箱根路を行く(1989年)
よこ
夏休みのある1日。東海道本線の小田原駅から3,500円(消費税別)もする「箱根フリーパス」なるものを利用して、家族で箱根へと向かった。
小田原から利用した箱根登山鉄道に乗るのは、オギャーと生まれてから今日に至るまで初めての経験である。短い編成で箱根路へ向かう列車は、どことなく小生の田舎である鹿児島を走る指宿枕崎線を連想させる。
途中で何気なく線路を眺めると、幅の広い線路と狭い線路が並んでいた。小田原から箱根湯本までは、箱根登山鉄道に小田急電鉄が乗り入れている。ところが箱根登山鉄道と小田急電鉄では線路の幅が異なるため、幅の広い線路と狭い線路が必要になるのだ。
沿線には季節外れの紫陽花がとてもきれいに咲いている。しかし、紫陽花よりも小生の興味を惹いたのは、スイッチバックであった。噂には聞いていたが、急勾配を登るために、列車が進行方向を変えて、行ったり来たりしながら箱根の山を登っていく様子には感動した。
終点の強羅からはケーブルカーに乗り継ぐ。一般の乗客はケーブルカーの乗車券を購入するが、「箱根フリーパス」の威力を発揮して、そのままケーブルカーに乗り込む。その都度乗車券を購入する手間を省けるのが「フリーパス」の強みである。
ケーブルカーの次はロープウェイとなる。箱根は乗り物のパラダイスだ。ロープウェイに乗車するのも、幼稚園のとき以来となるので、年甲斐もなくはしゃいでしまった。
途中で大涌谷に立ち寄り、昼食をとる。ここで一言、絶対にロープウェイ発着所に併設されたレストランで食事をしない方がいい。小生は「ハンバーグ定食」を注文したが、接客態度は悪い。水は温い。案の定、飯もまずい。これが1,000円も払って食べる定食かと言いたくなる。これならば、近所の肉屋で売っている25円のコロッケを食べた方がマシである。観光地のレストランはこんなものなのだろうか。今でも損した気分である。
芦ノ湖では遊覧船「バイキング号」に乗船した。グリーン船室を奮発し、リッチで優雅な気分で過ごす。
最後はバス。途中で甘酒茶屋に立ち寄り、かき氷と安部川餅を胃袋に収める。再びバスに乗り、小田原駅に到着すると、箱根路の旅は終わった。小田原からは、ポップコーンをついばみながら、帰路につく。日帰りではあったが、何はともあれ、楽しい夏休みの1日であった。
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