古都を堪能せよ! (前編)


静かな路地裏(大天后宮付近)

前日のケンカはその後も尾を引いたけれど、まぁ、言いたいことを言ったから逆に雨降って字固まったかな?・・・という4日目。

Pi-子隊長:台南までどうやって行こうか。新幹線か、在来線か、バスか・・・
ピッキー:時間はどのぐらい違うんだ?
Pi-子隊長:新幹線だと15分、在来線だと30分、バスだと1時間。ちなみに値段と速さは比例します。
るむ:新幹線でいいんじゃない。時間は貴重だし。
Pi-子隊長:"Time is money" だね。じゃあ、新幹線で行こう。




新幹線でああっという間に台南駅に到着・・・しかし、何か違和感・・・
Pi-子隊長:おかしいな・・・
ピッキー:何が?
Pi-子隊長:事前情報によると台南駅の駅舎は日本統治時代に建てられた古い建物・・・ということだったのだが。



台南駅到着・・・しかし激しく違和感
今、降りたばかりの「台南駅」は現代的なガラス張りの造り、高雄もそうだったけど広々とした開放的なロビーで空港のよう・・・。
るむ:新幹線が通るようになったから改装したのかもよ。
Pi-子隊長:そうかもね〜、見たところ最近建てられたみたいだし、ちょっとがっかりだけどよくあるパターンかもね。


今日の夕方は台北に向かうので、まずは荷物を預ける場所を探す。
ガイドブックによると以前の台南駅なら荷物預け場所があったみたいだけど、「行李処(荷物預け場所)」という案内もコインロッカーも見当たらない。
Pi-子隊長:こうゆう時は探しまわるよりも聞いてみよう。
とりあえず近くにいた案内係だと思われる、きれいなお姉さんに話しかけてみる。

Pi-子隊長:請問、我們想寄存行李。這附近有沒有行李處? (すみません、荷物預けたいんですけど、この近くに荷物預かり所はありますか?)
案内係の小姐:ここにはそういった設備はないんです。

えっ、駅にロッカーもないわけ?

案内係の小姐:どちらへ行かれるんですか?
Pi-子隊長:ん〜、特にどこって決めてるわけじゃないんだけど、歴史的な建物を見ながら街中をぶらぶらしようかと思ってるんですが。
案内係の小姐:赤崁楼(せきかんろう)とか孔子廟とか?
Pi-子隊長:そんなとこ。
(前日にガイドブック見て台南の予習していてよかった)
案内係の小姐:それなら街中へ行くバスが出ていますので、こちらへどうぞ。

お姉さんの後についていくとまたビックリ!
ガイドブックでは「駅前にロータリーには鄭成功の像があり、デパートや商店が並ぶ・・・」と書かれていたんだけれど、駅から一歩出ると周辺は未開の地
バス乗り場、タクシー乗り場があるのみであとはひたすら野原なんですけど!?
駅を改築したんじゃなくて、駅ごと移転したのかな?

案内係の小姐:こちらのバスは主な観光地の前を通りますよ。
Pi-子隊長:謝謝。


案内されたバスに乗り込む3人。
運転手:どこまで行くんだい?
Pi-子隊長:赤崁楼(せきかんろう)とか孔子廟とか歴史的な建物があるところへ行きたいんですど。
運転手:そこなら通るよ、乗んな!
Pi-子隊長:料金はいくらになりますか?
運転手:何言ってんだい、料金はいらねぇよ、さ、早く乗った、乗った。


タダのバス?なんかサービスよすぎて頭の中には「?」マーク。
るむ:料金後払い?
Pi-子隊長:いや、タダだって。
ピッキー:ずいぶん太っ腹だな。(Pi-子の腹並みに)
Pi-子隊長:うん、でも運ちゃんに行きたいところ伝えたし、大丈夫だと思うんだけど。


荷物を下ろして席についたところでバスが発車した。
街中でこの荷物を抱えたまま観光するのはタイヘンだから、コインロッカーか荷物預かり所を見つけないとな。
駅になかったら、どこにあるんだろう?って感じだけど。

バスの中をキョロキョロ見回していると、こんな路線案内↓が目に入った。


路線1「高鉄台南駅―台南公園」線
途中停車するバス停は、台東長栄酒店、成功大学、台南駅、台南公園。

路線2「高鉄台南駅―億載金城」線
途中停車するバス停は、台南駅、安平古堡、安平港、億載金城。

路線3「高鉄台南駅―台南科学園区(サイエンスパーク)」線
途中停車するバス停は、興南客運新化ターミナル、新市駅、奇美電子、台積電、南科商場。

路線4「高鉄台南駅―台南市政府」線
途中停車するバス停は、生産路口、大林新城、延平郡王祠、興南客運台南ターミナル、台南市政府。


今、台南駅からバスに乗ったのに、どうして"途中停車するバス停"の一覧に"台南駅"が!?

Pi-子隊長:・・・・・・・・・・・・・・・諸君、すべての謎が解けたぞ!
ピッキー:ふふふ、よくぞ見破ったな、明智くん!
Pi-子隊長:誰が明智くんだ!二十面相かよ!?いや、私たちが降りたのは"高鉄台南駅"・・・要するに新幹線駅であって、在来線の"台南駅"は別の場所にあるんだ。
ピッキー&るむ:なんだって〜!


ゆったりして意外と快適な車内
Pi-子隊長:だって、そこの路線表示みると、始発は全部「高鉄台南駅」だし、路線1と路線2の途中バス停に「台南駅」が入ってるもん。
るむ:本当だ!日本の新幹線駅みたいに"新"をつけて「新台南」にしてくれれば分かりやすいのにね!
Pi-子隊長:高鉄が出来るときにJRだって技術指導とかしてるんだから、在来線と新幹線駅が離れている場合には"新"つけるってことも指導してくれれば よかったのに。「大阪」と「新大阪」とか、「横浜」と「新横浜」みたいにさ!
ピッキー:「津田沼」と「新津田沼」なら歩いて乗り換えが可能な距離だぞ!
Pi-子隊長:ネタがローカルすぎるし、「新津田沼」はJRじゃないし!!
(すみません、分かる人だけ分かってください)

るむ:ところでこのバスは台南駅で止まるの?
Pi-子隊長:行き先は駅って言わなかったからねぇ・・・ま、ちょっと様子をみよう。


バスは30分以上経ったところでようやく台南の市内らしいきところに入った。
ここからは外の景色、バス停名と手元にあるガイドブックのマップ(ちょっと心細いですけどね)とにらめっこ。
なにかヒントになる店とか見つかればいいけど・・・とか思ってた時。

乗客A:孔子廟は次だよ。
乗客B:すぐに着くよ。

2人だけでなく数人の乗客が私たちの方を見て「次が下車駅だ」と伝えてくれる。

なんで私たちの下車駅が次だと分かるんだろう・・・あ、乗るときに運ちゃんに「孔子廟」って言っちゃったからか。
Pi-子隊長:ありがとうございます。でも、私たち、やっぱり駅まで行きたいんです。
荷物預けたいからね。
乗客B:駅?駅なら「孔子廟」の次だよ。
よかった。台南駅まで行く路線だったんだ。

と一安心して降りるが・・・駅らしいところなんて全然見当たらないんですけど!?
乗客B:やぁ、ここで降りてどこに行くんだい?
Pi-子隊長:あの・・・駅って?どこ?
乗客B:え、そこだよ。


彼が指差したのは小さなバス乗り場。
昨日、恒春までのバスに乗るときに行った時と同様、狭いスペースにカウンターがひとつあるだけ。
う〜ん、あそこには手荷物預けるスペースはないだろうなぁ・・・と思いつつ、乗客B氏にはとりあえずお礼を言って別れた。

Pi-子隊長:どうしようかね?ガイドブックの地図だとイマイチ縮尺が分からないから、ちょっと歩いてみて、徒歩で行けるようなら行っちゃおうか。
るむ:そうだね。
Pi-子隊長:え〜と、一つ前のバス停が"孔子廟"だったから、方向はこっちかな?
ピッキー:地図はオレが見るからいいよ。
るむ:英語が使えそうなら、私も誰かに聞いてみる。

おおっ、昨日と違って3人全員協力体制!

こうなったら私もがんばらないとね。
Pi-子隊長:やっぱり、人に聞いてみよう。歩き回って体力と時間を消耗したくないし。

キョロキョロしていると、サラリーマン風のおじさんと目があった。
この人に聞いてみよう。
Pi-子隊長:請問、從這里到台南火車站需要多長時間。 (すみません、ここから台南駅までどのぐらい(時間が)かかりますか?)
おじさん:歩いてかい?
Pi-子隊長:歩けそうなら・・・
おじさん:う〜ん、20分ぐらいかな?荷物持って歩くのはたいへんそうだね。
Pi-子隊長:ま、確かに・・・タクシーにするかどうか友達と相談しますよ。ありがとうございます。

るむ:何だって?
Pi-子隊長:20分ぐらいだって。タクシーにしようか?そんなに高くないし。
おじさん:あ、ちょっと待って。
Pi-子隊長:はい?


おじさん、懐から自分の名刺を取り出した。
おじさん:これ、ボクの名刺だから。何か困ったことがあったらボクんとこ電話しなさい。
ええっ!名刺なんか渡すか〜、見知らぬ外国人に!!

ピッキー:何?
Pi-子隊長:名刺もらっちゃった。困ったら連絡しろって。私だったら通りすがりの外国人に名刺なんか渡せないな〜。


おじさんの対応に驚きながらも、タクシーを拾って台南駅まで行くことにした。




1936年に建てられた台南駅
台南駅内の「荷物預かり所」で重い荷物を預けてすっきりしたところで観光開始!!

まずは台南駅。
駅舎は日本統治時代、1936に建てられた建物が現役で使われています。
南国の真っ青な空に白い駅舎がとてもマッチ!
戦前は二階をホテルとして使っていましたが、今は閉鎖しているようです。

るむ:駅中のホテルなんて、便利だけどうるさそうだね。
ピッキー:でも、鉄ちゃん(鉄道オタク)にはたまらないんじゃないか。
Pi-子隊長:建物に味があるし、改装して再オープンすれば人が入りそうだけよ。


次は台南の駅から約1km西へ歩いたところにある赤崁楼(せきかんろう)へ。
中国語の読み方では「チーグァンロウ」、先住民族がこの地を「チャカム」と呼んでいたことが由来らしい。
もともとは台湾南部に入ってきたオランダ人によって築城された旧跡(原名は「プロヴィンティア城)です。
1661年に鄭成功がオランダを駆逐すると、赤崁楼(プロヴィンティア城)は「東都承天府」と改名され、台湾全島の最高行政機関となったが、まもなく鄭成功が死去し、「承天府」は廃止。
それから清国統治時代、日本統治時代と続き、その間荒廃と修復を繰り返し、1983年に国家一級古蹟に指定され、今では台南のランドマーク的な存在になっています。

赤崁楼(海神廟)
鄭成功に降伏するオランダ人の銅像

池近くの円形アーチをくぐると、現在は、清国統治時代に造営された海神廟と文昌閣が建っています。
ピッキー:あれ、この建物「海神廟」って書いてあるぞ、赤崁楼じゃないのか?
Pi-子隊長:赤崁楼っていうとガイドブックなんかにはこの建物が載ってるからそう思うよね。実際には赤崁楼は 後ろの方にちょこっと城跡が残ってるだけみたいだよ。正確には海神廟と文昌閣の建物、城跡、庭園などをひっくるめて"赤崁文化園区"ってことになってるらしい。
るむ:ふ〜ん、そうなんだ。


台湾小姐:能幫忙拍張照片嗎?
ピッキー:ムム、若いギャルがオレをナンパしてきたぞ!
Pi-子隊長:んなわけないじゃん。写真撮ってくれって言ってるだけだよ。カメラ差し出してるでしょ。
(ばっさり)
ピッキー:なんだ。はい、チーズ・・・チーズって言わないのか!?

円形アーチ(オシャレ!)
なぜ自分のカメラで撮ってるんだ・・・!?



海神廟の2Fから庭園を見たところ
つぼ型の出入り口 細かいところがオシャレ

奥にある「文昌閣」に続く
文昌閣には有名な学問の神様「魁星爺」が祀られておりまして、多くの学生が合格祈願におとずれるのだそうです。

ピッキー:すごいな〜絵馬の数。台湾でも"絵馬"っていうのかね?
Pi-子隊長:よく分かんない。しかし、びっしり書いてあるところがキアイを感じるね。受験校、受験場所、日にちが書いてるのもあるよ。 さながら"湯島天神"ってとこ。
ピッキー:しかし、この「魁星爺」の像、複雑なポーズしてるな。


合格祈願の絵馬?
「魁星爺」の像

Pi-子隊長:イヤミの「シェー」な感じ?(笑)

城の遺跡
ピッキー:こんなポーズでも筆を持っているところが"学問の神様"だよ。
Pi-子隊長:台湾の道真公はちょっとファンキーなのだね。(笑)


実はこのポーズ「魁」の漢字をかたどっているんだそうです。
右手は筆をもって、左手にはペンをもち、右足で伝説の魚を踏みつけ、左足で星を蹴る(斗=北斗星)という意味があるそうですよ。
魁星爺はもともと科挙(隋初から実施された中国の官僚試験)の神様で、「魁(さきがけ)=他の者より先になること」を体現してくれているんでしょう。

文昌閣を出たところで目に入ってくるのが古いレンガの壁。
これがもともとの赤崁楼(プロヴィンティア城)の外壁です。
長い年月を経て壊されてしまったけど、強固な要塞だったんでしょうね。

昼の赤崁楼はこんな感じで観光客でいっぱいですが、夜になるとライトアップされ、デートコースになるんだそうですよ。

るむ:次はどこへ行くの?
Pi-子隊長:近くにあるから「台南大天后宮」へ行こうか。


台南の大天后宮は、台湾全土で、数百はあるといわれている媽祖廟の中で、最高位とされています。
高雄の旗津でも天后宮へ行きましたが、媽祖(天上聖母)は海の守護神で台湾で最も信仰されている女神様です。

???:あら、あなたたち、日本人ね。
突然、見知らぬオバさんに日本語で話しかけられた。
それほど高齢には見えないけど、流暢な日本語だ。(高齢者は日本統治時代に日本語で教育を受けていたので日本語を話せる人が多いです。)

Pi-子隊長:は・・・はい、そうですけど。
オバさん:ちょっと待って、この辺に日本語のパンフレットが・・・あ、あったわ。はい、どうぞ。

3人パンフレットを受け取る。
このオバさん、この職員(神職?)ってわけでもなさそうだけどなぁ・・・なんか、こうゆうパターンって実は漢方薬屋さんだったりして、高級な漢方薬を薦められたりするんだよねぇ・・・

オバさん:ここはねぇ、昔は王宮だったのよ。だから建物に凝った彫刻がされいてね。ここ、階段のこんなところにも彫刻があるの見える?
大天后宮は、もともとは明王朝最後の王、寧靖王の府邸でしたが、1684年に媽祖廟と改築され、名前も大天后宮へと改名されたそうです。

大天后宮正面彫刻が施された階段

オバさん:じゃあ、この後も気をつけて。旅行を楽しんでね。
一同:あ・・・ありがとうございました。


Pi-子隊長:・・・この後、何か強引に薦められるかと思った。漢方薬とか、お茶とか、骨董品とか・・・
るむ:私は後になって"ガイド料"とか請求されるかと思った・・・

自分の黒さを感じずにはいられません・・・(^_^;

中心にあるのは媽祖の像。
媽祖両脇に控えている二人の鬼は「千里眼」と「順風耳」。
もともとこの二人は善人ではありませんでしたが、媽祖に調伏され改心し、こうしてかしづくようになったのです。
千里まで見過す眼力と鋭敏な聴力で媽祖の行いを助けています。

それから、もう一人祀られている神様がいます。
「月下老人」と呼ばれ、厳しい表情して、右手に赤い糸がかかった杖を持っている神様ですが、この赤い糸は「運命の赤い糸」なんですよ。

唐の時代、韋固(いこ)という若者が、“月光の下”で本を読んでいた、白髪の“老人”に出会い、老人の持っている「赤い糸」で結ばれた男女は、必ず夫婦になるという話を聞かされます。
老人は韋固に3歳の子供を"未来の妻"だとを予言して姿を消してしまうのでした。
老人から馬鹿にされたと思った韋固は、従者に命じてその赤子を殺させてしまいます。(ひどい・・・)
それから十数年の後、韋固はある女性と結婚。
彼女には眉間に傷があり、自分がかつて殺すことを命じた子供で、九死に一生を得ていたことを知ります。
これにより、はじめて運命を信じた韋固は、妻にすべてを告白。
老人を疑ったことを恥じ、妻との縁をいっそう大切にしたため、相思相愛の幸せな生活を送ったのでした。

この伝承から、婚姻の神様のことを「月下老人」。
また中国では仲人のことを「月下老人」、略して「月下老」「月老」と呼ぶようになったのだとか。
さらに老人が、男女の縁を「赤い糸」で結んだことから、「赤い糸」といえば、縁結びや婚姻のことを指すようになったといわれています。

Pi-子隊長:「月下老人」の像はこっち・・・あっ!
なんと、この時、TV(?)の撮影が行われており、残念ながら「月下老人」の像は見られませんでした。

媽祖の像と両側に「千里眼」「順風耳」何かのロケ中

大天后宮を出て、近くの路地裏をぶらぶら。
Pi-子隊長:下手すると迷子になりそうだけどね。
るむ:迷っても、それほど広くはなさそうだからいいけど。

タッタッタッ!

ん、なんだ、後ろから人が走ってくる音。

小姐:カバン、カバン!
え、今、日本語で"カバン"って言った!?

小姐:你・・・(あなた・・・)
ピッキー:オレ?
小姐:開着提包走路,非常危險喲!(カバンを開けっ放しにしているのはとても危険よ!)

ピッキーのカバンを指差して注意する小姐。

ピッキー:あ、(カメラの)レンズ出し入れしてたから開けっ放しだった。
Pi-子隊長:あ・・・ありがとうございます。


小姐はそれだけ言うとまわれ右をして足早に立ち去って行った。

Pi-子隊長:・・・今の「カバン」は日本語だったよね?所謂「哈日族(日本のアニメやアイドルが好きな子)」ってヤツかな。
るむ:うん、しかも来た方向に向かって行ったってことは、カバンのこと注意する為に走ってきてくれたのかな。
ピッキー:親切すぎるな、台南人。


バスの中の乗客、名刺をくれたおじさん、大天后宮で説明をしてくれたオバさん、今のお姉さん・・・今日1日で何回親切にされたことか・・・

日本で台南人に会ったら親切にしよう。
見た目では分かりませんが・・・

(Pi-子)