細い茎に拳を広げた花弁と小さな蕾が可愛く描かれています。左右に伸びた葉並びにも躍動感があります。全体に薄い彩色と曲線で拡散する茎形の薄い葉が初夏の風に閃(ヒラメ)く様です。
芙蓉に良く似た花木は木蓮です、花弁は似ていますが木蓮は細長く、芙蓉は丸い葉形が相違でしょう。芙蓉には美しい女性の面影を観る形態が画面からも伺えます。
ガーベラの花の絵を観ていると、花の色彩に陥りやすいものがあります。葉は枯れて落ちているのに、花は生きていて、ちぐはぐな処がありましたが、最近の絵にはそれが観られなくなりました。チューリップの花は、花と葉との調子が合っていて、よほど描き慣れていると思います。展覧会に出した芙蓉の色紙は逆上せるような日本画です、粋です。これ以上の芙蓉はないでしょう。
花は色彩で魔が差します、油絵では描けますが日本画で彩色すると絵が弱くなります。 墨絵は色彩がなく強く表現出来ます。
美しい真実は音になります。音は言葉になります。音は「空」です。人生に於いて確かなものは何一つありません。「夢」だけが美しい真実です。他は総て「空」です。
「一期一会」という言葉があります。総ての人間が夢の中に生きる尊さを味わう事です。
作品は情緒が中心になる可きです。芙蓉に感動した自分を作品に写すのです。
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