9人のムサイ
のカデンツ
ムシケ(文芸)をつかさどる女神のことを ギリシャ語で、Musa ムーサ。
複数形は Musai ムサイ。
英語ではMuse ミューズ。
Music 音楽 Museum 美術館 は ここからきています。
9人全員が 楽器の名手かどうかは定かではありませんが、
でもそこは 音楽の女神 でもあるんですから・・・ということで。
岸本宏子著 『ルネサンスの歌物語』 音楽の友社 を読んで
9人のミューズたちのスタンスがとても良くわかりましたので
引用させていただきます。
ギリシャの神々の山オリュンポスは
ゼウスとその妻ヘラによっておさめられている。
神々の中で、音楽をつかさどるのは
ゼウスがレトに産ませた息子で、竪琴をもつ太陽神アポロン。
アポロンは、神託で有名なデルポイのアポロン神殿近くに
パルナッソス山という専用住居を持っている。
アポロンを補佐するのは九人の女神たち、ムサイである。
彼女たちにもまた ヘリコン山という専用住居がある。
へリコン山はオレンジやレモンがみのり
小鳥たちが飛び交う緑あふれる楽園である。
神々は、おのおのの住居をもっているが、ゼウスが召集をかけると
オリュンポス山のゼウス宮殿に集まることになっている。
そして大広間ではアンプロジアやネクタルという
天上界の食べ物と酒で供宴が催される。
供宴の余興には、アポロン神が竪琴をひき、ムサイたちが歌う。
・・・・・・・・・
三という神聖数の三倍である九人のムサイたちは
人間の知的活動全般にわたって保護する役目をもっている。
九人はそれぞれ受けもちの分野があって
それがひと目でわかる持ち物をもっている。
学問や文化のとらえ方が、ギリシャ・ローマ時代と今日では違うため
担当分野の分け方は、私たちの考える学芸の分類とはかなり異なっているし
多少の異説もあるのだが、ここでは一般的な説を紹介しておこう。
カリオペ − 叙事詩 − 書板と鉄筆
クレイオ − 英雄詩・歴史 − 巻物
エウテルペ − 抒情詩 − 笛
タレイア − 喜劇 − 喜劇の仮面
メルポメネ − 悲劇 − 悲劇の仮面
テルプシコラ − 合唱歌舞 − 竪琴
エラト − 抒情詩・恋愛詩 − 竪琴
ポリュムニア − 歌・舞踊 ー
ウラニア − 天文 − 杖
さて 以上を踏まえて コレクションカードを検証してみましょう(笑)
662
662 Le Sueur 1616-1655 Clio
Euterpe et Thalie Bois 1.30 x 1.30 m
Collection de Louis XVI
LouvreDepartment des Peintures 2000・4・28入手 アンサンブル
↑この絵の 後ろ向きのミューズは 仮面をもっていますが
悲劇 か 喜劇か?
この穏やかな シチュエーションは 喜劇かな。
あ、やっぱり タレイアだ!
そして フルートとくれば エウテルペ ですね。
そして 左のミューズは クレイオ。
巻物ではなく百科事典のような書物と
トランペットを持っていますから。
たしかこのクレイオの姿 どこかで見たような・・・
↓ そう フェルメールの 画家のアトリエ の この彼女と同じです。
3136
3136 ヨハネス・フェルメール・ファン・デルフト 画家のアトリエ(絵画芸術) 部分 1665/66年頃
油彩・カンヴァス 120 x 100 cm ウィーン美術史美術館蔵 栄光のオランダフランドル展
2004・4・16入手 金管ラッパ
ミューズを特定するには
この本を参考にすると うまくいきそうです。
話は横道にそれますが
ルーヴル美術館のフランス絵画の展示室には
この ル・スゥールのミューズが
九人全員 勢ぞろいしています。
ルーヴル美術館で撮影(2007年)
しかし
カードになっていたのは ↓ この一枚だけ。
662
お願いです! ルーヴルさん
9人全員のカードを 作ってくだされ!!
パルナッソス山で 月桂樹の冠をかぶり竪琴を奏でるアポロンが
9人のミューズと つるむ(?)場面は、お約束の構図。
ミューズたちのカードは たくさん 集まってもよさそうなのに
なかなか入手できず 苦戦していました。
じっと辛抱した結果 いくらか集まってきましたので ご紹介しましょう。
モローです。
3733
3733 Gustave Moreau Apollon et les Muses Musee Vustave Moreau
Photo RMN Rene Gabriel Ojeda 2005・8・2入手 アンサンブル
↓ これはポンペイ近郊モレージネ地区から出土、
1999年の再調査で このトリクリニウム(食堂)を囲む壁画が発見されたそうです。
中央には竪琴のアポロ 左はクリオ 右はエウテルペで二管笛を持っています。
ちょっとぼやけていますが、時代が時代ですから
この鮮やかな色が残されているだけでも驚異的。
この右側の壁画には、ウラニア・タレイア・メルポメネ
左側の壁画は、テルプシコラ・カリオペなどもいますが
カードなし。
4004
4004 モレージネ建造物A 北壁の壁画 ポンペイ考古学監督局蔵 ポンペイ輝き展
2006・5・8入手 アンサンブル
↓こちらは アポロンではなく ミネルヴァと一緒のミューズたち
4295
4295 作者不明 ミネルヴァとムーサたち エッチング ドライポイント 23.0
x 16.7(16.9)cm
チューリッヒ工科大学はんが素描館蔵 2007・3・8入手 アンサンブル
マンティン・デ・ヴォス作 とても優美なミューズたち
4551
4551 Musee Ancien de Bruxelles
Apollon parmi les Muses, par Martin de Vos
2007・9・20入手 アンサンブル
今谷和徳著 『ルネサンスの音楽家たち 1 』 1993年第一刷発行 東京書籍(株)
マンティン・デ・ヴォス(1532−1605)作 『アポロンとムーサたち』
ここには ルネサンス当時 使用された楽器がみられる。
中央にリラをもつアポロン 左手にスピネットを弾く音楽のムーサ・エウテルペ
右手にハープをもつ テルプシコラー
他に フィーデル リュート コルネット タンバリンなどをもつムーサたち
歌を歌うムーサたちがいる。
9人のミューズと 右端は ミネルヴァで 空中を飛んでるのが アポロンで
はて 前で後ろ向きに座っている男性は 誰?
5031
5031 Johann Georg
Bergmuller(1688-1762) Apollo und die Musen OL/Leinwand oil/canvas
63.5 x 87.5 cm RESIDENZGALERIE SALZBURG 2008・5・2入手 アンサンブル
ヘリコン山での アポロンとミューズたちの お約束的 構図。
5068
5068 Heinrich Maria Von
Hess (1798 - 1863) Apollo and Muses Leinwand, 245/449 cm
Bayerische Staatsgemaldesammlungen, Munchen Neue Pinakotehk
2008・5・3入手 アンサンブル
マンティーニャ作 パルナッソスでアポロンの竪琴にあわせて踊るミューズ
でも この絵の主役は 上段のヴィーナスとマルス。
5432
5432 Andrea Mantegna (1431 -
1506) Mars et Venus, dit Le Parnasse, vers 1496/97
Huile sur toile, H 159 L 192 cm Louvre 2008・9・26入手 竪琴
ヴーヴェ作 理想的&典型的 勢揃い図!
パリで初めて知ったヴーヴェは 大好きな画家になりました。
通常の倍の 長い一枚のカードだったので
ファイルの都合上 真っ二つに カットしました(涙)
1890
1890 Szepmuvezeti
Muzeum Budapest DORIGNY
Apollo es Muzsak Simon Vovet 2008・8・30ファイル差し替え 竪琴
19世紀 象徴主義の アルノルト・ベックリンの描いた
エウテルペ。
抒情詩と笛でしたね。
1938
1938 ARNOLD BOECKLIN (1827-1901) Euterpe 1872
Hsrz-Oel auf Leinwand 78/58.3cm Hessisches Landesmuseum
Darmstadt
2002・5・9入手 二管笛
念願の ヴァチカン美術館 署名の間の ラファエロの パルナッソス 入手しました!
8744
8744 Raffaello, Il
Parnaso Stanze di Raffaello, Citta del Vaticano. Musei
Vaticani
2016・9・23入手 アンサンブル
さて皆様 ここでクイズです。
アポロンとカリオペ(ミューズのひとり) の息子って
誰だか ご存知ですか?
ウス
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