人間は生まれながらにして、一つの顔を持っています。それは父母の顔と自分という新しい人間の誕生から出来た、生まれながらの顔です。この生まれながらの顔は実に自分にとって宿命的なものです。
然し運命の自覚と相まって、ここに新しい自分の選んだ仮面を付ける事によって、生まれながらに持っている顔を他人に見られずに生涯を暮らせます。この仮面の顔こそ、人間が運命的に自覚し選択した自分の顔ではないでしょうか。
扨、現代は何故かこの仮面を脱ぎ捨てたままの姿でいる事が人間本来の顔だと誤解している人が少なくはないようです。仮面を脱ぎ捨てた人間の顔、これは動物的な顔とも考える事ができます。醜い顔や、
美しい顔もあります。美しい顔は、若さという神に守られた顔です。この美しい顔は、余りにも儚いものです。時として過ぎ去ります。こうなると自分の生まれながらの顔に自信を持てる人は少ないでしょう。
人間はどうしても仮面を付けたくなります。どんな仮面が自分に適した顔か、それを選択する事が、本当の自分という人間を自覚する事になります。
昭和41年10月
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