都庁と白糸の滝

新宿御苑前駅から西新宿駅前まで、距離にして約2km、電車に乗っている時間約5分。
地下鉄を降りて、地上出口を出ると、目の前に東京医科大学病院、周辺にも超高層ビルがど〜ん!とそびえたっている。
Pi-子隊長:2丁目は昭和で時を止めてる感じだったけど、西口に来たらいきなり平成になっちゃったよ。
るむ:距離的にはそんなに離れていないんだけど、ずいぶん違うね。


Pi-子隊長:え〜と、次の目的地「成子天神社」は西新宿駅の近くなんだけどな。
大将:この辺、神社なんかなさそうだぞ。
るむ:地図にも載ってないね。
Pi-子隊長:西新宿8丁目・・・ってどっちだ?鳥居が大通りに面してるみたいだけど。
まる子:ここじゃない?


ビルの間にひょっこりと現れた石の鳥居。
ちゃんと「成子天神社」って書いてあるから間違いない。

境内の中は驚くほど静かで、この近くに新宿の高層ビル群があることを忘れそうだ。
この寂れっぷりがいい・・・といえばいいのですが・・・
Pi-子隊長:新宿の西口、東口という違いはあれど、駅からの距離とか周りの環境は花園神社、太宗寺とさほど差はないような気がするんだけど、 この違いは何なんだろう?あっちは都会の自然のオアシスって感じで人もそれなりにいたけど、こっちは人がいなくて寂しいんですけど。高層ビルのせいかな?
まる子:うん、分かるような気がする。

後から調べたら、この辺は今も再開発の真っ最中で、昔から住んでいた住民は移転し、現在は半ばゴーストタウンとなっているんだそうです。
だから・・・でしょうか?


「30階建マンション建設反対!」の看板
成子天神社の鳥居

それと目についたのが、神社の隣のマンションに掲げられた「30階建マンション建設反対!」の看板。
なんと開発の波は成子天神社の周囲だけでなく、まさに境内の中にも及んでいるですね。
マンションが2棟も。現在、駐車場になっている北側に14階建て、社務所がある西側にはなんと30階建てマンション建設予定だとか。


力石、右側のは木が生えて割れてるみたいですが・・・!?
お参り中の女性陣3人

この裏に「富士塚」があるのですが、本やサイトを見てもお正月しか上れないと
ピッキー:なんか行けそうだよ。
Pi-子隊長:行けるところまで行ってみようか。


途中、左手に社務所(宮司さん自宅?)を見ながら北側にある「富士塚」へ。
12mもの富士塚の上に木花咲耶姫命(コノハナノサクヤヒメ)の像が見えます。
るむ:何?このはなのさくやひめ?
Pi-子隊長:うん、富士山の神様が木花咲耶姫命(コノハナノサクヤヒメ)なんだよね。火中で出産をしたから火の神様(=火山)とされてるとか、 逆に水の神様だから富士山の噴火を鎮めるために祀られたとか、木花咲耶姫命(コノハナノサクヤヒメ)の父である大山津見(オオヤマツミ)が各地の山を統括する 山の神様だから・・・とか説話はいろいろあるみたいだけど。
まる子:火の中で出産?
Pi-子隊長:
(しずるからのうけうりですが)コノハナノサクヤヒメは瓊々杵命(ニニギノミコト)と結婚して、 たった一夜で身篭ったので、それを聞いたニニギは「たった一夜で身篭る筈はない。それはオレの子じゃない!」と言い出し、それに対しコノハナノサクヤビメは 「あなたの子でなければ産む時に無事ではないでしょう。」と言って、戸のない御殿を建ててその中に入り、産む時になって御殿に火をつけたんだって。 結果、無事に三神を産み終えたので安産の神様ともされてるみたいだよ。
るむ:神話といえ、ひどい話だね。
Pi-子隊長:ニニギノミコトはコノハナノサクヤヒメと結婚する時にも、オオヤマツミからコノハナノサクヤヒメの姉(イワナガヒメ)もセットでもらって!とお願いされたのだけど、イワナガヒメが 「醜女」だった為、返してしまったという話があるよ。現代の物差しで計れないんだろうけど、今だったらワイドショーでボコボコに言われそうだよね。

大将:お〜い!!

ふと上を見ると、大将とピッキーが上から手を振っている。
Pi-子隊長:あれ、大将とピッキーがいつの間にか山頂まで上ってるよ。
るむ:私たちも上ろう!



あれれ、いつの間に?

   富士塚は溶岩で覆われており、確かに
   転倒したら危ない

富士塚は火山岩で出来ていて、これは江戸時代に富士山が噴火した時の溶岩を使用して築き上げたのだそうです。
心なしか富士山パワーを感じます。

頂上付近の付近はだんだん幅が狭くなっていき、手すりも何もないので、確かに小さい子供は危ないかもしれない。
手頃な溶岩に手と足を掛けながら登って行きます。けっこうな急勾配。
塚のところどころに七福神が配置されています。
富士山と七福神?・・・何か関係あったっけ?
ありがたさ×2倍になりそうだから、まぁ、いいか。


  山頂のコノハナノサクヤヒメ像
  と、やけになれなれしい大将
ようやく山頂のコノハナノサクヤヒメとご対面。
絶世の美女・・・なんだけど、ちょっとメタボ気味ですか?
いや、現代の物差しで計ってはいけないんですよね。このお姿の方が親近感はわきますが。

ところで富士塚っていうのは、江戸時代後期に庶民の間で「富士講」という富士信仰が流行ったのだけれど、当時は今のように気軽には富士山まで行くことができないので 地元にこのミニチュア富士を作り、それに登ることで実際に行ったのと同じ「御利益」を得よう、という目的で出来たのだそうです。

Pi-子隊長:私もこれで富士山にのぼったことにして、ホンモノの富士山は上らなくてもいいことにしようかな。
るむ:隊長、今日のパワスポ巡りの目的は何?
Pi-子隊長:・・・ホンモノ富士山にのぼる為のパワー充電と晴天祈願です。
るむ:分かればよろしい!


江戸時代後期に庶民の間で「富士講」という富士信仰が流行り、関東各地を中心に多くの「富士塚」が作られたのですが、今では殆どの富士塚が震災、戦禍、開発などで消滅しているんです。
そう考えるとこれだけ新宿駅の近く、高層ビルが立ち並んでいる中で富士塚が残っているのは奇跡的なのかもしれません・・・が、富士塚の隣に30階建てのマンションかぁ。
できることならこの景観はこのままにして欲しいですね。

成子天神社を出ると、公園通りを通って、新宿中央公園の中に入る。
新宿中央公園の面積は8万8065m2で新宿区の中では最も広い公園。
戦前には小西六写真工業(現:コニカミノルタ)の工場敷地、淀橋浄水場がありましたが、1960年以後、新宿副都心計画の一環として、サラリーマンなどへの憩いの場として公園として整備されることになったのです。
場所柄、ドラマなどの撮影が頻繁に行われており、撮影現場を見られるチャンスも多い場所です。(有名なところでは「太陽にほえろ」「仮面ライダー」など。古い?)

Pi-子隊長:都庁の近くにこんな公園があったんだ。私初めて来た。
るむ:私は前にここで花見したことあったな〜。桜がきれいなんだよ。

今は桜はないけれど、木々と芝生の緑がまぶしいぐらいで、まさに「都会のオアシス」といったところでしょうか。
もっとも、緑に負けないぐらいダンボールハウスの薄茶とビニールシートテントの青も目立ちますが・・・

まる子:この辺、けっこう多いのね。地下街にはオブジェが作られてテントとかダンボール置けなくなっちゃったからだろうね。
はい、これらの青ビニールシートテントはホームレスさんたちのものです。ダンボールハウスも多く見られます。
Pi-子隊長:働きたくても働く口が見つからない人、もう働くのがイヤになっちゃった人・・・いろんな人がいると思うけど、開き直れば都心の一等地に 固定資産税も払わないで住めるって思うのもいいかもよ。


新宿中央公園 久遠の像

大将:何だ、この銅像?
私たちとは違う方向を見ていた大将が言った。

お代官様と思われる男性と彼に向かって扇子を差出、ひざまずく少女の像。
ピッキー:踊り子さん?
Pi-子隊長:舞ってないし。扇子の上に何か載ってるけど・・・なんだろうね?


全員教養のない我々ですが、この像は「久遠の像」といいましてこんな話があるそうです。↓↓↓

ある日狩りに出てにわかに雨に遭った太田道灌(室町時代の武将。歌人としても有名)はみすぼらしい家にかけこみました。 道灌が「急な雨にあってしまった。蓑(雨具)を貸してもらえぬか。」と声をかけると、家から出てきた少女は蓑ではなく山吹の花一輪を差し出した。
道灌は蓑を借りようとしたのに花を出され、内心腹を立てながら雨の中を帰って行った。

その夜、近臣達にこの事を話すと、近臣の一人が進み出て「後拾遺集に醍醐天皇の皇子・仲務卿兼明親王が詠まれたものに"七重八重花は咲けども山吹の実の一つだに無きぞかなしき (山吹の花は幾重にも花をつけるけれど、実は一つもつかないものです。)"という歌があります。山吹の実のと懸けて、 その娘は身の一つない貧しさを山吹の花に例えたのではないでしょうか?」と言いました。

道灌は己の不勉強を深く恥じて、それを境に和歌を猛勉強をし、武家としては有数の歌人になったそうです。
ちなみにこの一件の後、道灌は時々少女を城に呼んで和歌の友にしたということです。

さて、次は熊野神社へ。
正式名称は、"新宿十二社(じゅうにそう)熊野神社"。
応永年間(室町時代)"中野長者"と呼ばれていた、紀州出身の商人・鈴木九郎が故郷の紀州熊野三山から、十二所権現(熊野三山に祀られている十二柱の神)を移してお祀りされるようになられた神社なのです。
これに因んで付近は「十二社」(じゅうにそう)と呼ばれるようになり、今では信じられないけれど、かつてここには十二社の池・滝として知られた池と滝があったのです。

境内には非常に地味ながら、ここが景勝地であったことを示す記念碑「十二社の碑」があったりします。


昔、この一帯はこんなでした 本殿はただいま工事中

Pi-子隊長:本殿工事中なんだ。ちょっと残念。
るむ:本殿見ると何かやってるね。厄払いかな?
Pi-子隊長:だからかな、社務所に人がいなくてお守りが買えないんだよね。
まる子:お守り?
Pi-子隊長:ここの八咫烏(やたがらす)のお守りはかわいいんだよ。

八咫烏(やたがらす)とは日本神話において、神武東征(神武天皇が日向を出発し、大和を征服して橿原宮で即位するまで)の際に熊野から橿原までの道案内をしたとされる3本足の烏のことです。

Pi-子隊長:すみませ〜ん!
し〜ん・・・本殿にいる人以外に神職 or 巫女さんはいないんだろうか、この神社。

そうこうするうちに社務所の前にはちょっとした行列ができていた。
御朱印(神社や寺院で頂ける印。スタンプではなく墨書で寺社名や参拝日などが書かいてもらえる)をもらおうとする人、Pi-子同様お守りを買おうとする人。
八咫烏(やたがらす)ってば日本サッカー協会(JFA)のシンボルマークとして採用されてるし(日本代表選手のユニフォームのワッペンに描かれている鳥が八咫烏(やたがらす) ですよ)ワールドカップを前にして人気者になっているのかもしれない。

神職さん:すみません、お待たせしました!
1人の神職さんが小走りに戻ってきた。
Pi-子隊長:八咫烏(やたがらす)のお守りください。
そうしてゲットしたのがコレ↓であります。
ね、かわいいでしょ

八咫烏(やたがらす)のお守り 御社紋(やたがらす)入りのちょうちん

熊野神社を出ると、再び新宿中央公園に戻り、都庁方面に歩く
まる子:昔はこの辺りに滝があったなんて信じられないね。
Pi-子隊長:いや、古い地図を見ると滝があったのはもっと北側、今の区民ギャラリーの方みたいだよ。
大将:滝ならそこにあるぞ
Pi-子隊長&まる子:えっ!?


大将の指差した方を見ると確かに滝が
「白糸の滝」って書いてあるけど・・・めちゃめちゃ小さ・・・それに人工的。

白糸の滝 ナイアガラの滝

ちなみに「白糸の滝」の裏側には「ナイアガラの滝」があります。
豪快な水しぶきを挙げる本家「ナイアガラの滝」とはずいぶんな違いがあるような気がしますが、これもご愛嬌(?)というもの。
せめてアメリカ人とカナダ人には見せない方がいいかもしれない。

まる子:隊長、次なる目的は?
Pi-子隊長:目の前にある都庁だ。ここもパワースポットらしい。

何でも富士山から来る龍脈が都庁を通っているらしい。
都庁の上部が凹んでいるのも龍脈に配慮しているから、とかいう話もあるが、地下に基礎を打ち込んだ時点でアウトという説も

るむ:都庁の展望台までのぼってみる?
Pi-子隊長:混んでなかったらね。タダだし。
るむ:今、友だちがフィリピンから来ていて、お昼に新宿で待ち合わせしているから、私は途中で抜けるわ。

さすがインターナショナルなるむさんだ。

ピッキー:特にどこに行くか決まってないなら、一緒にまわればいいじゃん。
るむ:じゃあ、そうしようかな。でも駅までは迎えに行ってあげないと。


とりあえず、るむ友さんとの待ち合わせには時間があったので、都庁の展望台へ行ってみることにした。
展望台行きのエレベーターはさほど混んではいなかったが、我々の後に中国人からの団体さんの行列が並んだ。
まる子:団体さんの前でよかったね。
Pi-子隊長:本当、日ごろの行いがいいからかな。
るむ:最近は中国からの観光客が増えたよね。
Pi-子隊長:そうだね〜、家電量販店やら、デパートでは英語と並んで中国語のアナウンスが入るし、 日本国内で「銀聯カードOK」なんて店も多いもんね。

銀聯カードとは中国で広く普及しているデビットカードで、15億枚も発行されているそうだ。

エレベーターは55秒で45階へ到着。

Pi-子隊長:う〜ん、年末に行った「台北101」に比べると低く感じる。 「台湾編」参照)
るむ:そりゃね〜、ちょっと前まで「台北101」が世界で一番高いビルだったワケだし。
ピッキー:夜景だったらもうちょっと印象が違うかもしれないけどな。

こうなったら「ブルジュ・ドバイ」も行くしかないな。

後ろに並んでいた中国人の団体さんは景色を眺めている人もいたけど、多くはお土産コーナーで買い物をしている。
さすがだね。今や、大手家電店では中国人の一人当たりの購入単価は日本人の5倍だそうだ。
日本もバブリーな頃は外国で同じようなことをしてたんだろうけどね。

大将:カフェがあるじゃん。何か飲んで一休みする?
まる子:そうだね〜、朝からずっと歩きっぱなしだし。
Pi-子隊長:るむさん、待ち合わせは大丈夫?
るむ:一杯ぐらいなら大丈夫だと思う。
ピッキー:じゃあちょっと休憩。・・・あ、すみません、5人です。



都庁展望室からの眺め ちょっと休憩

大将:何だ、この銅像?
ブルルルル〜、ブルルルル〜(マナーモード)
Pi-子隊長:携帯?るむさんかな?
るむ:あ、友だちからだ。・・・Hello


るむ友が新宿に到着したとの通信を傍受した一同は都庁から新宿駅まで移動することにした。

(つづく)



(お役立ちリンク)
新宿十二社 熊野神社
新宿中央公園に接してある熊野神社のサイト。景勝地であった事を記した、十二社の碑(新宿区指定 史跡)が残されてあり、その他にも新宿区指定史跡や文化財を含む数多くの史跡が残されています。 「由緒」のところから、かつてあった池・滝の絵を見ることができます。
都庁見学のご案内
都庁見学の案内が書かれているサイト。展望室の見学時間の他、都庁の見学が可能な場所の案内があります。都内の方にも地方の方にもオススメ(無料だし)