第9回カモシカマラソン
      
【奥武蔵野の名峰と比企の山里巡り】


 “ちっち”からカモシカマラソンに参加するためには、山岳コースを含むため2人1組が参加資格となるので、一緒に走らないかと頼まれました。カモシカのコースは例年厳しいことで知られていますので余り気が進みませんでしたが、まあいいかと申し込んでしまいました。
 カモシカマラソンは@コースの全長が75km以上であること。Aコース上に山岳区間(登山道)が含まれていること。B競技時間が夜間に及ぶこと、の条件を全て満たさなければならないとのことです。
 昨年は小田原をスタートして、鍋割山、塔の岳等の丹沢の山々を経て、川越まででしたがリタイアする者が続出したと聞いていました。
 今回も飯能をスタートして、高水三山、棒の峰、日向沢の峰、武甲山等の山々を巡り、定峰峠を経て川越まで114kmのコースでしたが、制限時間の24時間では何とかなると思っていましたが、想像以上に厳しいコースでした。 

 今回は27組55人が参加しました。本来は飯能駅前午前6時スタートですが、山岳コースがあるため、日没までに山を下りたいと希望した4チーム8名が午前5時スタートを認められました。しかし、ゴール時間は24時間以内ですので翌日の午前5時となります。

 私たちのチームも午前5時にスタートし県道70号線を小沢峠に向かって上っていきました。飯能駅前(標高106m)、小沢峠(405m)、そしてここから少し下り、第1CPの高水山登山口(350m)はスタートから17.5kmとなります。この地点まで時速8kmとのんびり来たつもりでしたが他のチームはもう見えませんでした。
 高水山は標高759mで不動尊がありました。ここから岩茸石山793mに向かいましたが、高水三山の一つ惣岳山756mは今回のコースから外れたのは幸運でした。惣岳山を往復すると1時間は必要ですので時間内完走は難しかったと思います。
 途中、アジサイの子分のような花が登山道脇に数多く咲いており、白から青紫に変化していくようでした。後程、スタッフをされている植物に詳しいS島氏に聞くとコアジサイでした。
 また、高水山に登る木の階段に白い物が顔をニョキっと出していましたが、ギンリョウソウでユウレイダケともいいますが、なかなかお目にかかれないものです。
 その他、アカショウマが白い花を咲かせ、サラサドウダンの赤い花びらが地面にいっぱい散っていました。

 そうこうしていると後方から人の気配がし、午前6時にスタートしたトップチームが僅か2時間26分で追いついてきました。その1人は今年の萩往還でも優勝したO野木氏とF島氏のチームでした。その後の後続チームに追いつかれるには2時間以上ありました。
 黒山(842m)を経て、棒の峰(969m)25kmに達するころには4〜5組の後発チームに抜かれましたが、時間内完走が目標ですから、焦らず急がず苦しまず、写真を撮ったり、景色を眺めたり、日向沢の峰(1356m)を右に折れ第2CPに向かいました。
 日向沢の峰では丁度スタッフの方もいたし、“ちっち”が走友数人と山岳地帯を下見していましたので道に迷うことはありませんでしたが、2チームほどが直進し蕎麦粒山(1472m)に向かったとのことでした。肝心なところで地図を見なかったのでこれは自業自得と言われても仕方ないでしょう。しかし、間違った者も楽しそうにそのことを話していました。
    
 第2CP逆川林道交差地点32.4kmで12時05分でした。ここではS島氏が冷やしそうめんを作って待っていてくれました。ジョイナーとアキラのチームがやってきましたが、アキラは継母のジョイナーのシゴキに息も絶え絶えでした。それでも彼女が「行くよ!アキラ!」と言うと、「ママ〜 待って!」と、あたふたと後を追い駆けていきました。
 第2CPからはとタタラの頭(1213m)、有馬山(998m)、鳥首峠を越え大持山(1294m)まではわずか8kmほどしかありませんが、その長かったこと、アップダウンの連続で余りも長い急な上りは上方を見ないで、ただひたすら足下を見て1歩1歩上っていきましたが、下りは靴の中で足が滑りそうなほど急でこれまた踏ん張りながら下りました。

 また、どの辺りか定かではありませんでしたが、は〜さんとK本さんのチームが追い越していきました。K本さんは明日仕事があるので、遅刻しないようにゴールしなければならないと、物凄い勢いで行きましたが、は〜さんは「参ったよ!」と一言残して去っていきました。
 最近の女性は強いと言うよりも恐いですね〜。


 小持山(1273m)からは武甲山(1304m)が威容を誇っているのが見え、また、この近くでは写真のようなブナの巨木が苔むしてその存在感を示していました。
 第3CP武甲山42.5kmには16:06に、後は下りで第4CP橋立堂前47.3kmには17:27に着き、第5CPの大野原交差点55.5kmには18:50に着きましたから、残り59kmを10時間でカバーすれば時間内完走ですから何とかなりそうだとこの時点でそう思いました。
 しかし、第6CP定峰峠65.4mには上りのため20:52と、第7CP道の駅86.8kmには翌日の24:37になり、残り27km4時間30分は疲労が重なり少し苦しくなってきました。その後も距離は伸びず、“ちっち”も無理だと言うし、コンビニに入りビールを呑んでいるうちに彼女は相当前に進んでいました。これならなんとかなるし、諦めるにはまだ早い。

 残り10km“ちっち”は自分のリュックを私に託し、最後の走りを見せました。頭の中で分刻みで計算しながら残り2km、1km、500m、神明の交差点を左折、目の前にゴールがありました。
 制限時間の僅か4分前の午前4時56分、23時間56分でした。(了)