住まいの絵本の魅力 第8回

プールーとセバスティアン


 作:ルネ・エスキュディエ
 絵:ウリセス・ヴェンセル
 訳:末松 氷海子

 出版社:セーラー出版

 プールーとセバスティアンは隣どうしに住んでいます。
 ただしプールーは移動する緑色の車に、セバスティアンは青い立派なマンションに住んでいたのです。
 ふたりのお母さんたちはそれぞれ「どうしてあんな狭くて臭くてほこりだらけの車で暮らせるのかしら?」「いつも同じところでじっとしてよくあんな洗剤や薬くさい水のにおいのするところに住めるもんだ!」と考えます。そして自分の子どもに相手と遊ばないよう言い聞かせます。
 ある日プールーたちは学校から原っぱへ遠足に出掛けます。ここでもふたりはお母さんの言いつけを守って一緒に遊びません。ところがそのうち土砂降りの雨が降り出し、ふたりは原っぱに建つ小さな家で雨宿りをします。
 夜が来て真っ暗になりました。とうとうふたりは口をきき始め、食べ物を分け合い、寒いので互いの服を交換し合って一緒に眠るのでした。夜中に子どもたちを探しに来たお母さんたちは暗闇の中、手探りで自分の子どもを見つけ連れ帰りますが家の中は停電で真っ暗。
 さて翌朝目覚めると自分の子どもだと思って寝かしつけた子どもが、あらまぁ!!取り違いしていたことに気付きます。お母さんたち、どんなにびっくりしたことでしょう! それからお母さんたちはそれぞれの家の窓から顔を出し、互いに目が合うとにっこり笑い合ったのです。
 今ではプールーとセバスティアンは大の仲良しです。そしてお母さんたちも!!

 社会の分断が進み、理不尽な差別が横行する現代社会にこのお話は多くのことを示唆してくれます。互いの「違い」を知ること、相手をリスペクトすること、そして人から言われてものごとを判断するのではなく、自分の頭で考えて判断することが、いかに大切かを物語ってくれていると思います。

(久好 素子 記)

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