住まいの絵本の魅力 第19回

ルリユールおじさん


 作:いせ ひでこ

 出版社:理論社

 パリのある朝 女の子の大切な植物図鑑がバラバラになってしまいます。
 新しい植物図鑑はたくさん売られていても女の子にとってこの本が大事でした。
 この本を直したい。
 女の子は一生懸命直してくれるところを探します。
 ルリユールのところへ行ってごらんと教えられます。
 ルリユールって本のお医者さんみたいな人のこと?

 ルリユールおじさんに直してもらうことになりました。
 「こんなになるまで、よく読んだねえ。ようしなんとかしてあげよう。」
 「この表紙はじゅうぶんにはたらいたねえ、あたらしくつくろう。」

 この絵本は4人の魅力的なこころの機微で出来ています。
 共通点は自分の大事なものに誇りを持ち、手に入れるためには諦めることなく努力を惜しみません。
 そしてその大事なことが、次の世代、文化へとつながっていきます。
 温かで、細やかな描写と、製本技術の親切な説明も見逃せません。

  • 1人目:女の子…
     ルリユールおじさんの直してくれた本は、二度とこわれることはありませんでした。
     そして女の子は 植物学の研究者になりました。
  • 2人目:ルリユールおじさん…
     フランスの最期の強烈な矜持(誇り)と情熱を持ったアルチザン(手職人)です。
     父の手仕事を見て育ちました。 「父さんの手は魔法の手だね」
     わたしも魔法の手をもてただろうか。
  • 3人目:ルリユールおじさんの父…
     父はいつも言っていた。「ぼうず、あの木のようにおおきくなれ」
     名を残さなくていい。「ぼうず、いい手をもて」
  • 4人目:この絵本の作者…
     旅の途上の独りの絵かきを強く惹きつけたのはアルチザンの矜持と情熱でした。
     手仕事のひとつひとつをスケッチしたくて、パリにアパートを借り、何度も路地裏の工房に通いました。 そしてこの絵本が生まれました。

 作者は伝えます;
 書物という文化を未来に向けてつなげようとするルリユール(製本)技術。
 そして気づかされます。
 本は時代を超えてそのいのちが何度でもよみがえるものだと。

 …その本は読む人の心をとらえ、また新たな展開を生み出していきます。

(山本 堯子 記)

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