住まいの絵本の魅力 第10回

あたらしいともだち


 作:トミー・ウンゲラー
 訳:若松 宣子

 出版社:あすなろ書房

 ラフィ・バコモとキー・シンは、他所からある町に引っ越してきました。誰も友達がいない二人ですが、ラフィは大工仕事が得意で、キーはぬいものが得意。そこで二人は「あたらしいともだち」を作ることにしました。二人の創作意欲は素晴らしく、新しいアイデアが、どんどん湧いてきます。

 そうして彼らの家の前に置かれた「あたらしいともだち」達は、近所の人々の話題になり、大きな関心を集めていきます。最初はあきれ顔で見ていた人たちもやがて彼らの作品の魅力に引き込まれ、「なかまにいれて」と言い始めました。ついには新聞やテレビでもニュースに取り上げられ、美術館にまで展示されることになりました。

 この本には彼らの世界が、最初はラフィの家の中→隣の垣根越しのキーの登場→家の前に集まる近所の人々→近所の人々をも巻き込んだ創作活動→マスコミや美術館からの注目→世代も国籍も超えた世界中の人々が美術館で彼らの作品を楽しむ様子、が描かれています。つまり自らの創作活動によって、ラフィとキーもより広い世界に飛び出して活躍の場が与えられたのです。

 作者ウンゲラーの作品には、社会からはじきだされたアウトサイダーがよく出てきます。この本にはラフィとキーというよそ者が、創作という手段によって社会に受け容れられ、認められていく様子が、ウンゲラーの色彩豊かでユーモラスなイラストレーションによって描かれています。

 最後に作者ウンゲラーが生まれ故郷であるフランスのアルザス地方のストラスブールについて語った言葉をご紹介しましょう。「ここは国境の町だからいい、芸術に国境はないはずだから」

(森口 ゆたか 記)

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