住まいの絵本の魅力 第14回

あそびにきてね


 文:バーナード・ロッジ
 絵:モーリーン・ロッフィ
 訳:前沢 明枝

 出版社:文化出版局

 クリスマスプレゼントやお年玉を考える季節。カタログやチラシでは、ゲームソフトやプラモデルと並んで、「○○ちゃんのおうち」や「□□のお部屋」セットも根強くあります。私の子どもの頃は空き箱や家具、端切れを利用して色々なお部屋を作りましたが…。お部屋づくりの楽しさは、誰がどんな暮らしをするのかいろいろ想像できること。この絵本はどんな人がどんな暮らしをしているのかがわかる仕掛け絵本です。
 今日は引越し。双子の女の子は新しい街の新しい家にドキドキ。この街にはどんな人が住んでいるのでしょう? この街には2階建てに、地下室や屋根裏部屋のついた12軒の家が並んでいます。同じような家だけれど、住んでいる人は色々、子どもからお年寄りと年齢も違えば、夜に仕事をするおまわりさんもいます。ペットだって、犬もいればハツカネズミだっているのです。絵本の間の小さなページを開くと断面図が表れ、どんな人がどの部屋で何をしているか一目瞭然。地下室一つとっても、物置になっている家もあれば、キッチンや洗濯室、子どもの遊び場…といろいろ。その家族ならではの使い方なのでしょう。一軒一軒にも物語がありそうですが、よく見てゆくと、4番のダン君と9番のアマンダさんはラブラブだし、7番の家に入った泥棒は隣の6番のおまわりさんにご用になっていたり、11番のイちゃんのバースデイパーティには双子の女の子はじめ近所の子どもたちが集まっていたり…と、この街の12軒のご近所づきあいの豊かさも読み取れます。また、12軒の家の描かれている時間、季節も違っているので、人々の暮らし方の多様さをいろいろな切り口から伺い知ることが出来ます。
 住まいの絵本には、人々の様々な暮らしが反映されていますが、「暮らし方」はその人の生き方を反映するもので十人十色。いろいろな暮らし方があることを踏まえたうえで、周りの人々とつながってゆくことの意味を改めて感じます。絵本と同じように、「この家はどんな人が住んでいるのかな?」「あの部屋は誰が使っているのかな?」と想像しながら散歩するのも楽しいですよ。もしかしたら「あそびにきてね」って誘われるかも……!

(鈴木 洋子 記)

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