住まいの絵本の魅力 第12回

やねの上にさいた花


 作:インギビョルグ・シーグルザルドッティル
 絵:ブライアン・ピルキントン
 訳:はじ あきこ

 出版社:さ・え・ら書房

 おばあさんが屋根の上にのぼって屋上緑化? と頁をめくって一瞬びっくりさせられました。
 でも、このお話の舞台となったアイスランドでは草屋根は伝統的な手法で、一般的に木造の民家でふつうに使われてきたようです。
 ところが、グンニョ−ナおばあさんは病気になってしまったので、動物の世話ができません。そこで、ネコだけを連れて町に住むことにしました。飼っていた動物たちは農場の人たちがひきとってくれました。
 新しい家は町のマンションの5階でベランダからは山と空は見えるけれど、土や植物のにおいがしないし、動物たちもいません。
 仲良くなった少年の、
「なんで、つれてこないの?」
「めんどりだったら、ここにすめるでしょ。子どもべやがあいているから、そこにいれてあげたらいいじゃない」
のことばに、グンニョ−ナは突然ヒラメキました。

 べランダは野菜や花を植えた箱がいっぱい並んで畑となり、タンスの引き出しではめんどりが巣を作ってねむり、屋根の上に置いた芝生では鶏や羊が遊び戯れ、草を食んでいます。
 部屋の中はかくれんぼやインデアンごっこができて、ほんもののジャングルにいるみたいになりました。
「グンニョ−ナの所にいると、ワクワクすることばかりで、時間のたつのを忘れてしまう」
 今では、このやねの上にもたくさんの花がさいていることでしょう。

 昔は日本の農家でも、わらやねの上に飾りとして一本松を植えている家が見られました。
 その後、温暖化対策や断熱効果のために屋上緑化が叫ばれるようになって、タンポポハウスやニラハウスをはじめとして、アクロス福岡など、様々な緑化が試みられてきました。ささやかながら筆者もレンゲ屋根を楽しんでみましたが、1年でダウンしてしまいました。
 みなさんが、もしオ−ストリアに行く機会があれば、ウイ−ンから1時間程の所にあるフンデルトワッサ−が設計したブルマウ温泉村に、是非足を延ばしてみてください。
 絵本のような、自然と建物が一体になった、興味深い建築(国民休暇村)が体験できますよ。

(北浦 かほる 記)

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