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芸術に就いての話



KISEI  YUKARIHANA    MUSEUM  OF  ART 
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表紙
設立の趣旨 全作品目録 精選作品目録 文章作品目録 編者  







美しい真実は音になります。音は言葉になります。音は「空」です。人生

に於いて確かなものは何一つありません。「夢」だけが美しい真実です。

他は総て「空」です。


「一期一会」という事があります。総ての人間が夢の中に生きる尊さを味

わう事です。


人生は「出会い」です。良き人に出会う為に学ぶのです。


茶室は人を迎える部屋です。四畳半でも一畳でも、百畳敷きでも一つの心

です。その時の客により部屋は大きくも小さくにもなります。


茶では、待つべき人を待つ事でないと意味がありません。動作もそうせね

ばならない心を知るべきです。

もの事に集中して無心になり、一つに集中して、作品を創れるのは、小さ

い時から茶で鍛え磨いてきたからです。


「伊豆の踊子」で高校生が学生帽を鳥打帽に替えて、踊子の一行に加わっ

ていくあの気持ち、皆と同じ平等の次元に自分を置いて親しくなりたいと

願う純粋な気持ちに感動しました。私も人が木綿の着物を着ていると、私

も木綿の着物を着たいと何時も思っていました。


川端康成の「美しき日本の私」にも書かれている「墨絵に画きし松風の音

」(一休禅師の和歌)の言葉は、芸術とは「美しい音」だと思います。 ベ

ートウベンの音楽には「魂に触れた音」があると言はれています。                          
     
昨夜ふと、文学とは「お経」の様なものであると思いました。「滝口入道

」の文章の中にも人生が語り伝えられているものがあります。


トルストイ、ドストエスキーや、どんな文学でも「栄光」というものは意

味のない事を伝えています。 文章の語呂の中に「人生の美」が織りなされ

ているように思われます。詩を読んでいると小説を読みたくなるものです。

明治時代の人はハイカラです。大正時代の人は、外に学問や知識を出さな

いように内に秘めて勉強していました。


「優しい」とは、相手の人から出る言葉です。




         昭和53年1月28日。  昭和53年2月5日。