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 自像 じぞう(レリーフ)

KISEI  YUKARIHANA    MUSEUM  OF  ART    ;



表紙
設立の趣旨 全作品目録 精選作品目録 彫刻作品目録 編者  












銅造(レリーフ)。 昭和50年。1面。高34cm 幅25cm。

作者70歳頃のネクタイを絞めた正装の凛然とした真面目な自像です。荒々しく粘土を垂直に押し付けた指圧が残る壁面の立体感がある作品です。鋭い眼光も鮮やかに形成しています。シャツや背広の輪郭線も深く強調されている完璧なレリーフです。此の像は油絵4号サイズの額縁に収ます様に採寸されています。作者は彫刻像に於いて眼鏡は像に付着していません。何故ならば眼鏡は健康状態でない状況を表現したもので、常に人間は健康な状態を願うものだから、彫刻の像には要らないものだと語っていました。
青年時代の日本画家の多くは応需(客の注文に応じて画を描く事)が通常でした、高名な画家であっても金銭で依頼された仕事を心なく請合い精神的に束縛を受けていた友人や先輩を数多く観ていました。 名声と財を得て中央画壇に君臨し豪邸に住まい美術館と成して作品を後世に迄披瀝する画家達の在り方 にも批判的でした。自らは名利を求めず、土佐に在って真摯に伝統の美学に親しみ、精励して優れた作品を制作する事に自尊と確信が有りました。



ロダンの合掌の手、日光菩薩の手、前者は礼拝堂のゴチック建築の象徴。後者は生死不滅、衆生と共に祈りの象徴である不動中に動ずる気品の豊かさ、その浄几(ジョウキ)なる孤独の栄光。この真の手に、彫刻に於けるモデルの原型を発見するのである。

芸術家が理想を仰ぎみた尊い真の姿が芸術です。その見上げた視野は広大無辺な天空に達します。

優れた芸術家は、その芸術の中に生き甲斐を持っています。然しその家庭生活は質素で貧しい場合が多いのです。世俗的な幸福には忍耐を強いられます。芸術の中に幸福を見出そうと努力するのです。