万有引力は存在しない

 
 

(2015年8月1日)


  ニュートンの運動の法則と万有引力の法則はあまりにも有名です。後の人はこの二つの法則を基本に据えてニュートン力学を構成しています。ニュートンがこの二つの法則を含むプリンピキアを発表してから、約300年経った現在でもこの二つの法則は自然を律するもので疑いようのないものであると信じている人も多いでしょう。しかし、アインシュタインは約60年前にニュートンの重力理論は虚構であると言っているのです。(文書1)

 それではどこに間違いがあったのか振り返ってみましょう。万有引力についてプリンピキアには次のように命題として紹介されています(文書2)。

(命題1) 木星の衛星は木星方向の力を受けており、その力は木星からの距離の2乗に反比例する。土星の衛星についても同様である。

(命題2) 惑星は太陽方向の力を受けており、その力は太陽からの距離の2乗に反比例する。

(命題3) 月は地球の中心から、距離の2乗に反比例する力を受けている。

(命題4) 月は地球の重力により、地球に向かって落下し続けている。

(命題5) 木星の衛星も、土星の衛星も、そして太陽に対する惑星も、それぞれ木星、土星、そして太陽の重力に引かれて直線運動からそらされ、円運動あるいは楕円運動をしている。(そしてこの命題の系の中では、重力の一般性が主張される。)

(命題6) すべての物体は各惑星に向かって引かれる。その強さ、つまりその惑星によって生じる重さは、その物体が持つ質量に比例する。

(命題7) すべての物体には、それら物体が含むそれぞれの物質量に比例する重力がある。

 命題は命題の系も含めてまだまだ続きますが、(文書2)でも全部が紹介されているわけではありません。

 これらから、現在のニュートン力学では、二つの物体に働くニュートンの万有引力の法則として、次のようにまとめられています。

               ・・・(1)

ここで、
F: 万有引力 [N]
M: 物体1の質量 [kg]
m: 物体2の質量 [kg]
R: 二つの物体の(重心間)距離 [m]
G: 万有引力定数 (=6.67384 × 10^-11 [m^3kg^-1s^-2])
 
 重力(Gravity)というのは地上のすべての物体が落ちる現象を指していました。惑星と太陽の間に働く力というように大きく見た場合、重力の元となるのは万有引力でありその大きさは上述の式で示されるというのがニュートンの考えでした。

 ニュートンの万有引力の法則が上手く天体の運動を説明できた後、重力とは物体が引き合う現象を指します。重力を詳細に測定するには自転や質量分布などが影響することを考慮する必要があります。

 ニュートンはこの逆二乗則をケプラーの法則から導きだしたのに違いないのですが、プリンピキアでは逆に万有引力の法則からケプラーの法則を証明しています。

 ニュートンの命題を見ると、いずれも二つの物体(衛星と惑星、等)の間には力が働いていると天下りに決めつけています。二つの物体の間には力が働いていると仮定すると運動を良く説明できるということなのですが、力が働いているという証拠は何もなかったのです。天体の運動を説明できたことは証拠ではないのかと思われるでしょうが、それは力であるという証拠ではないのです。

 ケプラーの法則は三つの法則から成り立っていますが、星の運動についての法則です。これらの法則に現れる物理量の次元は運動に関するものですから、距離と時間だけです。如何に加減乗除を施しても力の次元は出てきません。

 従って、ケプラーの法則から演繹的に導けるのは、次式だったのです。

            ・・・(2)

ここで、
g: 重力加速度
  (地球の表面では地球の質量Mと地球の半径Rによりg = 9.8m/s^2 が得られます。この数値は測定器でも得られます。)

 つまり二つの物体には加速度運動があるということだけだったのです。ニュートンが現した命題の中で「逆二乗則の力が働いている」という主旨の表現は「逆二乗則の加速度運動がある」と言う表現に置き換えてもケプラーの法則の証明は出来たのです。

 GMは比例定数としてG’で良かったのですが、ニュートンは質量Mに比例する筈だと考えて、G’=GMと置いたものです。これはニュートンの明晰のたまもので、Gが万有引力定数として宇宙における基礎物理定数の一つとなっています。

 しかし、光速度など宇宙の基礎物理定数は10桁以上の高精度で求められていて、G’も同じく10桁の高精度で決まるのですが、月や地球の質量のMもGも何故か4,5桁の精度でしか求まっていません。またGは空間的、時間的に不変定数なのかが天文学者の研究テーマの一つになっています。

 加速度があるのは力が働いているからだと考えて(2)式のg=F/mで置き換えたものが(1)式の万有引力です。しかし、万有引力という力は存在していないのです。「重力は力でなく加速度である

 地球のように大きな質量は時空を歪めます。時空の歪みを重力場と言います。重力場にある物体は力を受けるのではなく加速度運動を起こします。言うならば、これは万有加速度です。

 地面に置かれた物体は地面により加速度運動が阻害されます。するとその物体には慣性力が生じるのです。物体の質量をm、地上の重力加速度をgで表すと、慣性力の大きさはmgとなります。これが重量です。この重量のことを重力と誤解されてきたのです。地面からは物体にmgと同じ大きさの力Fが加わって物体はちからの釣り合いによって静止しています。

 慣性力は力です。重力もない空間で質量mの物体に力Fを加え続けますと、その物体は加速度αの加速度運動を続けます。この時の加速度αは、ニュートンの運動の第2法則により、α=F/mになります。このとき力Fに釣り合っている力は慣性力mαです。

参考文書
(文書1) 重力機械、ケイレブ・シャーフ、早川書房、2013年
(文書2) プリンピキアを読む、和田純夫、 講談社、2009年

(了)


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