族会」(AIPR=the Association of the Indigenous Peopeles in the Ryukyus)は設立されました。AIPRの活動は沖縄の諸問題を先住民族の概念を元に、人権的視点と国際法的視点を手段に、国連の場を通して沖縄を広く世界にアッピールしてきました。 5.WGIPとは? 国連総会の下に「経済社会理事会」があり、その下に「人権委員会」が置かれております。私達が参加している国連の会議はさらにその下の「人権促進保障小委員会」そしてその下に置かれた「先住民作業部会」(国連WGIP)で、過去10年にわたり代表を送り続けております。この会議は毎年夏にスイスの国連欧州本部で開催されますが、残念ながら2007年は開かれませんでした。(WGIP=Working Group on Indigenous Populations) 6.AIRPの活動1 琉球・沖縄からは1996年に国連NGOである市民外交センターの支援を得て松島泰勝さんがウチナーンチュとして最初に先住民作業部会に参加し、日本政府による琉球・沖縄に対する歴史的な差別政策を発表しました。翌年AIPRの初代代表である知念秀記さんが国連WGIPにおいてウチナーグチで第一声を発し、堂々と意見を発表して10年になります。その後、ウチナーンチュは途切れることなくWGIPに参加をしてまいりました。私たちが意見を述べる場としてのWGIP、は昨年の国連人権機構の改編によって今後の開催が危ぶまれておりました 7.WGIP再開へ 国連総会の本会議で、「先住民族の権利に関する国連宣言」を採択した同じ時期に、ジュネーブの国際会議に参加していた市民外交センター代表の上村英明さんから、今後WGIPがより強化された形で再開される見通しがたったとの朗報が国際電話にてもたらされました。 8.AIRPの活動2 国連にはたくさんの条約委員会や条約監視機関があり、私達AIPRはそれらの機関にも意見や声明を送る努力しております。今までに「人種差別撤廃委員会」や「こどもの権利委員会」にレポートを送付し、現在は「自由権規約委員会に」先住民族として琉球・沖縄から声明を送る準備をしております。 9.宣言採択とWPIG再開の意義 国連総会の本会議で、「先住民族の権利に関する国連宣言」を採択したこと、国連WGIPが再開されることは私たちの活動にさらに弾みをつけ、そして勇気をも与えるものとなりました。 今回の朗報は私達AIPRにとってダブルの喜びであり、琉球・沖縄の地に暁光がさした思いさえ致します。 10.旧土人保護法? 今どき? つい最近まで日本の法律に「北海道旧土人保護法(1899年(明治32年)3月1日法律第27号)」がありました。この法律は1997年(平成9年)7月1日廃止されました。そのかわり「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律=アイヌ文化振興法(1997年(平成9年))第52号」が施行されました。同時に、「旭川市旧土人保護地処分法(1934年(昭和9年)法律第9号)も廃止されました。なぜ百年もの間、旧土人と名のつく法律が近代国家日本の中で放置されていたのか、なぜ1997年に廃止されたのか一考に値すると思慮します。 11.アイヌ民族に学ぶ 財団法人アジア・太平洋人権情報センターのHP上で新聞記者の田中洋一さんはアイヌと国連について次のように述べています。《独自の文化を持つ民族集団に同化政策を強いてきた歴史と責任を政府に認めさせ、その補償として先住権を主張する。具体的には(1)基本的人権(2)民族議席(3)教育・文化振興(4)産業経済の安定(5)民族自立化基金(6)民族政策の審議機関−が柱だ。道知事・道議会・ウタリ協会が「アイヌ新法」制定を政府に要望したのが88年。民族議席以外の5本柱はそのまま残した。萱野茂さんが社会党(当時)から参議院議員に繰り上げ当選し、村山連立政権が発足した94年に盛り上がる。国連が93年を国際先住民年と定めたことも後押しした。 コロンブスのアメリカ到達で中南米の先住民族が一方的に支配に組み込まれてから500年間の苦難の歴史を背景に、世界の先住民族は復権を強めた。アイヌ民族もその一員として、民族の要求を打ち出すようになった。国連はさらに本2004年までを「世界の先住民の国際10年」と定め、「先住民族の権利宣言」の起草作業を進めるが、自決権や土地権といった権利に米豪など政府が反発している。》(2004年7月) 12.国連の活用 アイヌ民族は1987年、初めてスイスジュネーブの第5回WGIPに参加、それ以後毎年参加を継続させ、そして、積極的に発言、行動してきました。国連から日本政府への勧告が「北海道旧土人保護法」を廃止させ、「アイヌ新法」制定を政府に要望した結果、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(アイヌ文化振興法)」が1997年に制定されたことは間違いのない事実であろう。アイヌ民族が国連の場において自分たちの虐げられた立場を訴え続けた成果であるとも言えます。 13.先住民族の定義――「ILO169号条約」 国連の推計では、世界中に現存する先住民族は、言語や文化的差異、あるいは地理的分離によって少なくとも5,000のグループがあり、その人口は約3億人、70ヶ国以上の国々に住んでおります。先住民族問題に関する最も新しい人権基準である「ILO169号条約」は、現在唯一具体的に先住民族の適用範囲と権利を明記した国際条約です。 近代国家が「国民形成」の名のもとで、「野蛮・未開」と見なして、そこの民族と土地を一方的に奪ってこれを併合し、その民族の存在や文化を無視あるいは軽視し、否定することで、さまざまな形の「同化主義」を手段としてその集団を植民地支配した結果生じた人々が「先住民族」と呼ばれる民族的集団であると定義しています。どの民族が先に住んでいたのかという「先住(indigenousnees)」は「先住民族」の資格要件の一つにすぎず、先住か、後住か、ということが問題ではなく、植民地支配や同化政策が行なわれていたか、が重要であると考えられています。 14.AIRP、これから 今後もこれまでに増して私たちAIPRは「国連憲章」、「世界人権宣言」そして「先住民族の権利に関する国連宣言」の精神に従い、琉球・沖縄の人々が自らの事について琉球・沖縄の人々で意志決定を行う自己決定権の回復を目指す活動に邁進してまいります。私たちがウチナーンチュである事をさらに声を大にして日本の内外に主張していきたいと思います。(琉球弧の先住民族〔AIPR〕代表) |
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(『けーし風』第67号2010.6.30) |
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