住まいの絵本の魅力 第2回

ぜったいぜったいねるもんか!


 作:マラ・バーグマン
 絵:ニック・マランド
 訳:大澤 晶

 出版社:ほるぷ出版

 おめめぱっちり、大きなまんまる眼の男の子の名は、オリバー・ドニントン・リミントン・スニープ。
 パパやママにおやすみなさいと言われても、眠くない。ねむっちゃうのはつまらないとベッドをとびだし、絵をかいたり、みんなにマジックを見せたり、ついにはロケットに乗って火星に行ってしまいます。そこは誰もいなくて、真っ暗闇。だけど平気…こわくない。望遠鏡でのぞくとお家が見えます。恋しくなったオリバーはひとっとび、ぽかぽかいい気持ちのお部屋で、いつのまにか眠ってしまいます。

 幼い子どもが、ひとりになって想像をめぐらし、成長していく姿が描かれており、裏表紙の火星に一人立つオリバーの姿が、自律していく子供の姿を表しているようです。

 又、ひとりになって想像したり考えたりする場所として、子ども部屋の役割が重要であることが、オリバーの部屋が詳細に描かれていることからも読み取れます。

 屋根裏部屋のオリバーの部屋には、きれいなトレリス柄(格子垣)の壁紙が描かれています。このトレリス柄は、作者マラ・バーグマンの出身地イギリスロンドン郊外のケント州に住んでいたウイリアム・モリスが、150年程前に自宅のレッドハウスの垣根をデザインしたもので、ケント州では現在も製紙業が盛んです。
 背景に描かれているオリバーの町の姿にもケント州の特徴が表れており、育った場所の伝統や文化を大切にすることが、子どもの成長を助けると言っているのではないでしょうか。

 この壁紙にはもう一つの秘密が隠されています。
 それは、この絵本を読んで探してみてください。

(上田 仁美 記)

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