力と加速度  

(2011年6月4日改訂)


 1)静止している 物体

 静止している物体は力を加えなければ何時までも静止している。これはニュートンの運動の第一法則で記述されていることの半分であり、慣性の法則と呼ばれている。
 この物体には何も力が加わっていないから物体内部にも応力は生じていない。

 この物体に力を加えると、その物体はある加速度で動き出す。この加速度の大きさは加えた力の大きさとその物体の質量の比で決まる。これがニュートンの運動の第2法則で、ニュートンの運動方程式とも呼ばれている。

 力は物体の表面から作用するので外力とも言う。この外力は物体の質量に由来する慣性力と釣り合う。慣性力は物体内部に分布した質量に由来するので3次元的に分布したした力の総計である。外力に等しい大きさの慣性力が発生するということがニュートンの運動の第3法則、つまり作用反作用の法則に他ならない。質量は物体に分布しているので、物体の内部には応力が生ずる。慣性力は2次元的に作用する外力に対して3次元的に分布している力、つまり応力の集積なので内力と言う。

 2) 等速直線運動をしている物体

 等速直線運動をしている物体は力を加えなければ何時までも同じ等速直線運動を続ける。これもニュートンの運動の第一法則で記述されていることの半分であり、慣性の法則と呼ばれていることに変わりはない。
 この物体には何も力が加わっていないので内部に応力は生じていない。

 この等速直線運動をしている物体に力を加えると、その物体は速度を変える。その速度の変わり方は、同じくニュートンの運動方程式で決まる。

 力は物体の表面から作用し、物体の質量に由来する慣性力と釣り合う。作用反作用の法則である。このため物体の内部には応力が生ずる。

 3) 重力場で落下している物体 (アインシュタイン流の正しい説明)

 重力場にあって落下している物体は重力加速度により速度を増しながら落下運動を続ける。これはアインシュタインにより、慣性運動の拡張がなされた自由落下運動である。
 この物体には何も力が加わっていないので内部に応力は生じていない。

 この自由落下している物体に外力を加えると、その物体は加速度を変える。その加速度の変化分は、ニュートンの運動方程式で決まる。ニュートンの運動方程式は重力項を加えて重力場の運動方程式にする必要がある。

 加速度の変化分に対応する慣性力と外力が釣り合い(作用反作用の法則)、物体内部には応力が生ずる。

 3)’重力場で落下している物体 (従来の、ニュートン流の説明)

 重力場にあって落下している物体は重力加速度により速度を増しながら落下運動を続ける。これは重力を外力とするニュートンの運動の第2法則で表される運動である。
 この物体には重力という外力が加わっているが、物体の発生する慣性力と分子レベルで釣り合っているので物体内部に応力は発生しない。

  この自由落下している物体に外力を加えると、その物体は加速度を変える。その加速度の変化分は、ニュートンの運動方程式で決まる。
 加速度の変化分に対応する慣性力と外力が釣り合い(作用反作用の法則)、物体内部には応力が生ずる。

  ニュートンの慣性運動    → 等速直線運動
 アインシュタインの慣性運動 → 自由落下運動 (ニュートンの慣性運動は重力がゼロの特別な場合として含まれる)

 1)、2)、3)を通して全体を眺めてみると、広い意味での自由落下運動が大自然の姿であって、「初めに運動ありき」だと考えられる。そして、この運動を変化させるには慣性力に等しい外力が必要であるということである。これまでのニュートン力学では、力を加えることによって加速度運動が引き起こされるという説明であった。

 物体には外部から力を加えない限り、物体内部に応力を生ずることはない。重力は加速度であって力でないので、重力加速度を変化させる外力が働かない限り、物体内に応力を生ずることはない。この事実が如何なる加速度計でも重力加速度は検知できない理由である。

(了)


戻る