『至高の愛?』


(この先、R指定の上にバカギャグというしょうもない話ですので、小狼くんお誕生日話!とか期待している人はUターンすることをお勧めします。)














ただでさえだだっ広い大道寺邸の奥深く。
そのまた奥のさらに奥。
大道寺家でもごく一部の者しか存在を知らない知世のマル秘ルーム。
そこではいつものごとく知世の「さくらちゃん鑑賞会」が開かれていた。

ここまではいつも通りである。
被写体のさくらが知っても驚きはすまい。
小学生時代から慣れっこのさくらは
「知世ちゃんはちょ〜っと変わったところがあるから」
と力なく笑ってすませるだろう。

しかし、今日上映されている内容を知ったらさすがにそんな能天気な台詞は言えまい。
大道寺家電特製100インチ超巨大プロジェクターに映されているのは・・・

『小狼くん・・・小狼くん!』
『さくら・・・うぅっ、いくぞ、さくらぁっ!』
『いいよ・・・きてぇっ!』

あられもないさくらと小狼の愛の営みの姿であった。

「あぁぁっ!さくらちゃん!素晴らしいですわ〜〜〜」

二人の痴態に身をよじらせて悶える知世。
どう考えても盗撮という犯罪なのだが知世は全く気にしていない。
血筋が?なうえに性格が?な母親に?な環境で育てられた知世の内的小宇宙に「モラル」などという単語は存在しないのだ。

「ほ〜かほ〜か。んぐんぐ。ま、わいの撮影テクニックもなかなかのもんやろ。ところで知世、お茶のおかわりが欲しいんやけどな」

撮影者は黄色いぬいぐるみ・・・もとい、「封印の獣」ケルベロスである。
この「クロウ・カードの主を守護する聖なる封印の獣」は、ケーキ1ホールであっさりと主を裏切るのだった。
しょせんは「封印のけだもの」。
畜生にモラルを求めるのが間違っている。

「愛する二人がお互いを求め合い、慈しみ合い、昇華する・・・あぁ、なんて美しい姿なんでしょう!」
「そやな。ここんとこ、さくらも胸がおっきくなってそれなりに女の子らしくなったしな」

感極まって震える知世と対照的にケルベロスはいたって冷静だ。
適当に相槌をうっている。
ケルベロスにとってはさくらの痴態なんぞよりも盗撮の報酬のケーキの方が重要なのだ。
さすがは「封印のけだも(以下略)

「ですが・・・」
「ん?なんや?」
「ですが、最近は愛し合うお二人を見てもなにか物足りないものを感じますの」
「そうか。ま、慣れの問題やろ。で、知世。お茶のおかわりは?」

相変わらずケルベロスの返事はそっけない。
というか知世の告白など聞いてない。
どうせ、わたしの特製お洋服を着ていただいたらもっと素晴らしい映像になりますのに、くらいだろうと考えている。
こいつの頭の中には食べることしかないのだ。
さすがは「封印の(以下略)
そんなケルベロスの態度に関係なく知世の告白は続く。

「愛があり・・・優しさもあり・・・慈しみもある・・・ですが・・・」
「ふむふむ」

「陵辱がありませんわ!」

「そーかそーか。りょーじょくが足りんか。りょうじょ・・・・・・?な、なんやて!?」
「聞こえませんでしたかしら。陵辱ですわ」
「りょ、陵辱〜〜〜???」

ぶぅっ。
さすがのケルベロスも食べていたケーキを一気に吹き出してしまった。
陵辱〜〜〜???
何を言っとるんやこいつは!?
女の子が真顔で口にする言葉か〜〜〜?

「と、知世?あの陵辱っちゅーと、その、アレか?あの縄で縛ったりムチでびしばしやったりするやつか?」
「勿論ですわ。縄で縛ってムチでびしばしして蝋燭をぽたぽたするアレのことですわ」
「そ、それはさすがになんちゅーか・・・少しディープすぎんか?」

少しどころではない。
むちゃくちゃにディープな内容だ。
学生の身分で手を出すシロモノではない。(注:学生でなくても普通は手を出しません)

「いいえ!自由を奪われ、辱められ、耐えがたき痛みを与えられる・・・さくらちゃんなら指一本で始末できるヘタレ男に・・・」
「(ヘタレ男・・・えらい言われようやな)」
「それでも愛する男を悦ばせるために無抵抗で陵辱を受ける・・・これこそ至高の愛の形ですわ!」
「さよか・・・」

そんなわけあるか!というツッコミをケルベロスは心の奥に押し込んだ。
知世がこうなったら何を言っても無駄だ。

「白い肌に食い込む荒縄・・・痛みに震える身体・・・それでも気丈に涙をこらえるさくらちゃん・・・あぁぁっ!たまりませんわ〜〜〜」
「・・・・・・(汗)」

本当は「そりゃ、お前が見たいだけやろ!」と言ってしまいたい。
しかし、それを口に出したら生きてこの部屋を出ることができるか・・・いや、できまい。
目の前の少女がどれほどに邪悪な存在であるか。
ケルベロスはそれをよく知っている。(※他に知っているのは小狼と桃矢。ようするに知世の犠牲者1〜3号)

「というわけでケロちゃん!」
「な、なんや」
「また撮影の方をよろしくお願いしますわ」
「それはかまわんけど・・・『りょーじょく』の方はどうやるんや?」
「それはわたしの方で手をうちますわ」
「念のためどうするつもりか聞いてもええか?」
「・・・お聞きになりたいですか?」
「いや、いい!」
「ではよろしくお願いします」


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


そして「さくらちゃん愛の陵辱劇場」撮影当日。

『知世。こちらケルベロスや。見えとるか?』
「こちら知世。視界良好です」

ケルベロスは決行日の前日から小狼の寝室に忍び込んでスタンばっていた。
知世が選んだのは7月13日。小狼の誕生日。
この日ならば間違いなく二人で愛し合うはず、という知世の読みである。

『これで後は二人が来るのを待つだけやな。』
「ご苦労様です。こちらの方の下準備もバッチリですわ」
『下準備って・・・やっぱりさくらに何をしたか聞いていいか?』
「別に。たいしたことはしていませんわ。わたくし秘蔵のビデオで男という生き物が女性に対していかに下劣で卑しい欲望を持っているかを教えて差し上げただけですわ」

知世はその時のさくらの顔を思い出して淫靡な笑みを浮かべた。
さくらはまっ赤な顔で画面を凝視し「ほえ〜〜〜!!!」を連発し、それでも最後は「小狼くんが悦んでくれるなら・・・」と覚悟を決めたようだ。

『さ、さよか。でもそれだけでええんか?あの小僧は(お前と違って)ムチでびしばしやるタイプには見えんけどな』
「そこも抜かりはありません。大道寺製薬特製『狂騒薬G』をお渡ししてあります。あれを飲めばどんな紳士も鬼畜に早変わり。うふふ、あの真面目そうな李くんがどんな鬼畜に堕ちるのか・・・それも楽しみですわ〜〜〜」
『・・・(お前以上の鬼畜にはならんと思うけどな)』
「あぁ、夜が待ち遠しいですわ〜〜〜」


☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆


その夜。

星明りだけが照らす暗い部屋の中央に「それ」は吊るされていた。
一見、なんであるかわからぬ歪な形状をしたモノ。
よく目をこらすとそれが縄で縛られた人間であることがわかる。
手首と足首は背中でひとくくりにして縛り上げられている。
その上、両足はデルタ型に割り開かれた状態で固定され秘所が丸見えだ。
口には猿轡まで掛けられている。
その全身を醜く彩る溶けた蝋の雫・・・
手足の自由も言葉も「人」として許される自由の全てを奪われた哀れな「肉」。

だが陵辱はこれで終わったわけではない。

ビシィッ!
『うむぅっ!』

鋭い打撃音とともに白い肌に赤い筋が刻まれ、猿轡の奥からくぐもった呻き声が洩れる。
それを楽しげに見つめる目。

ビシィッ!
バシィッ!
『あぐぅっ!ふぐっ!』

その目が加虐の悦びに光る度に手にしたムチが振るわれ、新たな筋が刻まれていく。
まさに知世が望んだとおりの陰惨な「陵辱」の光景・・・


しかし、一つだけ知世の想像と異なっていた点がある。
それは


縛られてびしばしされているのが小狼で、ムチでびしばし叩いてるのがさくらだというところだ。


「・・・・・・あら?」
『・・・・・・お〜い知世〜。どないなっとんねん』
「さあ?わたしにもさっぱり」

知世達の困惑をよそに、さくらは完全にイってしまった目で小狼をビシバシしばき続けている。
こういうプレイは被虐者に屈辱感を与えるのが目的のため手加減して叩く(by Wikipedia)らしいが、さくらは手加減抜きでぶっ叩くのでメチャクチャに痛そうである。

『うふ、小狼くん、気持ちいい?』
『う〜う〜(そんなわけあるか!)』
「知世ちゃんが教えてくれたんだよ。男の人はこうすると悦ぶって。えい!」

ビシィッ!

『うぐっ!』
『あれ?気持ちよくないのかな。おっかしいな〜〜〜奈緒子ちゃんに借りたマンガも読んでいっぱい勉強したのに。えいっ!』

バシィッ!

『うぐぐぐ〜〜〜!!!』

・・・・・・・・・・・・

「なるほど。わかりましたわ」
『わかったって・・・なにがや』
「奈緒子ちゃんですわ。奈緒子ちゃんBLマンガが大好きですから」
『びーえるマンガ?なんやそれ?』
「男の子同士であんなことやこんなことをするマンガですわ。きっと奈緒子ちゃんに借りたBLマンガとわたしが教えて差し上げた知識がごっちゃになっちゃったんですのね」

どうやら知世に教えられた半端なSMの知識と、奈緒子から借りたBLマンガがさくらの頭の中で悪魔合体を起こしてトンでもないモノが生まれたらしい。

「縄で縛って」「ムチでびしばし」「蝋燭ポタポタ」 + 「男の子はエッチなことをされるのが好き」 = 
「小狼くんを縄で縛ってムチでびしばし蝋燭ポタポタしてあげると悦ぶ!」

となったようだ。
小狼がBLマンガで言うところの「受け」のタイプであることも災いしたのだろう。

「それにしてもさくらちゃんのこの暴れっぷりはちょっとおかしいですわね」
『・・・知世。さっき言ってた狂騒なんたらいう薬・・・あれ、なんつってさくらに渡した?』
「なんてと言われましても。李くんを悦ばせるお薬、と言ってお渡ししました」
『それだけか?小僧に飲ませる薬、とは言わなかったのか?』
「あ・・・。さくらちゃん、まさか?」
『そのまさか、やろな。このさくらの暴れようは』

まあ実際にはそれ以外にもいろいろと小狼を憎む者達の邪悪な意思があれこれと働いた結果なのだが・・・

しかし、とケルベロスは思う。
小狼を責め立てるさくらの目、笑い方。
似ている・・・

さくらのビデオを鑑賞している時の知世にそっくりだ。

この二人はわりと近い血縁同士なので似たところがあってもおかしくはないのはわかる。
だが、こうしてさくらの身体にも知世と同じドス黒い血が流れている、という事実を改めて突きつけられると戦慄を禁じえないケルベロスであった。

『(これからはあんまり、さくらを怒らせんほうがよさそうやな・・・)』

・・・・・・・・・・・・

『わかった!うふふ、小狼くんそこだね!』

びしばし叩いても一向に小狼が気持ちよさそうな顔をしない(当たり前だ)のを不思議がっていたさくらが「何か」を見つけてはしゃぎ始めた。

『あ・・・』
「あ・・・」
『ふぐぐ〜〜〜(そ、そこは〜〜〜!!!)』

さくらを除く三人の頭にいや〜な予感が走る。
さくらが嬉しそうに見つめる先にあるのは・・・
こんな状況でも自己主張を忘れない小狼の「アレ」であった。
目の前にさくらの全裸がちらつくこの状況下でソレを鎮めろというのは酷な注文なのだろうが、かなり命とりな感じである。

『いっくよ〜〜〜』
『んぐ!んぐぐ!(やめろ〜〜〜っっっ!!!)』
『えいっ!』

ビシィッッッ!!!

『!!!○×△※*%〜〜〜ッッッ!!!』

がくっ。
小狼、昇天。
もとい。轟沈。

一際長い断末魔の呻き声と共に小狼は気絶した・・・

「どう、小狼くん。気持ちよかった?あれ?小狼くん?小狼く〜ん」

・・・・・・。

へんじがない。

ただのしかばねのようだ。


『・・・・・・・・・(汗)』
「・・・・・・・・・(汗)」
『知世・・・今日はこの辺で引き上げたいんやがな』
「そ、そうですわね。今日の撮影はここまでにしておきましょうか」
『ほな、帰るわ』
「おやすみなさい」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

こうして超無責任な二人が撤退した後には無邪気な悪魔とあわれな生贄の子羊だけが取り残されました。

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なお、この後も『水(ウォーティ)』で冷水をぶっかけられて強制的に覚醒させられた小狼への責めは続き、悲痛な叫び声は一晩中途切れることがなかったそうです。

END?
逆襲の小狼に続く・・・


小狼お誕生日企画に集中しすぎて全然サイトの方を更新していなかったのであわてて更新。
書きかけていた話を無理やりお誕生日に結び付けました。
結局小狼イジメになってますが・・・。
このままだとあまりにも小狼がかわいそうすぎるので「逆襲の小狼」に続きます。

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