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先ずは展覧会場に来て下さったお客さまに感謝の挨拶を申し上げています。 背景に白梅の屏風を背に「白梅」 と題名が付けられました。これから琴を弾く直前の姿です、右手先の弦を見詰めています。小道具として精巧に創られた琴胴が見事です。
桜色の長振袖に太鼓帯の若い娘の正装です。画像で観ても琴胴の長さに比べ人形が小さな寸法です。人形は大人ではなく幼児の頃の作者なのです。恵まれた暮らしの想い出から物語が始まっています。 人形は女性の運命の展開を多様な人物の所作として場面毎に姿を変えて表現しています。無常な世に素直で無垢な魂の美しさを来客者に展示されている人形の側に立ち作者は懸命に女性の優しく健気(ケナゲ)な感情を物語っていました。先ずは序の章、本題の章、終わりの章へと順に観て下さい。 人形は理解するものでは有りません。素朴で無垢な心(琴線)に触れる感動です。感動した一筋の光に灯される明日を願うものです。 夫々の人形は見事に着飾れています。詳しくは、着物の色柄、生地の質感、裏地、帯の結び方や位置、襟合わせや、着こなし全て、髪型や髪飾り、足元の下駄や草履にも作者の細やかで優しい気遣いが有ります。的確な知識と優美な振付に驚愕します。 舞台となった黒塗り台座の傍らに長さ1寸(3センチ)程の薄い杉板に、先生方で話し合われた懐(ユカ)しい 題名が副題として墨書されて在りました。 掲示して在る写真や文章は編者が展覧会場で作者の傍らで観聴して記録したものです。作者の仰ぎ観た真如の月(真実の姿)に思いを馳(ハ)せて下さい。 人形は哀れな女性の運命を表現しています。私は華やかなものより静かなものが好きです。瞬間々々に美しい考えをし、柔軟な考え方をする事が大切です。貧しさに耐えながら日本の美しさを守りたいと生涯を懸けています。日本の女性は可愛らしかったのです。嘘偽りの無い無垢にそのままの姿がこうでした。女性は盡くしきって仕合せを感じていました。 人生で大切な事は相会う事です。人と人の素晴らしい会合だけが人生で尊い事ではないでしょうか。物や文章でも真実は伝わりますがその瞬間に会う事の真実は何も要りません。真実が此処にあるという事を大切にして下さい。 人形には過去の夢が魂として宿っています。それは人間に対する愛情でもあり、ものの哀れを知った女性の生命を表現しています。 人形に表現しているのは「言葉」です。人と同じ言葉を遣い、言葉に泣き感動する事です。人を憶ったり、懐かしんだりする心が人形を創っているのです。 人形は知識で抑えても解りません。弱い女性の願いが一つの心に訴えているのです。純粋で優しい心が有れば誰にでも解って貰えると思います。 開示されている人形は一人の女性の表現でもあります。男性の心が移り行く故に女性の心が移っているのです。人を信じる事、感謝する心が無かったら理解出来ません。 |