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No69. 2016.8 三瓶長寿
8月の聖句
二羽の雀は一アサリオンで売られているではないか。しかしそのうちの一羽すら、あなたがたの父の許しなしに、地に落ちることはない。
(マタイ10:29)
てんと虫一兵われの死なざりし
安住 敦(1907-1988)
終戦の詔勅を聞いていた。助からないと思っていた命が助かった。そのとき抱えもっていた銃身に一匹の天道虫がとんできてとまった(自解)。
★ 作者は終戦一か月前に召集され、米軍上陸に備えて対戦車自爆隊として千葉上総湊に駆り出されていた。敦38歳、他は老年兵。10キロの爆雷を背負って8月の灼けきった海岸の砂利の上を匍匐前進訓練をさせられていた。「海の夕焼けは美しく、松林に蝉のかなかなが啼き、兵舎には蓮の花が咲いていた。このままでは往生できない気持ちだった。そんなある日詔勅を聞いた。所詮、助からないと思っていた命。涙がふり落ちた。一匹の天道虫が飛んできてかかえもつ銃身にとまった」(自解)。この句には「八月十五日終戦」の前書きがある。
★ 銃身にとまった赤、黒、黄色の斑点をもつ小さなてんと虫の丸くて固い翅鞘は鉄帽をかぶった兵士のよう。それは死ぬはずだった命をとりとめた兵の喜び、希望なのか。それともかって生きていた戦死兵の霊なのか。「死なざりし」をどう読むか。
★ 戦争は命を虫けら同然に扱う。てんと虫に命があるように、一兵卒にも命がある。雀の命も人の命も変わらない。一つ一つの命に摂理がある。「主よ、あなたは人をも獣をも救われる」(詩編36:7)。キリストは「神に創造された万物の根源」(黙示録3:14)。キリストにあってすべての命は「死なざりし」。
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