日本は超高齢化社会に入り、相続という場面が増えてきます。それに伴い、いざ相続という段階で、故人の財産を巡って骨肉の争いに発展するというケースが多くなってくるものと予想されます。そこで、自己の死後にいざこざが起きないように、生前に遺言を残しておこうという方が増加しています。
では、遺言は法律ではどのように定められているのでしょうか。複数の方法がありますが、ほぼ自筆証書遺言と公正証書遺言に集約されていると言ってよいでしょう。
自筆証書遺言は、自分一人だけで秘密裏に遺言書を作成することができ、いつでも変更ができます。最近では、遺言書に関する書籍も充実してきていますので、複雑でなければ一人でも十分作成することができます。
しかし、死後必ずしも遺言書が発見されるとは限らないのに加え、それが法的な要件を満たしていない場合はその効力が認められないということもありえます。そうなると、故人の遺志が全く反映されないという残念な結果に終わってしまいます。
公正証書遺言は、財産額と相続させたい人の人数によって変わってきますが、一般的には5万円くらいの費用が見込まれます。しかし、証人の立会いのもと公証人が作成に関わるため、的確な遺言書が作成されますし、公証人が原本を保管するため、遺言書が見つからないという不慮の事態も予防できます(裏を返せば、遺言の内容が自分以外の人に知られてしまうことにはなります)。
さらに、自筆証書遺言に必要な検認という手続きを省略できます。検認とは、家庭裁判所において故人が作成した遺言書の状態を確定しその現状を把握する手続きを言います(つまり、検認によって遺言の効力に影響が出るわけではありません。但し、検認を経ないで勝手に死後の手続きを進めた者には過料が科されると民法で定められています)。これには、法律で通常相続人になるはずの人(法定相続人)全員の戸籍謄本が必要になるなど、手続きが面倒であるという欠点があります。その点、公正証書遺言は、作成時に要する書類や証人集めといった手間をいとわなければ、後々のことを考えると最も有効な手段と言えます。
成年後見業務を司法書士が行っていることは広く知られるようになってきましたが、通常は認知症などになってから後見開始の申し立てを行います。
ですが、元気なうちに自分の意思で後見人になってもらいたい人を選任しておき、判断能力が低下してから初めて実際に後見人として活動してもらう契約を結ぶこともできます。これが任意後見制度です。この契約は公正証書によってしか締結できません。仮に一度決めたとしても、条件を満たせばその契約を解除することもできます。
但し、以下のような欠点もあります。
ア) 任意後見人が活動できるのは、任意後見人の業務を監督する任意後見監督人
が選任された後なので、本人の判断能力の低下が見過ごされた場合には、任意
後見監督人の選任がされず、任意後見が始まらない。
イ) 通常の法定後見人と違い、後見を受けている被後見人が行った行為に対する
取消権を任意後見人は有していない。
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