住まいの絵本の魅力 第18回

はちうえはぼくにまかせて


 作:ジーン・ジオン
 絵:マーガレット・ブロイ・グレアム
 訳:森 比左志

 出版社:ペンギン社

 夏休みには、バカンスにどれくらいの休暇をとりますか?この本が書かれたアメリカでは、多くの人たちが長期のバカンス旅行に出かけますよね。
 しかし、もしあなたが長期の旅行を計画したとすると、一緒に暮らすペットや植物のことが心配ですね。アメリカ人もそこは同じです。ペットは連れて行けますが、観葉植物の世話は出来ません。(自動灌水装置などを使えば出来そうですが)
 さて、このお話では、都合でバカンスに行けない家の子どもが、その生活者ニーズに着眼して、ビジネスを立ち上げるのです。現代なら自動灌水装置が手軽に購入できますが時代は1950年代のことです。主人公のトミーの家がある住宅地では、多くの人たちがバカンスに出かけるので、みんなの家の鉢植えを、一つ2セント/日で、旅行期間に預かることを考えついたわけです。
 たくさんのお客様から預かった鉢植えで家中がジャングルのようになり、両親には不評ですが、トミーは植物の特徴を知っていて、日当たりや水の量を調整したりと、毎日植物の世話をしています。しかし植物がどんどん育って大きくなり、とうとう家が壊れていきます。そこでトミーは図書館でさらに調べて、植物を刈り込んでちょうどいいサイズに手入れしていき、刈った枝を刺して、新しい鉢植えを作ることを覚えたのです。これはビジネスでいれば、カイゼンモデルです。
 一家はジャングルの中で食事をしたり、テレビを見たり、お風呂に入ったりして夏休みを過ごします。バカンスが終わりを迎え、ようやく一つずつ返却して元の生活に戻りますが、不評だった両親の気持ちに変化が…
 緑には、人を心地よくする力があるのでしょう。緑がいっぱいの空間で元気が出たり、木の香りやマイナスイオン、緑色の効果など、生理的・心理的な効果を対象にした研究報告はたくさんあります。
 そしてトミーにとっては、鉢植え100個を30日預かると、60ドル(今なら7000円、'50年代だと21,600円)の売り上げです。金額はともかく、汗をかいて実収入を得ることの経験価値が将来につながります。
 「ビジネスアイデア・ハッカソン小学生の部」の、最優秀賞を差し上げましょう。

(中村 孝之 記)

他の回は<こちら>から