住まいの絵本の魅力 第16回

うちってやっぱりなんかへん?


 作:トーリル・コーヴェ
 訳:青木 順子

 出版社:偕成社

 今回の絵本の魅力は、1960年代のフィンランドを舞台にした絵本を紹介します。建築家の少し変わった両親に育てられる3姉妹の物語です。
 主人公の〈私〉は3姉妹の次女で7歳。お隣に住む〈ベネディクテ〉とは親友です。
 でも2人のうちは対照的です。
 お隣はパパが働きママは専業主婦なのに、うちはパパとママは共働き。
 お隣のリビングの家具はふかふかソファなのに、うちのイスは3本脚でこけそうになる変な椅子。〈ベネディクテ〉のワンピースはレースやリボンがついていてかわいいけど、〈私〉のワンピースは変わった生地のママの手作り。
 「普通」に憧れる〈私〉は〈ベネディクテ〉がちょっとうらやましい。
 そんな主人公ら3姉妹は自転車を買ってほしいと両親にお願いしています。そしてパパとママが用意してくれたのが、イギリスから取り寄せてくれたモールトン社の自転車。欲しかった自転車とはちょっと違う変わった自転車だけど、3姉妹はその良さに気が付くのです。

 主人公の〈私は〉は、実はこの物語の作者です。のちに作者は「あのへんてこりんな自転車が、私のターニングポイントかもしれません。変わったものでもかまわない、他人がどう思うかなど気にしなくてよいと思えるようになったのです。」と語っています。この物語からは、周りとは違っていても自分の価値観を持って生きることの素晴らしさが伝わってきます。

 1960年代の日本の生活と比較しながら眺めても、いろいろな発見ができるかもしれません。また、フリッツハンセンのイスやルイスポールセンの照明器具、マリメッコのファブリックなど今なお斬新なデザインの北欧インテリアも楽しめる絵本です。

(飛田 優子 記)

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