住まいの絵本の魅力 第3回

ルピナスさん


 作:バーバラ・クーニー
 訳:かけがわ やすこ

 出版社:ほるぷ出版

 ルピナスという花を知っていますか? パステルカラーの小花が咲き上がる様子が藤をさかさまにしたようで「ノボリフジ(昇り藤)」とも呼ばれます。北海道で道路際に咲き誇るルピナスを見つけた時、思わずルピナスさんがいるのではと見まわしてしまいました。

 『ルピナスさん』はひとりの女性の生き方を描く絵本です。小さなおばあさんのお話と副題がついていますが、ルピナスさんは昔からおばあさんだったわけではありません。子供の頃、アリス(ルピナスさんの本名です)はおじいさんから遠い国々のお話をたくさん聞き、おじいさんと3つの約束をしました。「大きくなったら遠い国に行く」こと、「おばあさんになったら海のそばに住む」こと。そして「世の中を美しくするために何かする」ことです。
 アリスは大人になり、約束通りたくさんの知らない国をたずね、たくさんの人々と触れ合い、海を見下ろす丘の上に小さな家を建てました。すばらしい暮らしでしたが、旅で痛めた背中も痛むし、最後の3つ目の約束はどうすればいいのかわかりません。元気のないアリスの気持ちを少し和ませてくれたのは、家のまわりに植えたルピナスの花。次の年の春に鳥や風のおかげで家から離れたところで咲き乱れるルピナスを見つけ、自分で村中にルピナスの種をまくことを思いつきました。不審に思う村の人もいましたが、翌年の春は村中がルピナスの花だらけに! 一番むずかしい3つ目の約束を果たすことができたアリスは今では「ルピナスさん」と呼ばれています。

 アリスの人生や心情が、ルピナスの花のパステルカラーと重ね合わせて描かれ、人生の意義を見付けた小さなおばあさんアリスの暮らしは明るい色があふれています。アリスは独身ですが、地域の人々に大切にされ、たくさんの子どもたちとも仲良しでさびしくありません。ルピナスさんのリビングルームとおじいさんのそれとは同じものが飾られています。でも大きな違いがあります。比べてみてください。

(鈴木 洋子 記)

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