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芸術に関する覚書

KISEI  YUKARIHANA    MUSEUM  OF  ART 
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表紙
設立の趣旨 全作品目録 精選作品目録 文章作品目録 編者  

芸術は人間生命生存の敬虔(ケイケン)な祭典であります。それはまた黙示録の象徴であります。我が国の古書「古事記」に啓示されてある大神の天の岩戸を御開きになると暗雲は天日の明るさとなり神々の面白く輝けりとあります。このことは世阿弥元清の風姿花伝書にも書かれてあります。「面白く輝けり」は俗に言われている、「面白い」の語源であります。芸術は実に面白く荘厳なる祭典であります。  
彫刻は私の仕事であります。彫刻の魅力は主として自分自身の側で親しく抱きしめての完成であり、夢とリズムと量の緊密感、その本質的な充実と実在感が備わるところであります。谷川の流れに、また海辺でよく見る、人間の頭位の石塊(イシコロ)は、実に彫刻の古里であり、また原型でありす。石塊の発生は遠く氷河時代と言われています。それとまた私達現在の体も実に氷河時代の祖先からの継承であります。なれば石塊とて有縁であり親近感に充たされるのであります。従って彫刻は前述の通り量の緊密感とリズムの丸まった調和、まことに人間の本質的なるものの象徴である芸術であります。


昭和42年