湯川秀樹の本から  

(2015年9月9日)

  昨日、ある方から湯川秀樹著「理論物理学講話」、朝日新聞社、1946年、を送って頂いた。標題は難しそうであるが、内容は「科学朝日」に掲載された「物理学入門」をまとめ直したものとあるように、高校物理の復習に良いレベルのものである。すべての解説が本質をついたごまかしのない説明で感心した。ただし、惑星のことを遊星と古い名称であったり、単位がSI単位でないところなど古い本であるが故の読みにくさはある。惜しむらくは内容が力学から熱学で終わっていることだ。本のタイトルから見れば電磁気学までは説明があっても良いが、著者は忙しくてどうにもならなかったようだ。第2次世界大戦で日本の敗戦が避けられない時期によくこのような本を準備できたものと思う。


  ケプラーの法則からニュートンの万有引力を導き出す説明は、これ以上簡単な説明は見たことがない。私の説明は荒木不二洋「力の本質を秘める逆二乗則」を参照して書き直したものである。


 ケプラーの法則から惑星(遊星)の加速度が距離の二乗に逆比例することが導けることを説明している。しかし、その後に「従って、遊星に働く力もrの二乗に逆比例し、且つ遊星の質量mに比例することになる。」とあり、ニュートンの仮説(早合点といえる)の間違いがそのまま踏襲されている。物体に力が働けばその物体は加速度運動を行うが、逆は必ずしも真ではないのだ。加速度があるからその物体の質量を乗じた力が働いていると考えるのは仮説に過ぎない。

 アインシュタインが1907年に気がついたのは上記のことであり、万有引力と称する「力」は 存在していないのである。アインシュタインが名声を得た後、日本でも招待に応じ数か所で講演している。湯川秀樹は講演内容を理解できる数少ない日本人の一人であったと思われるのに、この点が解せない。ただし、この本でも注釈の6で重力について説明を加えてはいる。
 重力は加速度であることを説明している
小野健一も力学の教科書では 他の本と同じく重力は力であるとしていることを考えると、一般人に重力を力と説明し直すことの苦労が面倒だったのかも知れない。
 

(了)


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