第168回　ゆびきり

はじめに

　今が多分1年で一番寒い季節なんですが、そういうときには、どこか暖かさが感じられるような曲が心地よく聞こえてくるものじゃないでしょうか。まーちゃんで言ったら、「caress」であり、あるいはミニアルバムの「23degrees。」や「プレゼント」に収録された曲なんかがそこに当てはまるでしょうか。
　今回は、その中から「ゆびきり」について、思ったことをいくつか書いてみようかな…と思っています。

支えるか縛るか

　この曲の冒頭では、約束を交わすことで迷いを払拭しています。逆に言えば、迷っている何かがあるから、約束を交わすことで気持ちを強く持とうとしているとも言えるでしょうか。だからかどうか、曲を聴いているとかすかに切なさも感じるようにも思えます。で、その辺のかすかに感じる切なさがより前面に出ているような気がするのは「いまここで」になりますか。「ゆびきり」の場合は約束を交わした直後ですが、「いまここで」はまさに約束しようとしている瞬間ですから、より内面の不安などが感じ取れるシチュエーションになっているんじゃないか、と。
　その不安がどこから来るか…って言ったら、たぶん先のことは誰にも分からないからってところになるんでしょうね。Aice⁵の「約束〜I will stand by you〜」は、曲が発表された順としても、ライブでの使い方としても、Aice⁵の最後の締めくくりという位置の曲になりますが、そこで「また逢おうね」って言っているのは、Aice⁵は解散ということになって、この先どんな形になるのかは分からないけど、それでもメンバー同士、あるいはメンバーと聴く側がずっと何らかの形でつながっていけるように、何かをきちんと胸に刻んでおこうってことでしょうし。まぁ、曲自体の感じはあくまでも笑顔で明るく別れようねって印象ですけどね。
　で、そうして交わされた約束は、気持ちを強くするものである一方で、時に気持ちを縛るものにもなりかねない面もはらんでいますか。そして、その約束を果たそうとするところから動けなくなる…と。ゲーム「ONE〜輝く季節へ〜」で澪や七瀬のルートをやっているとその辺がかなり切ないんですね。まぁ、最終的には幸せになりますけど。あるいは、「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール」の来栖とまりのキャラクターソング「半分」だと、小さな頃の約束を思い出にできないでいる彼女の切なさも描かれています。作中でははずむとの最後のデートのシーンの挿入歌にもなってますが、そこで聴くと余計に胸が痛いですね。
　だから、どうやって約束に縛られずに、気持ちを強くするものとしていくか…ってのは考えていないといけないことなのかもしれませんね。でないと、動ける範囲がどうしても狭くなりますし。

まーちゃんからの約束

　さて、「ゆびきり」はまーちゃんの2本目のベストアルバム「BESTrawberry」の最後の曲にもなっています。そして、1本目のベストである「berry best」の時は「優しい約束〜TO MY FRIEND〜」を一番最後に使ってきてたわけで。節目になるベストアルバムの最後のところで、こうした曲を使ってくるところにまーちゃんの考えっていうか、見えてくるようにも感じます。
　まーちゃんはブログなんかでけっこう「みんながいるから」ってことを言ってますし、そうしてくれてるみんなに何かをってことも言ってます。そうしたつながりを大事にして、ずっと持っていきたいっていうのがまーちゃんの根元にある気持ちなんでしょうね。それをファンサイドも感じるから、この間の大阪ライブの終演後の「またね。」のファンのコーラスみたいなことにもなるんでしょうか?
　話がちょっとそれましたが（苦笑）、まーちゃんとしては、こうした曲をこうした場面で持ってくることで、ひとつちゃんとした形でみんなにこれからも歩いていくこと、みんなに何かを伝えていくことの約束をしたいんじゃないか、と思います。そして、それを聴いた人が「まーちゃんはこれからもしっかり歩いていける」って思えれば、そして、そう感じたことが伝われば、それがまたまーちゃんの力になるんではないでしょうか。

最後に

　とまぁ、季節には関係なしのことにはなりましたが、「ゆびきり」について思ったことを2点書いてみました。今回は約束するときのことを書きましたが、以前「またね。」について書いたとき（第73回）、それを果たしたときのことを書いているので、よければそちらも…ですかね。
　その両面があるから、約束を交わすことの意味が出てくるんでしょうか。

　さて、次回は「Dear」を聴いてみて、何か思いついたことを書いてみたいと思います。正直、フィーリングだけで決定してますけどね（笑）。けっこういつものことなので、それでもいいでしょうか。