住まいの絵本の魅力 第23回

ぼくのこえがきこえますか


 作:田島 征三

 出版社:童心社

人々は何時から何故、戦いを始めたのか?         ただ叫ぶだけ
みんなが戦えと言うので、「ぼく」は戦争に行った
敵を殺せと言われて「ぼく」は鉄砲を撃った
敵の弾がまっすぐ飛んできて、「ぼく」は死んだ
あ、ぼくのために「弟」が戦いに行く
だめだ、「ママ」が一人ぼっちになっちゃう
敵も味方も死んで上がって来る、「ぼく」の方に
戦ってはいけない
「ぼく」のこえきこえますか
         (ぼくのこえがきこえますか 田島征三 2012年 童心社)
この絵本のすべては、声にならない孤独な「ぼく」のモノローグである。
すべての出来事が、勝手にぼくに向かってくる。
いくら叫んでも声にならない、聞こえないのか。
人々は何時から何故、戦いを始めたのか?         ただ讃えるだけ
ホメロスの「イリアス」と「オデュセイア」には、ヘレナを奪われたアカイアのアキレス達がトロイアに攻め込んだ、紀元前850年頃の戦いが格調高い英雄達の叙事詩に描かれて、西欧文明へ、世界へ、そして近現代へと伝えられてきた。
人々は何時から何故、戦いを始めたのか?         ただ富を求めるだけ
縄文人は弓矢で獲物を捕らえたけれど、それを人に向けることはなく、人を殺害する武器として用いたのは、食物や富を蓄え、奪い合うようになった弥生人と考えられている。
古代から近現代に至るまで、世の中の変化はほとんどが戦いと共にやってきた。
人々は何時から何故、戦いを始めたのか?         ただ死傷者が増えるだけ
近現代の戦争の死傷者は、大量破壊兵器により、都市を巻き込む総力戦となった。
         第1次世界大戦    1,500万人以上
         日中戦争と中国内戦  3,000万人以上
         第2次世界大戦    7,000万人以上
人々は何時から何故、戦いを始めたのか?         ただ風が吹いているだけ
How many roads must a man walk down Before you call him a man?
How many seas must a white dove sail Before she sleeps in the sand?
Yes, and how many times must the cannonballs fly Before they’re forever banned?
The answer, my fried, is blowin’ in the wind.
The answer is blowin’ in the wind.
         (Blowin' In The Wind 2016年ノーベル文学賞 Bob Dylan)

(川島 平七郎 記)

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