● 住まいの絵本の魅力 第6回
あなただけのちいさないえ
文:ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ
絵:アイリーン・ハース
訳:ほしかわ なつこ
出版社:童話館出版
この絵本は1954年にアメリカで出版されました。横13センチ縦26センチの細長〜い本で、表紙・裏表紙はカラーですが、中は絵がエッチングのようなモノクロ、文章はすべて万年筆のインクのようなブルーで書かれています。それだけで十分魅力的ですが、内容は「ひとには だれでも、そのひとだけの ちいさないえが ひつようです。」が主題になっていて、どのような状況を主人公の女の子が「ちいさないえ」と感じているかが素敵な絵と文章で描かれています。
前付には「わたしがその下にすんでいたテーブルの持ちぬしである ハリーとソフィア・フリードマンへ」と書かれていて、作者ベアトリスが幼いころに「ちいさないえ」を持てたことをご両親に感謝する気持ちをあらわした物語かな、と思っています。
お友達のマーサのおじいさんが建ててくれた可愛い小さな家は、マーサとわたしにぴったりでしたが、そんな立派な家でなくても、大きな傘の下、藪のくぼみ、ベッドの掛布団の下、段ボールの箱はみんな「あなただけのちいさないえ」になります。
お友達といろんなことをして遊んだり、家族とお買い物に行ったりも楽しいですが、だれとも関わりたくない時があります。そんな時「ちいさないえ」椅子の後ろの隅っこ、大きな帽子、お面、を持っていればどんなに良いでしょう…だれにも邪魔されない空間を感じることのできる子どもは、邪魔されたくない時の大人の気持ちも理解するようになります。
住まいの絵本館では、この絵本を『個の空間』に分類しています。
『個の空間』を持つことの大切さ、他の人の『個の空間』を大切にすることを伝えています。
(谷口 美樹子 記)
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