我が国現代の造形芸術が、すざましい勢力をもって変貌しつつ今様化し美は細切れて分化分散し大らかなものに帰一する所を失いかけてるようです。全く無視に近い我が国伝統の美学に対して、私は心ある民衆と共に郷愁の切なるものがあります。
未来の人々の上に必然肯定さるべき静謐と自由、魂の高貴さによる日々の新たなるものを包蔵する我が伝統美学に私は青春を捧げ生涯を掛けております。
今回御覧いただきたい彫刻と絵画は戦後廿年の制作であります。又同時に本学廿年美術をもって学生諸子に捧げ来ったその美の具体的な内容でもあります。
因みに紫花人形中平美津子、生け花藤井光波、共に唯一無二の同士であり、絵画私を含めて紫花作品展は今回が第五回展であります。
ささやかなものに宿す可憐さを床しく思います。すたれゆく風俗人情を悲しみ、郷愁の念と共に時として不易の歌をうたい、一会の舞を舞う。御清覧を乞う。
展覧会案内文章(昭和43年7月)
|