津波の日の翌日午後3時半頃

住宅地が見える地点まで来た。

周辺の田んぼには津波で流されてきた自動車が
あちらこちらに点在している。
道路をふさぐように倒壊している電信柱2本をまたぎ越える。

田んぼと住宅地、黄金浜(こがねはま)町の境界となる広い道路に出た。
自動車は走っていない。 道路上はところどころ濡れたところがある程度で乾いている。

広い道路上に人がいっぱいいる。
ここは、太平洋の海岸線までおよそ850メートル、
入り江の海岸線から1500メートルの地点である。
国道398号線はここからおよそ600メートル海側にある。

黄金浜(こがねはま)町は、田んぼを埋め立てて造成した町内なので
周りの町内よりも地盤が低い。
黄金浜(こがねはま)町内は、ひざ下まで浸水状態なので
町内に入れない。 さらに海側に向かえば深く浸水しているだろう。
町内入口付近のせいか、流失、倒壊している家は見えない。 
流失して来たカレキも見えない。

広い道路上の自動車の通行は全くない。
あちらこちらに3−5人が集まって何か話をしているのが見える。
走り回る人はいない。 大声を出す人もいない。
大きな声で話す人もいない。
顔が青ざめている人は見かけない。 
涙を流している人もいない。 笑っている人もいない。
男も、女も、どの人も無表情である。
人がいっぱいいるのに静かだ。
なんとか町内に入れないかとあちらこちらと
歩きながら、様子を見ているようだ。

自分の家に戻るために、この町内を通過したい。 自分の家まで、
直線距離で1500メートルだが、道路沿いにはおよそ2000メートルだ。

自転車を電信柱に固定して、徒歩で周辺を偵察することにした。

町内の海側に向かう道路を3−4本見たが、通過できないことがわかる。
どの道路も、見える範囲で、ひざ下まで浸水している。 
水の中を歩き回っている人もいたが、通過できる見込みなし。

広い道路から、小金浜町内に入った一本目の
海岸線と平行に走る道路は浸水していないことがわかる。
この道路を使い迂回し、JR石巻線の線路上を渡波駅に向かうことにした。
避難所のはずの渡波小学校は、渡波駅の目の前(100メートル先)にあるから。


JR石巻線の線路上を歩き始める。



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