まずは、ウィーンフィルのホームページにある説明の一部訳です。
ウィーンの木管金管楽器と他のオーケストラの木管金管楽器とは著しい違いがある。クラリネットは運指もマウスピースも異なり(リードも当然)、 ファゴットは楽器自体は同じでも運指とリードが異なる。フルートは通常のベーム式だが、1920年までは木製のフルートであった。ウィーンではヴィブラートを節制している。ヴィブラートは全ての音符を美しくするために常用するのではなく、むしろ装飾法の一つであって、もっぱら弦楽器に譲っている。現に世界中のソロ奏者がウィーン古典音楽の演奏に際してはヴィブラートを行わない傾向にある。逆にウィーンフィルはヴィブラートが演奏上必要な要素として作曲された曲では、ヴィブラートをかける。
ウィーンの楽器で他の地域の楽器ともっとも異なるのはウィーン式ホルン(F管)とオーボエである。ホルンは狭い内径を持ち、延長管とポンプバルブシステムを有する。このシステムの利点は個々の音符が鋭く切れることがなく、スムーズにつなげられることになる。ホルンの材質も普通のものより固い材料からできている。オーボエは独特の内径で、独特のリードと運指を用いる。フルートとファゴット以外のウィーン式楽器は次のように特徴的な音質を持つ。
- 音の一つ一つが豊かで、はっきりしている
- ダイナミックレンジが広く、大きな音と小さな音との差が大きい。
- 演奏者によって音のイメージ・カラーが自在に変えられる。
次にアンソニー・ベインズ著「木管楽器とその歴史」(音楽の友社)からの引用
古典音楽の聖地ウィーンでも、オーストリア型として旧式なオーボエがフランス型の挑戦に耐えてきている。国立音楽院の前教授ヴンデラー(Alexander Wunderer)氏は「これは当然のことだ」と主張している。外形すら昔さながらであるということは、標準ツーレーガー(Zuleger)型を一見すれば明らかであろう。球根型の頭部管は彼らに言わせると、オクターヴ・キーに水がたまりにくくするするそうである。また本当に鐘の形をした内側に凸縁のあるベルやら、頭部管との接合部でフランス管よりは太く、ベルの接合部では逆に1ミリほど狭い剣型の内管も、特徴である。ウィーン式奏法はドイツの流儀に近似しているが、独特の軽快できらびやかな色合いを持っている。現代最高の木管奏者であり、ウィーンフィルハーモニー首席奏者(1955年時点)であるハンス・カーメシュに従って、ウィーン式の奏者たちは、幅はフランス式より広くはないが、厚くガウジングしてあり、根元近くまでスクレープしてあるリードを用いる【註:この部分は必ずしも正しくはない⇒3.リードの計測図解と8参照、】。しばらく、いわゆる西欧的なオーボエ奏法というものを頭から取り除いて、カーメシュがツーレーガー型のオーボエで奏するモーツァルトのオーボエ四重奏曲【出だし、エンディングの高音F】やフルトヴェングラー指揮のもとで彼が吹いた「13楽器のためのセレナーデ」を聴くのは非常に興奮を覚える経験である。
テクニックに関して、フランス式もドイツ式も選ぶところは多くなく、両楽器ともに最高のGまで上手に奏せる。ロッシーニの「絹のはしご」序曲の難しいソロはどちらの楽器でも第一人者が吹けば、華やかに奏せるものである。しかし長い目で見ればフランス式の方に多分技術的な柔軟性があるだろう。
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(左)楽器の写真、左からツーレーガー・アシノ・モデル、ヤマハYOB804H二本、YOB805。Alexander Wunderer(右) |
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上の写真の各楽器の所有者達 | |||
表を見るだけでは判りにくいが、もっともフランス式と異なるのはa"から上の出し方である。
また誤解されやすいのは、Fキーを左手小指で押すのが第一で、替え指が右手薬指であり、フォーク指使いである。
C"'はものすごくたくさんあるが、何の倍音系列から出してくるかに依存するので、音程が微妙に異なり、通気具合も異なる。要するに、 ウィーン式では高い音でも長い気柱長を好んで選ぶのだ。それを可能にするのは倍音が強く含まれているという特徴だ。事実コルグの古いチューナーに向かって442HzのつもりでA'を出すと、高性能クロマチックオートチューナーなので、自動的に反応してe'''のランプが点灯してしまう。3倍音である。なので、まだ初心者の頃にあるベテランコンマスから、「何の音だしてるの?」とショッキングな質問を真顔でされ、驚いた。ものすごく明るい音色で、オモチャのラッパみたいな音になりがちなのだ。昨今好まれるダークな透明感のあるオーボエとは真逆である。宮本文昭著「オーボエとの時間」の中では「地を這うような」音色と表現されている。倍音系列が異なれば、ピッチの違いが生じるが、音色を選べると考えれば、長所とも言える。では次節で音wieneroboe2色について調べてみよう。
外観はバロックオーボエと同様の頭部管の上部の球根状のふくらみに目が止まる。この部分の外径は最大35mmであるが内径は5mmくらいしかない。つまり木の厚みが最大になっている。もっと言えば振動しにくいはずである。この部分に第2オクターブホールがあり、シュライフ・キーと呼ばれるキーで開閉される。通常は、上記ベインズの説明のように、シュライフ・キーは用いないで、クロスフィンガリングで難しいけれども、3倍音を用いる。
外観としてフランス式というか一般的にはコンセルバトワール式をご存知なら、連結キーの少なさ、ベルの急な開き、楽器の全長の短さも気付くだろう。
連結キーが少ないと、木材の中を伝わる振動を損なわない。バロックオーボエのような響きが残る。
ベルも木材の厚みが増える箇所がある。ベルの内側にも出口5ミリ手前に深い溝が一周ほどこされている。
伝統的には最低音がHなので全長は短い。その半音下のBを出せるような長いベルの開発が近年成功し(多分Rauch氏)、Karl RADO社はそのオプションを含めてウィーン式オーボエを製作している。