コンセプトメッセージ

特定非営利活動法人 子どもと住文化研究センターの設立にあたって

理事長近影
理事長 北浦かほる

「住まいの絵本館」の役割

 建築生産や設備・材料の技術革新に伴う住文化の崩壊や、国際化の進展に伴う価値観の多様化によって、子ども達への住教育や、幼い頃から様々な優れた文化に触れて育つことの意味が重要になっています。

 子どもと文化をつなぐ枠組みとして養育者の信条や心理、子育ての習慣、子どもの生活する家や建物など物理的・社会的環境があります。「住まいの絵本」もその一つです。「住まいの絵本」は多様な暮らし方や住まいの成り立ち、住の思潮、国や時代による住まいの意味や違いなどを、子どものみならず大人にも魅力的に易しく語りかけています。

 私たちはこれまで子どもと住まいや住環境についての研究を多面的に行い、発信してきました。特に、欧米との比較文化的視点での住まいの絵本研究では、暮らしの基盤にある住文化の豊かさや楽しさ、文化に秘められている住まいの意味など把握でき、興味をかき立てられてきました。他方、現実の暮らしの場面では、こうした住文化の豊かさを活用していないばかりか、自国の住文化さえ充分理解できていない状況があります。

 そこで、必要な住情報を選択する能力を育むためにも、「住まいの絵本」による住文化の学習や研究とその普及を目指して「特定非営利活動法人 子どもと住文化研究センター」を設立しました。

 「住まいの絵本館」はその活動拠点であり、既に約1600冊の住まいの絵本を所蔵しています。

 一般の大人や子ども達が広く世界の様々な国の住文化を知ることによって、子ども達が更に豊かな住生活を享受する力を身につけるようになり、次世代における住文化の育成と発展に寄与していきたいと考えています。

北浦かほる プロフィール
大阪市立大学家政学部住居学科卒業後、倉敷建築研究所に勤務。
その後、大阪市立大学大学院勤務を経て、2004年4月から大阪市立大学名誉教授。
日本インテリア学会副会長を歴任。学術博士。
専門分野は居住空間デザイン学と環境心理学。
空間が人に与える影響、特に幼い子どものための空間に興味を持ち、遊びや生活環境調査、文化比較研究、空間認知実験などを数多く実施。
日本と欧米の夜間保育園の研究から、「子ども用デザイン」の差異が各国の子ども観のレベルを表していることに注目。
最近では、「住まいの絵本」に注目し、日欧米の住の思潮の文化比較を実施している。
主な著書
・「世界の子ども部屋−子どもの自立と空間の役割」(井上書房)
・「子ども室の日米比較研究(1)(2)」(住総研)
・「子ども室の日米比較研究(1)(2)」(住総研)
・「インテリアの発想」(彰国社)
・「台所空間学事典-女たちが手にしてきた台所とそのゆくえ」共著(彰国社)
・「インテリアの地震対策」(リバティ書)
・「住まいの事典」編著(朝倉書店)
・建築人間工学事典編著(彰国社)