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私は煙草が好きである。書物を読んだり仕事をしたり雑談したりする時、また食事の前後にはきっと煙草を吸う。まことに煙草の火は心なき人々よりよほど友情と暖かさを感じる。 畫家で煙草の好きであつたゴッホの言葉を思い浮べる。「弟よ、テオよ、君に煙草を吸うことを是非薦めたい。煙草は憂鬱の雲を払ってくれる。」ゴッホはタバコ好きだった。パイプをくわえた自畫像もある。自殺を試みた直後にも意識を回復すると静かに煙草を吸い、やがて意識を喪い永遠に目覚めなかったと伝えられている。 人間は火を口にするほど火を愛すのだ、そして全てのものをも。 昭和25年5月
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