潮の干満なぜ2回  

(2017年2月19日)


  平成29年2月5日(日)の朝日新聞に標記表題の記事 が載せられている。説明にはaからgまでの絵も載せられて判りやすく書かれてはいる。しかし、少し加筆が必要である。

(1) 図aで淳平少年の考えに既に思い込みがある。
この絵では膨らんだ海面が月の方向に向くと描かれているが、海水は比重約1に対して地球を構成する岩盤やマグマの平均質量は比重が約5である。膨らんだ海面が月と反対方向に向くと描いてもおかしくない。むしろ、直感的に重い方が月の方を向くだろうと考える人も多い。

しかし、これは誤解であり、万有引力と遠心力の関係においては膨らんだ海面が月の方向に向くか逆に向くかは50−50である。どちらでも安定なのである。(参考)月は何故地球に裏面を見せないか

(2) 地球の自転は関係なしか。
地球の自転による遠心力は潮汐には関係がないが、地球の自転があることで1日2回の潮汐が起こる。

(3) 図gのようになる理由
現在の地球が図gのようになっていることは間違いない。しかし、月の引力と遠心力の差により潮汐力が発生するとしても海面が両方向に膨らむ理由にはならない。淳平少年の考えを否定する理由にはならない。

 正しい説明は次のようになるのではないだろうか。
もし、膨らんだ海面が月の方向だけ、または逆方向だけになっていたとすると、地球の重心が地球の自転によりいつも地球の中心に対して動いていることになる。地球の長い歴史において地球の重心が動かない方向で海面が両方向に膨らむようになった。あるいは地球に海ができるときに両方向に膨らみ安定した。

(備考)
 引力と遠心力ここで説明されている(万有)引力は実際の力ではなく、見かけの力に過ぎないが潮汐力は実際の力であり、必ず引張り力として現れる。(参考)重力が力でない証拠

(了)

追加:
大ナマズ@琵琶湖さんから「どういう仕掛けか」との貴重なご指摘をいただきました。

「地球の質量は6.0×10^24kg,海水は1.4×10^21kgなので,海水は地球の
約1/4000ということになります。なので,もし海水がすべて月に引かれて
4mほど一斉にそっちへ移動したとすると,共通重心は地球の中心から
4mの1/4000である1mmだけ移動するということになりますね。
これって,問題になる大きさでしょうか。

仮にそうだとして,地球の重心が動かない方向で海面が両方向に膨らむように
するというのは,どういうしかけがはたらいてのことなのでしょうか。

ちなみに地球・月の共通重心は地球の中心から4700km(月に面した地表からの
深さ1700km)のあたりです。 」

回答:
次のように回答するのが精一杯でした。

> これって,問題になる大きさでしょうか。
車のタイヤで動バランスを取るときに小さい鉛の塊をホイールに取り付けたりしますが、これに類した程度の影響ではないでしょうか。海水は地球の表面にあるので片側によればかなり影響があるように思われます。

> どういうしかけがはたらいてのことなのでしょうか。
昔、潮汐2回は地球の重心の問題であるという説明をどこかで見た覚えがあるのですが、どういうしかけかまでは説明がなかったように思います。
構造物の応力解析などでひずみエネルギー最小の原理とかがあって、応力分布はその原理に従って決まるというのがあります。海水面が両方向に膨らむほうが、自転する地球としてひずみエネルギー最小原理にでもかなっているからではないでしょうか。

(了)

グリフィス天文台における説明は潮の満ち引きが月と太陽の重力の影響であることしか記載されていません。
何故1回でなく2回かの説明は簡単なパネルでは無理でしょう。




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