「衣装着せても馬子は馬子」の面白い言葉があります。ところで「馬子にも衣装」というのがとっても嬉しくなる面白い言葉ではありませんか。「馬子にも衣装」こそ執実な人間の設計が見られるからです。裸に衣装を着せてみると余程その方が人間らしくなり紳士淑女ともなるものです。衣装は人間同士の良識と知性による人生観の象徴的な標識であるわけです。人間は衣装の内部で紳士淑女であることを悟るものです。さて、人間の構造や運動等を研究して、この基本的知識を土台として、自己の念願する衣装をデザインするわけです。自分の手で自分の側で「もの」を発見し「もの」を完成してゆく日々の生活こそ、生きていることの存在の理由があり、それが価値だと思います。
昭和33年7月
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