『至高の愛・・・その果てにあるもの(さくら編)』


(※この先はちょっとだけR15指定です)



このあいだのアレはわたし小狼くんもやりすぎちゃったみたい。
ちょっと反省。
小狼くんも反省してたのかな?
その次に愛してくれた時はとっても優しくしてくれた。

本当に優しく愛してくれた・・・
わたしが次はこうして欲しい、ああして欲しいと思うとその通りに小狼くんが愛してくれる。
まるでわたしが考えてることが小狼くんにはわかってるみたい。
小狼くん、超能力者なのかな?
本当に気持ちよくて・・・何度も何度も小狼くんにおねだりしちゃった(ポッ///)。

冷たい小狼くんも、怖い小狼くんも、どんな小狼くんでも大好きだけど、やっぱり優しい小狼くんが一番!
わたしの一番は優しい小狼くんだよ!


・・・そのはずなのに。


なんであんな夢を見るんだろう?

―――――――――――――――――――――――――――――――――

夢の舞台はとっても大きくて、でも日本風じゃない建物。
その中の大きな部屋。
いろいろと高そうな置物や絵がいっぱい飾ってある。

わたし、この部屋を知ってる。

ここ、香港の小狼くんの家だ。
小学生の時、一度だけ来たことがある。
あの時の部屋だ。

大勢の使用人やメイドさん達が並ぶその部屋の中央にいるのは・・・小狼くん。
これも高価そうな大きな椅子に腰掛けて足を組んでいる。

けれど違う。
この冷たい目。
これはわたしの知ってる優しい小狼くんじゃない。
「李一族の当主様」だ。

そして、その前に立っているのはわたし。
オドオドと落ち着かない視線をさ迷わせている。
まるで、時代劇に出てくる御奉行様とその前に引きずり出された悪い人みたい。


ううん、「みたい」じゃない。
ここはまさに時代劇そのままの裁きの場なんだ。

李一族の宝、クロウ・カードを正統な所有者からかすめ取ったうす汚い泥棒猫に、李家の当主様自らが罰を与える「断罪の場」なんだ・・・


小狼くんが無言でわたしを手招きする。
行っちゃいけない、その小狼くんは危険だ!
必死に叫んでも夢の中のわたしにその声は届かない。
フラフラと酔っ払いみたいな足取りで小狼くんに近づく。
そして小狼くんの前まで行くと荒々しく唇を奪われる。

交わした唇から魔力が吸い取られる・・・
魔力だけじゃない。
生命も、心も、魂までも・・・みんな吸い取られていく。

やがて全てを吸い取られて抜け殻になったわたしは小狼くんの足元に崩れ落ちる。
その身体にはもう、魔力も生命も魂も何も残っていない。
心臓が鼓動を刻むだけのお人形。

だけどこれで断罪が終わったわけじゃない。
小狼くんは抜け殻になったわたしを引きずり起こして激しく責め立てる。
小狼くんの上で情けない声を上げるわたし。
人って、魂がなくても悲鳴はあげられるんだね。

責めに耐えられず、わたしははしたない声を上げ続ける。
もちろん、そんなものでは李家の当主様は許してくれない。
わたしが泣けば泣くほどに、小狼くんの責めは厳しくなっていく。
まるでわたしの泣き声を楽しんでいるみたいに。

もう、許して、助けて・・・何度も何度もミジメな声で許しを請い続けて・・・

そこで目が覚める。

目が覚めると布団の上には一枚のカード。
『夢(ドリーム)』のカードさん。
今のは『夢』のカードさんが見せた夢だったんだ。

でも、いったいどういう意味なの?
なんであんな夢を見させるの?
何かの警告なの?
それとも、わたしは本当は小狼くんにあんな風にされるのを望んでいるって言いたいの?
尋ねても『夢』さんは答えてくれない・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「香港?」
「あぁ。さくらはまだ1回しか香港に来たことがないだろ?」

小狼くんが香港旅行を誘ってくれたのは夢を見た翌日のお昼休み。
秋の連休に香港に行かないかと誘ってくれた。

「日本は連休になるけど、香港は平日だからな。どこに行っても空いてていいんじゃないかと思って」
「そう言えば前に行った時はいろいろあって(劇場版1作目)ゆっくり見てられなかったもんね」
「だから今度の連休にどうだ?」
「そうだね!うわ〜楽しみだな〜。苺鈴ちゃんにも久しぶりに会えるしね!」
「いや、苺鈴はいない」
「え?」
「実は今、苺鈴は姉上たちと一緒に海外旅行に行ってるんだ。連休の日もまだ香港には戻っていない。その・・・せっかくの旅行だから誰にも邪魔されずにさくらと二人っきりでいたいな、って思ってるんだけど・・・」
「(あ・・・)」
「ダメ・・・か?」
「ううん!行く!行くよ!」
「そうか!じゃあ、さっそく手配してくるよ」
「うん」


・・・そっか。
『夢』さんが見せてくれた夢はこのことだったんだね。
今、見えちゃったの。
小狼くんが一瞬、あの「李家の当主様」の顔になったのが。
誰にも邪魔されないっていうのは誰もわたしを助けてくれない、っていう意味だね?
苺鈴ちゃんもお姉さんたちもいないから香港でわたしを助けてくれる人はいない、っていうことだよね?
香港だったらケロちゃんも月さんも助けにこれないもんね。
誰にも邪魔されずにわたしから魔力もカードも取り上げられるね。

知ってるよ。小狼くん。
わたしがクロウカードの主になったことで小狼くんが李家の人達にどんなにひどいことを言われたのか。
「李家の跡継ぎにふさわしくない」とか「先代とは比べ物にならない」とか散々ひどいこと言われちゃったんだってね。
苺鈴ちゃんに聞いちゃったの。
そうだよね。
クロウ・カードがなくっちゃ李家の跡を継げないもんね。
小狼くんにとって李家の跡を継ぐのは何よりも大事なことだもんね・・・


『夢』さんはこれを注意してくれてたんだね。
香港に行っちゃいけないって。
香港に行ったらカードを取り上げられるって。
ありがとう『夢』さん。

でも、ごめんなさい。

わたし、もう小狼くんには逆らえないの。
それが小狼くんの望みなら・・・わたし、それを叶えてあげたい。
本当にごめんね、カードさん。

でもね、小狼くんならカードさんたちにも優しくしてくれるから大丈夫だよ。
それに・・・わたしもカードさんたちと一緒に小狼くんのものになるから。
みんなとずっと一緒にいられるよ。
小狼くんの下で・・・
ずっと・・・

NEXT・・・


オチは・・・

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