生涯、
日本キリスト教会岡山教会
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今月のメッセージ
「日用の糧を、今日与えたまえ」
(要約)
マタイ伝6章11節
2016,8,14 三瓶長寿牧師
1.
私たちのための第1の祈り
私たちはこの夏、「主の祈り」から連続説教を聞いています。「主の祈り」は6つの祈りからなりますが、最初の3つは《
あなたの御名、あなたの御国、あなたの御心
》と「神さまのこと」が祈られ、後半の3つは《
わたしたちの糧、わたしたちの負い目、わたしたちを誘惑に合わせず
》と「わたしたちのこと」が祈られます。それはまず私たちの「神の栄光のために仕えさせてください」という祈り、それから「自らのために祈る」ということです。しかしこれらの祈りを二つ分離してしまうことはできません。
イエスさまが、人間のための祈りとして最初にとり上げたのが、「
わたしたちの必要な糧
」であったということは、私たちにとって驚きであり、また深い慰めです。私たちの弱さを知っていてくださる。詩編104:15に「
パンは人の心をささえる
」とあります。ある政治学者が書いているのですが、《明るみにでていることの裏に重要な事実が隠されている》と言っています。イエスさまがこの祈りを最初に取り上げてくださったその背後に、イエスさまがいつも人々の、私たちの日々の食べ物を気にしておられたということです。そういえばイエスさまのたとえ話に「食べ物」と関係したものがなんと多いことでしょう。種まきのたとえ、畑を耕すたとえ、地主と小作人の争いのたとえ、ぶどう園のたとえ、焼いたパンがどのように膨らむかというたとえ、そして漁のたとえ、夜パンを借りに行くたとえ・・・。イエスさまは人々の毎日の食事を気にしておられたのです。その気づかいが最初のこの祈りとなったのです。「
わたしたちに必要な糧を今日与えてください
」。命のパン、イエスさまをくださった神は、私たちにパンを与えないままにされることはありません。
2.政治的な祈り
人々に「今日の食べ物がない」ということは、どういうことでしょう。それはただ貧しくてパンがないというだけのことではありません。それは、仕事をしたいけど仕事がないということ。働いているのに食べられないということ。それは不正や搾取が行われ、正義と公正が失われているからです。労働や経済や社会問題です。また、食べられないのは戦乱のため家を失い土地を追われて難民になったからです。そして親を失った子どもたちも食べられません。仕事をしたくても病気のため働けないという問題もあります。今、世界の人口は70億。そのうちの8億7千万の人々に今日食べるパンがありません。死んで行く人の第1位は餓死です。今この時も1分に17人が死んでいます。だから「
わたしたちに必要な糧を与えてください
」という祈りは政治的祈り、経済的祈り、社会正義のための祈りなのです。私たちは「私のパン」ではなく、この祈りを知らない兄弟たちをも含む「私たちのパンを与えてください」という祈りです。そして隣人の必要に責任を持ち感じ、認める。
この祈りは「パン」だけではなく、人が人間らしく暮らせるすべての必要、食べ物、身につけるもの、住まい、家族、仕事、そして平和と自由を求める祈りです。私たちは「
イエスは世界の主
」と告白するなら、私たちの祈りと生活はこれらの課題を共有しなければなりません。
3.神への信頼の祈り
日本はこの70年戦火を経験せず、世界第3位の経済大国になっています。それなら日本人は、元気で心も生活も充実して、幸せを感じて生きているでしょうか。ギャラップ、2010年の「世界の幸福ランキング」調査では、日本の幸福度は世界でなんと81位です。何を幸福と考えるかにもよりますが、私たちは今有り余るほどの食物の中で、魂、心が飢えて死のうとしている状態です。それはなぜでしょう。
英国の新約学者ハンターがこの祈りを歌った詩があります。「パンの背後に粉があり/粉の背後に水車があり/水車の背後に日と雨と麦と/天の父の御心がある。」
私たちは自分たちが愛されていること、与えられていること、見守られていることに気づくなら、「今日の糧を与えてください」と祈ることを知るならば、今も、これからも幸せであることに気づくでしょう。幸せとはお母さんの胸に抱かれたような安らぎ、心地よさ。私たちが神さまから、人から、与えられて生きている貧しい者であることを知るとき、私たちはとても幸せな人間であることを感じるようになると思います。
「日ごとの糧」とはまた「霊的な糧」です。受け、分かち合うとき「恵みの糧」になります。しかし自分一人抱え込むとき、「貪欲の糧」になります。そこに無意識の不安と恐れ、私たちの幸福度の81位が姿を現しているのではないでしょうか。
イエスさまは言われた。「
人はパンだけで生きるものではない。神の口からでるひとつひとつの言葉で生きる
」。日ごとの糧が神の言葉と結ばれ、経済の力が神の言葉に結ばれるとき、それらは霊的な力になります。
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